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緩やかな坂道をぐんぐん登っていくと、山の頂きに見え隠れする小さな村が見えてきた。<br />ある人が「山の上にちょこんと乗せた帽子のよう」と比喩していたけど、なるほどと思う。<br />大好きな絵本「ウルスリのすず」の舞台となった村、グアルダに居る自分が信じられない。<br />小道に続いてとんがり屋根の教会、その向こう側にそびえる山、家の丸い玄関に井戸。<br />目の前に広がる景色はどれもこれも絵本の通りだ。<br />ああ、嘘みたい、嘘みたい。<br />明日の朝起きたら、「これは夢でした。」なんてことではないのだろうか?<br />そんなことを思いつつも、ひんやり冷たい風がここに来たことを実感させてくれた。  <br /><br />グアルダはスイスの南東部、エンガディン地方と呼ばれる谷間にある小さな村。<br />エンガディンでは他にもシュクオールなどの有名な温泉保養地がある。<br />公用語はこの地方だけに残るロマンシュ語。<br />チューリッヒからは車で2時間ほどで、途中車ごと列車に乗ってひと眠り出来るくらいの長い長いトンネルを抜け、列車を降りたらいかにもスイスらしい山間の景色を眺めつつどんどん進む。<br />車でなければ列車やポストバスなどが交通手段になるが、冬は深い雪に閉ざされ、まるで陸の孤島になってしまうそうだ。 <br /><br />独特の建物は、釘などで引っ掻いて下地に塗られた漆喰を模様のように浮き上がらせる、「スグラフィッティ」という技法を使って美しく装飾されている。<br />壁は厚く、窓は二重になっていて、さすがに寒さ対策は万全。<br />感心したのは、窓を嵌めている壁は内側に向かって広く切られていて、そうすることで部屋の中に入ってくる冷気は最小限に抑え、光は最大限に差し込む。<br />それぞれの家の窓には可愛らしいレース編みモーチーフが飾られていたりして、思わず笑みがこぼれる。<br />厳しい冬を明るい気持ちで過ごせるよう、いろいろな知恵をもって凌いでいた昔の人の生活が偲ばされる。 <br /><br />チューリッヒへ着いて1日開け、早々にグアルダへ小旅行に発ったのは、毎年3月1日に行われるこの地方に伝わるお祭り、「チャランダマルツ」を見学するためだ。<br />これこそまさに「ウルスリのすず」の物語りのそれなのである。<br />それは冬の悪魔を追い払い、牧草が良く育つようにと願う春を呼ぶ子ども達のお祭り。<br />村中の男の子が肩から大きなカウベルを下げて、大きな音を鳴らしながら町中を練り歩き、女の子達はその愛らしい声でチャランダマルツの歌を歌う。<br />「ウルスリのすず」のウルスリ君は大きな鈴を借りることが出来ず、両親に黙って山の上の夏の小屋へ大きな鈴を取りに行き、そのまま眠りこけ一晩過ごし、両親を大いに心配させるのだが、念願かなって大きな鈴を鳴らしながら行列の先頭を歩くというかわいいお話。 <br /><br />お祭りの前の日とあって、家々からカウベルの音が聞こえてくる。<br />聞けば今夜は前夜祭で、村で一番大きなホテル、「マイサー」に村中の人が集まって宴があるとのこと。<br />子ども達だけですべてを企画し、家族を招待するそうだ。<br />誰でも参加出来るということなので、夕食のあとお茶がてら覗いてみた。<br />レストランを出ると、ホテルの方向から軽快なベルの音が聞こえてくる。<br />いざホテルの玄関に入った途端、耳をつんざくベルの音が、隣のMの話し声も聞こえないほど。<br />圧倒されて立ちすくんでいると、階段の上の方から鈴の行列が降りてきた。<br />ホテル中の部屋という部屋を何度も何度も練り歩いて、冬の悪魔を追い払っている真っ最中だ。奥の広間には村中の人が集って、飲んだり食べたりしていた。<br />受け付け係り女の子達も気持ちよく迎えてくれ、私たちは広間の奥のラウンジに座った。<br />間もなく鈴行列は終わり、子ども達はそれぞれの両親の元へ。<br />これから朝まで歌い踊るのだという。<br />大人も子どもも一緒になって、どの顔もどの顔も楽しさで溢れんばかりの笑顔。<br />なんかいいなぁと思った。<br /><br />そのうち頼んでいた紅茶が運ばれてきたが、カップの中にはお白湯が・・・。<br />え?何?これって透明な紅茶?<br />唖然とするが、よく見ると受け皿にティーバッグがある。これを浸して飲むらしい。<br />Mの話によると、スイスではこのスタイルはポピュラーなんだそうだ。<br />びっくりした。<br />こうしてスイス2日目は終わる。明日はいよいよチャランダマルツだ。<br />興奮してその夜は眠れるはずもなかった。

スイスに住む友人を訪ねて・絵本の村 グアルダ編 その1

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2003/02/29 - 2003/03/01

145位(同エリア188件中)

2

10

さかこ

さかこさん

緩やかな坂道をぐんぐん登っていくと、山の頂きに見え隠れする小さな村が見えてきた。
ある人が「山の上にちょこんと乗せた帽子のよう」と比喩していたけど、なるほどと思う。
大好きな絵本「ウルスリのすず」の舞台となった村、グアルダに居る自分が信じられない。
小道に続いてとんがり屋根の教会、その向こう側にそびえる山、家の丸い玄関に井戸。
目の前に広がる景色はどれもこれも絵本の通りだ。
ああ、嘘みたい、嘘みたい。
明日の朝起きたら、「これは夢でした。」なんてことではないのだろうか?
そんなことを思いつつも、ひんやり冷たい風がここに来たことを実感させてくれた。

グアルダはスイスの南東部、エンガディン地方と呼ばれる谷間にある小さな村。
エンガディンでは他にもシュクオールなどの有名な温泉保養地がある。
公用語はこの地方だけに残るロマンシュ語。
チューリッヒからは車で2時間ほどで、途中車ごと列車に乗ってひと眠り出来るくらいの長い長いトンネルを抜け、列車を降りたらいかにもスイスらしい山間の景色を眺めつつどんどん進む。
車でなければ列車やポストバスなどが交通手段になるが、冬は深い雪に閉ざされ、まるで陸の孤島になってしまうそうだ。

独特の建物は、釘などで引っ掻いて下地に塗られた漆喰を模様のように浮き上がらせる、「スグラフィッティ」という技法を使って美しく装飾されている。
壁は厚く、窓は二重になっていて、さすがに寒さ対策は万全。
感心したのは、窓を嵌めている壁は内側に向かって広く切られていて、そうすることで部屋の中に入ってくる冷気は最小限に抑え、光は最大限に差し込む。
それぞれの家の窓には可愛らしいレース編みモーチーフが飾られていたりして、思わず笑みがこぼれる。
厳しい冬を明るい気持ちで過ごせるよう、いろいろな知恵をもって凌いでいた昔の人の生活が偲ばされる。

チューリッヒへ着いて1日開け、早々にグアルダへ小旅行に発ったのは、毎年3月1日に行われるこの地方に伝わるお祭り、「チャランダマルツ」を見学するためだ。
これこそまさに「ウルスリのすず」の物語りのそれなのである。
それは冬の悪魔を追い払い、牧草が良く育つようにと願う春を呼ぶ子ども達のお祭り。
村中の男の子が肩から大きなカウベルを下げて、大きな音を鳴らしながら町中を練り歩き、女の子達はその愛らしい声でチャランダマルツの歌を歌う。
「ウルスリのすず」のウルスリ君は大きな鈴を借りることが出来ず、両親に黙って山の上の夏の小屋へ大きな鈴を取りに行き、そのまま眠りこけ一晩過ごし、両親を大いに心配させるのだが、念願かなって大きな鈴を鳴らしながら行列の先頭を歩くというかわいいお話。

お祭りの前の日とあって、家々からカウベルの音が聞こえてくる。
聞けば今夜は前夜祭で、村で一番大きなホテル、「マイサー」に村中の人が集まって宴があるとのこと。
子ども達だけですべてを企画し、家族を招待するそうだ。
誰でも参加出来るということなので、夕食のあとお茶がてら覗いてみた。
レストランを出ると、ホテルの方向から軽快なベルの音が聞こえてくる。
いざホテルの玄関に入った途端、耳をつんざくベルの音が、隣のMの話し声も聞こえないほど。
圧倒されて立ちすくんでいると、階段の上の方から鈴の行列が降りてきた。
ホテル中の部屋という部屋を何度も何度も練り歩いて、冬の悪魔を追い払っている真っ最中だ。奥の広間には村中の人が集って、飲んだり食べたりしていた。
受け付け係り女の子達も気持ちよく迎えてくれ、私たちは広間の奥のラウンジに座った。
間もなく鈴行列は終わり、子ども達はそれぞれの両親の元へ。
これから朝まで歌い踊るのだという。
大人も子どもも一緒になって、どの顔もどの顔も楽しさで溢れんばかりの笑顔。
なんかいいなぁと思った。

そのうち頼んでいた紅茶が運ばれてきたが、カップの中にはお白湯が・・・。
え?何?これって透明な紅茶?
唖然とするが、よく見ると受け皿にティーバッグがある。これを浸して飲むらしい。
Mの話によると、スイスではこのスタイルはポピュラーなんだそうだ。
びっくりした。
こうしてスイス2日目は終わる。明日はいよいよチャランダマルツだ。
興奮してその夜は眠れるはずもなかった。

  • 美しい模様のスグラフィッティ。

    美しい模様のスグラフィッティ。

  • 家が10軒あれば、スグラフィッティも10通り。<br />ひとつとして同じ家はない。

    家が10軒あれば、スグラフィッティも10通り。
    ひとつとして同じ家はない。

  • 村で一番大きなホテル、「マイサー」。

    村で一番大きなホテル、「マイサー」。

  • メインストリート。<br />数軒しかないホテルやレストラン、お土産屋さんが並ぶ。

    メインストリート。
    数軒しかないホテルやレストラン、お土産屋さんが並ぶ。

  • 宿泊したホテル。<br />通りから一段下がったところにあり、まるで隠れ家のよう。

    宿泊したホテル。
    通りから一段下がったところにあり、まるで隠れ家のよう。

  • かわいいホテルのしつらえ。

    かわいいホテルのしつらえ。

  • 村から見えるアルプスの山。

    村から見えるアルプスの山。

  • 絵本と同じ風景。

    絵本と同じ風景。

  • 絵本と同じ井戸。

    絵本と同じ井戸。

  • 鈴行列が悪魔を追い出す。

    鈴行列が悪魔を追い出す。

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この旅行記へのコメント (2)

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  • kioさん 2005/05/22 21:42:56
    カウベルの鈴の音
    積年の思いを重ねてきた憧れの地にいる自分が
    不思議で仕方がないという感覚が伝わってきます。
    きっと子供達の鳴らすカウベルの鈴の音は何年経っても
    ふと思い出すにつけ、いつまでも耳の記憶として残リ続けるんでしょうね

    さかこ

    さかこさん からの返信 2005/05/24 19:04:37
    RE: カウベルの鈴の音
    >kioさん

     実をいうと今でも信じられません。笑
     思い入れが強すぎたがために、どれもこれもが夢のような感じでした。
     だけど毎年3月1日になると、
     「今日もグアルダではカウベルの音が鳴り響いてるのかな」
     って懐かしく思い出し、
     「本当にあそこに自分が居たんだな〜」
     って実感するのです。
     たぶん、もう二度と行くことのないだろうグアルダ、一生忘れません。^^

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