1989/11/23 - 1989/12/03
567位(同エリア590件中)
アーマさん
11月27日
灰色の地中海、雲が低く垂れ込めている。ありがたいことに、出発する頃には雲も切れて、太陽が太陽が顔を覗かせた。久々の太陽の下、コスタ・デル・ソルの住民たちは後片付けに忙しい。あちこちで崖や道路が崩れ、惨たんたる様子が見えてきた。朝日に海が光り、青空が広がってきて、やっと町は息を吹き返した。
しばらく海岸沿いに走った後、バスは山のほうへ向きを変える。山の中腹に白い集落が見えてきた。そこがミハス。アンダルシアの白い典型的な村、と言われるが、いやにきれいに整っていて、少々出来すぎ、の感。バスを降りた広場も、観光客のために作ったか作り直したようで、ちっとも趣が無い。でも、村の中に入っていくと、なるほどどこを向いても絵になって、人気が出ているのもうなずける。山の斜面にあるため、坂道や階段が多い。そして高台からの眺めは素晴らしかった。緩やかに緑の大地が広がって、はるか遠くにコスタ・デル・ソルのビル群と光る海。
道端の土産店も、そろそろ開き出した。急いでバスに戻るように言われていたが、ついつい道草を食ってしまう。「すいませーん、途中で道を間違えちゃって・・」一番最後になってしまった人が言った。じろりと睨む添乗員さん、みんなの手には、ちゃんとミハスの土産が下がっている。
バスはグラナダ目指して出発した。ところが、一難去ってまた一難、マラガへ行く道路が洪水のため閉鎖されているとのこと。復旧がいつになるか分からない、という。みんな無言。運転手がドアを開けては、通りがかりの車に尋ねる。「おい、マラガに行ける道はないか?どう行くんだ?」どうやら迂回路が見つかって、ほっとしたのもつかの間、すごい渋滞でほとんど動かなくなってしまった。延々と続く車の列、水浸しのオレンジ畑は、濁流に洗われて木の根がむき出しになっていたり、ゴミが引っかかっていたり、悲惨な光景が展開する。のろのろと動いては止まり、車の列は果てしなく続く。
「おせいべい、いかが?」「これは○○さんから・・」時々食べ物が回ってきて、昨夜からほとんど食べてなくてへとへとになっている私の胃袋を慰める。やがて、濁流がすごい勢いで流れる小さな川を越えた。これが下流で氾濫しているとのこと。
何時間かたってお昼を過ぎた頃、ようやくバスはグラナダに向かう広い道に乗った。道路の両側は、ゴツゴツした岩山が続く。休憩のため立ち寄ったのはロハの町。前回来たときはじりじりと焦げ付きそうな日差しの中、白い家々が眩しかった。しかし、今度はあまりに違って見えた。どんよりした雲の下、町全体が重たく灰色に沈んでいる。以前乾ききっていた山々は、今は草も生えて薄い緑のベールを被り、たっぷりと雨水を吸い込んで、あちこちで土砂崩れを起こしている。
グラナダの町も、雨と霧の中に霞んでいて、山すそに広がる町の全景を見ることはできなかった。もう午後3時。スケジュールはめちゃめちゃ。今日の午後はゆっくりアルハンブラを見て、町を自由に歩けるはずだった。
バスは町の中心に入る。歩いている人々の傘を見ていて気がついた。奇妙な柄が流行っている。たいてい同心円の縞模様で、その配色がすさまじい。思わず目をむいてしまうほどの、奇抜で奇妙な色の配列。こういうのが、グラナダの人々の好みなのか。それとも、傘の柄なんて、気にしないのか。しばらくして、この傘の出所が分かった。真っ黒い、アフリカ人らしい男が、街角で例の傘を並べて売っていた。
やっとレストラン到着。当然ながらお客は誰もいず、音楽バンドの演奏もなく、ひっそり寂しい食事だった。それから、アルハンブラへ向かう。ぐずぐずしていると、日が暮れてしまう・・。
アルハンブラ宮殿、このお天気のせいもあって薄暗く、内部の細かい装飾の美しさも、やはりよく見えない。いつか、夜間照明がつくという夏の夜に来てみたいと思った。庭に出ると、雨は止んでいた。木々は色づき、柿の実がいっぱいなっている。なるほど、秋もいいもんだ。庭園を通って、ヘネラリーフェ離宮へ向かう。
入り口付近で、たくさんの猫たちが遊んでいた。いつかの猫たちに違いない。「お前たち、元気だった?」思わずしゃがみ込んだ私に、猫たちが寄ってきた。写真を撮ろうとカメラを構えていたら、コートの袖がずんずん重くなって、「何やってるのー?!」見ると1匹が袖の中に入り込んでいる。「こらー、泥んこになっちゃうじゃないの!」
ヘネラリーフェの庭園に足を踏み入れたとたん、雲が切れてさっと夕日が差し込み、辺りの木々を鮮やかに染め、噴水はきらきらと蘇った。夕日はサクロモンテの丘をくっきりと浮かび上がらせ、家々の白壁が眩しいほど。ここを何度も訪れている添乗員さんも、始めてみる景色とか。雨ばかりのお天気の中の、素敵なプレゼントを、神様に感謝しながら、黄金色の森の中を落ち葉を踏みしめながら歩いた。
ホテルは町外れにあった。夕食までの時間に、ホテルの中の店で買い物をする。アラブ風のドレスの試着に夢中で、後で部屋に戻る時、カメラが肩から下がっていないことに気がつかなかった・・。
夕食にパエリャが出たけど、かなり油がきつくて、まだ私の胃袋は受け入れてくれそうになかった。とにかくマドリッドまでの辛抱と、自分に言い聞かせる。マドリッドには日本料理店もあるから、一人ででも食べに行こう。
部屋に戻って、同室のMさんに買ってきたドレスを試着してもらったりで大はしゃぎしてたので、消えたカメラにはとうとう意識が向かなかった。明日はコルドバを経由して一気にトレドまで走る。びしょびしょのアンダルシアにはさほど未練もなかった。
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