1970/07 - 1970/07
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ソフィさん
目を覚ませば、窓越しに初夏の澄み切った空が眩しい。その真っ青な空を背景に、アンヴァリッドの大ドームが金色に、キラキラ輝いている。
「僕は今まぎれもなく、パリの土を踏んでいるのだ!」
胸がじーんと疼く。
パリに着いたのは、昨日の夕暮れだった。
エア・ターミナルで「一番安い部屋を」と注文し、紹介されたのが一泊たった10フラン(720円)の、この小さなホテル。もちろんシャワーもトイレもない。歩くたびに板張りの床がギーギーときしむ。
パリの安宿と言えば屋根裏の薄暗い部屋を連想するが、ここは一味違っていた。
アンヴァリッド広場に面し、寝ながらに大ドームを仰ぐ窓。こざっぱりとかわいい花柄のカーテンと、対のベッドカバー。光があふれる清潔な部屋。よく磨き込まれ、すり減って木目が出ている床は、この街や建物の歴史を物語っている。
私は初めて迎えるパリの朝に酔っていた。
「ボンジュールムッシュー。ビアンドルミー?(よく眠れましたか)」
50才がらみのマダムは、ホテルのオーナーだった。はるばる異郷にやって来た私を励ますように、元気な声をかけてくれる。
彼女はこぼれる笑顔で、せっせと動き回っている。この十室あまりのホテルで、掃除どころか、受付から朝食の用意まで一人でこなしているらしい。
「精が出るね」
「私の楽しみなんだものね」
彼女の生きがいは、客を喜ばせることのようだ。
初めて接するフランス人。私はその前向きな姿がすっかり好きになり、これからの不安な外国生活の前途に明るさを感じた。
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