1989/11/23 - 1989/12/03
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アーマさん
11月25日
また今日も曇り空。リスボンを後にバスは一路東へ走る。東の空がいくらか明るくて、もしかして青空が待っているかもと、祈るように見つめる。道路はほとんどまっすぐで、カーブも無く、のどかな田舎道。道の両側は松並木がトンネルのように果てしなく続き、それからコルク林となる。コルクの木はずんぐりと太く、その幹の途中まで樹皮を剥いである。ワインのコルク栓が採れるくらいだから、相当の厚みがありそう。その木がまた回復して、次の樹皮が採れるまで何十年もかかるとのこと。
昼食に立ち寄ったレストランは、国営のポウサーダだった。さすがにお料理はいい。一口食べて、「あっ、スペインの味に近くなった!」と嬉しくなった。なんだか故郷に近づいているような気がする。
再びバス。車内に流れる音楽を聴きながら、シェスタ・タイム。やがて国境の町、エルバス。踏み切りの遮断機みたいな縞々の棒が上がって、我々はスペインに入った。このあたりは、昔戦に巻き込まれ、スペインになったりポルトガルになったりしていたとか。家々のベランダにはスペイン風の飾り枠がついてて、ここはスペインだと、はっきり主張しているように見えた。
「みなさ〜ん、さあ、セビーリャの町ですよ。ついに着きましたよ。」添乗員さんの声に目が覚めた。さすがに疲れてきて、座席に横になっていたのだ。起き上がると、そこは街灯が柔らかく灯った黄昏のセビーリャの町。駅のそばを通り、古い城壁がイルミネーションに浮かび上がっているのに見とれていたら、バスはホテルの前に着いた。素敵なホテル!改装したらしく、新しくなっているけど、セビーリャのイメージ通りの豪華なホテルだった。
フロントの正面を少し奥に行ったところがパティオになっていて、中央に噴水があり、ザーザーと音を立てている。天井がガラス張りになっていて、モダンな中庭だが、壁を飾る絵タイルも見事だし、照明を浴びた噴水がとても美しい。部屋もとても素敵だった。窓を開けると町の灯が広がり、城壁が見える。今夜はフラメンコ・ショーの予定だけれど、キャンセルして、この景色を眺めていようと思う。
食事の時、聞いてみると、やはり前回と同じタブラオとのこと。キャンセルしたいと申し出ると、ツァーのみなさんに「もったいない!行きましょうよ〜」と言われたが、どうしても今夜は一人になりたかった。10時頃、みんなをロビーで見送った後「さあ、自由だ!」部屋に戻り、バルコニーに立つ。町の灯を眺め、ああ、またセビーリャに来れたと、しみじみ思う。
夜半過ぎ、一行が帰ってきた。今夜のは、たいしたこと無かった、と同室のMさんが言う。どうやらこちらも「陰」のシーズンのよう。
11月26日
セビーリャの朝は、再び雨。恨めしげに空を見上げる。バスは立派なお屋敷が見え隠れする広い道路を走る。このあたりはお金持ちの邸宅が多いとのこと。やがて、見覚えのある所に止まった。
あの白い鳩がいっぱいいた広場だった。雨はザンザン落ちていて、濡れるのがいやだと車内に残る人もいたけれど、私は傘を手にバスを降りた。広場には誰もいない。白鳩と遊んでいた子供たち、手のひらに餌を乗せてくれた少年、みんなどこで何をしているのかな。軒下で白鳩が2,3羽雨宿りをしていた。
アメリカ広場。前回は遠くから眺めただけだったけど、今度は回廊になっている建物の中にずんずん入っていく。回廊の中では、雨を避けてジョギング中の若い学生たちの姿。回廊に沿って、絵タイルで飾られたベンチが続く。トレド、バレンシア、セゴビアなど、各地の町の紋章と、歴史を表しているらしい。色が綺麗。
アルカーサル。中庭に入る。他に観光客は見当たらない。ガイドの説明を聞いていたら、突然がらんがらんとすごい音。見上げると、「ヒラルダの鐘が鳴っている!」塔の上に下がっているたくさんの鐘が、いっせいに回っている。そう、今日は日曜日、これからミサが始まるんだ。
カテドラルへ。パイプオルガンの音と、男性コーラスが静かに流れ、中央祭壇はシャンデリアとろうそくの灯で煌めいている。祈る人々の邪魔をしないようにそっと足音を忍ばせて、カテドラルの厳粛で荘厳な顔を見る。礼拝堂の周囲に、観光客のためにつけてあったライトは消してあり、4人の王が担ぐコロンブスの棺は、ひっそり闇の中。天井から降ってくる賛美歌のコーラスが心の中で共鳴する。ミサはやはり感動的。再びここに来れたことを感謝する。
雨が上がって雲が切れて、嬉しいことに青空が覗いてきた。でも、もうセビーリャに別れを告げなくてはならない。バスに乗り込んだ我々を見送ってくれたのは、見事な虹だった。何処へ行っても雨ばかりで、その合間に空がお詫びの印に見せてくれたに違いない。
バスはセビーリャを後にする。急にぎらぎらの太陽が差し込んできた。その日差しのきついこと、やっぱりアンダルシアなんだなあと思う。窓にカーテンもないので、「あ、これ、これがいいわ!」と濡れた傘を広げて日傘にする。これが実に具合がよく、日差しの向きが変わってもすぐフォローできるし、眩しさ無しに景色を楽しめる。傘も乾くし。でも、道行く人々がびっくりして目を見張った。
郊外に出ると、一面ぬかるみの平原。なんと、ここがひまわり畑!夏の景色との何という違い。ぬかるみの平原は、雨溝の跡を残し、果てしなくうねっている。その泥の海の中に、時々ムーア人の砦の跡や、くすんだ白い家々の塊りが、現れては去っていく。
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