ブラジル　リオデジャネイロ　（2）カーニバル！カーニバル！

2012/02/10 - 2012/02/23

2/19(日）の夜から20（月）の明け方にかけて、夜通しのお祭り、リオのカーニバルを見に行きました。今回の長い旅のメイン・イベントです。カーニバルのパレードは、サンボードロモという常設の会場で、4晩に渡って開催され、うちトップのチーム（今回は13チーム）は日曜と月曜の2晩に登場し、順位を競います。1チームは3000〜4000人くらい、500メートルの会場を80分かけて練り歩き、1億〜4億円くらいかけて1年間準備したパレードの集大成を華麗に披露します。
審査のポイントを頭の片隅にパレードを見ると、各チームのカラーも見えてきて、ミュージカルやバレエを見るのが好きな私にはとても楽しく、眠気もふっとびます。最高の思い出になりました！！

エリア リオデジャネイロ(ブラジル)

• 旅行の満足度: 5.0

• 同行者: 友人
• 旅行の手配内容: 個別手配

カーニバルに出陣！夜の8時半コパカパーナのホテルで、ガイドさんと待ち合わせ。そこにはもう1グループがおり、１台のバスに乗ってカーニバルのメイン会場、サンボードロモ（Sambodromo)に向かいます。会場のそばにくると渋滞。バスを降りてから座席までの間がけっこう危険だと聞かされているので、荷物をしっかり抱えてドキドキしながらついていきます。チケットは首から下げます。写真は会場の外側。

そもそもメイン会場のサンボードロモ、一般の道に、その時だけスタンドを作るのだと思っていたのですが、常設の会場でした。規模を説明しづらいので、一人一冊配られていたガイドブックのページをご紹介。

一番奥のスタート地点からアーチのエンディング地点まで500メートルくらい（この写真だと望遠レンズのせいで奥行が狭く見えますが）。両側のスタンドのうち、左奥の4つが今年新設され、12500席増えて、合計72500席です。

私たちの席はSector9の最前列から2段あがった、いわゆるマス席。5人がけで、それなりにゆとりのある席です。すぐ目の前をサンバチームが通っていきます。日本から5人の席を事前に押さえるのは、手数料を覚悟しないとしょうがない感じ。往復のバス、1グループに1人つくガイド、最上級の席・・・で、1人あたりの金額はかなり高額でした。
私たちの斜向かいのSector6には審査員席がありました。リオのカーニバル、単に踊りながら練り歩くのではなく、チーム対抗のシビアな戦いなのです。

これは新スタンドができる前のサンボードロモ。片側に建物があったのですね。

審査員の皆さんです。チームの先頭が差しかかると立ち上がり拍手で迎えます。
メイン会場サンボードロモでのパレードは土、日、月、火の4晩行われますが、コンテストは日、月の2晩、合計13チームで行われます。例年は12チームなのですが、今年は13チーム。そのわけは後ほど。リオのサンバチームはリーグ制になっていて、日、月の13チームは1部の精鋭チームです。チームと書きましたが、正しくはEscola de samba (エスコーラは学校の意味）。学校というより地域に根ざしたチームという感じだそうで、リオには数百のエスコーラがあるとのこと。土や火曜日は2部や3部のチームのパレードが行われるそうです。

9時を回ったころ、一番バッターのチーム「Renascer」が登場しました。チーム名を記した車は長い行列の中頃に位置しているのですが、今回はわかりやすく最初に出します。

チームには間をあけて3組の、旗を持った女性（ポルタ・バンディラ）と相方の男性（メストレ・サラ）がいます。重要なポジションで、美貌で、ベテランの風格の人が担当しています。そういえばドライバーさんのお母さんは、このポルタ・バンディラだったそうなので、さぞかし美人でイケていたに違いありません。

一つのチームの人数は3000とも4000とも言われています。フロートと呼ばれる大型の山車が5つくらい登場しますが、その間、間に何百という人が、行進していきます。フロートには、私たちが「これぞリオのカーニバル！」といった露出が多く、大きな羽をつけた、華やかな美女たちが乗っていることが多いのです。

フロートの間、間を埋め尽くす人々は、奇妙奇天烈な衣装をまとった老若男女です。はい、おじさん、おばさんも多数歩いています。1チームの予算は億の単位。4億円かけたチームもあるとか。地域の助成金はあるそうですが、企業スポンサーも当然ありそう。日本で言うとねぶたの山車と阿波踊りが一緒に出ている感じなので、その金額も頷けます。

この「Renascer」というチーム、昨年の2部リーグの優勝チームです。優勝チームは1部に上がることができ、1部の最下位のチームは2部に下がります。ところが昨年は1部リーグの出待ちのフロートに火事がおこってしまい、いくつかのチームが出場できなくなりました。そのため、昨年は1部の入れ替えがなく、2部のチームが上がってきたので、通常12チームのところ、今年に限って13チームで競いあっているのだそうです。

とにかく、すごい人数、巨大なフロート、派手な衣装に圧倒される私達。ところが「Renascer」は昨年の2部のチーム・・・なだけに、あとから出てくるチームは、さらにスケールアップ。そして衣装も洗練され、ますます私達を圧倒していきます。残念なことに「Renascer」は今年は最下位で、また2部に逆戻り決定となってしまいました。

10時をまわり、2番目のチーム「Portela」の登場です。昨年7位だったこのチーム、今年は一つ順位をあげて6位となりました。

一つのチームに3000〜4000人と書きましたが、そういうわけで、とにかく通りすぎるのに時間がかかります。私達のセクターは中央よりややゴール地点寄りなので、チームがスタートして音楽が鳴り響き始めてから20分くらいして、ようやく先頭が通りかかります。
スタンド席でしたら、遠くまで見渡せるので、だんだん近づいてくるところが見えますが、行進している人たちとほぼ同じ高さの席なので、近づくまで見えないのです。

審査の基準がいくつかあります。まずは時間。スタートしてから、最後の1人がゴールに入るまで65分以上80分以内でなければなりません。スタートと同時に時計がカウントダウンします。

人数は2500人以上6000人以内。思うに大きなチームは5000人くらいいたのかもしれません。

チームの全員が歌っていること。ステップ踏んでいること。合同練習がそうできるとも思えませんので、歌を覚えていない場合は、口パクでもいいから・・・なんだそうです。

パレードにはテーマがつけられています。Portelaのテーマは　And the people singing in the streets, is like a prayer, a ritual(そして人々は路上で歌い上げる、祈りのように、儀式のように）テーマにそったシナリオ、歌、打楽器の演奏、踊り、衣装、フロートの素晴らしさ、全体の調和、などが審査対象です。

歌い上げてる感じはしますね。

11時をまわり、3番目の「Imperatriz」が登場です。昨年は8位、今年は10位でした。

テーマは beloved Jorge。この旗のおじさんがジョージさんでしょうか。

テーマはブラジルの民話などに絞られていた時期もあったそうです。カーニバル自体はそもそもカソリックのお祝い。それにブラジルに連れてこられたアフリカの黒人奴隷たちの儀式がまじったものが始まりと言われています。サンバという音楽もブラジルで生まれたアフリカ系黒人音楽。

近年のトレンドなのかもしれませんが、ルーツであるアフリカ、ブラジル、ブラジルの文化人や政治的な活動をした人、このあたりがどのチームのテーマにも色濃く見られます。

さて、今夜は朝までとわかっていたので、飲み物やおにぎりなどを持ち込みましたが、会場には売店もあります。

女性トイレはさすがに混雑してました。列で待っていると前の人からトイレットペーパーのロールが回ってきた。

真夏ですがそんなに暑くはなく、ずっと外にいるには軽く羽織るものがあってもいいかもという気候です。回りには軽く仮装？して踊り狂っている人たちも沢山。誰かまわず、手をとって躍らせる、強制躍らせおばさんもいました。

豪華なフロートの間、間を歩くダンサーたち。100名くらいがお揃いの衣装で行進していますが、これは子供達だけのグループ。

これは一体何を表しているんでしょうかね？Imperatrizのラストのフロートです。

一つのチームが終わると、オレンジ色のつなぎの清掃員たちが掃除をしてついていきます。

その中で、この男性、とにかく大人気！観客もやんやの歓声で迎えます。サンバの達人だそうなのですが、どこのチームにも属さず、毎年清掃をしている彼、先日ロンドン五輪の閉会式で、次の開催国ブラジルが紹介され、サンバチームが出てきたおり、舞台の中央でこのツナギで踊っているのを見ました！！

4番目のチーム「Mocidate」が登場することには深夜0時を回ってきました。座席ですが、野球観戦のスタンドのような席、真ん中へんに見える個室のようなところなど、種類があるようです。企業・グループなどの貸切スペースでは、サンバの衣装のお姉さんも登場してパーティーをしているところもありました。

Mocidadeのポルタ・バンディラ。1チームに3組の旗を持って踊る男女がいると書きましたが、たぶん、先頭の1組は審査の対象になっています。

Mocidateは昨年は10位、今年は9位にあがりました。

テーマは To you, Portinari, breaking through the canvas to reality(ポルティナリへ、キャンバスをぶち抜いてリアリティに迫ろう）・・・ポルティナリさんはどなたなんでしょうか。

案山子の大群。うまいチームは歩く人たちもちゃんとステップ踏んで、リズミカルに進んでいきますが、ただ歩いている風なチームもありました。

リオのカーニバルというと、こういう派手な衣装の綺麗なお姉さんが早いステップ踏みながら踊っているのを思いますが、大きなフロートの前に1人、そういうお姉さんがいます。地上を歩いているので、なかなかうまく写真が撮れませんでした。そういうお姉さん達は、チーム全体のステップに関係なく、サンバを激しく踊りまくる！のが役割だそうです。

だいたい真ん中あたりに、チーム名の車があり、車に乗っているか、あるいはその周りを歩いているのがシンガー、その前後は200人くらいはいる大パーカッション部隊が続きます。この打楽器チームも審査の対象です。

チームには多数の作曲家がいて、その年のテーマにあった新曲を作り、さらにコンテストがあって一曲が決まります。年末に各チームの曲を集めたCDが発売され、ヒット曲になればカーニバルの審査にも有利に。まわりの人がけっこう一緒に歌っているのは、こういうわけか・・と思いました。

1チームあたり1時間以上同じサンバを聞かされるので、耳についてしまいます。翌日リオの街で、あ！この曲は！と、たびたびカーニバルで聞いた曲を耳にしました。

1時半くらいになりました。5番目のチーム「Porto da Pedra」の登場です。

よく見えないかと思いますが、これは Porto da Pedraの一番先頭です。どのチームも一番先頭は、シルク・ドゥ・ソレイユを彷彿させるような見事なパフォーマンス合戦です。テーマを端的に表すパフォーマンスでもあるようで、重要な役目です。

テーマは From mother's milk to a balanced life (お母さんのおっぱいから、バランスのとれた人生まで）

お母さんのおっぱいから・・

バランスのとれた人生ですね（笑）

昨年11位だったPorto da Pedraは今年は12位で2部落ちしてしまいました。

リオのカーニバル写真ってこういうお姉さんの写真集ですよね（笑）こういう美貌とスタイルの持ち主はそんなにいません。

チーム名の車の写真がなかったのですが、この青と白の旗は「Beija-Flor」、昨年の優勝チームです。時間は2時半過ぎてきました。

さすが去年の優勝チーム。フロートの迫力、衣装やメイクの斬新さが違います。テーマは　Sao Luis, the enchanted poem of Maranhao (サオ・ルイス、マランハオの魅惑の詩）・・・固有名詞がわからなくて意味不明です。素晴らしいと思ったのですが今年は4位。

ですがこのチームのストーリーはわかりやすくて、まずはアフリカの大地。

そして奴隷船。カーニバルはアフリカから連れてこられた黒人奴隷が、復活祭前のこの季節にプランテーションの主人に許されて、数日間自由を許された、それに端を発しているそうです。リオやサルバドーレは奴隷が連れてこられた港。サルバドーレのあるバイア地方で生まれた黒人音楽がサンバのルーツで、サルバドーレでもこの時期大きなカーニバルが開催されます。

サンバのチーム、エスコーラは、リオのスラム　ファヴェーラにて誕生しました。1888年の奴隷解放前、リオの見栄っ張りのプランテーションの主人は奴隷を着飾らせて御者や従者にしたそうで、奴隷解放後、田舎の解放奴隷はリオに行けばああいう暮らしができるのではと期待して、リオに押し寄せたそうです。そういう解放奴隷達が集団で暮らしたのがファヴェーラ。1940年代、1970年代と経済危機が起こるたびに、黒人のみならず白人貧困層もここに住み着きファヴェーラは拡大。ブラジル最大のファヴェーラはリオのイパネマ海岸の南端から丘の上に広がる地域だが、リオではあちこちの丘の中腹に、お屋敷街が突然、積み重なる小さなブロックのようなカラフルな家々の連なり、ファヴェーラに変わるのが見受けられます。

ファヴェーラの盗電は有名だそうで、かってに電線引いて電気使っているそうです。私のリオの旅行記の一番最初の写真、海の向こうの丘にこうこうと光っているのはファヴェーラの家並みだと思うのですが（笑）

ファヴェーラに最初のエスコーラが誕生したのは1928年。配られたガイドブックを見ると、リオのカーニバルの最初の優勝は1932年「Mangueira」となっているので、現在のエスコーラがすべてファヴェーラの人々ではないとは思いますが、奴隷解放、ファヴェーラの歴史に根ざしたカーニバルであることは間違いありません。

とにかく、チームの人々は、今年のカーニバルが終わると、すぐに来年のカーニバルに取り掛かるとか。働いたお金はすべてカーニバルにかけている、そういう人たちでいっぱいだそうで、友達から「働いて貯金して年金のこと考えてる日本人と、根本的に価値観違うよ〜」と言われました。この熱狂ぶり、カーニバル期間中の死傷者の話がでますが、わからなくもない。人生捧げているのですから。

どのチームにもこの丸くてポワっとしたスカートの衣装でクルクルまわる女性ダンサーの一団がいるのですが、先に書いたバイア地方の衣装だとのこと。彼女たちはバイアーナと呼ばれて、この衣装とダンスも一つのお約束。

たぶんゲイ解放のフロート。

そしてパワー漲る現在のファヴェーラの人々のフロートではないかな・・っと。

Beija-Florが行き過ぎる頃には4時になってきました。そろそろ空席も出てきました。眠そうな人もいますが、まだまだ踊り狂う観客もたくさん。

いよいよ今日の最終チーム「Vila Isabel」の登場。このチーム、去年は5位でしたが、今年は堂々の3位に！私達のグループは、この最終チームのラストまで見ていると、帰りの混雑が怖いので、ガイドさんのアドバイスもありバスを呼んでもらい、帰り支度を始めたのですが、このチームの素晴らしさに釘付けになってしまいました。
これは先頭のパフォーマンスですが、黄色い草原の中からジャッカルや他の動物が顔を出し、その人たちが山車を降りて踊ったりとつかみもすごかったです。

テーマは You samba there and I'll samba here: the free song of Angola (あなたも私もサンバ！アンゴラの自由な音楽で）
今までもアフリカの動物のフロートはたくさん出てきましたが、Vila Isabelのは一番かっこよかったです。

歩く人々の動物の衣装もとてもデザインが素晴らしく、ここまでくると、最初の Renascerとかは、単なる奇抜な衣装でしたが、レベルの違いを実感します。しまうま、きりん・・とよくわかります。

Vila Isabelの衣装は調和がとれていて、動きもユニーク、色合いもシャープ。

そろそろ4時半過ぎ。空はまだ濃紺ですが、少しずつ夜明けを感じはじめる時間帯です。

名残惜しいのですが、最後まで見ないで会場をあとにすることにしました。

さて、今年の1位はTijuca、2位はSalgueiroで、どちらも翌日登場のチームでした。上位チームは次の土曜日にお披露目パレードを行いますが、気合が違うので、だれちゃうのだそうです。

リオの皆さんは、もちろん、テレビのライブ中継で、カーニバルを見ることができます。
私もデジカメでムービーで録画してみましたが、あとで見たら、とても臨場感があって良かったです。カーニバルはビデオ撮影がお薦め！
でもきっと今年のカーニバルDVDが存在する筈。探してゲットしなければ。

リオのカーニバル、一生に一度見る価値ありです！遠い上に、チケット取るのも難しく、治安も悪く、ハードル高いですが、素晴らしいパフォーマンスでした。

これにて、リオのカーニバルの旅行記の終了、そして、2/10から23まで東京→ドバイ→ブエノスアイレス→イグアス→リオ→ドバイ→東京と地球の裏側を訪れた一連の旅行記も終了です。
旅行代理店のI君、リオでお世話になったB君と息子さん、お目にかかりましたI夫妻、Ktaさん、ドバイで再会したJoe先生、そして一緒に旅してくれたS嬢とY嬢、ほんとうにありがとうございました。