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下鳥羽、鴨川近くにある浄土宗の恋塚寺 (こいづかでら)は、「貞女の鑑」といわれた袈裟御前(けさごぜん・生没年不詳)の悲話にまつわる寺として知られており、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて、恋塚寺の地に袈裟御前の住まいがあったといわれている。<br /> 1182年、真言宗の僧・文覚(もんがく1139−1203年)が、自ら殺めたという袈裟御前の菩提を弔い、恋塚寺の地に墓を設け一宇を建立したのが寺の前身といわれる。1868年の鳥羽伏見の戦いにより焼失したが明治期に再建されている。<br />文覚は、俗名・遠藤盛遠(えんどうもりとお)、摂津源氏傘下・渡辺党の武士で、第74代・鳥羽天皇皇女・統子内親王(上西門院)に仕える北面の武士だった。<br /> 従兄弟で同僚の渡辺渡(わたなべわたる)の妻、袈裟御前に横恋慕し、誤って殺したことから19歳で出家し、文覚と称したとされている。<br /> 神護寺再興のために第77代・後白河天皇に強訴し、伊豆国に配流されるが伊豆で後の鎌倉幕府初代征夷大将軍・源頼朝と知り合い、平家打倒の挙兵を促したといわれる。その後、頼朝、後白河法皇の庇護を受け、各地の寺院を修復する。頼朝死後天皇家の相続争いなどの政争に巻き込まれ、源通親に佐渡国へ配流される。 通親の死後許されて京に戻るが1205年、今度は後鳥羽上皇に謀反の疑いをかけられ、対馬国へ流罪となる途中鎮西で客死したという波乱万丈の一生だったとされるが弟子に神護寺復興を継いだ上覚、孫弟子に高山寺開山の明恵らがおり仏教界の人材育成にも貢献している。<br />本堂には、本尊・阿弥陀如来像とともに、袈裟御前、渡辺渡、文覚の3木像が並べて安置されている。<br />文覚、袈裟御前にまつわる伝承では遠藤盛遠は従兄弟で同僚の渡辺渡の美しい妻、袈裟御前に心奪われ渡の首を刎ねようと寝室に忍び込んだ盛遠は、身代わりになった袈裟御前首を刎ねてしまったという。<br /> 盛遠は己の非道を恥じ入り、直ちに出家し文覚と称した。袈裟の夫・渡、袈裟の母・衣川も出家し、袈裟の菩提を弔ったという。文覚は、墓を「恋塚」と名付けたといわれる。逸話は『源平盛衰記』、芥川龍之介の『袈裟と盛遠』、明治期の長唄『鳥羽の恋塚』、菊池寛原作でカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した衣笠貞之助監督の映画「地獄門」(1953年)、手塚治虫の「火の鳥乱世編」などの題材となっている。<br />境内には、「恋塚」と呼ばれる袈裟御前の首塚という石塔が立てられており、寺が再建された際に文覚の眠る神護寺の方角に向けられたそうだ。<br /> 傍の「六字名号石」は法然の筆により、文覚が建立した石板とされている。人倫の大道を教えるものとして、古来より詩歌・謡曲などで知られている。<br />史実と伝承や脚色が混在した話だが、多くの文学作品や名画を生み出した人の心を打つ悲しい物語ではある。<br />(写真は恋塚寺)<br />

日本の旅 関西を歩く 京都、伏見区下鳥羽の恋塚寺 (こいづかでら)周辺

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2011/09/07 - 2011/09/07

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さすらいおじさん

さすらいおじさんさん

下鳥羽、鴨川近くにある浄土宗の恋塚寺 (こいづかでら)は、「貞女の鑑」といわれた袈裟御前(けさごぜん・生没年不詳)の悲話にまつわる寺として知られており、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて、恋塚寺の地に袈裟御前の住まいがあったといわれている。
 1182年、真言宗の僧・文覚(もんがく1139−1203年)が、自ら殺めたという袈裟御前の菩提を弔い、恋塚寺の地に墓を設け一宇を建立したのが寺の前身といわれる。1868年の鳥羽伏見の戦いにより焼失したが明治期に再建されている。
文覚は、俗名・遠藤盛遠(えんどうもりとお)、摂津源氏傘下・渡辺党の武士で、第74代・鳥羽天皇皇女・統子内親王(上西門院)に仕える北面の武士だった。
 従兄弟で同僚の渡辺渡(わたなべわたる)の妻、袈裟御前に横恋慕し、誤って殺したことから19歳で出家し、文覚と称したとされている。
 神護寺再興のために第77代・後白河天皇に強訴し、伊豆国に配流されるが伊豆で後の鎌倉幕府初代征夷大将軍・源頼朝と知り合い、平家打倒の挙兵を促したといわれる。その後、頼朝、後白河法皇の庇護を受け、各地の寺院を修復する。頼朝死後天皇家の相続争いなどの政争に巻き込まれ、源通親に佐渡国へ配流される。 通親の死後許されて京に戻るが1205年、今度は後鳥羽上皇に謀反の疑いをかけられ、対馬国へ流罪となる途中鎮西で客死したという波乱万丈の一生だったとされるが弟子に神護寺復興を継いだ上覚、孫弟子に高山寺開山の明恵らがおり仏教界の人材育成にも貢献している。
本堂には、本尊・阿弥陀如来像とともに、袈裟御前、渡辺渡、文覚の3木像が並べて安置されている。
文覚、袈裟御前にまつわる伝承では遠藤盛遠は従兄弟で同僚の渡辺渡の美しい妻、袈裟御前に心奪われ渡の首を刎ねようと寝室に忍び込んだ盛遠は、身代わりになった袈裟御前首を刎ねてしまったという。
 盛遠は己の非道を恥じ入り、直ちに出家し文覚と称した。袈裟の夫・渡、袈裟の母・衣川も出家し、袈裟の菩提を弔ったという。文覚は、墓を「恋塚」と名付けたといわれる。逸話は『源平盛衰記』、芥川龍之介の『袈裟と盛遠』、明治期の長唄『鳥羽の恋塚』、菊池寛原作でカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した衣笠貞之助監督の映画「地獄門」(1953年)、手塚治虫の「火の鳥乱世編」などの題材となっている。
境内には、「恋塚」と呼ばれる袈裟御前の首塚という石塔が立てられており、寺が再建された際に文覚の眠る神護寺の方角に向けられたそうだ。
 傍の「六字名号石」は法然の筆により、文覚が建立した石板とされている。人倫の大道を教えるものとして、古来より詩歌・謡曲などで知られている。
史実と伝承や脚色が混在した話だが、多くの文学作品や名画を生み出した人の心を打つ悲しい物語ではある。
(写真は恋塚寺)

交通手段
自家用車 徒歩

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  • 恋塚寺の碑。

    恋塚寺の碑。

  • 恋塚寺の山門。

    恋塚寺の山門。

  • 恋塚寺の境内の光景。

    恋塚寺の境内の光景。

  • 恋塚寺の境内の光景。

    恋塚寺の境内の光景。

  • 恋塚寺の境内の光景。

    恋塚寺の境内の光景。

  • 「重修恋塚寺」の碑。

    「重修恋塚寺」の碑。

  • 袈裟御前と渡辺渡の木像。

    袈裟御前と渡辺渡の木像。

  • 恋塚寺の境内の光景。

    恋塚寺の境内の光景。

  • 袈裟御前の木像。

    袈裟御前の木像。

  • 恋塚寺の境内の光景。

    恋塚寺の境内の光景。

  • 渡辺渡の木像。

    渡辺渡の木像。

  • 本堂の本尊と袈裟御前、渡辺渡、文覚の3木像。

    本堂の本尊と袈裟御前、渡辺渡、文覚の3木像。

  • 文覚の木像。

    文覚の木像。

  • 「鳥羽恋塚碑銘」羅山林道春、寛永十年(1633)とある。碑は近年のもので林羅山(1583-1657)は、安土桃山末期から江戸前期の儒学者。

    「鳥羽恋塚碑銘」羅山林道春、寛永十年(1633)とある。碑は近年のもので林羅山(1583-1657)は、安土桃山末期から江戸前期の儒学者。

  • 丈六尺の板石周辺。

    丈六尺の板石周辺。

  • 「恋塚」。

    「恋塚」。

  • 鳥羽恋塚碑銘。

    鳥羽恋塚碑銘。

  • 「恋塚」、丈六尺の板石、縁起刻の石碑の案内。

    「恋塚」、丈六尺の板石、縁起刻の石碑の案内。

  • 「恋塚」。袈裟御前の墓といわれ、文覚の眠る神護寺のある北西を向いているといわれる。辞世の句は「露深き浅茅が原に迷う身のいとど暗路に入るぞ悲しき」。

    「恋塚」。袈裟御前の墓といわれ、文覚の眠る神護寺のある北西を向いているといわれる。辞世の句は「露深き浅茅が原に迷う身のいとど暗路に入るぞ悲しき」。

  • 丈六尺の板石。法然の筆により、文覚が建立した石板とされている。人倫の大道を教えるものとして、古来より詩歌・謡曲などで知られている。<br />

    丈六尺の板石。法然の筆により、文覚が建立した石板とされている。人倫の大道を教えるものとして、古来より詩歌・謡曲などで知られている。

  • 「恋塚」周辺の光景。

    「恋塚」周辺の光景。

  • 「縁起刻の石碑」。「渡辺左衛門尉源渡妻袈裟御前秀玉善尼之墓所天養元年(1144)六月文覚上人開基恋塚根元之地、嘉応二年(1170)建立」。

    「縁起刻の石碑」。「渡辺左衛門尉源渡妻袈裟御前秀玉善尼之墓所天養元年(1144)六月文覚上人開基恋塚根元之地、嘉応二年(1170)建立」。

  • 恋塚寺の境内の光景。

    恋塚寺の境内の光景。

  • 「恋塚」周辺の光景。

    「恋塚」周辺の光景。

  • 恋塚寺の境内の光景。

    恋塚寺の境内の光景。

  • 「恋塚」周辺の光景。

    「恋塚」周辺の光景。

  • 恋塚寺の山門。

    恋塚寺の山門。

  • 「恋塚」周辺の光景。

    「恋塚」周辺の光景。

  • 恋塚寺の境内の光景。

    恋塚寺の境内の光景。

  • 「恋塚」周辺の光景。

    「恋塚」周辺の光景。

  • 恋塚寺の境内の光景。

    恋塚寺の境内の光景。

  • 「恋塚」周辺の光景。

    「恋塚」周辺の光景。

  • 恋塚寺の山門。

    恋塚寺の山門。

  • 恋塚寺の山門前の光景。

    恋塚寺の山門前の光景。

  • 恋塚寺の山門。

    恋塚寺の山門。

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