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ドイツの世界遺産の18ヶ所目になる「ベルリンのモダニズム集合住宅群」を訪れた。と言っても以下の6ヶ所の集合住宅(ジードルンク)がセットで登録されているため全てを見て回ることは不可能なので、比較的都心とテーゲル空港に近いグロスジードルング・ジーメンスシュタットを訪れることにし、この地域に隣接するホテル(Holiday Inn, Berlin City West、クチコミ参照)を選んだ。この世界遺産は博物館ではなく現役の建築なので、早朝から見て回ることができるからだ。<br /><br />1.ガルテンシュタット・ファルケンベルク(トレプトー・ケーペニック区)<br />2.ジードルング・シラーパルク(ミッテ区)<br />3.グロスジードルング・ブリッツ(ノイケルン区)<br />4.ヴォーンシュタット・カール・レギエン(パンコー区)<br />5.ヴァイセ・シュタット(ライニッケンドルフ区)<br />6.グロスジードルング・ジーメンスシュタット(シャルロッテンブルク・ヴィルマースドルフ区)<br /><br />ドイツの世界遺産としては、「ヴァイマルとデッサウのバウハウスとその関連遺産群」や「ツォルフェアライン炭鉱業遺産群」に続くモダニズム建築の世界遺産である。繰り返しになるが、これらの機能、経済性優先の実用建築が世界遺産に値するのか疑問に思われる方も多いことと思う。(小生も含めて)<br /><br />これらの集合住宅群は1920年代後半~1930年代初頭、ヴァイマル共和国期に建設、当時の低所得者層に関する生活環境改善というニーズが背景にあった。実際の設計や建築を主導したは、バウハウスの初代校長ヴァルター・グロピウスのほか、ブルーノ・タウト(来日し桂離宮を評価)、マルティン・ヴァグナー(ハーバード大学教授など歴任)、ハンス・シャロウン(ベルリン・フィルハーモニーザールの設計者)といった当代一の建築家たちであり、新しい建材やデザインによって衛生的で快適な住宅作りを進めた。<br /><br />世界遺産登録には、ジードルンクそれ自体の建築物としてだけでなく、後に世界の集合住宅の様式にも影響を及ぼした点なども評価されたと言う。実際にこの建築群を見て歩くと、機能、経済性優先の実用建築でありながら、緑豊かな自然環境の中で、至る所でこれらの建築家の美意識にはっとさせられる。また、耳の長い大きな猫がいる、と思ってよく見ると野生のウサギであった。自然との共生、と言う意味でも成功例である、と言える。<br /><br />蛇足になるがジーメンス社について。我々は日本史でジーメンス事件(1914年(大正3年)の同社による日本海軍高官への贈賄事件、一大疑獄事件に発展)を記憶しているため、ネガティヴな印象を持ってしまうが、電気関連では世界をリードするスーパー優良企業、コングロマリットとして君臨している。ミュンヘンに本社を置き、近年の年間売上高は14兆円を超える。165年前の1847年、ヴェルナー・フォン・ジーメンスによってベルリンで創業、1881年に世界で最初の電車の営業運転を実現した。電信、電車、電子機器から発展し、現在では情報通信、電力関連、交通、医療、防衛、生産設備、家電製品等の分野での製造、制御関係では他の追随を許さない。福島原発の事故以後、原発事業から撤退、自然エネルギー発電事業への転換を公表している。<br /><br />ジーメンスシュタットの名の通り、この周辺は同社の建物が並ぶ。時期的にはバウハウスの活動よりも前に建設されているが、赤レンガの外観が見事に街並みに調和していることに驚かされる。機能優先のシンプルな設計は、明らかにバウハウス活動にも影響を与えている。同時に、旧本社屋などはウィーンのムジークフェラインザールを思い出させるほど堂々たるファサードを持つ。建築ファンには一見に値する地域である。

ドイツの世界遺産No.18:ベルリンのモダニズム住宅群 ジーメンスシュタット(改訂版)

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2012/10/07 - 2012/10/08

638位(同エリア2439件中)

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ハンク

ハンクさん

ドイツの世界遺産の18ヶ所目になる「ベルリンのモダニズム集合住宅群」を訪れた。と言っても以下の6ヶ所の集合住宅(ジードルンク)がセットで登録されているため全てを見て回ることは不可能なので、比較的都心とテーゲル空港に近いグロスジードルング・ジーメンスシュタットを訪れることにし、この地域に隣接するホテル(Holiday Inn, Berlin City West、クチコミ参照)を選んだ。この世界遺産は博物館ではなく現役の建築なので、早朝から見て回ることができるからだ。

1.ガルテンシュタット・ファルケンベルク(トレプトー・ケーペニック区)
2.ジードルング・シラーパルク(ミッテ区)
3.グロスジードルング・ブリッツ(ノイケルン区)
4.ヴォーンシュタット・カール・レギエン(パンコー区)
5.ヴァイセ・シュタット(ライニッケンドルフ区)
6.グロスジードルング・ジーメンスシュタット(シャルロッテンブルク・ヴィルマースドルフ区)

ドイツの世界遺産としては、「ヴァイマルとデッサウのバウハウスとその関連遺産群」や「ツォルフェアライン炭鉱業遺産群」に続くモダニズム建築の世界遺産である。繰り返しになるが、これらの機能、経済性優先の実用建築が世界遺産に値するのか疑問に思われる方も多いことと思う。(小生も含めて)

これらの集合住宅群は1920年代後半~1930年代初頭、ヴァイマル共和国期に建設、当時の低所得者層に関する生活環境改善というニーズが背景にあった。実際の設計や建築を主導したは、バウハウスの初代校長ヴァルター・グロピウスのほか、ブルーノ・タウト(来日し桂離宮を評価)、マルティン・ヴァグナー(ハーバード大学教授など歴任)、ハンス・シャロウン(ベルリン・フィルハーモニーザールの設計者)といった当代一の建築家たちであり、新しい建材やデザインによって衛生的で快適な住宅作りを進めた。

世界遺産登録には、ジードルンクそれ自体の建築物としてだけでなく、後に世界の集合住宅の様式にも影響を及ぼした点なども評価されたと言う。実際にこの建築群を見て歩くと、機能、経済性優先の実用建築でありながら、緑豊かな自然環境の中で、至る所でこれらの建築家の美意識にはっとさせられる。また、耳の長い大きな猫がいる、と思ってよく見ると野生のウサギであった。自然との共生、と言う意味でも成功例である、と言える。

蛇足になるがジーメンス社について。我々は日本史でジーメンス事件(1914年(大正3年)の同社による日本海軍高官への贈賄事件、一大疑獄事件に発展)を記憶しているため、ネガティヴな印象を持ってしまうが、電気関連では世界をリードするスーパー優良企業、コングロマリットとして君臨している。ミュンヘンに本社を置き、近年の年間売上高は14兆円を超える。165年前の1847年、ヴェルナー・フォン・ジーメンスによってベルリンで創業、1881年に世界で最初の電車の営業運転を実現した。電信、電車、電子機器から発展し、現在では情報通信、電力関連、交通、医療、防衛、生産設備、家電製品等の分野での製造、制御関係では他の追随を許さない。福島原発の事故以後、原発事業から撤退、自然エネルギー発電事業への転換を公表している。

ジーメンスシュタットの名の通り、この周辺は同社の建物が並ぶ。時期的にはバウハウスの活動よりも前に建設されているが、赤レンガの外観が見事に街並みに調和していることに驚かされる。機能優先のシンプルな設計は、明らかにバウハウス活動にも影響を与えている。同時に、旧本社屋などはウィーンのムジークフェラインザールを思い出させるほど堂々たるファサードを持つ。建築ファンには一見に値する地域である。

旅行の満足度
4.0
観光
3.5
ホテル
4.5
交通
4.0
同行者
一人旅
一人あたり費用
5万円 - 10万円
交通手段
鉄道 タクシー 徒歩 飛行機
旅行の手配内容
個別手配
  • グロスジードルング・ジーメンスシュタットに隣接するホテル、Holiday Inn, Berlin City West、モダニズム住宅に調和している

    グロスジードルング・ジーメンスシュタットに隣接するホテル、Holiday Inn, Berlin City West、モダニズム住宅に調和している

  • Holiday Inn, Berlin City Westスィートの居間

    Holiday Inn, Berlin City Westスィートの居間

  • 「ベルリンのモダニズム集合住宅群」、デザイン性の高い曲線のテラスに美的センスを感じる、テラスの赤い花がよく似合う

    「ベルリンのモダニズム集合住宅群」、デザイン性の高い曲線のテラスに美的センスを感じる、テラスの赤い花がよく似合う

  • 上記ユネスコ世界遺産に登録された集合住宅であることの説明看板

    上記ユネスコ世界遺産に登録された集合住宅であることの説明看板

  • ヴァルター・グロピウス設計の集合住宅

    ヴァルター・グロピウス設計の集合住宅

  • 上記ヴァルター・グロピウス設計の集合住宅の説明看板

    上記ヴァルター・グロピウス設計の集合住宅の説明看板

  • 「ベルリンのモダニズム集合住宅群」、建築の描く緩やかなカーブに美的センスを感じる

    「ベルリンのモダニズム集合住宅群」、建築の描く緩やかなカーブに美的センスを感じる

  • 上記ユネスコ世界遺産に登録された集合住宅であることの説明看板

    上記ユネスコ世界遺産に登録された集合住宅であることの説明看板

  • 「ベルリンのモダニズム集合住宅群」、道路を跨ぐ住宅、実用性の中にも美的センスを感じる

    「ベルリンのモダニズム集合住宅群」、道路を跨ぐ住宅、実用性の中にも美的センスを感じる

  • 「ベルリンのモダニズム集合住宅群」のグロスジードルング・ジーメンスシュタットの集合住宅

    「ベルリンのモダニズム集合住宅群」のグロスジードルング・ジーメンスシュタットの集合住宅

  • 「ベルリンのモダニズム集合住宅群」のグロスジードルング・ジーメンスシュタットの集合住宅

    「ベルリンのモダニズム集合住宅群」のグロスジードルング・ジーメンスシュタットの集合住宅

  • 「ベルリンのモダニズム集合住宅群」のグロスジードルング・ジーメンスシュタットの集合住宅

    「ベルリンのモダニズム集合住宅群」のグロスジードルング・ジーメンスシュタットの集合住宅

  • 「ベルリンのモダニズム集合住宅群」のグロスジードルング・ジーメンスシュタットの集合住宅

    「ベルリンのモダニズム集合住宅群」のグロスジードルング・ジーメンスシュタットの集合住宅

  • 「ベルリンのモダニズム集合住宅群」のグロスジードルング・ジーメンスシュタットの集合住宅

    「ベルリンのモダニズム集合住宅群」のグロスジードルング・ジーメンスシュタットの集合住宅

  • 耳の長い大きな猫がいる、と思ってよく見ると野生のウサギであった。自然との共生、と言う意味でも成功例である

    耳の長い大きな猫がいる、と思ってよく見ると野生のウサギであった。自然との共生、と言う意味でも成功例である

  • ウィーンのムジークフェラインザールを思い出させるほど堂々たるファサードのジーメンス本社屋

    ウィーンのムジークフェラインザールを思い出させるほど堂々たるファサードのジーメンス本社屋

  • ジーメンス社本社屋前のモニュメント

    ジーメンス社本社屋前のモニュメント

  • ジーメンス社の建屋、赤レンガの外観が見事に街並みに調和している

    ジーメンス社の建屋、赤レンガの外観が見事に街並みに調和している

  • ジーメンス社の建屋、赤レンガの外観が見事に街並みに調和している

    ジーメンス社の建屋、赤レンガの外観が見事に街並みに調和している

  • ジーメンス社の建屋、赤レンガの外観が見事に街並みに調和している

    ジーメンス社の建屋、赤レンガの外観が見事に街並みに調和している

  • Uバーンローアダム駅の前のジーメンスの社屋

    Uバーンローアダム駅の前のジーメンスの社屋

  • ジーメンスシュタットの街並み

    ジーメンスシュタットの街並み

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