立山黒部旅行記(ブログ) 一覧に戻る
2001年9月8日(土)<br />今年の夏休みは昨年と同じ日本海を目指す旅にした。昨年のキャンプは雨にたたられて豪雨の中、僕たちたった一組だけのキャンプだった。五箇山と高山は雨の中の観光で、平湯からの帰りは安房トンネルが通行止めになり、富山に出て北陸自動車道から長野自動車道、中央高速と走り継いで、あげくの果てに膝の関節を痛める、というオマケまで付いた。<br />今年はそのリベンジだが、キャンプ場から先の行く先が違う。立山駅から室堂に上がり、弥陀ケ原から室堂のあたりを散策しようというのだ。今回は行く先が山の上であり、しかもバスしか通れない場所なので是非とも天気に恵まれて欲しい。そういった意味でもリベンジなのである。<br /><br />8日朝5時過ぎから準備して、出発は6時10分。今日は早く目的地に着いてノンビリしたいので急ぐ旅。御殿場から東富士自動車道が河口湖の中央高速に導いてくれる。都留のPAでトイレ休憩。中央高速本線に入ると土曜日ということもあって、いつもよりも混んでいる感じがする。それでもいつもの諏訪南を過ぎたのは家を出てから2時間後の8時10分だから、順調な方だ。岡谷で長野自動車道に入る。2度目の休憩はみどり湖。ここも小さなPAで何もないのでトイレのみ。豊科を過ぎると、さすがに通行量も減ってくる。長野自動車道は山に囲まれた中を道路だけが延びている。姨捨のSAはそんな山から出たばかりの、川中島平を見下ろす高台にある。このSAは今まで立ち寄ったことがなかったので、ここで大休止。見晴らしも良いし展望台もあるので、少し歩いたりして気分転換してから出発。更埴で軽井沢方面への道を分け、長野を過ぎると走る車は更に空いてくる。今日は妙高に寄らずにもっと先まで行こうかと思ったが、ここまでで既に走行距離は350キロを超えガソリンが心細くなってくる。今回は妙高高原ICの一つ手前、信濃町(東京みたいだ)のインターで降りてみた。降りた時間が10時10分。家を出てから4時間で妙高まで来れるのだ。インターから下の道を通ってガソリンスタンドを探しながら妙高方面に向かう。でも、高速道路同様、周辺に何もない道路が真っ直ぐに伸びているだけだった。結局スタンドに入ったのは妙高高原インターを過ぎたところ。ここまで来たのだからお昼は「たかさわ」で取ることにして妙高スキー場の方に入る。いもり池あたりまでは昨年と同じだったが、杉の原のあたりで道路工事のため迂回を強いられる。村の中の細い道をくねくねと行くが、見覚えのある橋のたもとに出ることができた。ここから「たかさわ」までは直ぐだ。開店が11時からなのでちょっと早いかと思ったが、丁度暖簾を出しているところで「入っても良い」とのことだった。ところが、お店を新しくしたらしく道路側の方に手打ちの実演場所と座敷が設けてある。その奥に、今までどおりの木を切ってテーブルやイスにしただけのお店がある。僕たちには、こっちの昔ながらのお店の方が良い。早速ざるそばを注文。今回はてんぷらも1人前だけ頼んでみた。その間に文子は100円で売っているキノコや野菜を見る。突き出しで出されるキノコの煮物が美味しかった。お蕎麦は手打ちで固め。でもお汁も僕に合った味で、とても美味しい。やっぱり、この周辺に来たらこのお店に限る。僕たちが食事を終えて出る頃には何組かのお客さんが来ていたが、今日は僕たちが、入ったのも出たのも1番だった。<br />11時半、再び長野自動車道に乗り日本海に向かう。妙高から先は対面通行だが全体的に空いている。それなのにノロノロ走っている車があるとイライラする。上越ジャンクションで北陸自動車道に合流。能生まではいくらも時間が掛からない。能生の「お魚センター」も去年来たばかりなので直ぐ分かる。駐車場は一杯だったが運良く止めることができた。ところが、地元名産のカニが、今日から解禁日なのだが海が荒れて出漁できず、市場も明日からになる、との断り書きが出ている。でも、僕たちの夕食は、ここで仕入れることを前提にしているので何か買わなければ困ってしまう。地元のカニ屋さんは休業だが3軒の魚屋さんがあるのでホタテとハマグリ、それにズワイガニを買う。帰りの道沿いに、小さな島のある景色の良い海岸があったのでちょっとだけ立ち寄って写真を撮る。ここは夏の間、海水浴場らしく駐車場も有料で海も綺麗だった。北陸自動車道はトンネルが多い。能生から親不知を通って朝日のインターまで途切れ途切れに長いトンネルが続く。朝日のインターはトンネルを出た直後にある。国道に出て新潟方面に少し戻ると15分くらいで朝日ヒスイ海岸に出る。国道からJRの線路を横切り松林に囲まれた綺麗なロッジに向かう。ここが今日のキャンプ場だ。管理棟で手続きをして区画を割り当ててもらうと1番だった。<br />しかし、今年はキャンプする人が多く、隣の区画も向かいの区画も一杯だった。早速テントの用意をする。新しくしたのでテントもタープも椅子もみんなコールマンになった。幸い天気は曇りではあるが雨は降っていない。でも、今夜は降るようなことを予報では言っている。そこでタープの張り方に工夫を要し、できるだけ軒下が広く取れ、しかも、テントの雨除けになるようにした。でも、そんなことで結構時間が掛かってしまった。<br />小休止して海岸に出る。海の色は去年と同様、あまりすっきりはしないが、小石と砂浜の人気のない海岸がどこまでも続いていた。テントを張るのに結構汗をかいたので、食事の前にお風呂に行くことにする。去年行った宝温泉は露天風呂こそあったものの、銭湯みたいな感じだったので、今年はもう一つの温泉、「さざなみ温泉」に行くことにする。<br />さざなみ温泉は、キャンプ場から少し新潟寄りに走り、JRの踏切りを渡ったすぐ左手にある。外見では旅館ではなくレストランのような感じである。受付で靴を脱ぎ、2階に上がった突き当たりが温泉だった。お風呂は小さかったし、露天風呂も小さかったがJRの線路に面していて、日本海が良く見える。お湯も洗い場も綺麗で、僕は結構気に入ってしまった。尤も、入っていた人が少なかったせいもあるかもしれない。最初は4人くらいいたが皆先に出て行ってしまって途中からは僕一人だった。僕が出る頃にはまた4?5人入ってきたが。出たところが畳敷きの休憩所のようになっていてノンビリすることができる。ここで文子と待ち合わせ。文子も空いていて良かったそうだ。<br />帰りに駐車場を出ようとした時に、僕の車が湘南ナンバーだったので文子が湘南にお住まいですか?と聞かれたそうだ。そうです、って答えたけど、桑田啓介と同じ茅ヶ崎に住んでます、って言えば良かったかしら、と悔やんでいた。<br />キャンプ場に戻っても、まだ4時半くらいで明るいが、食べる用意を始める。今年は携帯用のBBQ用コンロも買ったのだ。海岸でBBQをした時、ガスコンロでやったら、タレや肉汁がコンロに落ちて火が点かなくなってしまったからだ。丁度、この頃から雨が降ってきたが、去年のような豪雨ではない。BBQで嫉く貝からお醤油の嫉ける良い匂いがする。こういう匂いはたまらなく食欲をそそる。ホタテを食べ、蛤を食べ、カニも食べる。食べるのに時間の掛かるものばかりだった。そして最後は肉。やっぱりお肉を少しは食べないとネ。この頃にはもうすっかり暗くなっていたけれど、今年はランタンも新しいのを買ったので明るい。山の中のキャンプでは昔ながらのランプの灯りが良いけれど、こういう整備されたキャンプ場では明るい光が欲しくなる。全部食べてビールも飲んであとは寝るだけ。大声で騒ぐ人もなく、JR北陸線の音だけが聞こえる静かな夜だったが、街灯がなかなか消えずテントの中も少し明るかった。<br /><br />9月9日(日)<br />朝、目を覚ますと雨は止んでいる。まだ早朝5時に起きてしまった。文子を起こす前に海岸やキャンプ場の中を散策。テントに戻ると文子も起きていたのでいつもどおりパンとコーヒーの朝食。天気が良く、太陽が出ているので食事の間もテントやタープを少しでも乾かす。新しく防水も利いているのでちょっと陽に当たっただけで乾いてしまう。<br />今日は立山からバスで室堂まで上がるので忙しい。早々にテントを撤収して出発することにする。キャンプ場出発は8時40分。山の上の寒さに備えて長袖を沢山持ってきたが、今日は暑いので半袖にする。でも、昨日も着ていた半袖だ。朝日インターから北陸自動車道に乗り立山インターまでは20分くらいなもの。立山インターの料金所で道を尋くと、案内の略図をくれた。インターを出てしばらく行くと2車線が1車線に変わるあたりにローソンを発見したのでそこに寄る。今日のお昼と飲み物を仕入れ、トイレも借りる。ここから立山駅に続く県道まで、真っ直ぐな農道が続いている。両側には田園風景が広がり、中には、もう取り入れ作業をしている田んぼもある。農道から県道に合流する信号でバスと軽自動車が前に入ってしまった。ところがバスは早いのに軽自動車の遅いこと。早いケーブルカーに載りたいのにイライラするばかり。丁度、道は立山駅への登りに差し掛かったところで狭いうえにカーブが多い。ようやくこの車を追い越したときにはバスはずっと先に行ってしまっていた。その先で道路工事のため県道から迂回路があるが、これは雷鳥バレースキー場へ続く道のため、迂回路とは言いながら登坂車線の付いた良い道路だった。ここでさっきのバスも追い越すことができた。スキー場の脇から立山駅には断崖絶壁のカーブが多い道を行く。でもそれだけに真下に称名川が見え、景色は良い。文子は見ていられるが僕は運転が忙しくチラッと見ただけ。立山駅に着くと駅前の駐車場は車で一杯。臨時駐車場の標識に従い、踏切りを渡って少し行くと立山公園第一駐車場というのがある。臨時駐車場と書いてなかったのが気になったが、ここは道路から一段下がったところで駅にもそう遠くないのでここに置くことにする。早速靴を履き替え、ザックを用意して忘れ物のないようにする。キャンプ帰りだから後部座席はキャンプ道具で一杯で、車上荒らしに狙われたらたまらないけど、こんな山の中にはそんな人がいないことを祈るだけだ。<br />立山駅に歩き、窓口で立山往復を買うと、直ぐ出発するケーブルカーに乗れるという。駅には予想していた程の人はいなかったけれど、ケーブル乗り場は結構混んでいる。10時40分のケーブルに乗ったのは僕たちが最後だった。ケーブルは大山ケーブルのようなものだが、車体の前にシャーシだけの車体を引いている。美女平まで10分足らずだが、頂上付近ではケーブルじゃなくてロープエウイの方が良いのではないか、と思うくらいの急坂だ。見下ろすと立山の駅が小さく見える。美女平からはバス。ノンストップで室堂まで行くのと途中駅で降りる人と並ぶ列が別々になっている。更に団体さんは別のバスで行くので、1回のケーブルでバス3台くらいが発車する。最初の予定では、今日は室堂に上がってその周辺の散策。明日は弥陀ガ原で降りて散策、ということにしていたけれど、台風15号の影響で明日の天気予報は雨なので、今日、弥陀ガ原を散策してしまうことにする。<br />途中駅で降りる方のバスに乗ったのは20人程度と意外に少ない。二人で前の方の良い席を取ることができた。この美女平から室堂までは有料道路になっているが自然保護のため一般車両は乗り入れ禁止だ。ここから室堂を越え、黒部ダムを通り大町の扇沢までは一般車両一切禁止である。昔、博と三恵子を連れて黒部ダムから大観峰まで上がった時も、扇沢に車を置いて行ったのだ。二人で上高地に行った時は、まだ夏のシーズン以外は車の乗り入れ可能だったため帝国ホテルまで行けたが、今は上高地もオールシーズン乗り入れ禁止になっている。美女平からすぐに急なカーブと勾配がきつい坂が連続する。バスでは大変な感じだが、一般車両がいないので、どんなにゆっくりでも大丈夫である。少し行くと滝見台というカーブに着く。ここは駐車場もない普通のカーブだが、通行しているのはバスだけなので、バスが一時停止して車窓からゆっくり見せてくれる。ここからは称名滝をほぼ正面に見ることができるのだ。更にバスは登って行くと、この道路沿いで最も太い杉の巨木を過ぎる。少し行くと展望が開け、弘法というバス停に着く。ここからさっきの称名滝に下ることもできるし、弥陀ガ原まで歩くコースもある。ここで10数人のグループが乗ってきてバスは結構いっぱいになってしまった。ここからは展望の開けた中をバスは走って行く。前方に洒落た近代的な建物が見えてくるとそこが弥陀ガ原。ここで降りたのは僕たちのほかにも4人くらいいた。降りたところにバス会社の人がいるので、帰りのバスの予約をする。<br />近代的な洒落た建物は弥陀ガ原ホテル。道路を挟んで反対側には国民宿舎もある。遊歩道は1時間コース、2時間コース等に別れていてホテルの脇から木道が続いている。まずはホテルに寄ってトイレを借りる。売店にも寄ってビールとお茶を仕入れる。それから木道を歩き出す。幸い天気が良く、遠くまで良く見える。緑の草原の向こうに、大日岳を背景にして、今出発してきたばかりの弥陀ガ原ホテルが見える。歩く先には広大な弥陀ガ原の緑の湿原と小さな池塘が太陽を反射して銀色に鈍く光っている。ホテルを出た時に、もう12時近かったのでどっかでお昼にしようと思っていたが、暫く歩くとベンチが置いてある小さな広場に出る。案内を見ると「餓鬼の広場」となっているが、大草原の中の広場で弥陀ガ原を見回せるし、大日岳の稜線も美しい。ここで昼食。キャンプの翌日なのでコンビニ弁当なのは仕方ないが、晴天で見晴らしが良いのが何よりのご馳走だ。ここは草原なので木陰がなく、陽射しが暑いくらいだ。この広場には立山の案内や湿原の動物、植物の説明板などが設置してあった。湿原のそこここに赤や白の高山植物が花を咲かせている。紅葉にはまだ早く、お花畑の時期には遅過ぎて、花は見られないかと思ったが結構咲いている。<br />ガキの広場から細い木道が2本延々と伸びている。しばらく行くと木道の分岐に出る。右に行けば天狗平へのトレッキングコース。左へ行けば2時間の周遊コースである。左手へ行くと草原の美しいところへ出るので、いつものように文子を写真に撮る。草原が途切れ、岩や大シラビソの木々が現れると、木道が一旦途切れ、小さな流れの残る谷間に降りる。ホテルの人の話しでは水場はない、ということだったが、年によってはここで水を汲むことができそうだ。急な登りをほんのちょっと登り返すと、さっきのバスで通った有料道路のワキに出る。周遊コースは、ここから弥陀ガ原ホテルまで登って行くだけだ。まだ時間があるので道路を横切り、弥陀ガ原の反対側に出てみる。こちら側は旧立山温泉小屋のあった方へ行く道だが、今はカルデラを見ることしかできない。コースの周辺には筵が敷かれ、高山植物の植生回復中、と書いてある。やっぱり木道があってもコースを出る人がいるらしい。このコースを行くと往復で1時間以上かかるし、アップダウンが多そうなので再び道路を渡って弥陀ガ原ホテルに戻る道を行く。こっちの木道の周りには白樺やシラビソなどの樹木もある。やっぱり道路の周辺は湿原が枯れてきているようだ。周遊コースの終点は有料道路の駐車場。といっても一般車両はいないので今は広場になっているだけだ。ここから階段を少し上ると出発点の弥陀ガ原バス停の脇に出る。予約したバスまで30分以上あるので、その前のバスに乗れるよう変更を頼んでみるとOKだった。再びバスに乗り室堂を目指す。弥陀ガ原と室堂の間には天狗平のバス停があるだけだ。天狗平には天狗平山荘が建っている。更に登ると春先には5メートルにも及ぶ雪の回廊が出来る雪の大谷を過ぎて室堂に着く。何と、ここは雨が降っていて寒いくらいだ。あんなに晴れていた弥陀ガ原から30分も登っていないのに、この天気の変わりよう。室堂のバスターミナルは大観峰への地下バスの乗り換え駅でもあり、とても混んでいる。今日の宿、ホテル立山はバスターミナルの3階以上がホテルになっている。と、その辺まで判った時、カメラをバスの中に忘れたことに気付き、慌てて取りに戻ると発着所の人が直ぐに渡してくれた。ザックに居れずに手に持ったまま、うっかりバスの座席に置いてしまったのだ。改めてバスターミナルの2階に上がり、室堂の散策に出ることにする。細かい雨が降り、風が強いので外に出る前に長袖とジャンパーを着る。室堂散策と言っても、ここはハイキング以外の一般観光客も歩くので石で舗装されたコースになっている。ターミナルから出た所が広場になっていて、そこからミクリガ池へのコースが続いている。雨で視界が悪く、立山連峰は霧に閉ざされているが、ミクリガ池程度の近場ならはっきり見える。ミクリガ池だけ見てホテルに戻ろうかと思ったが、幸い雨が止んでくれたので周回することにする。ミクリガ池に突き当たった所から右に行くと、雄山への登山道になるが、そこから分岐してミクリガ池の周回コースが伸びている。この分岐の手前から、名前は知らないが白いお腹と黒い背中の小さな鳥が僕たちの道案内をするようにチョコチョコ歩いている。飛び立つでもなく、左右の草に隠れるでもなく、分岐の手前から分岐を過ぎて暫く行くまで先導してくれていた。この辺は雷鳥が多く生息し、保護区でもあるが雷鳥よりはずっと小さな鳥だった。ミクリガ池の反対側を歩く道からは、ミドリガ池と山崎カールを見ることができる。ミドリガ池はミクリガ池よりも小さな池。山崎カールは大昔の氷河の谷の後だが、ここではほんの少しだけ紅葉が始まっていた。途中で何枚か写真を撮り、地獄谷などを見ながら室堂に引き返す。歩き始めだけ雨が降ったが、あとは降られずに歩くことができた。でも、寒さだけは防げない。ターミナルから階段を上がってホテルのロビーに入ると温かかった。登山スタイルで入っては悪いみたいだが、ここは日本一標高の高い所にあるホテル。回りもみんなそういう人たちばかりだ。フロントは流石に東京のホテルと同じような丁寧な応対をしてくれる。僕たちの部屋は4階の406号室。室堂の広場側で見晴らしも良かった。<br />早速着替えてお風呂に行く。ここは温泉だが露天はない。でも、幸い混んでなくて先客が3人いたが皆先に上がってしまって途中からは僕一人でお湯に浸かっていた。身体が温かくなれば、今度は空腹感がおそってくる。今日の夕食は6時から洋食が予約してある。日本一高い場所にあるホテルのレストランだから、ここも日本一。飲み物はワインも考えたけど、ビールにしておいた。フルコースで一皿一皿は皆少量だったが結構美味しかった。デザートにコーヒーも飲んで大満足。お土産店などを覗いて、部屋に戻ったのは7時半を回っていた。窓から外を眺めるとまた雨が降っている。それに風も強い。テレビのニュースでは、明日台風15号が関東地方に上陸、などという予報を流していた。去年の二の舞にならぬよう明日は早めに帰ることにする。<br /><br />9月10日(月)<br />朝、目が覚めると外はやはり雨。車がある所まで行かなければ帰るにも帰れない。そこで朝1番のバスか遅くもその次のバスには乗る予定で仕度する。と言ってもヨーロッパ旅行と違い荷物もザック一つだし、文子がお化粧するだけ。待つ間に窓から外を見ると、雨具で厳重に装備した人が何人も歩いて来る。室堂にはこのホテルのほかにも何軒かの山小屋やホテルがあるので、そういう所に泊った人がターミナルを目指しているのだ。<br />朝食は昨日のレストランで洋食。バイキングでなくテーブルオーダーだった。部屋に戻って朝の天気予報を確認。台風はまだ上陸はしていないがスピードが遅く、東海地方も上信越も大雨の恐れ、となっている。朝の段階で既に長野自動車道の軽井沢?更埴間が土砂崩れで通行止めになっていた。早く帰らないと本当に去年の二の舞になってしまう。<br />ホテルの清算をしてバスターミナルへ。8時40分のバスに乗れそうなので、待つ間に売店でお土産を買う。その間にも雨は激しく降っている。長野県側の山にさえぎられて立山は台風に強いそうだが、こんなに降ったのではバスが運休してしまうのではないか、と心配になる。8時40分のバスには2番で乗ることができたので前から2番目の良い席に座る。昨日通った道を下るのだが、驚いたことにこんな雨の中でも弥陀ガ原のバス停で降りた人がいた。台風に直撃されている訳ではないが、こんな雨の中では大変だろう。美女平ではケーブルを少し待たされたが、ケーブルも座れた。立山の駅に着いたのは9時40分頃。ここから駐車場まで傘が必要かと思ったが、丁度この時は雨が止んでいた。駐車場に戻って車が無事だとホッとする。何だか家に帰ったみたいだ。靴を履き替え、直ちに出発。昨日の県道も農道も順調で、途中のローソンに立ち寄ったのに立山インターから10時34分には北陸自動車道に乗ることができた。帰りのガソリンが心配なので、有磯海という変わった名前のSAで給油。ここから先も雨が断続的に降り続く。親不知の海の上を跨ぐところでは波が大きくなっているのが見える。でも北陸自動車道は、かなりの高架になっているので大丈夫。だいたい、今度の台風は関東地方に向かっているので、日本海側はそれほど酷くはないが、僕たちは台風が向かっている方向に行こうとしているから大変だ。上越ジャンクションで長野自動車道に入ると急に雨が激しくなる。妙高の先まで対面通行だというのに大型トラックの遅い車が前にいたりする。それでも小布施のSAに着いたのは12時30分だったので順調と言える。ここでコンビニで買ったお弁当を食べる。文子は有磯海で鱒の押し寿司を買ってある。こうして高速を走っていられるのならコンビで買わなくても良いようなものだが、どこで通行止めになるか判らないから用心に越したことはない。小布施を1時に出発。高速道路情報を聞きながら走っていると、とうとう中央高速が一宮御坂から八王子まで上下線とも通行止め、という情報が入ってきた。ここに来るまでにも20号線は勝沼の先で通行止めと言っていたし、中央高速や20号線がこれでは甲府から西湖に行く道など通れるはずがない。昔良く通った御坂峠を越えるほかはない、と思いながら先を急ぐ。長野自動車道は良く知った道だが、ここも断続的に土砂降りの雨が降り、大型車などを追い越す時には水飛沫で一瞬前が見えなくなったりする。通行量は普段より少ないくらいでそれだけが救い。岡谷のジャンクションで名古屋経由東名高速という手も考えたが、いかにも遠いのでいつもの道にする。諏訪湖のSAで再びガソリン給油。ここではトイレにも寄らず直ぐに出発。御坂峠への道は渋滞が予想されたので、甲府南で降りるか一宮御坂まで行くか悩んだが結局一宮御坂まで走ってしまった。ところが料金所を出るまでは実にスムース。お正月の横浜インターみたいな渋滞もなかった。これならこの先も、と期待を持ったとたんに大渋滞が始まる。御坂のインターは少し先で御坂峠へ行く道に合流するので、そこからずっと繋がっているらしい。そこで当てずっぽうだけど、直ぐの信号を左折。どこへ行く道か分からないけど適当なところで再び右折して御坂峠への国道139号を目指す。分からない道なので、途中で葡萄棚の点検をしていたオジサンに聞いてみると3つ目の信号を左折すれば良い、とのこと。でも、この道も2つ目の信号の手前から渋滞に入ってしまった。でもインターの道と違ってこの道は1斜線なので渋滞してもなんとか流れる。それが全然流れなくなってしまったのは国道に入ってからだった。昔と違ってこの国道も今は登坂斜線と2車線あるので、こういう渋滞の時は余計渋滞に拍車をかける。御坂峠まで9キロなどという看板はあるがちっとも前に進まない。台風情報は刻々と台風が近付いてくるのを言っているし、雨も断続的に降り続いている。御坂を越えても僕たちはその先、まだ籠坂峠も箱根足柄も越えなければならないのだ。結局たったの9キロに3時間も掛かって河口湖の街に出たのは6時を回っていた。河口湖手前の適当なレストランに入って夕食を取る。流石に僕も疲れた。長時間の運転も走っていれば気分的に楽だが、こういう渋滞は不慣れなためもあって精神的に疲れてしまう。食事中も激しい雨が続いている。河口湖から街の中の道を行き、山中湖への道に合流する。ここも混んではいるが流れてはいる。山中湖まで出れば裏道街道を爆走するばかり。先ずは籠坂峠をパス。次に東名を通るのはやめて、国道246号を行く。ちょうど交通情報で東名高速の沼津・太井松田間も通行止めという情報が流れてくる。これでは246が余計混むナ、と思いつつ飛ばしに飛ばす。最後の渋滞ポイント、三保ダムへの信号に差し掛かるが意外にも全然渋滞していなかった。帰着は8時40分。こうして台風が近付く雨の中をひた走りに走って10時間半。黒部のふもと、立山から北陸自動車道、長野自動車道、中央高速、御坂峠、籠坂峠を越え走行距離にして600キロ近くを走って帰ってきた。家でニュースを見ると、台風はまだ上陸していない。でも、この大雨のため道路はどこも寸断され、通行止めの箇所は更に増えていた。<br />良く家まで帰って来られたものだと今更ながら関心する。後日、山梨営業所長から聞いたところによると、あの後、御坂峠も通行止めになり、山梨県から県外には出られなくなってしまったとのこと。台風15号は結局翌日の12時頃、鎌倉に上陸したが、通行止めは神奈川県も同じで、国道246も僕たちが通り抜けたあと、通行止めになってしまった。結局、東名の松田・沼津間が開通したのは翌日の午後遅くで、渋滞が解消したのは深夜だった。<br /><br />今回も雨に降られたが、キャンプと観光ポイントの立山弥陀ガ原は天候に恵まれた。最終日の雨は激しかったがずっと車の中だった。大変だったけど印象に残る旅ではあった。もっと足腰を鍛えて、今度は立山のトレッキングができるようにしよう。<br /><br />

日本海と立山高原

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2001/09/08 - 2001/09/10

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秘湯マニア

秘湯マニアさん

2001年9月8日(土)
今年の夏休みは昨年と同じ日本海を目指す旅にした。昨年のキャンプは雨にたたられて豪雨の中、僕たちたった一組だけのキャンプだった。五箇山と高山は雨の中の観光で、平湯からの帰りは安房トンネルが通行止めになり、富山に出て北陸自動車道から長野自動車道、中央高速と走り継いで、あげくの果てに膝の関節を痛める、というオマケまで付いた。
今年はそのリベンジだが、キャンプ場から先の行く先が違う。立山駅から室堂に上がり、弥陀ケ原から室堂のあたりを散策しようというのだ。今回は行く先が山の上であり、しかもバスしか通れない場所なので是非とも天気に恵まれて欲しい。そういった意味でもリベンジなのである。

8日朝5時過ぎから準備して、出発は6時10分。今日は早く目的地に着いてノンビリしたいので急ぐ旅。御殿場から東富士自動車道が河口湖の中央高速に導いてくれる。都留のPAでトイレ休憩。中央高速本線に入ると土曜日ということもあって、いつもよりも混んでいる感じがする。それでもいつもの諏訪南を過ぎたのは家を出てから2時間後の8時10分だから、順調な方だ。岡谷で長野自動車道に入る。2度目の休憩はみどり湖。ここも小さなPAで何もないのでトイレのみ。豊科を過ぎると、さすがに通行量も減ってくる。長野自動車道は山に囲まれた中を道路だけが延びている。姨捨のSAはそんな山から出たばかりの、川中島平を見下ろす高台にある。このSAは今まで立ち寄ったことがなかったので、ここで大休止。見晴らしも良いし展望台もあるので、少し歩いたりして気分転換してから出発。更埴で軽井沢方面への道を分け、長野を過ぎると走る車は更に空いてくる。今日は妙高に寄らずにもっと先まで行こうかと思ったが、ここまでで既に走行距離は350キロを超えガソリンが心細くなってくる。今回は妙高高原ICの一つ手前、信濃町(東京みたいだ)のインターで降りてみた。降りた時間が10時10分。家を出てから4時間で妙高まで来れるのだ。インターから下の道を通ってガソリンスタンドを探しながら妙高方面に向かう。でも、高速道路同様、周辺に何もない道路が真っ直ぐに伸びているだけだった。結局スタンドに入ったのは妙高高原インターを過ぎたところ。ここまで来たのだからお昼は「たかさわ」で取ることにして妙高スキー場の方に入る。いもり池あたりまでは昨年と同じだったが、杉の原のあたりで道路工事のため迂回を強いられる。村の中の細い道をくねくねと行くが、見覚えのある橋のたもとに出ることができた。ここから「たかさわ」までは直ぐだ。開店が11時からなのでちょっと早いかと思ったが、丁度暖簾を出しているところで「入っても良い」とのことだった。ところが、お店を新しくしたらしく道路側の方に手打ちの実演場所と座敷が設けてある。その奥に、今までどおりの木を切ってテーブルやイスにしただけのお店がある。僕たちには、こっちの昔ながらのお店の方が良い。早速ざるそばを注文。今回はてんぷらも1人前だけ頼んでみた。その間に文子は100円で売っているキノコや野菜を見る。突き出しで出されるキノコの煮物が美味しかった。お蕎麦は手打ちで固め。でもお汁も僕に合った味で、とても美味しい。やっぱり、この周辺に来たらこのお店に限る。僕たちが食事を終えて出る頃には何組かのお客さんが来ていたが、今日は僕たちが、入ったのも出たのも1番だった。
11時半、再び長野自動車道に乗り日本海に向かう。妙高から先は対面通行だが全体的に空いている。それなのにノロノロ走っている車があるとイライラする。上越ジャンクションで北陸自動車道に合流。能生まではいくらも時間が掛からない。能生の「お魚センター」も去年来たばかりなので直ぐ分かる。駐車場は一杯だったが運良く止めることができた。ところが、地元名産のカニが、今日から解禁日なのだが海が荒れて出漁できず、市場も明日からになる、との断り書きが出ている。でも、僕たちの夕食は、ここで仕入れることを前提にしているので何か買わなければ困ってしまう。地元のカニ屋さんは休業だが3軒の魚屋さんがあるのでホタテとハマグリ、それにズワイガニを買う。帰りの道沿いに、小さな島のある景色の良い海岸があったのでちょっとだけ立ち寄って写真を撮る。ここは夏の間、海水浴場らしく駐車場も有料で海も綺麗だった。北陸自動車道はトンネルが多い。能生から親不知を通って朝日のインターまで途切れ途切れに長いトンネルが続く。朝日のインターはトンネルを出た直後にある。国道に出て新潟方面に少し戻ると15分くらいで朝日ヒスイ海岸に出る。国道からJRの線路を横切り松林に囲まれた綺麗なロッジに向かう。ここが今日のキャンプ場だ。管理棟で手続きをして区画を割り当ててもらうと1番だった。
しかし、今年はキャンプする人が多く、隣の区画も向かいの区画も一杯だった。早速テントの用意をする。新しくしたのでテントもタープも椅子もみんなコールマンになった。幸い天気は曇りではあるが雨は降っていない。でも、今夜は降るようなことを予報では言っている。そこでタープの張り方に工夫を要し、できるだけ軒下が広く取れ、しかも、テントの雨除けになるようにした。でも、そんなことで結構時間が掛かってしまった。
小休止して海岸に出る。海の色は去年と同様、あまりすっきりはしないが、小石と砂浜の人気のない海岸がどこまでも続いていた。テントを張るのに結構汗をかいたので、食事の前にお風呂に行くことにする。去年行った宝温泉は露天風呂こそあったものの、銭湯みたいな感じだったので、今年はもう一つの温泉、「さざなみ温泉」に行くことにする。
さざなみ温泉は、キャンプ場から少し新潟寄りに走り、JRの踏切りを渡ったすぐ左手にある。外見では旅館ではなくレストランのような感じである。受付で靴を脱ぎ、2階に上がった突き当たりが温泉だった。お風呂は小さかったし、露天風呂も小さかったがJRの線路に面していて、日本海が良く見える。お湯も洗い場も綺麗で、僕は結構気に入ってしまった。尤も、入っていた人が少なかったせいもあるかもしれない。最初は4人くらいいたが皆先に出て行ってしまって途中からは僕一人だった。僕が出る頃にはまた4?5人入ってきたが。出たところが畳敷きの休憩所のようになっていてノンビリすることができる。ここで文子と待ち合わせ。文子も空いていて良かったそうだ。
帰りに駐車場を出ようとした時に、僕の車が湘南ナンバーだったので文子が湘南にお住まいですか?と聞かれたそうだ。そうです、って答えたけど、桑田啓介と同じ茅ヶ崎に住んでます、って言えば良かったかしら、と悔やんでいた。
キャンプ場に戻っても、まだ4時半くらいで明るいが、食べる用意を始める。今年は携帯用のBBQ用コンロも買ったのだ。海岸でBBQをした時、ガスコンロでやったら、タレや肉汁がコンロに落ちて火が点かなくなってしまったからだ。丁度、この頃から雨が降ってきたが、去年のような豪雨ではない。BBQで嫉く貝からお醤油の嫉ける良い匂いがする。こういう匂いはたまらなく食欲をそそる。ホタテを食べ、蛤を食べ、カニも食べる。食べるのに時間の掛かるものばかりだった。そして最後は肉。やっぱりお肉を少しは食べないとネ。この頃にはもうすっかり暗くなっていたけれど、今年はランタンも新しいのを買ったので明るい。山の中のキャンプでは昔ながらのランプの灯りが良いけれど、こういう整備されたキャンプ場では明るい光が欲しくなる。全部食べてビールも飲んであとは寝るだけ。大声で騒ぐ人もなく、JR北陸線の音だけが聞こえる静かな夜だったが、街灯がなかなか消えずテントの中も少し明るかった。

9月9日(日)
朝、目を覚ますと雨は止んでいる。まだ早朝5時に起きてしまった。文子を起こす前に海岸やキャンプ場の中を散策。テントに戻ると文子も起きていたのでいつもどおりパンとコーヒーの朝食。天気が良く、太陽が出ているので食事の間もテントやタープを少しでも乾かす。新しく防水も利いているのでちょっと陽に当たっただけで乾いてしまう。
今日は立山からバスで室堂まで上がるので忙しい。早々にテントを撤収して出発することにする。キャンプ場出発は8時40分。山の上の寒さに備えて長袖を沢山持ってきたが、今日は暑いので半袖にする。でも、昨日も着ていた半袖だ。朝日インターから北陸自動車道に乗り立山インターまでは20分くらいなもの。立山インターの料金所で道を尋くと、案内の略図をくれた。インターを出てしばらく行くと2車線が1車線に変わるあたりにローソンを発見したのでそこに寄る。今日のお昼と飲み物を仕入れ、トイレも借りる。ここから立山駅に続く県道まで、真っ直ぐな農道が続いている。両側には田園風景が広がり、中には、もう取り入れ作業をしている田んぼもある。農道から県道に合流する信号でバスと軽自動車が前に入ってしまった。ところがバスは早いのに軽自動車の遅いこと。早いケーブルカーに載りたいのにイライラするばかり。丁度、道は立山駅への登りに差し掛かったところで狭いうえにカーブが多い。ようやくこの車を追い越したときにはバスはずっと先に行ってしまっていた。その先で道路工事のため県道から迂回路があるが、これは雷鳥バレースキー場へ続く道のため、迂回路とは言いながら登坂車線の付いた良い道路だった。ここでさっきのバスも追い越すことができた。スキー場の脇から立山駅には断崖絶壁のカーブが多い道を行く。でもそれだけに真下に称名川が見え、景色は良い。文子は見ていられるが僕は運転が忙しくチラッと見ただけ。立山駅に着くと駅前の駐車場は車で一杯。臨時駐車場の標識に従い、踏切りを渡って少し行くと立山公園第一駐車場というのがある。臨時駐車場と書いてなかったのが気になったが、ここは道路から一段下がったところで駅にもそう遠くないのでここに置くことにする。早速靴を履き替え、ザックを用意して忘れ物のないようにする。キャンプ帰りだから後部座席はキャンプ道具で一杯で、車上荒らしに狙われたらたまらないけど、こんな山の中にはそんな人がいないことを祈るだけだ。
立山駅に歩き、窓口で立山往復を買うと、直ぐ出発するケーブルカーに乗れるという。駅には予想していた程の人はいなかったけれど、ケーブル乗り場は結構混んでいる。10時40分のケーブルに乗ったのは僕たちが最後だった。ケーブルは大山ケーブルのようなものだが、車体の前にシャーシだけの車体を引いている。美女平まで10分足らずだが、頂上付近ではケーブルじゃなくてロープエウイの方が良いのではないか、と思うくらいの急坂だ。見下ろすと立山の駅が小さく見える。美女平からはバス。ノンストップで室堂まで行くのと途中駅で降りる人と並ぶ列が別々になっている。更に団体さんは別のバスで行くので、1回のケーブルでバス3台くらいが発車する。最初の予定では、今日は室堂に上がってその周辺の散策。明日は弥陀ガ原で降りて散策、ということにしていたけれど、台風15号の影響で明日の天気予報は雨なので、今日、弥陀ガ原を散策してしまうことにする。
途中駅で降りる方のバスに乗ったのは20人程度と意外に少ない。二人で前の方の良い席を取ることができた。この美女平から室堂までは有料道路になっているが自然保護のため一般車両は乗り入れ禁止だ。ここから室堂を越え、黒部ダムを通り大町の扇沢までは一般車両一切禁止である。昔、博と三恵子を連れて黒部ダムから大観峰まで上がった時も、扇沢に車を置いて行ったのだ。二人で上高地に行った時は、まだ夏のシーズン以外は車の乗り入れ可能だったため帝国ホテルまで行けたが、今は上高地もオールシーズン乗り入れ禁止になっている。美女平からすぐに急なカーブと勾配がきつい坂が連続する。バスでは大変な感じだが、一般車両がいないので、どんなにゆっくりでも大丈夫である。少し行くと滝見台というカーブに着く。ここは駐車場もない普通のカーブだが、通行しているのはバスだけなので、バスが一時停止して車窓からゆっくり見せてくれる。ここからは称名滝をほぼ正面に見ることができるのだ。更にバスは登って行くと、この道路沿いで最も太い杉の巨木を過ぎる。少し行くと展望が開け、弘法というバス停に着く。ここからさっきの称名滝に下ることもできるし、弥陀ガ原まで歩くコースもある。ここで10数人のグループが乗ってきてバスは結構いっぱいになってしまった。ここからは展望の開けた中をバスは走って行く。前方に洒落た近代的な建物が見えてくるとそこが弥陀ガ原。ここで降りたのは僕たちのほかにも4人くらいいた。降りたところにバス会社の人がいるので、帰りのバスの予約をする。
近代的な洒落た建物は弥陀ガ原ホテル。道路を挟んで反対側には国民宿舎もある。遊歩道は1時間コース、2時間コース等に別れていてホテルの脇から木道が続いている。まずはホテルに寄ってトイレを借りる。売店にも寄ってビールとお茶を仕入れる。それから木道を歩き出す。幸い天気が良く、遠くまで良く見える。緑の草原の向こうに、大日岳を背景にして、今出発してきたばかりの弥陀ガ原ホテルが見える。歩く先には広大な弥陀ガ原の緑の湿原と小さな池塘が太陽を反射して銀色に鈍く光っている。ホテルを出た時に、もう12時近かったのでどっかでお昼にしようと思っていたが、暫く歩くとベンチが置いてある小さな広場に出る。案内を見ると「餓鬼の広場」となっているが、大草原の中の広場で弥陀ガ原を見回せるし、大日岳の稜線も美しい。ここで昼食。キャンプの翌日なのでコンビニ弁当なのは仕方ないが、晴天で見晴らしが良いのが何よりのご馳走だ。ここは草原なので木陰がなく、陽射しが暑いくらいだ。この広場には立山の案内や湿原の動物、植物の説明板などが設置してあった。湿原のそこここに赤や白の高山植物が花を咲かせている。紅葉にはまだ早く、お花畑の時期には遅過ぎて、花は見られないかと思ったが結構咲いている。
ガキの広場から細い木道が2本延々と伸びている。しばらく行くと木道の分岐に出る。右に行けば天狗平へのトレッキングコース。左へ行けば2時間の周遊コースである。左手へ行くと草原の美しいところへ出るので、いつものように文子を写真に撮る。草原が途切れ、岩や大シラビソの木々が現れると、木道が一旦途切れ、小さな流れの残る谷間に降りる。ホテルの人の話しでは水場はない、ということだったが、年によってはここで水を汲むことができそうだ。急な登りをほんのちょっと登り返すと、さっきのバスで通った有料道路のワキに出る。周遊コースは、ここから弥陀ガ原ホテルまで登って行くだけだ。まだ時間があるので道路を横切り、弥陀ガ原の反対側に出てみる。こちら側は旧立山温泉小屋のあった方へ行く道だが、今はカルデラを見ることしかできない。コースの周辺には筵が敷かれ、高山植物の植生回復中、と書いてある。やっぱり木道があってもコースを出る人がいるらしい。このコースを行くと往復で1時間以上かかるし、アップダウンが多そうなので再び道路を渡って弥陀ガ原ホテルに戻る道を行く。こっちの木道の周りには白樺やシラビソなどの樹木もある。やっぱり道路の周辺は湿原が枯れてきているようだ。周遊コースの終点は有料道路の駐車場。といっても一般車両はいないので今は広場になっているだけだ。ここから階段を少し上ると出発点の弥陀ガ原バス停の脇に出る。予約したバスまで30分以上あるので、その前のバスに乗れるよう変更を頼んでみるとOKだった。再びバスに乗り室堂を目指す。弥陀ガ原と室堂の間には天狗平のバス停があるだけだ。天狗平には天狗平山荘が建っている。更に登ると春先には5メートルにも及ぶ雪の回廊が出来る雪の大谷を過ぎて室堂に着く。何と、ここは雨が降っていて寒いくらいだ。あんなに晴れていた弥陀ガ原から30分も登っていないのに、この天気の変わりよう。室堂のバスターミナルは大観峰への地下バスの乗り換え駅でもあり、とても混んでいる。今日の宿、ホテル立山はバスターミナルの3階以上がホテルになっている。と、その辺まで判った時、カメラをバスの中に忘れたことに気付き、慌てて取りに戻ると発着所の人が直ぐに渡してくれた。ザックに居れずに手に持ったまま、うっかりバスの座席に置いてしまったのだ。改めてバスターミナルの2階に上がり、室堂の散策に出ることにする。細かい雨が降り、風が強いので外に出る前に長袖とジャンパーを着る。室堂散策と言っても、ここはハイキング以外の一般観光客も歩くので石で舗装されたコースになっている。ターミナルから出た所が広場になっていて、そこからミクリガ池へのコースが続いている。雨で視界が悪く、立山連峰は霧に閉ざされているが、ミクリガ池程度の近場ならはっきり見える。ミクリガ池だけ見てホテルに戻ろうかと思ったが、幸い雨が止んでくれたので周回することにする。ミクリガ池に突き当たった所から右に行くと、雄山への登山道になるが、そこから分岐してミクリガ池の周回コースが伸びている。この分岐の手前から、名前は知らないが白いお腹と黒い背中の小さな鳥が僕たちの道案内をするようにチョコチョコ歩いている。飛び立つでもなく、左右の草に隠れるでもなく、分岐の手前から分岐を過ぎて暫く行くまで先導してくれていた。この辺は雷鳥が多く生息し、保護区でもあるが雷鳥よりはずっと小さな鳥だった。ミクリガ池の反対側を歩く道からは、ミドリガ池と山崎カールを見ることができる。ミドリガ池はミクリガ池よりも小さな池。山崎カールは大昔の氷河の谷の後だが、ここではほんの少しだけ紅葉が始まっていた。途中で何枚か写真を撮り、地獄谷などを見ながら室堂に引き返す。歩き始めだけ雨が降ったが、あとは降られずに歩くことができた。でも、寒さだけは防げない。ターミナルから階段を上がってホテルのロビーに入ると温かかった。登山スタイルで入っては悪いみたいだが、ここは日本一標高の高い所にあるホテル。回りもみんなそういう人たちばかりだ。フロントは流石に東京のホテルと同じような丁寧な応対をしてくれる。僕たちの部屋は4階の406号室。室堂の広場側で見晴らしも良かった。
早速着替えてお風呂に行く。ここは温泉だが露天はない。でも、幸い混んでなくて先客が3人いたが皆先に上がってしまって途中からは僕一人でお湯に浸かっていた。身体が温かくなれば、今度は空腹感がおそってくる。今日の夕食は6時から洋食が予約してある。日本一高い場所にあるホテルのレストランだから、ここも日本一。飲み物はワインも考えたけど、ビールにしておいた。フルコースで一皿一皿は皆少量だったが結構美味しかった。デザートにコーヒーも飲んで大満足。お土産店などを覗いて、部屋に戻ったのは7時半を回っていた。窓から外を眺めるとまた雨が降っている。それに風も強い。テレビのニュースでは、明日台風15号が関東地方に上陸、などという予報を流していた。去年の二の舞にならぬよう明日は早めに帰ることにする。

9月10日(月)
朝、目が覚めると外はやはり雨。車がある所まで行かなければ帰るにも帰れない。そこで朝1番のバスか遅くもその次のバスには乗る予定で仕度する。と言ってもヨーロッパ旅行と違い荷物もザック一つだし、文子がお化粧するだけ。待つ間に窓から外を見ると、雨具で厳重に装備した人が何人も歩いて来る。室堂にはこのホテルのほかにも何軒かの山小屋やホテルがあるので、そういう所に泊った人がターミナルを目指しているのだ。
朝食は昨日のレストランで洋食。バイキングでなくテーブルオーダーだった。部屋に戻って朝の天気予報を確認。台風はまだ上陸はしていないがスピードが遅く、東海地方も上信越も大雨の恐れ、となっている。朝の段階で既に長野自動車道の軽井沢?更埴間が土砂崩れで通行止めになっていた。早く帰らないと本当に去年の二の舞になってしまう。
ホテルの清算をしてバスターミナルへ。8時40分のバスに乗れそうなので、待つ間に売店でお土産を買う。その間にも雨は激しく降っている。長野県側の山にさえぎられて立山は台風に強いそうだが、こんなに降ったのではバスが運休してしまうのではないか、と心配になる。8時40分のバスには2番で乗ることができたので前から2番目の良い席に座る。昨日通った道を下るのだが、驚いたことにこんな雨の中でも弥陀ガ原のバス停で降りた人がいた。台風に直撃されている訳ではないが、こんな雨の中では大変だろう。美女平ではケーブルを少し待たされたが、ケーブルも座れた。立山の駅に着いたのは9時40分頃。ここから駐車場まで傘が必要かと思ったが、丁度この時は雨が止んでいた。駐車場に戻って車が無事だとホッとする。何だか家に帰ったみたいだ。靴を履き替え、直ちに出発。昨日の県道も農道も順調で、途中のローソンに立ち寄ったのに立山インターから10時34分には北陸自動車道に乗ることができた。帰りのガソリンが心配なので、有磯海という変わった名前のSAで給油。ここから先も雨が断続的に降り続く。親不知の海の上を跨ぐところでは波が大きくなっているのが見える。でも北陸自動車道は、かなりの高架になっているので大丈夫。だいたい、今度の台風は関東地方に向かっているので、日本海側はそれほど酷くはないが、僕たちは台風が向かっている方向に行こうとしているから大変だ。上越ジャンクションで長野自動車道に入ると急に雨が激しくなる。妙高の先まで対面通行だというのに大型トラックの遅い車が前にいたりする。それでも小布施のSAに着いたのは12時30分だったので順調と言える。ここでコンビニで買ったお弁当を食べる。文子は有磯海で鱒の押し寿司を買ってある。こうして高速を走っていられるのならコンビで買わなくても良いようなものだが、どこで通行止めになるか判らないから用心に越したことはない。小布施を1時に出発。高速道路情報を聞きながら走っていると、とうとう中央高速が一宮御坂から八王子まで上下線とも通行止め、という情報が入ってきた。ここに来るまでにも20号線は勝沼の先で通行止めと言っていたし、中央高速や20号線がこれでは甲府から西湖に行く道など通れるはずがない。昔良く通った御坂峠を越えるほかはない、と思いながら先を急ぐ。長野自動車道は良く知った道だが、ここも断続的に土砂降りの雨が降り、大型車などを追い越す時には水飛沫で一瞬前が見えなくなったりする。通行量は普段より少ないくらいでそれだけが救い。岡谷のジャンクションで名古屋経由東名高速という手も考えたが、いかにも遠いのでいつもの道にする。諏訪湖のSAで再びガソリン給油。ここではトイレにも寄らず直ぐに出発。御坂峠への道は渋滞が予想されたので、甲府南で降りるか一宮御坂まで行くか悩んだが結局一宮御坂まで走ってしまった。ところが料金所を出るまでは実にスムース。お正月の横浜インターみたいな渋滞もなかった。これならこの先も、と期待を持ったとたんに大渋滞が始まる。御坂のインターは少し先で御坂峠へ行く道に合流するので、そこからずっと繋がっているらしい。そこで当てずっぽうだけど、直ぐの信号を左折。どこへ行く道か分からないけど適当なところで再び右折して御坂峠への国道139号を目指す。分からない道なので、途中で葡萄棚の点検をしていたオジサンに聞いてみると3つ目の信号を左折すれば良い、とのこと。でも、この道も2つ目の信号の手前から渋滞に入ってしまった。でもインターの道と違ってこの道は1斜線なので渋滞してもなんとか流れる。それが全然流れなくなってしまったのは国道に入ってからだった。昔と違ってこの国道も今は登坂斜線と2車線あるので、こういう渋滞の時は余計渋滞に拍車をかける。御坂峠まで9キロなどという看板はあるがちっとも前に進まない。台風情報は刻々と台風が近付いてくるのを言っているし、雨も断続的に降り続いている。御坂を越えても僕たちはその先、まだ籠坂峠も箱根足柄も越えなければならないのだ。結局たったの9キロに3時間も掛かって河口湖の街に出たのは6時を回っていた。河口湖手前の適当なレストランに入って夕食を取る。流石に僕も疲れた。長時間の運転も走っていれば気分的に楽だが、こういう渋滞は不慣れなためもあって精神的に疲れてしまう。食事中も激しい雨が続いている。河口湖から街の中の道を行き、山中湖への道に合流する。ここも混んではいるが流れてはいる。山中湖まで出れば裏道街道を爆走するばかり。先ずは籠坂峠をパス。次に東名を通るのはやめて、国道246号を行く。ちょうど交通情報で東名高速の沼津・太井松田間も通行止めという情報が流れてくる。これでは246が余計混むナ、と思いつつ飛ばしに飛ばす。最後の渋滞ポイント、三保ダムへの信号に差し掛かるが意外にも全然渋滞していなかった。帰着は8時40分。こうして台風が近付く雨の中をひた走りに走って10時間半。黒部のふもと、立山から北陸自動車道、長野自動車道、中央高速、御坂峠、籠坂峠を越え走行距離にして600キロ近くを走って帰ってきた。家でニュースを見ると、台風はまだ上陸していない。でも、この大雨のため道路はどこも寸断され、通行止めの箇所は更に増えていた。
良く家まで帰って来られたものだと今更ながら関心する。後日、山梨営業所長から聞いたところによると、あの後、御坂峠も通行止めになり、山梨県から県外には出られなくなってしまったとのこと。台風15号は結局翌日の12時頃、鎌倉に上陸したが、通行止めは神奈川県も同じで、国道246も僕たちが通り抜けたあと、通行止めになってしまった。結局、東名の松田・沼津間が開通したのは翌日の午後遅くで、渋滞が解消したのは深夜だった。

今回も雨に降られたが、キャンプと観光ポイントの立山弥陀ガ原は天候に恵まれた。最終日の雨は激しかったがずっと車の中だった。大変だったけど印象に残る旅ではあった。もっと足腰を鍛えて、今度は立山のトレッキングができるようにしよう。

同行者
カップル・夫婦
交通手段
自家用車

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  • 弥陀ガ原にて

    弥陀ガ原にて

  • 弥陀ガ原の高山植物

    弥陀ガ原の高山植物

  • 弥陀ガ原の散策路。餓鬼の広場

    弥陀ガ原の散策路。餓鬼の広場

  • 餓鬼の田圃と呼ばれる池糖がたくさん点在している

    餓鬼の田圃と呼ばれる池糖がたくさん点在している

  • 室堂は小雨だった

    室堂は小雨だった

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