1961年10月2日（月）続2<br /><br />日本館の仮住まいから、直ぐ近くのスペイン館に引っ越す。<br />浮き草だった身分から、ささやかでもここの大地に根を下ろしたわけだ。<br /><br />いくら近くても、日本館の5階からスペイン館の4階に越すのは、楽ではなかった。<br />両方ともエレベーターがないので、重い荷物を持って階段を上下しなければならない。<br /><br />しばらくの間に、文献が山のように貯まった。<br />とても重くて、それだけでも、10回以上に分けて運ばなければならなかった。<br /><br />帰国の時には、まだまだ増えているだろう。<br />これは私の貴重な日本土産であり、宝物だ。<br /><br />だがこの大量の文献を日本に送るとなれば、その苦労は引っ越しどころの騒ぎではないだろう。<br />今のうちに出来るだけ整理をしてエッセンスにしておかなければ、帰ってからも忙しくて読めないだろう。<br /><br />ここに入居できたお陰で、今日からシテ（大学都市）のレジダン（住人）になることが出来た。<br />今までは、訪問客扱いだったのだ。<br /><br />レジダンになれば、一食の食事代が3.3フラン（238円）から2.2フラン（158円）へと、３分の1も安くなる。<br />食堂では、ビールが0.2フラン（14円）、ワインが0.3フラン（22円）と安いこともあり、暮らしはグッと楽になるだろう。<br /><br />日本から持参した資金は、70％方使い果たしたが、今月からは赤字無しの健全財政になりそうだ。<br />目標は、パリ滞在期間中全ての支出を、部屋代を含めて一日2ドル（720円）に抑え、3ドルを旅行費用に残すことである。<br /><br />生活は貧しくても、心は豊かに保ちたい。<br />

パリ 474 大学都市（シテ）の住人になる

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1972/10/02 - 1972/10/02

15504位(同エリア16384件中)

#その他

片瀬貴文さん

1961年10月2日（月）続2

日本館の仮住まいから、直ぐ近くのスペイン館に引っ越す。
浮き草だった身分から、ささやかでもここの大地に根を下ろしたわけだ。

いくら近くても、日本館の5階からスペイン館の4階に越すのは、楽ではなかった。
両方ともエレベーターがないので、重い荷物を持って階段を上下しなければならない。

しばらくの間に、文献が山のように貯まった。
とても重くて、それだけでも、10回以上に分けて運ばなければならなかった。

帰国の時には、まだまだ増えているだろう。
これは私の貴重な日本土産であり、宝物だ。

だがこの大量の文献を日本に送るとなれば、その苦労は引っ越しどころの騒ぎではないだろう。
今のうちに出来るだけ整理をしてエッセンスにしておかなければ、帰ってからも忙しくて読めないだろう。

ここに入居できたお陰で、今日からシテ（大学都市）のレジダン（住人）になることが出来た。
今までは、訪問客扱いだったのだ。

レジダンになれば、一食の食事代が3.3フラン（238円）から2.2フラン（158円）へと、３分の1も安くなる。
食堂では、ビールが0.2フラン（14円）、ワインが0.3フラン（22円）と安いこともあり、暮らしはグッと楽になるだろう。

日本から持参した資金は、70％方使い果たしたが、今月からは赤字無しの健全財政になりそうだ。
目標は、パリ滞在期間中全ての支出を、部屋代を含めて一日2ドル（720円）に抑え、3ドルを旅行費用に残すことである。

生活は貧しくても、心は豊かに保ちたい。