2011/10/21 - 2011/10/27
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おっちゃんさん
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いよいよ最終日になってしまった。
TVを観ながら、帰り支度を整えていると、ニュース映像でバンコク中心部の冠水の模様が映し出されていた。
冠水エリアが飛び地のように点々と広がりつつあることを告げている。
4日前に歩いたチャトゥチャック公園のあたりも冠水がはじまっていた。
そのあとで、日本企業は駐在員家族の一時帰国を急がせている。
そんなニュースも流れた。
事態は急速に悪くなっている。
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- 鉄道 船 タクシー 徒歩
-
そういえば、昨日ラーンガイトーン・プラトゥーナムを出て、伊勢丹へと戻ったとき、駐在員家族と思われる女性たちの立ち話の話題がまさに一時帰国のことだった。
うちはまだよ、とか、うちは来週帰国する…そんな会話が聞こえてくる。
相方が「HARNN(ハーン)」で買物をしたいというので、立ち寄ったサイアム・パラゴンでも、同じような光景を目にした。
МBKセンターでも、一時帰国のお土産を買っていた(ように見える)家族連れを何組も見かけた。
我々もお土産の残りを東急百貨店で買い足し、МBK5階のフードコート、「フィフス」で夕食をとった。
そこでも避難してきたと思しき日本人家族が食事をしていた。 -
先日立ち寄った上階のフードコートと違って、後払い方式なので普通のレストランとなんら変わらない。
それぞれのブースに行って、注文し、出来上がりを自分で運ぶというスタイルはフードコートそのものだが、内装やレストラン・ブースに多少高級感があり、そのぶん値段も高い。
ラーンガイトーン・プラトゥーナムを出て、まだ3時間くらいしか経ってないせいで、あまりお腹は空いていない。
軽めにしようということで、ベトナム風の海鮮焼きそばミー・ハイ・サンと生春巻きを注文した。
ところがこれがまるで軽くない。
これまでパッタイを食べてきた印象からすると、ミー・ハイ・サンは軽く2人前はあり、生春巻きもずしんとくるほど中身が詰まっていた。
この時点で、もう満腹感を感じ、いっこうに箸がすすまない。
相方もそんなふうで、ビールをすすっては肩で息をしている。
そんな感じだった。 -
荷物をすべてケースに詰め終わり、ベランダに出た。
チャオプラヤ河もこれで見おさめだった。
我々の世代は、この河を「メナム川」と習った。
タイで河をメナムというから、確かにこのネーミングは奇妙だったのかもしれない。
教科書ではいつからチャオプラヤに変わったのだろうか。
陽光を受けて、つややかに光る河に別れを告げて、我々はホテルのフロントへと降りた。
フロントに荷物を預け、あと数時間をこの街で過ごすために外へ出た。 -
サイアムへと出ると、サイアム・パラゴンのイベント・スペースでK‐POPのアイドルと思しきグループがライブをしていた。
ホームの上からその模様をしばし眺めた。
飛び交うこの黄色い声だけは万国 (バンコク)共通ということだろう。 -
我々はサイアム・スクエアのほうへ降り、特にどこへ行くかを決めずに歩きだした。
だが、ここまできたら、ソイ5に移転したという「マンゴー・タンゴ」に寄るしかない。
「マンゴー・タンゴ」は、ノボテル・ホテルに隣接する場所へと移転していた。
写真付きのメニューで、指さしてオーダーし、席に着く。
・マンゴー+マンゴープリン+マンゴーアイスのセットメニュー「マンゴー・タンゴ」
・マンゴーに生クリームのかかったもの(名前を失念「マンゴー・パフェ」?)
・マンゴーにタピオカミルクのかかった「マンゴー・アロハ」
以上を注文。
実は、これまで劇的なほど美味しいマンゴーと出会ったことがなかった。
マンゴーがもっとも甘くなる乾期の終わりに近い5月、プーケットで嫌というほど食べたが、感動するほどの美味しさではなかった。
だから、期待もあったけれど、噂通りのものか、試してやろうという気分のほうが強かった。
最初に運ばれてきたパフェのマンゴーをひとすくい食べて、その甘さに驚いた。
上にのった生クリームが邪魔に感じられるほど甘い。 -
相方のマンゴー・タンゴを少し分けてもらい、フレッシュマンゴーを食べてみた。
なるほど、これがマンゴーの美味しさが一番よくわかる。
甘さの奥にある酸味が、むしろ爽やかですらある。
マンゴープリン、マンゴーアイスも、マンゴーをぎゅっと絞った果汁をそのままスイーツにしていて、それぞれ美味しい。
フルーツとスイーツ、マンゴーのすべてを一度に堪能したいなら、やはりマンゴー・タンゴだろう。 -
フレッシュマンゴーにタピオカミルクのかかったマンゴー・アロハも、マンゴーの酸味の角が取れ、マイルドな味わいだった。
10月のマンゴーは季節外れである。
にもかかわらず、これだけ甘いマンゴーを供することができるというのは、まず選果の目が確かだということだろう。
マンゴーの熟度を見て、それを最高のタイミングで供しているということではないか。
素人の目では、これだけのマンゴーにはなかなか巡り合えない。
そう思わせるだけの美味しさだった。 -
マンゴー・タンゴを出て、プロムポンへと向かった。
アジアン・ハーブ・アソシエイツで旅の疲れを取り、帰国しようと相方と話し合っていた。
だが、マッサージにはまだいささか早いような気もする。
相方はそれじゃあ、「NaRaYa」が入っている「エンポリアム」へと行きたいという。
プロムポン駅で降り、駅と連絡しているエンポリアムへとそのまま入った。
それが誤りだったとあとで気づくのだが、エンポリアムのコンシェルジュに訊いてみても、ただ外に出て左へ行けというだけだ。
右に行ったり、左に行ってみたりしても、結局わからずエンポリアムの外に立つドアボーイに訊ね、やっとたどり着くことができた。
「NaRaYa」はエンポリアムの中にあるわけではなかった。
エンポリアムに向かって左手、スクンビット通りに面した一軒置いた並びにある。
それにしても、昨日「NaRaYa」で買物をしたばかりだというのに、相方の買物への情熱のすさまじさは尋常ではない。
1階と2階を行き来しながら、飽くことなく買物に興じている。
することもなく、エンポリアムの上に昇り、窓の外を見るとベンジャシリ公園が見える。
どんよりと澱んだ色の池の周りには青々とした木々が茂っていた。 -
買物を終えた相方と合流し、エンポリアムのフードホールに向かった。
マンゴー・タンゴでマンゴーづくしを食べて、まだそれほど時間が経っていない。
別に話し合ったわけではないが、トレーを持って席に戻ると、お互いその上に麺をのせている。 -
クイティアオは僕にとって、この街で疑いを持たずに接することができる食べ物のひとつになっていた。
米麺の滑らかな舌触り、のど越しとあっさりしたスープの澄んだうま味に病みつきになった。 -
クイティアオ同様、病みつきになったものがもうひとつある。
マッサージである。
生まれてこの方、フット・マッサージを除き、マッサージなるものを受けたのは、片手にも満たないくらいの経験しかない。
つい最近までは、肩こりとも無縁だったので、マッサージにお金をつぎ込む人の気持ちがしれなかった。
しかし、4日前にアジアン・ハーブ・アソシエイツで受けたマッサージがあとを引き、早くも癖になってしまったようだ。
エンポリアムを出て、すぐ横を走るソイ24を南に2、3分ほど歩くとアジアン・ハーブ・アソシエイツが見えてくる。
例によって、予約は取っていないことを告げ、オイルボディマッサージと生ハ―バルボール治療がセットになった90分コース(1000baht)をお願いした。
トンロー店はビル内の店舗だったが、ここは広い敷地内に受付棟のほか、治療棟が何棟かに分かれて建っている。 -
建物こそ違え、治療棟の部屋の中は同じで、例によってうす暗い部屋の壁にはロゴマークがぼんやりとした光を投げている。
アジアン・ハーブ・アソシエイツはシャワーを施術の前後、自由に使うことができる。
シャワーを浴び、変な下着をつけ、横たわって待つこと5分。
女性マッサージ師が部屋に入り、静かに施術がはじまる。
うつぶせになってマッサージを受けるうちに、僕は眠りこんでしまったようだった。
肩を叩かれては裏返り、叩かれては裏返る、を繰り返しながらとろとろと眠り続けた。
熱くなったハ―バルボールをふくらはぎに押しつけられたときを除いて、ただただ眠り続けた。
施術をすべて終え、シャワーを浴びようかとも思ったのだが、ハーバルボールで余分なオイルをふき取ってくれているので、このまま服を着こんでも問題なさそうだった。
100bahtのチップを渡し、店を出た。
あとは、ホテルへと戻り、荷物を受け取り、空港へと向かうだけだった。
「終わっちゃったね」と相方に言うと「うん」と答えたまま、黙り込む。
相方はどんどん不機嫌になってゆく。
その旅が楽しいものであればあるほど、相方の不機嫌さは度をましてゆく。
その気持ちはわからないでもない。
ハワイ島から帰国するときも、ローマから帰るときも、同じ顔をしていた。 -
そんな子供っぽい相方の背中を押すようにして、ホテルへと戻り、荷物を受け取った。
あとはタクシーで空港に向かうだけだった。
ドアボーイに行き先を告げると、そばに立っていた男が「高速代込み500bahtで空港まで行く、OKか?」という。
ルブアから空港までは300〜400bahtといったところだろう。そこに高速代金をのせ、チップをのせると、500bahtはそう高くはない。
OK、と僕は答えた。
タクシーは狭い抜け道を縫うようにして走る。
ビルの谷間から見える空は茜色に染まり、ゆっくりと藍色へと流れてゆく。
この6日間は速かった。
旅の終わりはたいていそうだが、お前はただむさぼり、ほっつき歩き、酩酊していただけではないか、という自責の念が頭をもたげてくる。
いや、こんな洪水のさなかに、無事に旅程を終え、なにごともなく帰国できることだけでも感謝しなくてはならない。
そう考えてみた。
だが、あとひと波乱あることを僕はまったく予期していなかった。
空港に到着し、チェックインを終えると、相方はVAT(付加価値税)のような税の払い戻しを受けるためにオフィスを探すという。
「HARNN(ハーン)」での買物の分がその対象になるという。
払い戻しを受けるには、還付対象の商品は機内持ち込みしなくてはならないと、「るるぶタイ・バンコク’12」に書いてあったと言って、重い紙袋を手にぶら下げて相方は歩いていく。
無事に、税の払い戻しを受け、出国カウンターで審査を受け、セキュリティチェックへと進んだ。
係官が「HARNN(ハーン)」の紙袋の中を覗き込み、ハーバルオイルの瓶のひとつを手にとり、首を横に振っている。
相方はきょとんとした顔で、なぜ、と聞き返す。
これは持ちこめない、と係官はただ繰り返す。
相方は使える英語の限りを駆使して、抗議したがHARNNのボトルは廃棄するという。
係官の態度がどうもおかしい。
没収は法的にやむを得ないとして、係官がねこばばするのは絶対に許せない。
6000bahtを超える高額の商品を同僚と山分けしたとしてもだれにもわからない。
(実際はわからないが、悪態のひとつもつかせてほしい)
相方は文字通り、地団太を踏んで悔しがった。
タイなんて大嫌いだ、2度とこんな国に来ない!
「るるぶ」に出ていたから、信じて機内持ち込みにしたのに!
僕も空港内の免税店で買ったコロンを経由地で没収されたことがあった。
その悔しさはよくわかるよ、とその話を聞かせた。
怒りの鉾先は、僕にも当然向けられる。
そんな経験があるなら、なぜもっと早く教えてくれないのか。
相方は僕に食ってかかった。
ふざけるな! 滅多に声を荒げることのない僕も、さすがに切れた。
無知だった、我々が悪いのだ。
機内への液体物持込み制限はほほ世界中で実施されているとはいえ、すべての国ではない。
モルディブ、スリランカでは僕の経験上、この制限は適用されていなかった。
その経験から、タイも大丈夫なのだろう、と甘く考えていた。
認識の甘かった自分に、雑誌のコーションの不十分さに、相方の理不尽な罵詈雑言に、激しい怒りを覚えた。
楽しかった旅の気分は、粉々になっていた。
我々はほとんど口をつぐんだまま、空港内をあてもなく歩きまわった。 -
同じ言葉が頭の中をスクロールしてゆく。
30分は歩きまわっただろうか、お腹が空いた、と相方がぽつりと言う。
僕はのどがカラカラになり、ビールが飲みたくてしかたがなかった。 -
我々はいましがた通り過ぎてきた、「マンゴ・ツリー」へと引き返し、中へと入った。
なにをどうやって注文したのか、まるで憶えていない。
運ばれてくる料理を我々はただ黙々と食べるだけだった。 -
こころはどこかをさまよっていて、味はよく憶えていない。
だが、我々がじょじょに重い口を開きはじめたことを考えると、その味はきっとやさしく温かな味だったのだろう。 -
どの皿をとっても、悪い印象のものはなかった。
やり場のない憤りを、そろそろ納めねばならない。
気持ちを切り替えなければならない、そう前向きに考えられたのも料理の力の助けがあったからかもしれない。
食べ終わると、我々は少しだけ冷静さを取り戻していた。 -
出発ゲートは一時帰国の家族でいっぱいだった。
ほっとしたようにイスにうずくまる人、一緒に帰ることのできなかった仲間を心配する人…そこには悲喜こもごもあった。
旅の最後に起きた出来事で、旅のすべてを否定するのはあまりに悲しかった。
「あー、面白かった」自分に言い聞かせるように、言ってみた。 -
飛行機がスピードを上げ、上昇してゆく。
機が大きく旋回したとき、街の明かりがかすかに見えた。
「コップン・カー、バンコク…」
僕が小声でそう言うと、相方がかすかにうなずいたような気がした。
ありがとうバンコク、また来ます。
洪水に負けないでください、皆さんお元気で…。(了)
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