1986/01/01 - 1986/01/13
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アーマさん
1986. 1月1日
小雨のぱらつく元日の朝、届いたばかりの年賀状の束を見る暇もなく、車にトランクを運び込んで出発。1週間ほどインフルエンザで寝込んでしまって、何となく足元に力が入らない。
午後3時過ぎ、成田空港着。今回も一緒に旅するこもちゃんと、久しぶりの再会。彼女の友人のHさんを紹介され、挨拶を交わす。
我々のツアーは22名。旅慣れた人たちのよう。
飛行機は飛び立った。やがて数時間後香港。100万ドルの夜景、ものすごい光の塊の高層ビルが林立。腕時計の針を1時間戻した。再び離陸し、2度目の夕食が出る。日本時間だと、もう午前2時半。
日本時間1月2日午後1時14分、長い夜がついに明ける。下界はいちめん雲のじゅうたん。朝日を浴びて、その表面のふちが、真っ白に輝く。我々はその上にぽっかり浮かんでいるみたい。
ミラノ着。曇り空。名物の霧や雪がないだけラッキーとのこと。ポプラ並木にレンガ色の家々。1時間余り走って、市内のレストラン「ピッコロ・パードレ」へ。店内はソーセージや干しとうもろこしなどが天井からぶら下がっていて、壁には陶器や皿が賑やかに飾ってある。ワインが入った壷が運ばれ、あまり食欲はなかったけど、楽しい雰囲気に、「道中の無事を祈って・・」「乾杯!」薄切りのハムとワインがすごく美味しい。次に出されたのはマカロニ料理、そして肉料理、デザートはアイスクリーム。
2時近くまでゆっくり過ごし、それからバスに乗り込み、市内観光。雨がぱらついてきた。ミラノはどこかパリの香りがする。どっしりした石造りの建物が並ぶ。バスを降り、傘はまだトランクの中なのでしかたなくスカーフを被って、ガイドの女性の後からぞろぞろと歩いていく。入った建物はスカラ座。「今夜は日本の演出家によるオペラ、蝶々婦人があります。」切符はとうに売り切れとのこと。まだお昼休みのため内部見学はできなかった。
スカラ座のすぐそばから、有名な「エマニュエル2世アーケード」が続いている。お天気が良くないので薄暗く、両側に並ぶのは高級なお店ばかり。「このアーケードも、時にはオペラに利用されます。舞台衣装をつけた出演者たちがここを歩いてまっすぐスカラ座に入り、舞台に立つのです。」
アーケードを抜けると、目の前にかの有名なドゥオモが聳え立っていた。一番高い尖塔には金色のマリア様が。内部の祭壇あたりにはミラノに尽くした司教様とかのミイラが、銀のマスクを付けて飾って(?)ある。ライトで照らされて、あれでは安眠できないのでは・・?
またスカラ座に戻る。舞台ではとんとんと金槌の音、指図する舞台監督の声が飛び交って、今夜の準備の真っ最中。ボックス席の一つに入って、しばらく眺めていた。ロビーにはオペラに使われた古い小道具類が展示してある小部屋があった。今夜のオペラ、見たかったな。
次にバスで向かったのは、サンタマリア・デレ・グラツィエ教会。がらんとした部屋の奥が煌々と照らされていて、そこに修復中の、ダ・ビンチの「最後の晩餐」の壁画があった。足場が組まれ、強いライトのせいで絵がよく見えない。しかたなく、「修復中」の証拠にと、カメラのシャッターを押す。・・と、ぱっとフラッシュが光ってしまった。(しまった!)ぎょっとガイドさんが振り返り、「気をつけてください、ここの管理人は厳しいのです。ピストル下げて吹っ飛んで来ますよ!」「すいませ~ん・・」
次にスフォルツェスコ城へ。ミラノを治めたスフォルツァ家の城。古い城門の前でバスを降り、中庭を通り、中へ。内部は博物館になっている。彫刻、鎧、兜など・・。ミケランジェロの晩年の作品ピエタは、一番奥の部屋の片隅にあった。未完成の作品は、つい昨日まで彫っていたように生々しい。ノミで荒く削った顔や胸が、暗い部屋の中にライトを浴びて浮かび上がっている。
城を出た。外はだいぶ暗くなっていた。午後4時を過ぎると、もう日が暮れる。相変わらず冷たい雨が落ちている。スカーフもすっかり濡れて冷たくなってしまった。夕暮れのミラノの街、クリスマス用のイルミネーションがまだ飾ってあり、とてもきれい。道端のベンチには人影もなく、枯葉がいちめんに覆っている。
ホテルはヨーロピアン・スタイルで、がたがたと木の箱みたいなエレベーターで上がって部屋に行く。部屋はこざっぱりとして手ごろな広さ、でも天井だけはかなり高い。ベッドに大の字になって伸びる。夕食は7時半。2時間以上あるけど、休んでいよう。シャワーを浴びて、着替える。
夕食はホテル内のレストラン。みんなそろった頃、添乗員の徳田さんがあらためて挨拶。それから、一人一人が簡単に自己紹介。各テーブルの上に、旅行会社からのサービスという赤ワインが1本ずつ。徳田さんにワインを炭酸で割るのを教わって、試してみる。ほんと、飲みやすい。いくらでも飲めそう。こもちゃんは飲みすぎて少々具合が悪くなり、早々に部屋に引き上げた。(デザートのピスタチオのアイスクリームが美味しかった!)
こもちゃんはそのままベッドに潜り込む。私はテーブルに向かって、「ミラノより新春のご挨拶を申し上げます・・」葉書を5、6枚書き終えたら、もう9時半近く。
1月3日
7時15分、電話のベルが鳴る。「Good morning....thank you」こもちゃんが眠そうな声で受けた。大きな窓を開け、頑丈なブラインドのひもにぶら下がり、えいと引くと、ゴゴゴとゆっくり上がった。外は7時過ぎというのに真っ暗。
テレビをつけてみる。喜劇物をやっていた。イタリア人は表情豊かなので、言葉は分からなくても面白さは伝わってくる。うまいなあと思った。それから、子供向けアニメが始まる。主題歌の、イタリア語のメロディー、どこかで聞いたと思って画面を見ると、「あれっ、これ黄金バット!」イタリア吹き替えものでありました。登場人物がみんなイタリア語を喋っているのも、何だか奇妙。
朝食は階下のレストランで、バイキング・スタイル。食パンみたいな長くて黄色い塊が運ばれてきた様子。Hさんが切り取って持ってくる。「美味しーい!」チーズだった。飲み込んだ後もしばらくチーズって感じが持続。
バスに乗り込んで出発。霧の中をヴェローナに向かう。外はようやく明るくなって、町は動き出していた。郊外に出ると、この時期なのに青々とした牧草地が広がる。寒冷地の牧草とかで、夏には枯れてしまうんだそうな。ヒーターで窓ガラスがすぐ曇ってしまうので、何度もティッシュで拭かねばならなかった。
川があった。渡る時覗き込むと、ピンクがかった白い石がごろごろしている。大理石かな。
9時45分、ヴェローナ着。古い城門が見えてきて心が躍った。霧も少し薄れてきている。石畳の広場でバスを降りた。ひんやりとした空気。目の前には巨大な円形劇場アリーナ。夏にはここでオペラが上演されるとか。
町の中に入っていく。古めかしい建物。イタリアの中世の町を始めて実感。すてき。洒落たお店が並ぶ。ヴェローナはイタリア人の憧れる町で、物価が一番高くてお金持ちが多いとのこと。とある石造りの門をくぐって中へ。中庭が続いている。ここがジュリエット(イタリア式にはジュリエッタ)の家だった。小さなバルコニーは、相当な高さがあって、映画のイメージとはかなり違って見える。
1時間ほどフリータイム。「トイレに行きたい方」ハイ、ハイと徳田さんの後に続いてコーヒースタンドのようなバールへ。私の番が来て、トイレに入ったまではよかったけど、カギの調子がおかしくて、開かなくなってしまい、大慌て。たまらず外に声をかける。「すみませーん・・」「右へ廻してみて・・。じゃ左へ」徳田さんの声。やっと開いてほっ。仲間たちはカプチーノを飲んでいた。
あと30分。我々3人は、朝市に行ってみる。テントの下には果物、野菜が山積みされている。それに肉屋、雑貨屋、etc. こもちゃんはさっそくみかんを買う。コロコロと小粒で色も濃いけれど、確かにオレンジではなく<みかん>おばさんがにこにして計ってくれる。「美味しいよ」とか言いながら。
土産屋に人形が並んでいる。もちろん、ロミオとジュリエット、イタリア式ではロメオとジュリエッタ。ウィンドーから覗いていたら、中のおばさんがにっこりして手招き。ガラス戸を恐る恐る開ける。「ボン・ジョルノ・・」暖かそうな毛皮のロングコートに身を包んだ婦人が二人、座っていた。リュートを抱えたロメオのほうは気に入ったけど、ジュリエッタのほうはいまいち。中世風の衣装はいいんだけど、可愛くない。どこか別のところで買おうとロメオだけを包んでもらう。・・・後で後悔。ジュリエッタはどこにもいなかった。
そろそろ時間。バスに戻って、さっき買ったみかんを食べる。味が濃くて美味しい。高速道路に乗る。小型車が多い。イタリアではガソリンが高いらしい。霧が濃くて景色は見えない。
突然バスの中に「ウルトラマン」のテーマソングが流れ、びっくりして見回すと、ファミリーで参加の一家の、2歳の男の子が、お気に入りのテープを持参してかけてもらったらしく、バスの通路の真ん中でポーズを決めている。イタリアまで来てウルトラマンか~、と苦笑い。霧を通して、白っぽい太陽がかすかに見えている。もうじきベネチア。
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