2012/06/12 - 2012/06/13
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鯨の味噌汁さん
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トルコの旅、といえば、カッパドキアである。
どんな激安ツアーでも、ここだけは、むりくり、スケジュールを取ってある。
行くべきか。行かざるべきか。
旅に出ても迷っていた。
旅に出る前。
このたびめでたく所帯を持ったわが長女に、
「カッパドキアはどうしようかなぁ」
とゆったら、
「あー、あの珍古がいっぱい立ってるトコね」
そんな発言してるから2年半もオトコ日照りだったんだこの大バカモノ!
…てな話はおいといて。
ブルサのオトガルで、カイセリ行きの夜行バスの存在を知った。
では、行ってみようか、という話になる。
午後7時半。ブルサのバス・ターミナルを出発する。
アンカラを経由して、カイセリまで600キロの長旅だ。
カイセリまで行けば、カッパドキアは指呼の距離にある。
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 3.5
- 交通
- 4.0
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- タクシー 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
PR
-
ほぼ満席。東アジアからの乗客は、どうやらワシら二人だけらしい。
飲み物のサービスが終わると、車内は静かになる。
みんな座席前のディスプレイで、映画やテレビを見ているか、寝ているかだ。
車内のひそひそ声は、なんだか日本語に聞こえる。
で、ワシの前の乗客はひどいワキガ。
通路を挟んで隣の客は、イビキがうるさい。
ここは負けるわけにはイカン。
日本男児ここにあり。
撃ちして止まん。いざいざ。
というわけで、クツなどを脱いで香ばしい足臭を撒き散らす鯨の味噌汁(汚物系52歳)である。
いっぽう、わが配偶者はストンと音を立てたように睡眠に落ちた。
よりによってワシを選ぶくらいだから、何しろ細かいコトは気にしないヒトなのである。
やがて、日が暮れる。
なだらかな曲線を描いた丘を、ハイウェイがゆるやかなカーブで走り抜ける。
丘は、きれいな牧草地か、畑。
荒地や砂漠は見当たらない。
トルコは、南部を除いては、地味の豊かな土地らしい。
よって「飛んでイスタンブール」にある「光る砂漠でローラ」とゆうのは、あれはウソだナと納得する。
深夜2時、アンカラを過ぎ、小さなドライブインに到着。トルコ国旗みたいな三日月がキレイだ。
トイレ休憩をかねて、全員がゾロゾロと降りる。
が、配偶者は深い眠りの中にある。
やむなく彼女を席に放置し、ワシは下車する。
が、カラになったバスは、そのままソロソロと走り出す。
ぎょっとして乗り込もうとすると、ドライバーが手で静止して、隣のガソリンスタンドを指差す。
なるほど、バスの給油タイムか。
であれば、ここはドッキリなどを仕掛けなくてはいけない。国民の義務だ。
配偶者の席の下まで行き、
「おーい」
と声をかける。
すると、むっくり顔を上げる。
寝ぼけてるな、よしよし。
バスはとろとろ動いている。
そのバスを見送りながら、
「さよーならー」
と手を振ってみせる。
彼女はあわてて立ち上がろうとする。
が、バスはすぐ横のスタンドで止まるので、彼女の驚愕は5秒しか続かない。
「びっくりしたでしょ」
後で、ニタニタしながらゆうと、相変わらず眠そうな顔で
「なんとかなると思った」
残念だ。もはやこれくらいでは驚いてくれない。 -
翌朝6時過ぎ、カイセリの町が見えてきた。
終点で下車。
オトガル付属のレストランに入ってスープを注文したところで、
「し、し、し、しもうたぁぁぁぁっっっ」
座席の前のカゴに、ipadを入れっぱなしにしてきたことに気づく。
ヒマだったので、日記をメモしていたのネ。
おそらくは、寝ぼけていたんだと思う。
バスはとっとと走り去っていってるから、もう手元には戻ってこない。
高い忘れ物だ。
それでも「初動捜査が大事」という言葉を思い出し、スープは置いといて、乗ったバス会社のカウンターまで走る。
若いお兄ちゃんが席に座っていた。
「われ、かのバスに、アイパッドを忘れりっっっ」
ムタムタな英語で、チケットを示しながら訴える。
幸い、お兄ちゃんは英語を解した。
「オーケー。あわてるな」
で、いきなり片手に電話、片手に無線で、連絡を取り始める。
無線に指示を出し、メモをして、それから運行表らしきものを確認した。それから顔を上げて
「ウェイトヒア。テンミニッツ」
などという。
「リターン、アイパッド」
ともいう。
で、きっちり10分後。
お兄ちゃんは、長距離バスと反対側、路線バスの発着所に向かって歩き出す。
「ついてきな」
へいへい、とトコトコついていくと、路線バスがちょど到着したところであった。
乗客がばらばらと降り終えると、最後に丸顔のドライバーが、ワシのipaを持って降りてきた。
どうやら、路上のどこかで、すれ違いざまに受け渡しをしたらしい。
驚愕する。
こんなドジな客に、苦もなく、トルコのバス会社は対応してくれたのだ。
というわけで、ipadは無事に、ワシの手元に戻ってきたのである。
前の夜、このipadから、イスタンブールに戻るヒコーキも予約していた。
仕事のメールもチェックしていた。
「ユーアーゴッド!! スーパーオペレーション!!」
ありったけの賛辞を兄ちゃんにささげる鯨であった。
しかし「あんたは神様!」って、イスラムでは賛辞になるのかしら。 -
カイセリからカッパドキアまでは、およそ80キロ。
今回は国際免許を持って来てないので、ツアーがイヤなら、タクシーをチャーターするしかない。
とゆうわけで、タクシー乗り場でヒマそうにしているオヤジに声をかける。
「キャンニュスピークイングリッシュ?」
「リトル」
うんうん。ワシもベリーベリー・リトルだ。
「カッパドキアを観光して、カイセリ空港に16時につきたい」
「ふむふむ」
「150TL(6000円くらい)でどーだ。ガソリン代込み」
オヤジの表情が曇る。安すぎるらしい。
「じゃあ200TL」
まだシブってる。
と、代わりに、ザビエルハゲのオジーチャン・ドライバーが登場した。
ショーン・コネリーをいい感じで天日干しし、貧乏神が取り付いたような不景気顔。推定年齢72歳。
「その値段でやる」
みたいなことをいっているらしい。
「英語は」
「じぇんじぇん」
ダイジョーブかよ、とも思ったが。
地図を指差すことによって、行き先だけはコミュニケーションできる。
とゆうわけで、前金100TLを渡し、鯨家史上初「きょうだけワシらはお大尽・タクシー借り切りツアー」はスタートした。
が、このザビエルのタクシーは、推定20年物のオンボロ・バンである。
お約束で、冷房はなし。
最高速度は60キロ。坂道では、ぷすぷすぷすぷす、苦しげな音を立てる。
で、すべてのクルマに追い抜かれる。
荷物満載のトラックでさえ、このクルマを抜いていく。
つまりは、ほぼロバに乗っているのにひとしい。
よってもって、このタクシーを「ロシナンテ号」と命名する。 -
午前8時半、ロシナンテ号は、オズナックの地下都市にたどり着く。
ワシらが口開けの客らしく、先客ゼロである。
入場料8TLナリを支払い、ふたりでゴソゴソ穴の中に潜り込む。
細い通路が地下に向かってえんえんと続いているだけである。
うむうむ。
要するにタダの穴だな。
まわりは、フツーの「ひなびた郊外の住宅地」である。
しかも観光でオカネが落ちているらしく、どの家もキレイだ。
カッパドキアは世界的観光地だものナ。
ユーロもドルも元も円も、ここでバンバン消費されてるんだナ。
観光のマーケティングの世界チャンピオンだナ。 -
ああ。
地下都市の話であった。
実は、ワシはこうゆう狭いところが非常にニガテである。
ビビッてオシッコなんぞが近くなってしまう。
とはいえ、ここで立ちションなどしたら、何かに祟られるに違いない。
よって、ちょこっと先っぽを挿入しただけで、さっさと退散する。
フーゾクで前金払ったのに、フルサービスを受けずに出てきた気分である。
いやいや。お姉さんが悪いのではない。相性の問題です。 -
なんの話をしていたんだっけ。
あーそうだった、カッパドキアですカッパドキア。
それからギョレメ屋外博物館。ウチヒサル、オルタヒサル。キノコ岩、ラクダ岩。
ザビエルとロシナンテ号は、ヨタヨタと地元民に道を尋ねつつ、ワシらの指定するルートを走った。
しかも、しょっちゅう道を間違えてますがな。
今来た道、引き返してますがな。
土地勘ないのかよ。
だったら引き受けるなよお願いだから。
…といいたいところだが、号泣激安ロシナンテ号であるから、ガマンガマン。
駐車場にクルマを入れると、ザビエルは悲しげにふりむき、待ち合わせの時間を確認する。
「12:30」
とワシがメモに書くと、やはり悲しげにうなずく。
それからロシナンテ号をのろのろと日陰に移動し、主従ともぐったりしたまま、ラジオに聞き入っている。
ほうっておいたら、そのまま遺跡になりそうな風情である。 -
暑い。とりあえず日差しが強い。
写真を撮ろうにも日陰がないがな。
日陰を探してむりくり撮影する。
彼女の首にはタオル。
いいのか。それでいいのか、トルコまで来て首タオル。 -
ギョレメはツアー客が、ガケからこぼたれんばかりであった。
もちろん日本人だけではない。ここはアジアからもヨーロッパからも近い。
トルコ・中国・インド・中近東、あらゆる地域から観光客が参集している。 -
で、あちこちに岩窟教会がある。
なんだか昨年たずねたメテオラを思い出す。
キリスト教は、この地では「異教徒」だったんだろうな。
そういえば、鯨のふるさと、デイープ・サウス・エチゴの、どん詰まりの山奥の村に、マリア観音があった。
行き場を失った異教徒が逃げ込むのは、常に辺境なんだ、と納得する。 -
奇岩地帯の真ん中にあるウチヒサルでは、ムラの入口でタクシーを降り、ふたりでとぼとぼと、てっぺんまで登った。
坂の途中には、高そうなホテルが並んでいる。
頂上からはカッパドキアのレッドバレーが一望できた。
やっぱすげー。
これを見に、ここまで来たんだよナ。
気球ツアーの気分だけ味わえたナ。安上がりだ。 -
ロシナンテ号は、途中、2回給油した。
メーターを見ていると、1回目が20リッター、2回目も20リッター。
推定走行距離は300キロだから、リッターあたり7.5キロ。
ヒドイ燃費だ。どこかでこっそりお漏もらしてんじゃないのかロシナンテ。
そもそもこの国のガソリンは高いのだ。
リッター3.3TLもする。40L入れたら132TL。
ダイジョーブなのかザビエル。
モトは取れているのか。
赤字事業じゃないのか。
午後4時、カイセリ空港に到着。
「サンキュー」
と残りの100TLを差し出すと、ザビエルは悲しげに首を振り、
「ロシナンテ号のカイバ代を何とかしてくれ。せめてあと50」
ああやっぱり。
普段はカイセリ市内しかやってないから、ロシナンテ号のカイバ代を計算しそこねたんだろう。
カイセリ-カッパドキアをタクシーで行くと120TLと書いてあったっけ。
それを往復で、しかも一日拘束で200TLは、やはり適正価格ではないのだ。
ロシナンテ号もこころなしか、ガッカリしている。
配偶者がサイフから50TL札を出して渡した。
ザビエルはホッとした顔になって、ようやく少し笑い、それから握手して分かれた。
ちなみに彼の本名はハッサン氏という。
ハッサンおじさん、、一日お疲れさんでした。
でも、次からはロシナンテ号でカッパドキアへの遠征はせん方がよいと思うよ。
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この旅行記へのコメント (5)
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- mistralさん 2013/07/23 18:38:15
- 楽しすぎる旅行記!!!
- 鯨の味噌汁さん
こんにちは。
mistralです。
旅行記にちょっとお邪魔しようと立ち寄りましたが
またまたはまってしまいました。
写真よりも文章が長〜くて、そのコメントが楽しい
んですものね。
置き忘れた i pad が戻ってくるなんて
トルコってすばらしい国なんですね。
トシナンテさんとのかけあいも最高でした。
mistral
- 鯨の味噌汁さん からの返信 2013/07/24 12:38:26
- RE: 楽しすぎる旅行記!!!
- mistralさん、
このハッサンおじーちゃんとロシナンテ号は、人馬ともくたびれて、すすけて、しなびて、いい味を出していたんです。
かげろうがユラユラ立つカッバドキアで、そのまま蒸発しちゃうんじゃないかとゆうくらいの影の薄さでした。
でも、人となりはとても良くて。
売店でパンを三つ買って、ワシらに分けてくれたりもしたんです。
味のある、ええ感じの方でした。
> 写真よりも文章が長〜くて、そのコメントが楽しい
> んですものね。
これで多い方なんですからわれながら驚きます。
初期のブログには「写真1枚」なんてのもありますぞ。(いばることではない)
> 置き忘れた i pad が戻ってくるなんて
> トルコってすばらしい国なんですね。
ホントにええ国でした。
いつかまた行きたいなあ、と思いますの。
- mistralさん からの返信 2013/07/24 19:17:13
- RE: 楽しすぎる旅行記!!!
- 鯨の味噌汁さん
お返事をいただき
初期の頃の旅行記を拝見いたしました(笑)
確かに写真一枚、二枚などの旅行記がありました!
写真が少なくても文章力で見せられるということが
良くわかりました。
ストーンヘンジと三内丸山遺跡との関連についての
考察・・・確かにそうね!と納得でした。
mistral
-
- moi_moi46さん 2012/11/11 00:36:07
- はじめまして!
- 鯨の味噌汁さんへ
こんばんは!初めまして。
トルコ旅行に興味があって、検索していたらここにたどり着きました。
めっちゃおもしろい旅行記ですね〜。
一人でコソコソ読んでいるのですが、笑いが止まりません!
ザビエルおじさんとロシナンテ号のその後が気になります。
それでは、続きも笑わせて頂きますね〜(^^)/
moi_moi46より
- 鯨の味噌汁さん からの返信 2012/11/12 11:17:05
- RE: はじめまして!
- moi_moi46さん、
こんにちは、こちらこそ初めまして。
投票もいただき恐縮でございます。
> 一人でコソコソ読んでいるのですが、笑いが止まりません!
おお!ありがとうございます。
それは最高のホメ言葉でございます。
ガハハと笑っていただければうれしゅうございます。
とぼとぼと地面を歩き倒す旅ですので、鯨も歩けば棒に当たる、
とゆうたぐいの仕上がりとなっております。
ほぼ年一回しか更新しませんが、お暇な折にまたおたずねいただければと。
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