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イスタンブールに2泊し、あすは帰国、という金曜日。<br />長距離バスで、トルコ西端の町・エディルネを目指した。<br />10キロ西はブルガリア、10キロ南はギリシャという、まさに国境の町。<br /><br />それだけ国境が近いと、この町の歴史は、もはやDNAの暗号のように複雑だ。<br /><br />もともとトラキア人の町として出発し。<br />ローマ帝のハドリアヌスが城壁を築いたときは「ハドリアノポリス」と呼ばれ。<br />ブルガリアに分捕られ。オスマン帝国の領土となったときは、いっときその首都となっている。<br /><br />が、近代になると、ロシアが占領したり、ブルガリアが侵攻したり。<br />戦争があるたびに、軍隊の通り道になり、戦場になった、苦労人の町。<br /><br />現在のトルコ領になったのは、第一次世界大戦後だ。<br />そのときに、ブルガリア人たちは国境の向こうへ去ったのだという。<br />

トルコ・旅の終わり、ヨーロッパの東の果てにたどりつく

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2012/06/15 - 2012/06/15

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旅行記グループ トルコふたり旅

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14

鯨の味噌汁

鯨の味噌汁さん

イスタンブールに2泊し、あすは帰国、という金曜日。
長距離バスで、トルコ西端の町・エディルネを目指した。
10キロ西はブルガリア、10キロ南はギリシャという、まさに国境の町。

それだけ国境が近いと、この町の歴史は、もはやDNAの暗号のように複雑だ。

もともとトラキア人の町として出発し。
ローマ帝のハドリアヌスが城壁を築いたときは「ハドリアノポリス」と呼ばれ。
ブルガリアに分捕られ。オスマン帝国の領土となったときは、いっときその首都となっている。

が、近代になると、ロシアが占領したり、ブルガリアが侵攻したり。
戦争があるたびに、軍隊の通り道になり、戦場になった、苦労人の町。

現在のトルコ領になったのは、第一次世界大戦後だ。
そのときに、ブルガリア人たちは国境の向こうへ去ったのだという。

旅行の満足度
5.0
観光
5.0
交通
5.0
同行者
カップル・夫婦(シニア)
交通手段
高速・路線バス 徒歩
旅行の手配内容
個別手配

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  • 出発前のホテルで、配偶者は鏡の前に陣取り、スカーフの巻き方の研究に余念がない。<br />なぜかといえば、モスク入場のさいには、女性は髪を隠さなくてはいけないのである。<br /><br />が、なかなかうまくいかない。<br /><br />失敗した雪だるま、という風情である。<br /><br />もう諦めなさい。

    出発前のホテルで、配偶者は鏡の前に陣取り、スカーフの巻き方の研究に余念がない。
    なぜかといえば、モスク入場のさいには、女性は髪を隠さなくてはいけないのである。

    が、なかなかうまくいかない。

    失敗した雪だるま、という風情である。

    もう諦めなさい。

  • イスタンブールのオトガルから2時間半。<br />豊かな麦畑の丘をいくつか越えると、エディルネ郊外のオトガルに到着する。<br /><br />蛇足ながら。<br />イスタンブールへの帰りのキップは、到着時に購入していたほうがいい。<br />複数のバス会社から30分に一本程度出ているが、定員制なので直前だと満席のケースが。<br />われわれはそれで帰りに2時間、ここのオトガルで時間を潰すはめになりました。<br />

    イスタンブールのオトガルから2時間半。
    豊かな麦畑の丘をいくつか越えると、エディルネ郊外のオトガルに到着する。

    蛇足ながら。
    イスタンブールへの帰りのキップは、到着時に購入していたほうがいい。
    複数のバス会社から30分に一本程度出ているが、定員制なので直前だと満席のケースが。
    われわれはそれで帰りに2時間、ここのオトガルで時間を潰すはめになりました。

  • ここから、町へ向かうドルムシュ(小型バス)に乗り換える。<br />ドルムシュは例によって、あちこち寄り道しながらお客を拾う。<br />高校らしい建物の前で、女子高生がドドドっと乗ってくる。<br /><br />ぎょぎょ。ぎょぎょぎょぎょーーー。<br />なんとこれがまた、全員、そろいもそろって美人である。<br />イスラムの象徴であるスカーフはしておらず、髪・顔・手足・背中、露出次ぐ露出だ。<br />ここはホントにトルコなのか。<br /><br />池袋の東欧パブではないのか。<br />フルーツ注文しなくていいのか。<br /><br />たちまち車中は満員となり、冷房ナシなので、うら若きトラキア美女の熱気で、むちむち・むんむん・むらむらである。(⇒むらむらはワシだけね)<br /><br />「…美人バスだ」<br /><br />鯨は「美少女の周辺の空気を吸引すると、健康によろしい」(山口瞳先生の説)と固く信じる汚物系チューネンなので、鼻の穴を今世紀最大級まで広げ、深呼吸する。<br /><br />で、配偶者はそれを不審げにチラ見するのであった。<br />ダメダメ。キミがやっても効果ないのよ。<br /><br />どうやら民族のスープは、撹拌すればするほど、美女たちを製造する仕組みになっているらしい。<br /><br />が、幸福は長く続かず、市の中心部にバスはとっとと到着してしまう。<br />

    ここから、町へ向かうドルムシュ(小型バス)に乗り換える。
    ドルムシュは例によって、あちこち寄り道しながらお客を拾う。
    高校らしい建物の前で、女子高生がドドドっと乗ってくる。

    ぎょぎょ。ぎょぎょぎょぎょーーー。
    なんとこれがまた、全員、そろいもそろって美人である。
    イスラムの象徴であるスカーフはしておらず、髪・顔・手足・背中、露出次ぐ露出だ。
    ここはホントにトルコなのか。

    池袋の東欧パブではないのか。
    フルーツ注文しなくていいのか。

    たちまち車中は満員となり、冷房ナシなので、うら若きトラキア美女の熱気で、むちむち・むんむん・むらむらである。(⇒むらむらはワシだけね)

    「…美人バスだ」

    鯨は「美少女の周辺の空気を吸引すると、健康によろしい」(山口瞳先生の説)と固く信じる汚物系チューネンなので、鼻の穴を今世紀最大級まで広げ、深呼吸する。

    で、配偶者はそれを不審げにチラ見するのであった。
    ダメダメ。キミがやっても効果ないのよ。

    どうやら民族のスープは、撹拌すればするほど、美女たちを製造する仕組みになっているらしい。

    が、幸福は長く続かず、市の中心部にバスはとっとと到着してしまう。

  • 午後の日差しは相変わらず強い。アジアジ、とたちまちめげそうになるが。<br />街並は美しく、なかなかオシャレだ。<br />イスタンブールとは、あきらかに空気が違う。<br />イスラムの正装の女性も、ここでは少数派らしい。<br /><br />「ヨーロッパだね」<br /><br />通りを歩きながら配偶者がいう。<br />

    午後の日差しは相変わらず強い。アジアジ、とたちまちめげそうになるが。
    街並は美しく、なかなかオシャレだ。
    イスタンブールとは、あきらかに空気が違う。
    イスラムの正装の女性も、ここでは少数派らしい。

    「ヨーロッパだね」

    通りを歩きながら配偶者がいう。

  • ツーリスト・インフォメーションで、地図をもらった。<br />町の中心には、セリミエ・ジャーミーという大きなモスクがある。<br />酷暑の中、坂道を上がってたどり着き、モスクの中でしばし休息。<br />

    ツーリスト・インフォメーションで、地図をもらった。
    町の中心には、セリミエ・ジャーミーという大きなモスクがある。
    酷暑の中、坂道を上がってたどり着き、モスクの中でしばし休息。

  • 若いイスラムの聖職者が、壇上で穏やかに、コーランを読み上げる。<br />われわれはそれを、絨毯の上で静かに聞く。<br />

    若いイスラムの聖職者が、壇上で穏やかに、コーランを読み上げる。
    われわれはそれを、絨毯の上で静かに聞く。

  • おー涼しい。外に比べたら、ここは極楽。<br />湿度は低いから、日陰や建物の中はひんやりして快適なのだ。<br /><br />しばらくの間、のんびりする。<br />いっそお昼寝したいくらいだ。

    おー涼しい。外に比べたら、ここは極楽。
    湿度は低いから、日陰や建物の中はひんやりして快適なのだ。

    しばらくの間、のんびりする。
    いっそお昼寝したいくらいだ。

  • しかしホントに昼寝するわけにはいかず、再び炎天下の町へ出る。<br />地図を見ると、モスクから500メートルほど東に、教会のマークがある。<br />この場所にあるのだから、東方教会であろう。<br /><br />「行ってみようか」<br /><br />「うん」

    しかしホントに昼寝するわけにはいかず、再び炎天下の町へ出る。
    地図を見ると、モスクから500メートルほど東に、教会のマークがある。
    この場所にあるのだから、東方教会であろう。

    「行ってみようか」

    「うん」

  • 路地に入り込み、迷いながら歩いていると、お孫さんを連れたおばあちゃんと出あった。<br />スカーフに長袖であるから、当然イスラムの方であろう。<br />が、ワシが地図上の教会を示すと、老眼鏡を外し、地図を覗き込み、頷き、<br /><br />「ついておいで」<br /><br />という。<br />てこてこ1分ほど歩き、教会の前まで案内してもらった。<br /><br />ありがとう、おばあちゃん。<br />

    路地に入り込み、迷いながら歩いていると、お孫さんを連れたおばあちゃんと出あった。
    スカーフに長袖であるから、当然イスラムの方であろう。
    が、ワシが地図上の教会を示すと、老眼鏡を外し、地図を覗き込み、頷き、

    「ついておいで」

    という。
    てこてこ1分ほど歩き、教会の前まで案内してもらった。

    ありがとう、おばあちゃん。

  • しかし、常時公開をしているわけではないらしく、ぐるりと回ったが、門は閉ざされている。<br />ううん。残念。

    しかし、常時公開をしているわけではないらしく、ぐるりと回ったが、門は閉ざされている。
    ううん。残念。

  • すると、バイクにまたがった、50代と思しきオヤジが通りかかった。<br />キュッとパイクを止め、ワシらに何事かを言った。<br /><br />トルコ語だ。同時に、興味深そうにワシらを観察する。<br /><br />で、異邦人が迷いつつこの教会にたどり着いたと察したらしく。<br />バイクを降り、近所のあちこちの家を聞きまわってくれる。<br /><br />どうやら司祭は外出しているらしい。<br /><br />「待て。ここで待て」<br /><br />と手まねでオヤジはいう。<br /><br />やがて、近所に出かけていたとおぼしき司祭が戻ってきた。<br />門が開かれ、われわれは教会内へ入った。<br />

    すると、バイクにまたがった、50代と思しきオヤジが通りかかった。
    キュッとパイクを止め、ワシらに何事かを言った。

    トルコ語だ。同時に、興味深そうにワシらを観察する。

    で、異邦人が迷いつつこの教会にたどり着いたと察したらしく。
    バイクを降り、近所のあちこちの家を聞きまわってくれる。

    どうやら司祭は外出しているらしい。

    「待て。ここで待て」

    と手まねでオヤジはいう。

    やがて、近所に出かけていたとおぼしき司祭が戻ってきた。
    門が開かれ、われわれは教会内へ入った。

  • 中は、予想通り、イコンで埋まっていた。<br />マリアやイエス、そして使徒たちの絵が、眠るように並んでいた。

    イチオシ

    中は、予想通り、イコンで埋まっていた。
    マリアやイエス、そして使徒たちの絵が、眠るように並んでいた。

  • 鯨には、その価値はわからない。<br />だが。<br />ルネサンスの栄光も届かなかった辺境の地で、ひっそりと信仰を守り続けた人々のいじらしさが、イコンから伝わってくる。<br />

    鯨には、その価値はわからない。
    だが。
    ルネサンスの栄光も届かなかった辺境の地で、ひっそりと信仰を守り続けた人々のいじらしさが、イコンから伝わってくる。

  • 小さく手を合わせると、司祭はわれわれを二階の展示室に案内してくれた。<br />そこには、まさしくブルガリアの風俗である民族衣装が、控えめに展示されていた。<br /><br />「ブルガリア ?」<br /><br />と訊ねると、司祭はにっこりと、小さく頷いた。<br />なるほどブルガリア正教か。<br /><br />確かにここは、ヨーロッパの東の端であるらしい。<br /><br />名前も知らない、小さな教会をたずね当て、われわれの旅は終わったのである。

    小さく手を合わせると、司祭はわれわれを二階の展示室に案内してくれた。
    そこには、まさしくブルガリアの風俗である民族衣装が、控えめに展示されていた。

    「ブルガリア ?」

    と訊ねると、司祭はにっこりと、小さく頷いた。
    なるほどブルガリア正教か。

    確かにここは、ヨーロッパの東の端であるらしい。

    名前も知らない、小さな教会をたずね当て、われわれの旅は終わったのである。

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この旅行記へのコメント (2)

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  • captainfutureさん 2012/07/15 11:40:46
    「チチもケツもヘソも喜ばしいが、食い合わせが悪そうだ。」 ← 確かに!(笑)
    今回も鯨節、前回からますますパワーアップされて全開〜!
    出だしからまたまた鯨節マジックにハマってしまい、最後まで読み入ってしまいました。

    >どうやら、土からイノチを貰う農業という文明は、アジアの両はじで同じような家を作り出したらしい。
    >文明の一滴が水面に落ち、そこから小さなさざ波が拡がり同心円を描き、同じような外見の家を日本とトルコの地で作ったのかな。
    ここのワタシの好きな文章です。頭に世界地図が浮かんできました。

    Ipad、無事に戻ってきたとは。
    驚きました。見事な連係プレーというか、民度の高さを感じました。

    >高校らしい建物の前で、女子高生がドドドっと乗ってくる。
    おお、今度こそ昨年の新ロードス島攻防記でのリベンジかと思いきや。
    今回もそれ以上の発展は・・・。残念でした(爆)

    >行き場を失った異教徒が逃げ込むのは、常に辺境なんだ、と納得する。
    なるほど〜。

    >「兄弟殺しの法」、思わず調べてしまいました。
    そんな恐ろしい法があったとは。絶句。思わず調べてしまいました。

    >とワシがメモに書くと、やはり悲しげにうなずく。
    “悲しげ”というのがいいですね。ロシナンテ号、ホントにロバを彷彿とさせられてきました。

    >名前も知らない、小さな教会をたずね当て、われわれの旅は終わったのである。
    地図で見つけて、ふっと思い立って寄ってみることにした地元の小さな教会。
    こういう出会いがあるとまた出かけたくなるんですよね。

    鯨の味噌汁

    鯨の味噌汁さん からの返信 2012/07/15 15:33:16
    RE: 「チチもケツもヘソも喜ばしいが、食い合わせが悪そうだ。」 ← 確かに!(笑)
    captainfutureさん、

    どーもどーも、鯨でございます。
    いつもコメントありがとうございます!

    実は今回のトルコで、彼女のほうが

    「イスラムはよい!」

    と感激し、「次はぜひぜひイランへ!」なんてことを言い出しました。
    だけでなく、イランの「地球の歩き方」なぞを買い込み、入れ込んでおります。どうどう。

    で、captainfutureさんのイラン旅行の詳細を、ふたりでチェックしております。
    個人旅行、夫婦ふたりで、果たして実現できるのか?
    アルコールゼロで、そもそも耐えられるのか?

    もう少し研究したいと思います。でもいいですよねー、イスラム世界・・・

    今回の旅はあんまり観光地を欲張らずに設定したので、いつもよりはのんびりと町を歩けました。強行軍はカッパドキアだけ。
    > Ipad、無事に戻ってきたとは。
    > 驚きました。見事な連係プレーというか、民度の高さを感じました。

    民度の高さ…そうですね、まされにソレ。
    混沌ではなく、危機管理の対処方法が機能している感じでした。
    なんだか、イギリスにいるみたいでした。

    > >「兄弟殺しの法」、思わず調べてしまいました。
    > そんな恐ろしい法があったとは。絶句。思わず調べてしまいました。

    トプカプで見たかったのがその場所でしたの。
    たまたまガイドさんが説明していたのでわかりました。
    あとで確認したら「宮殿の北のはずれ」とありましたから、やはりそれだったんですね。
    徳川だったら、譜代の養子にバンバン出しちゃうところを、即位の朝にみんな殺してしまうんですね。

    なんだかライオンの子殺しを思わせます。

    > “悲しげ”というのがいいですね。ロシナンテ号、ホントにロバを彷彿とさせられてきました。

    うんうん。途中でホントにお尻を押すことになるかと。
    でもザビエルはいいオジサンで、ワシたちにパンをくれました。

鯨の味噌汁さんのトラベラーページ

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