1972/10/02 - 1972/10/02
15504位(同エリア16384件中)
片瀬貴文さん
1961年10月2日(月)続
スペイン館に人気のない理由は、二つあるようだ。
その一つは、規律の厳しさ、窮屈さ。
夜12時になると入り口のドアに鍵がかかり、寝ている受付のおじさんを起こさなければ入館できない。
日本館では、24時間出入りは自由だった。
玄関の受付にはいつも見張りが座っていて、二階より上の居室には、女性の出入りを厳しく拒んでいる。
ほかの多くの館では、異性を自分の部屋まで連れて行くことが、見過ごされているようだ。
もう一つの人気のない理由は、フランコ独裁政権が、自国の若者のパリにおける行動を、厳しく把握、管理していることだと言われている。
そう言えば、スペイン館といっても、スペイン人の影が余り見当たらないように感じる。
名前にしても、日本館は「メゾン(家)」だが、スペイン館は「カレッジ(学校)」と名乗っている。
外観も、日本館が天守閣をモデルにしているのに比べ、スペイン館は修道院風だ。
しかし、良さもたっぷりある。
一人部屋のこともあって、行動の自由が拘束されない。
館内はひっそり静まりかえっていて、これから思う存分仕事が出来そうだ。
日本語を話さずに一日を送ることが出来るのは、私の語学修行にとって恵まれた環境である。
ベッドも椅子も板張りで固く、質素だが、修道院と考えれば当然だろう。
最初は気になった毎日数時間続くピアノの音も、慣れれば騒音が楽音になった。
何より部屋代が毎月80フラン(当時5,700円)という安さは、魅力である。
日本館ならば、二人部屋でも120フラン、一人部屋で200フランもするから、月々120フラン(当時8,600円)もの節約は大きい。
私のフランス政府からの給費は月当たり750フラン(当時54,000円)だから。
それでも日本の月給35,000円に比べれば、高額なのだが。
当面貯金をして、旅行の資金を貯めなければならない。
目標は一日2ドル貯めて、旅行はどんなに節約しても一日5ドルかかる。
二ヶ月間の旅行をするとすれが、五ヶ月の窮乏生活に耐えなければならない。
スペイン館の部屋代で節約できるのは、毎月120フラン、すなわち24ドルだから、五日間の旅行経費に相当する。
PR
この旅行記のタグ
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
0
0