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ドイツ16カ所目の世界遺産「ルターメモリアル」を訪れるため、ベルリン中央駅からREに乗って約40分、ルターシュタット・ヴィッテンベルクに到着した。日本ではほとんど知られていないと思うが、宗教改革の立役者であるマルティン・ルターが神学部の大学教授として教鞭をとった町であり、彼の名を冠する町である。世界遺産「ルターメモリアル」としてはルターの生まれたアイスレーベンとペアで登録されているが、こちらは100㎞ほど離れており別の機会に訪れることにする。<br /><br />この日はサンクトペテルブルクを早朝に発ち、テーゲル空港から中央駅に移動した。ところがDBの窓口は週末は閉まっており、自販機で25%割引になるBahncardを挿入したが、直通列車のチケットを買うのに手間取って、1本列車を乗り過ごしてしまった。時間が余りないので、駅に到着してすぐヴィッテンベルクの駅で年配のご夫婦にルターハウスへの道を尋ねたら、観光旅行に来ていたオーストラリア人であった。英語に切り替えて世間話をしながらルターハウスに向かう。すっかり信頼されてしまって、私について行く、シドニーの住所を教えるのでぜひ遊びに来てくれ、なんて言われるので嬉しかったが、いかんせんこの町で過ごせる時間は限りがあり、丁重に「急ぐので先に行かせてもらう」とお詫びして、連絡先を交換してお別れした。気ぜわしい日本人、早々寂しい気がした。<br /><br />さて、ヴィッテンベルクという名が使われ始めたのは1187年であるが、この町が世界遺産に登録されたのは、何と言ってもマルティン・ルターの功績である。少々固い話になるが、ルターと彼の教会について備忘録代わりに以下に解説を抜粋しておく。<br /><br />ルター教会は日本ではルーテル教会として知られているが、ルターによりドイツに始まる、キリスト教の教派または教団で、ルター派とも言われる。代表的なプロテスタントの流れの一つであり、全世界に推定8260万人の信徒がいる。発祥の地ドイツを始め、北欧諸国では国民の大半がルター派であり、そこから移民が渡った先のアメリカ合衆国、カナダでも信徒数が多い。また大バッハやヘンデルが所属し、ルター自身も作詞・作曲家であったことから、音楽に縁が深い教会でもある。<br /><br />1517年、ヴィッテンベルク大学教授職にあったルターが、大学内の聖堂の扉に『95ヶ条の論題』(写真参照)を提示したことが宗教改革の口火を切ることになった。ルターは最初新しい教会を建てるつもりはなかったが、カトリック教会との戦いが妥協を許さない状況になり、ルターは明確な信仰基準や組織を必要とするようになった。ドイツ国内のみならず、北欧のスウェーデン、デンマーク、ノルウェーなどにもルター派の教義は広まった。<br /><br />幸か不幸か、この地域が東ドイツに属した間、古い街並みは冷凍保存されたようにほとんど手を加えられなかった。中央駅から旧市街の反対にある城まで約2㎞を写真を撮りながら歩いた。ルターハウス、聖マリーエン教会、マルクト広場、市庁舎を抜けると、クラナッハの家(薬局)がある。ルターと同時期、この町にはドイツ・ルネサンスの代表的な画家ルーカス・クラナッハが工房を構え、1502年にはヴィッテンベルク大学も創設された。その子ルーカス・クラナッハもルターと親交があり、多くの彼の肖像画を残している。<br /><br />先のオーストラリアのご夫婦のように、全世界からルターの功績を尋ねてこの町を訪れる。しかし気ぜわしい日本人は観光もそこそこに、次なる町へ向かって発ってゆく。次なる目的地はデッサウ、世界遺産のバウハウスの関連遺産群とヴェルリッツ庭園を訪ねるために。

ドイツの世界遺産No.16:ルターシュタット・ヴィッテンベルクのルターメモリアル(改訂版)

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2012/10/06 - 2012/10/07

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ハンク

ハンクさん

ドイツ16カ所目の世界遺産「ルターメモリアル」を訪れるため、ベルリン中央駅からREに乗って約40分、ルターシュタット・ヴィッテンベルクに到着した。日本ではほとんど知られていないと思うが、宗教改革の立役者であるマルティン・ルターが神学部の大学教授として教鞭をとった町であり、彼の名を冠する町である。世界遺産「ルターメモリアル」としてはルターの生まれたアイスレーベンとペアで登録されているが、こちらは100㎞ほど離れており別の機会に訪れることにする。

この日はサンクトペテルブルクを早朝に発ち、テーゲル空港から中央駅に移動した。ところがDBの窓口は週末は閉まっており、自販機で25%割引になるBahncardを挿入したが、直通列車のチケットを買うのに手間取って、1本列車を乗り過ごしてしまった。時間が余りないので、駅に到着してすぐヴィッテンベルクの駅で年配のご夫婦にルターハウスへの道を尋ねたら、観光旅行に来ていたオーストラリア人であった。英語に切り替えて世間話をしながらルターハウスに向かう。すっかり信頼されてしまって、私について行く、シドニーの住所を教えるのでぜひ遊びに来てくれ、なんて言われるので嬉しかったが、いかんせんこの町で過ごせる時間は限りがあり、丁重に「急ぐので先に行かせてもらう」とお詫びして、連絡先を交換してお別れした。気ぜわしい日本人、早々寂しい気がした。

さて、ヴィッテンベルクという名が使われ始めたのは1187年であるが、この町が世界遺産に登録されたのは、何と言ってもマルティン・ルターの功績である。少々固い話になるが、ルターと彼の教会について備忘録代わりに以下に解説を抜粋しておく。

ルター教会は日本ではルーテル教会として知られているが、ルターによりドイツに始まる、キリスト教の教派または教団で、ルター派とも言われる。代表的なプロテスタントの流れの一つであり、全世界に推定8260万人の信徒がいる。発祥の地ドイツを始め、北欧諸国では国民の大半がルター派であり、そこから移民が渡った先のアメリカ合衆国、カナダでも信徒数が多い。また大バッハやヘンデルが所属し、ルター自身も作詞・作曲家であったことから、音楽に縁が深い教会でもある。

1517年、ヴィッテンベルク大学教授職にあったルターが、大学内の聖堂の扉に『95ヶ条の論題』(写真参照)を提示したことが宗教改革の口火を切ることになった。ルターは最初新しい教会を建てるつもりはなかったが、カトリック教会との戦いが妥協を許さない状況になり、ルターは明確な信仰基準や組織を必要とするようになった。ドイツ国内のみならず、北欧のスウェーデン、デンマーク、ノルウェーなどにもルター派の教義は広まった。

幸か不幸か、この地域が東ドイツに属した間、古い街並みは冷凍保存されたようにほとんど手を加えられなかった。中央駅から旧市街の反対にある城まで約2㎞を写真を撮りながら歩いた。ルターハウス、聖マリーエン教会、マルクト広場、市庁舎を抜けると、クラナッハの家(薬局)がある。ルターと同時期、この町にはドイツ・ルネサンスの代表的な画家ルーカス・クラナッハが工房を構え、1502年にはヴィッテンベルク大学も創設された。その子ルーカス・クラナッハもルターと親交があり、多くの彼の肖像画を残している。

先のオーストラリアのご夫婦のように、全世界からルターの功績を尋ねてこの町を訪れる。しかし気ぜわしい日本人は観光もそこそこに、次なる町へ向かって発ってゆく。次なる目的地はデッサウ、世界遺産のバウハウスの関連遺産群とヴェルリッツ庭園を訪ねるために。

旅行の満足度
4.5
観光
4.5
ホテル
4.0
交通
4.5
同行者
一人旅
一人あたり費用
5万円 - 10万円
交通手段
鉄道 タクシー 徒歩 飛行機
旅行の手配内容
個別手配
  • ルターシュタット・ヴィッテンベルクの中央駅、線路に挟まれた小さな駅だ

    ルターシュタット・ヴィッテンベルクの中央駅、線路に挟まれた小さな駅だ

  • 中央駅から約10分歩くと旧市街の入り口に到着する

    中央駅から約10分歩くと旧市街の入り口に到着する

  • 旧市街の街並み、この先にルターハウスがある

    旧市街の街並み、この先にルターハウスがある

  • ルターハウスの入り口、ルターが偉大な業績を残した家

    ルターハウスの入り口、ルターが偉大な業績を残した家

  • ルターハウスの中庭のモニュメント

    ルターハウスの中庭のモニュメント

  • ルターハウスの入り口上のルター像、1508年から1546年までここに住んだ

    ルターハウスの入り口上のルター像、1508年から1546年までここに住んだ

  • ルターハウス内の僧侶のダイニングルーム

    ルターハウス内の僧侶のダイニングルーム

  • ルターハウス内の十戒が描かれた石盤(クラナッハ(父)作)の展示

    ルターハウス内の十戒が描かれた石盤(クラナッハ(父)作)の展示

  • ピエタ(磔刑に処されたのちに十字架から降ろされたイエス・キリストと、その亡骸を腕に抱く聖母マリア)、立った姿のマリア像は珍しい

    ピエタ(磔刑に処されたのちに十字架から降ろされたイエス・キリストと、その亡骸を腕に抱く聖母マリア)、立った姿のマリア像は珍しい

  • ルターハウス内の講壇が置かれている講堂

    ルターハウス内の講壇が置かれている講堂

  • クラナッハ(父)作のルター肖像画の代表作、強固な意志を持った面構えだ

    クラナッハ(父)作のルター肖像画の代表作、強固な意志を持った面構えだ

  • 説教をするルター、クラナッハの作

    説教をするルター、クラナッハの作

  • ルターの聖書の翻訳本

    ルターの聖書の翻訳本

  • ルターハウスは旧建屋と新建屋がつながっている

    ルターハウスは旧建屋と新建屋がつながっている

  • ルターの胸像

    ルターの胸像

  • ルターの執務室

    ルターの執務室

  • ルターの書庫

    ルターの書庫

  • ルターシュタット・ヴィッテンベルクの旧市街の街並み

    ルターシュタット・ヴィッテンベルクの旧市街の街並み

  • ルターシュタット・ヴィッテンベルクの旧市街の街並み

    ルターシュタット・ヴィッテンベルクの旧市街の街並み

  • ルターシュタット・ヴィッテンベルクの市庁舎

    ルターシュタット・ヴィッテンベルクの市庁舎

  • ルターシュタット・ヴィッテンベルク市庁舎前のルター像

    ルターシュタット・ヴィッテンベルク市庁舎前のルター像

  • ルターシュタット・ヴィッテンベルク市庁舎前のルター像

    ルターシュタット・ヴィッテンベルク市庁舎前のルター像

  • ルターシュタット・ヴィッテンベルク市庁舎前広場

    ルターシュタット・ヴィッテンベルク市庁舎前広場

  • クラナッハの家(薬局)

    クラナッハの家(薬局)

  • ルターシュタット・ヴィッテンベルク旧市街から教会の塔を眺める

    イチオシ

    ルターシュタット・ヴィッテンベルク旧市街から教会の塔を眺める

  • マルティン・ルターが大学内の聖堂の扉に書いた『95ヶ条の論題』

    マルティン・ルターが大学内の聖堂の扉に書いた『95ヶ条の論題』

  • 教会(城)の内部

    教会(城)の内部

  • 教会(城)の外観

    教会(城)の外観

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