1991/09/18 - 1991/09/27
183位(同エリア200件中)
アーマさん
9月20日
7時半起床。外はまだ暗い。9時に朝食へ。フルーツのシロップ漬け、ハムやチーズが並んだバイキング・スタイル。パンもいろいろあって美味しい。10時チェックアウト。今日から一泊二日の小旅行だ。小さめのバッグを担いで、トランクはホテルに預かってもらう。
チャマルティン駅で、入ってきた列車に乗り込むと、指定された座席には既におばさんが座っている。「すみませんが・・この番号、ここだと思うんですけど・・」チケットを見せると、どれどれと覗き込んで、「ああ、そうね」といきなり座席に靴のまま乗って上の棚から荷物を下ろすと、パンパンと座席をはたいて、「ごめんなさいよ」平然と隣の座席に移っていった。
11時45分発の電車は10分遅れで発車した。車内はだんだん混んできて、私の隣にも金髪の若いお兄さんが座った。しばらくして、男が通路を歩きながら、ぽんぽんと何かを乗客に配っている。見ると、折りたたみ式の扇子で、開くと360度の丸いうちわ風になるやつ。「何、これ?乗車記念?」ところが配り終えた男は、くるりと向き直ると、「さて、皆さん」何のことは無い、物売りだ。「まだまだ暑い夏は続くけど、これ1本あれば、家族で役立つよ、これ1本でたった100ペセタ、安いよ!」扇子は奇妙な桜の絵などで、香港製らしい。彼は座席を回り始めた。びっくりしたことに、みんな買っているのだ。中には、一人で3、4本も。これはいいと、広げて喜んでいる。「私たちも、お金稼げるんじゃない、扇子など仕入れてくれば・・」座席の肘掛に扇子を置くと、男は黙って回収していった。
外の景色は、だんだんゴツゴツした岩山になって、こけしのような形をした岩も見かける。やがて小高い丘の上に、お城が見え、慌ててカメラを取り出す。「何ていう城かしら・・」思い切って隣の青年に聞いてみたが、知らない様子。「どちらまで?」「バルセロナ」まあ、そうなの、と急に仲間たちもうちとけ、片言の会話が弾む。「私たち、シグエンサに行くの」「シグエンサ?知らないな」これには3人、慌てた。近づいたら教えてもらおうと、のん気に構えていたので。列車のスピードが落ち、町が見えた。ゆるいスロープのてっぺんに古城。シグエンサ!
目の前に並木道が続いている。「いい町じゃない?」「こういうところに来たかったのよ」3人、嬉しくて、タクシーが1台もいないことも、たいして苦にならない。荷物を担いで坂道を上っていった。古い石造りの家々のたたずまいは、期待以上。お城へは、とにかく坂道を上ればいいはず。ふうふう言いながら歩く。
突き当たりに出て、左へ折れると、あった!お城の門。潜って坂道をもう一頑張り。すごいお城がでんと聳えている。「お城だぁ・・」「すごい、本物ね」「ここに泊まるのよ・・」石を敷き詰めた広場を突っ切って、入り口の石段を上がり、大きな木の扉を恐る恐る開ける。
中はひんやりと涼しく、静か。予約の確認書を持って、フロントへ。手続きもすんなり済み、男性が我々3人分の荷物を担いで「こちらへ」エレベーターで3階に。「素敵・・」我々、ぼうっとしたままついて行く。お部屋に着いて歓声を上げた。白い部屋に、木の細工のベッド、天井から下がるランプも素敵。窓はいかにも分厚い壁をくり貫いたふうで、腰掛けて外が眺められるようになっている。「塔の中のお姫様みたい!」
石の階段、ロビーなどは、向こうから鎧兜の騎士ががちゃがちゃと歩いて来そうだった。館の中のバールもこれまた素敵で、アーチ型の天井に歴史を感じる。私はコーヒー、友人たちはオレンジ・ジュースを頼んで、隅の一角に腰を下ろした。
町に下りてみることにした。坂道が3本続いている。真ん中の道を選んだ。古い石造りの家々はしんとして、人っ子一人見当たらない。雑貨屋があった。鍋や農耕用のくわ、鎌などが置いてある。お土産にはならない、もちろん。カフェテリアにて生ハムのボカディージョ(フランスパンのサンドイッチ)を注文。20cmくらいのパンに、色艶のいい生ハムが何枚もはさんであった。美味しい!
カフェテリアを出るとすぐ、カテドラル前の広場に出た。片隅にお喋りしている人たち、その足元に大きなムク犬。さっそく駆け寄る我々。Aさんが撫でて、Oさんが手を伸ばしたとたん、「ワウ!!」ワン公が吠えた。「きゃー!」大丈夫と、飼い主が犬を押さえ、怒って犬の鼻面を足でぽんと蹴った。あー、びっくりした。
カテドラルの扉をそうっと押す。「入れるわよ・・」中には誰もいない。中の暗さに目が慣れると、その大きさに驚いた。しいんとしている。ステンドグラスも美しい。こんな小さな町にこんな立派な教会があるなんて。
カテドラルを出て、坂道を上ると公園になっていた。友人たちは、近くの売店で、ぬるいコーラを買ってきて飲んでいる。暑い。向こうの木陰のベンチで杖にすがって二人の老人が休んでいる。そのうちの一人がゆっくりと近づいてきて、話しかけた。「?」歯がなくフガフガのスペイン語、私に分かるはずもない。「え、分からないなあ〜、お幾つですか?」「70じゃよ」今度は分かった。あら、そうなの、それにしては年取って見えない?と日本語でがやがや。彼は嬉しそうに笑って見ている。「あんたは幾つだい?」「さあー、知らないわ」ととぼけて見せるとワハハと笑った。向こうに座っている老人を指差し、「お友達?」「そう、友達じゃ」売店のほうで成り行きを見守っていた男たちが、じいさんの名を呼んだ。「おーい、何やってんだい?」「このセニョーラたちとお喋りしとるんじゃ」「じいさんの恋人かい?」逃げ出すことにする。
果物屋で梨とあんずを買い込み、戻ることにする。何だか人が多くなったようだ。あれほど静かだった町が、まるで会合か何か終わったみたいにどっと人が出てきた。お年寄りから子供まで、いったいどこから湧いたんだろうと思えるほど。夕方の散歩、パセオが始まったんだ。
パラドールの門まで来た時、急に突風が吹き始めた。砂埃が舞って目を開けていられない。あわてて中に逃げ込んだ。空模様もおかしくなっている。部屋に戻って、窓から外を眺めた。突然、丘の向こうにピカッと稲妻が光った。日本で見るのとはスケールが違い、広大な大地の上を、右に左にのたうちまわる。たちまち空は真っ暗になった。やがて大粒の雨が落ち出し、ものすごい雷鳴に、木の鎧戸を閉める。ふっと灯りが消え、また点いた。古城に嵐、なんかぴったりかも。
9時過ぎ、食堂におりていった。パラドールのメニューは土地の名物料理で、見当の付かないものばかり。お勧めのフルコースは、きっと食べきれないだろうから、いつものようにサラダを一皿と、めいめいに一品ずつ頼むことにする。おつまみに出たチョリソ、うん、美味しい。サラダはエビとアボガド、大皿の隅に乗っているのはもやしみたいだった。メイン料理は、Aさんがローストビーフ(巨大なの4切れ)私は首なしうずら2羽の煮込み料理、そしてOさんは卵料理を選んだが、来たのは、お皿いっぱいにパン粉を炒めたものがのってて、目玉焼きが2個添えられている。パン粉料理は、味見してみるとニンニクが効いてて2口目までは美味しいのだけど、なにせすごい量。Oさんはデザートに挑戦。シグエンサ風ケーキが来たとたん、笑ってしまった。まさに今日のシグエンサそのもの。びしょびしょの洋酒に浸された四角いケーキで、チョコレートとクリームをかけたもの。「甘―い・・」3人、吐息をつく。周りに運ばれていく大皿を見るたび、驚き呆れる。みんな、よく食べるなあ。
食堂を出て、隣のサロンで誰かがソファーにひっくり返ってテレビを見ている。「あら、マイ・フェア・レディをやってる!」Aさんが言った。「今日の新聞の番組表にあったかしら、何テレビ?」そこでやっと気がつく。「時差ボケ!」
部屋に戻った。外はまだ雨が少し残っていた。道端には点々とトパーズ色の灯りがともり、なかなかすてき。
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