![6月2日<br /> 朝のホテルの前は、ジプシー女たちの商売の場らしい。粗悪なテーブルクロスなど広げては観光客に押し付ける。<br /><br /> バスは、フラメンコ衣装などが下がった、小さな土産物店の立ち並ぶ通りを抜けて、うっそうと茂った森の中へ入っていった。坂道を登ったところで降りて、ガイドの後からついていくと、行く手に立ちはだかる、鍵の穴の形をした「裁きの門」、さあ、いよいよアルハンブラ。<br /><br /> たくさんの観光客、それにのら猫もいっぱい。ここから見上げる宮殿は、何のへんてつも無い、赤い角ばった建物。「イスラムでは、外観は大切にしません、大切なのは中、ココロです。人間も同じです。」ガイドの言葉。その通り、宮殿の中は、別世界だった。<br /><br /> ヘネラリーフェ離宮へ。バラがあちこちで咲き、いい香り。小鳥の歌を聞きながら歩き、森の中へ入っていく。やがて糸杉を刈り込んだ、フランス風の庭、そして一番奥がアラブの庭園。噴水の音。<br /><br /> 昼食は、近くのレストラン、コロンビア。アンダルシアのムードがいっぱい、青い絵タイルが美しい。料理もどれも美味しく、スペイン料理はほんとに日本人の口に合うなと思う。奥のほうでギターの音。出てきた一団を見て、みんな吹き出してしまった。「町内会のおじさんかと思った!」中の一人は、近所のおじさんにそっくりだった。みんなムスッとして愛嬌も無く、やりたくなさそうにギターやマンドリンを爪弾く。カメラを向けてもジロリ、と睨むだけ。腕前のほうも「町内会風」、我々のテーブルを囲むと、「荒城の月」をやり出した。<br /><br /> 食事の後、土産物屋に案内され、お買い物タイム。<br />やがて走り出したバスの中が、急に猛暑となり、エアコンが故障とのこと。運転手のぺぺさんが、直してみると、街角に止め、30分ほど待つこととなった。友人たちは、木陰のテラスに座って、飲み物を飲んでいる。私は一人でそのへんをぶらぶら。木陰は涼しいけど、ちょっと日なたに出るとじりじりと焼けつくような太陽。通りのはるか向こうには、雪を被った山々が見える。<br /><br /> 噴水の周りで子供たちが水遊びを始めた。びしょびしょになって騒いでいるうち、ついに服を脱ぎ捨ててザブン!<br /> ようやく直ったとのことで、バスに乗り込む。セビリアまで4時間とか。でも、走り出してじきにまた車内のエアコンが熱風に・・。「窓開けてみたらどう?」みんなで開け放つと、サーっと爽やかな風が吹き抜けた。これならOK。遠ざかるグラナダの町を、何度も振り返って眺める。何て美しい町。昨日の山越えと違って、今日のドライブは快適。ゆるやかにうねって広がるのはオリーブの木々、それに黄色いひまわり畑。<br /><br /> 道路工事している所があって、片道通行となるわけだが、その表示を見ていて気がついた。こちらでは、プラカードを持った男が立っていて、「STOP」か、「↑」なるほど。友人に話すと、「ほんと!」と、感心した彼女は、証拠の写真を撮ろうと、カメラ片手にバスの一番前に出て行った。「STOP」を持ったお兄さんにカメラを向けて、矢印に持ち替えるのを待ってたら、ぺぺさんが、写真を撮ってやるって、とか叫んだので、STOPのお兄ちゃんは照れちゃって、歯の1本欠けた口を開けて笑いながら、「通れ、通れ」と手で合図。「だめ、↑持ちなさいってば!」いくら叫んでもだめ、バスはのろのろと通り過ぎてしまった。<br /><br /> 途中のトイレストップは、真っ白な町、ロハ。バスを降りて強烈な日差しに、思わず声をあげる。それでも、町を見たくて、坂道を降りていくと、期待通りの白い家々が並ぶ通りに出た。真夏の日差しの中、町は眠っているかのよう。<br /><br /> 今度こそエアコンが直ったバスは、ひたすらセビリアへ。途中で、幌馬車の一団に出会った。ロシオ祭に向かうという。でも引いているのは馬ならぬ耕運機。のーんびりと進んでいる。車の奥にはフラメンコの衣装が下がっていて、綺麗な女性たちも乗っている。あまりのノロノロぶりに、たまりかねてバスは追い越しを始めた。<br /><br /> 大きな町に入る。セビリア。ホテルは郊外の、ペンキ塗りたてのような、真新しいところ。工事のドリルの音が廊下で響き、かなり失望。<br />食事の後、フラメンコ・ショーを見に行った。始めてみるフラメンコは、さすがに迫力満点。複雑なリズムが、時折すべて一線上でぴたりと静止するのが信じられない。感動の余韻に浸りながらホテルに戻ったのは12時近く。<br />](https://cdn.4travel.jp/img/thumbnails/imk/travelogue_album/10/05/58/650x_10055831.jpg?updated_at=1141428631)
1987/05/30 - 1987/06/05
505位(同エリア528件中)
アーマさん
6月2日
朝のホテルの前は、ジプシー女たちの商売の場らしい。粗悪なテーブルクロスなど広げては観光客に押し付ける。
バスは、フラメンコ衣装などが下がった、小さな土産物店の立ち並ぶ通りを抜けて、うっそうと茂った森の中へ入っていった。坂道を登ったところで降りて、ガイドの後からついていくと、行く手に立ちはだかる、鍵の穴の形をした「裁きの門」、さあ、いよいよアルハンブラ。
たくさんの観光客、それにのら猫もいっぱい。ここから見上げる宮殿は、何のへんてつも無い、赤い角ばった建物。「イスラムでは、外観は大切にしません、大切なのは中、ココロです。人間も同じです。」ガイドの言葉。その通り、宮殿の中は、別世界だった。
ヘネラリーフェ離宮へ。バラがあちこちで咲き、いい香り。小鳥の歌を聞きながら歩き、森の中へ入っていく。やがて糸杉を刈り込んだ、フランス風の庭、そして一番奥がアラブの庭園。噴水の音。
昼食は、近くのレストラン、コロンビア。アンダルシアのムードがいっぱい、青い絵タイルが美しい。料理もどれも美味しく、スペイン料理はほんとに日本人の口に合うなと思う。奥のほうでギターの音。出てきた一団を見て、みんな吹き出してしまった。「町内会のおじさんかと思った!」中の一人は、近所のおじさんにそっくりだった。みんなムスッとして愛嬌も無く、やりたくなさそうにギターやマンドリンを爪弾く。カメラを向けてもジロリ、と睨むだけ。腕前のほうも「町内会風」、我々のテーブルを囲むと、「荒城の月」をやり出した。
食事の後、土産物屋に案内され、お買い物タイム。
やがて走り出したバスの中が、急に猛暑となり、エアコンが故障とのこと。運転手のぺぺさんが、直してみると、街角に止め、30分ほど待つこととなった。友人たちは、木陰のテラスに座って、飲み物を飲んでいる。私は一人でそのへんをぶらぶら。木陰は涼しいけど、ちょっと日なたに出るとじりじりと焼けつくような太陽。通りのはるか向こうには、雪を被った山々が見える。
噴水の周りで子供たちが水遊びを始めた。びしょびしょになって騒いでいるうち、ついに服を脱ぎ捨ててザブン!
ようやく直ったとのことで、バスに乗り込む。セビリアまで4時間とか。でも、走り出してじきにまた車内のエアコンが熱風に・・。「窓開けてみたらどう?」みんなで開け放つと、サーっと爽やかな風が吹き抜けた。これならOK。遠ざかるグラナダの町を、何度も振り返って眺める。何て美しい町。昨日の山越えと違って、今日のドライブは快適。ゆるやかにうねって広がるのはオリーブの木々、それに黄色いひまわり畑。
道路工事している所があって、片道通行となるわけだが、その表示を見ていて気がついた。こちらでは、プラカードを持った男が立っていて、「STOP」か、「↑」なるほど。友人に話すと、「ほんと!」と、感心した彼女は、証拠の写真を撮ろうと、カメラ片手にバスの一番前に出て行った。「STOP」を持ったお兄さんにカメラを向けて、矢印に持ち替えるのを待ってたら、ぺぺさんが、写真を撮ってやるって、とか叫んだので、STOPのお兄ちゃんは照れちゃって、歯の1本欠けた口を開けて笑いながら、「通れ、通れ」と手で合図。「だめ、↑持ちなさいってば!」いくら叫んでもだめ、バスはのろのろと通り過ぎてしまった。
途中のトイレストップは、真っ白な町、ロハ。バスを降りて強烈な日差しに、思わず声をあげる。それでも、町を見たくて、坂道を降りていくと、期待通りの白い家々が並ぶ通りに出た。真夏の日差しの中、町は眠っているかのよう。
今度こそエアコンが直ったバスは、ひたすらセビリアへ。途中で、幌馬車の一団に出会った。ロシオ祭に向かうという。でも引いているのは馬ならぬ耕運機。のーんびりと進んでいる。車の奥にはフラメンコの衣装が下がっていて、綺麗な女性たちも乗っている。あまりのノロノロぶりに、たまりかねてバスは追い越しを始めた。
大きな町に入る。セビリア。ホテルは郊外の、ペンキ塗りたてのような、真新しいところ。工事のドリルの音が廊下で響き、かなり失望。
食事の後、フラメンコ・ショーを見に行った。始めてみるフラメンコは、さすがに迫力満点。複雑なリズムが、時折すべて一線上でぴたりと静止するのが信じられない。感動の余韻に浸りながらホテルに戻ったのは12時近く。
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グラナダ市内
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アルハンブラ入り口の、「裁きの門」
鍵穴に合う鍵を見つけた者だけが入ることを許されるのか。片隅に、鍵を握った手の彫り物を見つけた。 -
アルハンブラ敷地内には猫たちの王国があった
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アルハンブラ宮殿
中は別世界 -
アルハンブラ宮殿
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アルハンブラ宮殿
鍾乳飾りの天井 -
アルハンブラ
夏の離宮、ヘネラリーフェへ向かう -
ヘネラリーフェ
アラブ式庭園 -
ヘネラリーフェ
アラブ式庭園 -
「この椅子はらくだの皮で出来ています。これに座ると?」
「らくだ」
「はい、そうデス」 -
グラナダ お昼のレストランにて
町内会風の音楽サービス -
グラナダの街角
水遊びに興じる子供たち -
白い町ロハ
焦げ付くような日差しの下、期待通りの白い町があった -
顔の形の岩山
ここから、昔あるカップルが身投げをしたとかで
恋人たちの岩山、とか呼ばれているそう -
セビーリャに向かう道にて
ロシオ祭りの幌馬車の一団がのんびり走る。先頭はマリア様を祭る御輿で、引いていたのは農耕用トラクター。 -
セビーリャ
フラメンコを見に行く -
セビーリャ
フラメンコのフィナーレ
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