2012/06/15 - 2012/06/15
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鯨の味噌汁さん
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イスタンブールに2泊し、あすは帰国、という金曜日。
長距離バスで、トルコ西端の町・エディルネを目指した。
10キロ西はブルガリア、10キロ南はギリシャという、まさに国境の町。
それだけ国境が近いと、この町の歴史は、もはやDNAの暗号のように複雑だ。
もともとトラキア人の町として出発し。
ローマ帝のハドリアヌスが城壁を築いたときは「ハドリアノポリス」と呼ばれ。
ブルガリアに分捕られ。オスマン帝国の領土となったときは、いっときその首都となっている。
が、近代になると、ロシアが占領したり、ブルガリアが侵攻したり。
戦争があるたびに、軍隊の通り道になり、戦場になった、苦労人の町。
現在のトルコ領になったのは、第一次世界大戦後だ。
そのときに、ブルガリア人たちは国境の向こうへ去ったのだという。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 交通
- 5.0
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- 高速・路線バス 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
PR
-
出発前のホテルで、配偶者は鏡の前に陣取り、スカーフの巻き方の研究に余念がない。
なぜかといえば、モスク入場のさいには、女性は髪を隠さなくてはいけないのである。
が、なかなかうまくいかない。
失敗した雪だるま、という風情である。
もう諦めなさい。 -
イスタンブールのオトガルから2時間半。
豊かな麦畑の丘をいくつか越えると、エディルネ郊外のオトガルに到着する。
蛇足ながら。
イスタンブールへの帰りのキップは、到着時に購入していたほうがいい。
複数のバス会社から30分に一本程度出ているが、定員制なので直前だと満席のケースが。
われわれはそれで帰りに2時間、ここのオトガルで時間を潰すはめになりました。 -
ここから、町へ向かうドルムシュ(小型バス)に乗り換える。
ドルムシュは例によって、あちこち寄り道しながらお客を拾う。
高校らしい建物の前で、女子高生がドドドっと乗ってくる。
ぎょぎょ。ぎょぎょぎょぎょーーー。
なんとこれがまた、全員、そろいもそろって美人である。
イスラムの象徴であるスカーフはしておらず、髪・顔・手足・背中、露出次ぐ露出だ。
ここはホントにトルコなのか。
池袋の東欧パブではないのか。
フルーツ注文しなくていいのか。
たちまち車中は満員となり、冷房ナシなので、うら若きトラキア美女の熱気で、むちむち・むんむん・むらむらである。(⇒むらむらはワシだけね)
「…美人バスだ」
鯨は「美少女の周辺の空気を吸引すると、健康によろしい」(山口瞳先生の説)と固く信じる汚物系チューネンなので、鼻の穴を今世紀最大級まで広げ、深呼吸する。
で、配偶者はそれを不審げにチラ見するのであった。
ダメダメ。キミがやっても効果ないのよ。
どうやら民族のスープは、撹拌すればするほど、美女たちを製造する仕組みになっているらしい。
が、幸福は長く続かず、市の中心部にバスはとっとと到着してしまう。 -
午後の日差しは相変わらず強い。アジアジ、とたちまちめげそうになるが。
街並は美しく、なかなかオシャレだ。
イスタンブールとは、あきらかに空気が違う。
イスラムの正装の女性も、ここでは少数派らしい。
「ヨーロッパだね」
通りを歩きながら配偶者がいう。 -
ツーリスト・インフォメーションで、地図をもらった。
町の中心には、セリミエ・ジャーミーという大きなモスクがある。
酷暑の中、坂道を上がってたどり着き、モスクの中でしばし休息。 -
若いイスラムの聖職者が、壇上で穏やかに、コーランを読み上げる。
われわれはそれを、絨毯の上で静かに聞く。 -
おー涼しい。外に比べたら、ここは極楽。
湿度は低いから、日陰や建物の中はひんやりして快適なのだ。
しばらくの間、のんびりする。
いっそお昼寝したいくらいだ。 -
しかしホントに昼寝するわけにはいかず、再び炎天下の町へ出る。
地図を見ると、モスクから500メートルほど東に、教会のマークがある。
この場所にあるのだから、東方教会であろう。
「行ってみようか」
「うん」 -
路地に入り込み、迷いながら歩いていると、お孫さんを連れたおばあちゃんと出あった。
スカーフに長袖であるから、当然イスラムの方であろう。
が、ワシが地図上の教会を示すと、老眼鏡を外し、地図を覗き込み、頷き、
「ついておいで」
という。
てこてこ1分ほど歩き、教会の前まで案内してもらった。
ありがとう、おばあちゃん。 -
しかし、常時公開をしているわけではないらしく、ぐるりと回ったが、門は閉ざされている。
ううん。残念。 -
すると、バイクにまたがった、50代と思しきオヤジが通りかかった。
キュッとパイクを止め、ワシらに何事かを言った。
トルコ語だ。同時に、興味深そうにワシらを観察する。
で、異邦人が迷いつつこの教会にたどり着いたと察したらしく。
バイクを降り、近所のあちこちの家を聞きまわってくれる。
どうやら司祭は外出しているらしい。
「待て。ここで待て」
と手まねでオヤジはいう。
やがて、近所に出かけていたとおぼしき司祭が戻ってきた。
門が開かれ、われわれは教会内へ入った。 -
イチオシ
中は、予想通り、イコンで埋まっていた。
マリアやイエス、そして使徒たちの絵が、眠るように並んでいた。 -
鯨には、その価値はわからない。
だが。
ルネサンスの栄光も届かなかった辺境の地で、ひっそりと信仰を守り続けた人々のいじらしさが、イコンから伝わってくる。 -
小さく手を合わせると、司祭はわれわれを二階の展示室に案内してくれた。
そこには、まさしくブルガリアの風俗である民族衣装が、控えめに展示されていた。
「ブルガリア ?」
と訊ねると、司祭はにっこりと、小さく頷いた。
なるほどブルガリア正教か。
確かにここは、ヨーロッパの東の端であるらしい。
名前も知らない、小さな教会をたずね当て、われわれの旅は終わったのである。
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この旅行記へのコメント (2)
-
- captainfutureさん 2012/07/15 11:40:46
- 「チチもケツもヘソも喜ばしいが、食い合わせが悪そうだ。」 ← 確かに!(笑)
- 今回も鯨節、前回からますますパワーアップされて全開〜!
出だしからまたまた鯨節マジックにハマってしまい、最後まで読み入ってしまいました。
>どうやら、土からイノチを貰う農業という文明は、アジアの両はじで同じような家を作り出したらしい。
>文明の一滴が水面に落ち、そこから小さなさざ波が拡がり同心円を描き、同じような外見の家を日本とトルコの地で作ったのかな。
ここのワタシの好きな文章です。頭に世界地図が浮かんできました。
Ipad、無事に戻ってきたとは。
驚きました。見事な連係プレーというか、民度の高さを感じました。
>高校らしい建物の前で、女子高生がドドドっと乗ってくる。
おお、今度こそ昨年の新ロードス島攻防記でのリベンジかと思いきや。
今回もそれ以上の発展は・・・。残念でした(爆)
>行き場を失った異教徒が逃げ込むのは、常に辺境なんだ、と納得する。
なるほど〜。
>「兄弟殺しの法」、思わず調べてしまいました。
そんな恐ろしい法があったとは。絶句。思わず調べてしまいました。
>とワシがメモに書くと、やはり悲しげにうなずく。
“悲しげ”というのがいいですね。ロシナンテ号、ホントにロバを彷彿とさせられてきました。
>名前も知らない、小さな教会をたずね当て、われわれの旅は終わったのである。
地図で見つけて、ふっと思い立って寄ってみることにした地元の小さな教会。
こういう出会いがあるとまた出かけたくなるんですよね。
- 鯨の味噌汁さん からの返信 2012/07/15 15:33:16
- RE: 「チチもケツもヘソも喜ばしいが、食い合わせが悪そうだ。」 ← 確かに!(笑)
- captainfutureさん、
どーもどーも、鯨でございます。
いつもコメントありがとうございます!
実は今回のトルコで、彼女のほうが
「イスラムはよい!」
と感激し、「次はぜひぜひイランへ!」なんてことを言い出しました。
だけでなく、イランの「地球の歩き方」なぞを買い込み、入れ込んでおります。どうどう。
で、captainfutureさんのイラン旅行の詳細を、ふたりでチェックしております。
個人旅行、夫婦ふたりで、果たして実現できるのか?
アルコールゼロで、そもそも耐えられるのか?
もう少し研究したいと思います。でもいいですよねー、イスラム世界・・・
今回の旅はあんまり観光地を欲張らずに設定したので、いつもよりはのんびりと町を歩けました。強行軍はカッパドキアだけ。
> Ipad、無事に戻ってきたとは。
> 驚きました。見事な連係プレーというか、民度の高さを感じました。
民度の高さ…そうですね、まされにソレ。
混沌ではなく、危機管理の対処方法が機能している感じでした。
なんだか、イギリスにいるみたいでした。
> >「兄弟殺しの法」、思わず調べてしまいました。
> そんな恐ろしい法があったとは。絶句。思わず調べてしまいました。
トプカプで見たかったのがその場所でしたの。
たまたまガイドさんが説明していたのでわかりました。
あとで確認したら「宮殿の北のはずれ」とありましたから、やはりそれだったんですね。
徳川だったら、譜代の養子にバンバン出しちゃうところを、即位の朝にみんな殺してしまうんですね。
なんだかライオンの子殺しを思わせます。
> “悲しげ”というのがいいですね。ロシナンテ号、ホントにロバを彷彿とさせられてきました。
うんうん。途中でホントにお尻を押すことになるかと。
でもザビエルはいいオジサンで、ワシたちにパンをくれました。
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