カスティーリャ・レオン地方旅行記(ブログ) 一覧に戻る
9月22日<br /> モーニング・コールが鳴って、眠い目をこすりながら起床。午後1時半発の電車なので時間があるから、午前中は王宮見学に行くことにする。<br /><br /> 8時半朝食へ。今朝はみんなお腹も快調。固めの丸いパン、大きなクロワッサン、スライスした黒いパン、甘いマドレーヌとかいろいろ並んでいて美味しい。9時半チェックアウト。またスーツケースを預かってもらう。<br /><br /> 王宮に着いて、入場券を買う。それから、英語かスペイン語かどちらかを選んで、2グループに分けられる。さすがにスペイン語の案内を聞く自信がなかったから、英語のほうにつく。ところが、なかなか英語グループが集まらない。スペイン語のほうは、どんどん集まっては奥へ案内されていくのに。やっと10人ほど集まって、手荷物などのチェック後、中に通された。<br /><br /> 「金曜日はゲストが来て、国王がおいでになったので、王宮はクローズされました。」案内するのは若い女性。絨毯が敷かれた階段を上る。きらびやかなシャンデリア、豪華な家具・・。<br /> 1時間ほどの見学が終わって外に出た。青空の下、どこまでも広がっているのは王宮の庭園。<br /><br /> ホテルに戻って、午前中だけ預けておいた手荷物を受け取る。ボーイたちやドアマンのおじさんとも顔馴染みになって、みんな声をかけてくれる。ホテルの近くで客待ちをしていたタクシーに乗り込んだ。運転手はとても人の良さそうなおじさんで、「これからどちらへ?」「サモラへ行くの」<br /><br /> チャマルティン駅に着いて、バールでしばらく休み、1時になったので案内掲示板を見に行く。出ていない。インフォメーションで切符を見せて聞くと、まだ分からないから、案内が出るまで待てと言う。1時半になっても、まだ出なかった。だんだん掲示板を見上げる人も増えてきた。そして50分を過ぎた頃、コルーニャ行きタルゴ、1時30分発、Via8と出て赤いランプが点滅。「出た!」とたんに人々がどっと動き出した。<br /><br /> 指定席がなかなか見つからず、焦って行きつ戻りつして、ようやく分かって座席に落ち着いた。3人ともばらばらで私の隣は髭面の男性。車内はシーンと静か。Aさんは、早速隣のおばさんとジェスチャーの会話を開始。窓の外は木立や家並みが続き、のどかだ。これから先は想像もつかないので楽しみ。乾いたアンダルシアとは違うだろうから、緑豊かな平原なのだろうか。ところがじきに期待は裏切られ、ごつごつした岩だらけのすさまじい景色となってきた。しばらく唖然と眺めていると、一際高い岩山の麓に、写真で見覚えのある建物が見えてきた。もしかして・・。「エル・エスコリアル!」Aさんが振り向いて叫んだ。<br /><br /> しばらくして、男が通路の前で、乗客に向かって何か話し始めた。今度は何の商売かと思って耳をそばだてると、どうやら寄付集めらしい。恵まれない子供たちに食べ物を与えるために、どうか皆さんの暖かいお心を、と言うと、座席を回り始めた。「乞食ですってよ!」再び隣の婦人から情報を得たAさんが振り返って言った。ちゃんとした格好をしているし、乞食には見えないのだが、確かにお金を集めている。日本だったら、冷たい視線を浴びるか無視されるかなのに、ほとんどの乗客たちは、ためらいもせずお財布を開けて小銭を渡しているのだ。敬虔なクリスチャンだからか。どうしたものか迷ったが、結局黙って見ていた。隣の髭面の男も無視していた。<br /><br /> 「次はアビラ・・」思わず身を乗り出す。赤褐色の家並み、それを囲んで城壁がずうっと延びている。なるほど。アビラを過ぎた頃、車掌さんが回ってきて、荷物を盗られた人はいないかと尋ねた。Aさんの隣の婦人は、自分のバッグをあわてて掴んで、泥棒がいると教えてくれた。列車の旅はいろんな人が出没して面白い。<br /><br /> マドリッドを出て3時間半後にサモラに到着。降りる人もまばら。改札も無く、スウィング式のドアを押して、建物の中へ。そのまま外に出た。右も左も全くわからず、とにかくタクシーに乗り込む。しばらく走ると、急に町並みが変化して、がたがたの石畳の道を行く。旧市街に入ったらしい。<br /><br /> 広場に面した建物の前で、タクシーは止まった。ここがサモラのパラドール。2階建ての石の建物で、何のへんてつも無いように見えたが、中に入って、「わぁ素敵・・」1階は壁や床は石造りだったが、2階へ上がると木造の回廊が広々と連なっていて、お日様が眩しいほどに差し込んでいる。嬉しくて、友人たちと頷きあう。ここだ!写真集に載っていた憧れの場所に、とうとうほんとに自分たちで来てしまった。木の扉が開かれ、部屋の中に案内される。床はぴかぴかに磨きぬかれた板敷きで、歩くとギシギシ音がする。大きな窓が開いていて、広場の鬱蒼とした木立や、古そうな建物が見えていた。<br /><br /> 廊下の家具調度品は相当の年代物で、(事実、これと同じものが後日レオンの博物館で見ることになる)大きな振り子時計は、今もゆっくり動いていた。一階に降りてみると、大きなタペストリーが掛けられたコーナーを発見。写真集にあったのはここ!<br /><br /> 中庭に出てみる。ぐるりと四方を建物に囲まれていて、石柱の上には紋章らしい彫り物が見える。庭の真ん中に古井戸。こわごわ覗いてみたけど、水は枯れていた。ここはもと貴族の館。階段のそばに飾ってあった、馬に乗った甲冑の騎士、馬も重そうな鎧をつけ、とんがった耳飾までついていた。<br /><br /> 部屋の開け放した窓から、小鳥の大合唱が聞こえてくる。目の前の木立にぎっしりと詰まった雀たち、夕方のお喋りを楽しんでいるかのよう。窓の下では、住民たちもパセオを始めたらしく、雀に負けないくらいのお喋りの声が聞こえてくる。我々も出てみることにした。<br /><br /> 人々の流れについて細い小道を辿っていくと、どんどん賑やかさを増してきた。大人も子供もお洒落をして、みんなぺちゃくちゃ、その賑やかなこと。広場の隅に腰掛けているのはお年寄りばかり。「おじいさんには捕まらんようにしよう・・」そそくさと通り過ぎるAさん。<br /><br /> まるでこれから盆踊りでも始まりそうなくらいの賑やかさ。向こうから、ピッピー、わっしょいわっしょい・・若者たちが「平和」と書かれたプラカードを掲げて、行進していた。<br /><br /> 夕焼けの空の色もすっかり落ちて、いつの間にか街灯が点り、町はいっそう魅力的に変身していた。9時ごろパラドールに戻って夕食。食堂の窓の外にはプールが見え、バールのテラスがあり、地元の人々で賑わっている。プールの向こうから真ん丸い月が上がった。そう、この日は中秋の名月の日だった!。「ねえ、あれ、ススキじゃない?」見ると、固まってふさふさしているのは、確かにススキ。元気一杯に咲いている。「日本のと違って、うら寂しくないわね」と、Oさん。<br /><br /> 料理が運ばれ、それぞれ味見をしながら「美味しい!」でもOさん一人、ほとんど口を効かずもくもくと自分の頼んだスモークサーモンを口に運んでいる。「それ、どう?」「美味しい?」たまりかねて彼女のお皿に手を伸ばし、一口食べて、目がまん丸。こんな美味しいの、食べたことがない!「ずる〜い、一人で食べようとして!」<br /><br /> いつの間にかテラスの人々もいなくなっていた。彼らのいたテーブルの下には、忘れられた子供のおもちゃが転がっている。我々も席を立って、フロントで鍵をもらいに行った。年配のおじさんが一人いて、「部屋の番号は?」「ええと、1・1・3(ウノ・ウノ・トレス)」考え考え区切って言ったら、笑って「1・13(ウノ・トレセ)ね」あっ、そう言うのか。<br /><br /> 部屋に戻って、明日のモーニング・コール頼もうと、フロントに電話していつものセリフ、「明日7時半に起こしてください、部屋の番号は・・」言いかけるとおじさんがすかさず返事。「ウノ・ウノ・トレスだろ」<br /> 明日からは手探りの旅で、ベナベンテに向かう。<br /><br /><br /><br />

初めてのパラドール巡り ? サモラへ

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1991/09/18 - 1991/09/27

147位(同エリア179件中)

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8

アーマ

アーマさん

9月22日
 モーニング・コールが鳴って、眠い目をこすりながら起床。午後1時半発の電車なので時間があるから、午前中は王宮見学に行くことにする。

 8時半朝食へ。今朝はみんなお腹も快調。固めの丸いパン、大きなクロワッサン、スライスした黒いパン、甘いマドレーヌとかいろいろ並んでいて美味しい。9時半チェックアウト。またスーツケースを預かってもらう。

 王宮に着いて、入場券を買う。それから、英語かスペイン語かどちらかを選んで、2グループに分けられる。さすがにスペイン語の案内を聞く自信がなかったから、英語のほうにつく。ところが、なかなか英語グループが集まらない。スペイン語のほうは、どんどん集まっては奥へ案内されていくのに。やっと10人ほど集まって、手荷物などのチェック後、中に通された。

 「金曜日はゲストが来て、国王がおいでになったので、王宮はクローズされました。」案内するのは若い女性。絨毯が敷かれた階段を上る。きらびやかなシャンデリア、豪華な家具・・。
 1時間ほどの見学が終わって外に出た。青空の下、どこまでも広がっているのは王宮の庭園。

 ホテルに戻って、午前中だけ預けておいた手荷物を受け取る。ボーイたちやドアマンのおじさんとも顔馴染みになって、みんな声をかけてくれる。ホテルの近くで客待ちをしていたタクシーに乗り込んだ。運転手はとても人の良さそうなおじさんで、「これからどちらへ?」「サモラへ行くの」

 チャマルティン駅に着いて、バールでしばらく休み、1時になったので案内掲示板を見に行く。出ていない。インフォメーションで切符を見せて聞くと、まだ分からないから、案内が出るまで待てと言う。1時半になっても、まだ出なかった。だんだん掲示板を見上げる人も増えてきた。そして50分を過ぎた頃、コルーニャ行きタルゴ、1時30分発、Via8と出て赤いランプが点滅。「出た!」とたんに人々がどっと動き出した。

 指定席がなかなか見つからず、焦って行きつ戻りつして、ようやく分かって座席に落ち着いた。3人ともばらばらで私の隣は髭面の男性。車内はシーンと静か。Aさんは、早速隣のおばさんとジェスチャーの会話を開始。窓の外は木立や家並みが続き、のどかだ。これから先は想像もつかないので楽しみ。乾いたアンダルシアとは違うだろうから、緑豊かな平原なのだろうか。ところがじきに期待は裏切られ、ごつごつした岩だらけのすさまじい景色となってきた。しばらく唖然と眺めていると、一際高い岩山の麓に、写真で見覚えのある建物が見えてきた。もしかして・・。「エル・エスコリアル!」Aさんが振り向いて叫んだ。

 しばらくして、男が通路の前で、乗客に向かって何か話し始めた。今度は何の商売かと思って耳をそばだてると、どうやら寄付集めらしい。恵まれない子供たちに食べ物を与えるために、どうか皆さんの暖かいお心を、と言うと、座席を回り始めた。「乞食ですってよ!」再び隣の婦人から情報を得たAさんが振り返って言った。ちゃんとした格好をしているし、乞食には見えないのだが、確かにお金を集めている。日本だったら、冷たい視線を浴びるか無視されるかなのに、ほとんどの乗客たちは、ためらいもせずお財布を開けて小銭を渡しているのだ。敬虔なクリスチャンだからか。どうしたものか迷ったが、結局黙って見ていた。隣の髭面の男も無視していた。

 「次はアビラ・・」思わず身を乗り出す。赤褐色の家並み、それを囲んで城壁がずうっと延びている。なるほど。アビラを過ぎた頃、車掌さんが回ってきて、荷物を盗られた人はいないかと尋ねた。Aさんの隣の婦人は、自分のバッグをあわてて掴んで、泥棒がいると教えてくれた。列車の旅はいろんな人が出没して面白い。

 マドリッドを出て3時間半後にサモラに到着。降りる人もまばら。改札も無く、スウィング式のドアを押して、建物の中へ。そのまま外に出た。右も左も全くわからず、とにかくタクシーに乗り込む。しばらく走ると、急に町並みが変化して、がたがたの石畳の道を行く。旧市街に入ったらしい。

 広場に面した建物の前で、タクシーは止まった。ここがサモラのパラドール。2階建ての石の建物で、何のへんてつも無いように見えたが、中に入って、「わぁ素敵・・」1階は壁や床は石造りだったが、2階へ上がると木造の回廊が広々と連なっていて、お日様が眩しいほどに差し込んでいる。嬉しくて、友人たちと頷きあう。ここだ!写真集に載っていた憧れの場所に、とうとうほんとに自分たちで来てしまった。木の扉が開かれ、部屋の中に案内される。床はぴかぴかに磨きぬかれた板敷きで、歩くとギシギシ音がする。大きな窓が開いていて、広場の鬱蒼とした木立や、古そうな建物が見えていた。

 廊下の家具調度品は相当の年代物で、(事実、これと同じものが後日レオンの博物館で見ることになる)大きな振り子時計は、今もゆっくり動いていた。一階に降りてみると、大きなタペストリーが掛けられたコーナーを発見。写真集にあったのはここ!

 中庭に出てみる。ぐるりと四方を建物に囲まれていて、石柱の上には紋章らしい彫り物が見える。庭の真ん中に古井戸。こわごわ覗いてみたけど、水は枯れていた。ここはもと貴族の館。階段のそばに飾ってあった、馬に乗った甲冑の騎士、馬も重そうな鎧をつけ、とんがった耳飾までついていた。

 部屋の開け放した窓から、小鳥の大合唱が聞こえてくる。目の前の木立にぎっしりと詰まった雀たち、夕方のお喋りを楽しんでいるかのよう。窓の下では、住民たちもパセオを始めたらしく、雀に負けないくらいのお喋りの声が聞こえてくる。我々も出てみることにした。

 人々の流れについて細い小道を辿っていくと、どんどん賑やかさを増してきた。大人も子供もお洒落をして、みんなぺちゃくちゃ、その賑やかなこと。広場の隅に腰掛けているのはお年寄りばかり。「おじいさんには捕まらんようにしよう・・」そそくさと通り過ぎるAさん。

 まるでこれから盆踊りでも始まりそうなくらいの賑やかさ。向こうから、ピッピー、わっしょいわっしょい・・若者たちが「平和」と書かれたプラカードを掲げて、行進していた。

 夕焼けの空の色もすっかり落ちて、いつの間にか街灯が点り、町はいっそう魅力的に変身していた。9時ごろパラドールに戻って夕食。食堂の窓の外にはプールが見え、バールのテラスがあり、地元の人々で賑わっている。プールの向こうから真ん丸い月が上がった。そう、この日は中秋の名月の日だった!。「ねえ、あれ、ススキじゃない?」見ると、固まってふさふさしているのは、確かにススキ。元気一杯に咲いている。「日本のと違って、うら寂しくないわね」と、Oさん。

 料理が運ばれ、それぞれ味見をしながら「美味しい!」でもOさん一人、ほとんど口を効かずもくもくと自分の頼んだスモークサーモンを口に運んでいる。「それ、どう?」「美味しい?」たまりかねて彼女のお皿に手を伸ばし、一口食べて、目がまん丸。こんな美味しいの、食べたことがない!「ずる〜い、一人で食べようとして!」

 いつの間にかテラスの人々もいなくなっていた。彼らのいたテーブルの下には、忘れられた子供のおもちゃが転がっている。我々も席を立って、フロントで鍵をもらいに行った。年配のおじさんが一人いて、「部屋の番号は?」「ええと、1・1・3(ウノ・ウノ・トレス)」考え考え区切って言ったら、笑って「1・13(ウノ・トレセ)ね」あっ、そう言うのか。

 部屋に戻って、明日のモーニング・コール頼もうと、フロントに電話していつものセリフ、「明日7時半に起こしてください、部屋の番号は・・」言いかけるとおじさんがすかさず返事。「ウノ・ウノ・トレスだろ」
 明日からは手探りの旅で、ベナベンテに向かう。



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  • パラドール・サモラ<br /> 板張りの床はぴかぴか。

    パラドール・サモラ
     板張りの床はぴかぴか。

  • パラドール・サモラ<br /> ここは貴族の館だった。中庭には紋章が彫られた柱が見える。

    パラドール・サモラ
     ここは貴族の館だった。中庭には紋章が彫られた柱が見える。

  • パラドール・サモラ<br /> 一階は石造り

    パラドール・サモラ
     一階は石造り

  • 階段の下の騎士と馬

    階段の下の騎士と馬

  • 二階は木造りで、太陽がいっぱい差し込んで明るい

    二階は木造りで、太陽がいっぱい差し込んで明るい

  • パラドールの家具調度品

    パラドールの家具調度品

  • 貝の取っ手の付いたチェスト。これと同じものがレオンの博物館にあった。

    貝の取っ手の付いたチェスト。これと同じものがレオンの博物館にあった。

  • 赤い色は漆塗りと、後日レオンで知った。

    赤い色は漆塗りと、後日レオンで知った。

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