旧神谷伝兵衛稲毛別荘（国登録有形文化財）訪問

2008/12/04 - 2008/12/04

「日本のワイン王」の異名を持つ神谷伝兵衛は、「シャトーカミヤ」を創設したり、「デンキブラン」（ブランデーをベースにしたカクテル）で知られる浅草の「神谷バー」を興すなど、成功した明治の実業家です。

伝兵衛は1918年（大正７）、稲毛の海の近くに別荘を建てましたが、4年後に亡くなり、この別荘を利用することはあまり多くありませんでした。この別荘は、レンガ建築の多くが崩壊した1923年の関東大震災でもコンクリート建築のおかげで、倒壊するのを免れました。

今回、あまり見学者も多くなく、落ち着いた雰囲気の中で「日本のワイン王」にふさわしい別荘を見て回ることができました。

エリア 千葉市(千葉)

この別荘の持主・神谷伝兵衛（「伝」は戸籍の上では「傳」となっています）の写真です。

別荘の正面入口です。かっては左側に和館があtりましたが、今ではこの洋館だけが残っています。

清朝最後の皇帝であった溥儀の弟愛親覚羅溥傑夫妻が一時ここに滞在したことがあるそうです。

玄関上部の造リです。

玄関天井にはぶどうをモチーフとした照明器具が下がっています。これはブドウ王と言われた神谷伝兵衛の邸宅にふさわしい飾りと言えるのではないでしょうか。
邸内には他にもブドウをモチーフとした装飾がいくつか見られます。

玄関を入ると、すぐ右側に１階広間があります。床が寄木張りとなっています。

この部屋のシャンデリアは当初のものではありません。新しく付け替えられました。また、テーブル等も新しいものです。

暖炉が作られていますが、アール・ヌーボー調のデザインによるタイルが張られています。

ここから２階に上がります。

階段の曲線がまるで流れるように円を描いています。

２階に上がると、和室が２つあります。12畳と８畳の部屋です。

こちらが12畳の部屋です。
中央に大きな座卓が置かれていますが、周囲の襖や障子が開け放たされているので、全然狭苦しいようなことはありません。

床の間には畳が敷かれ、掛け軸が掛けられています。

床の間には1本のブドウの木を使った床柱があります。

自然のまま、何ら手を加えずにブドウの木を用いています。見事と言う他に言葉がありません。

天井に注目してください。煤竹（囲炉裏の上で煤をかぶった竹）を組んだ格天井です。

ここにもブドウをモチーフとした飾りがあります。
和室の付け書院の杉板にブドウとその葉が４つ、はち（この写真では見えませんが）そしてトンボが透かし掘りで描かれています。
トンボはブドウの収穫期、はちはシャトーカミヤのブランド商品「ハチブドウ酒」に由来するそうです。

廊下の突き当たりに洋風のアールコーブ（付属の小部屋）がありますが、小部屋というよりはちょとしたスペースと言った方がいいかもしれません。

ここは8帖の部屋です。

ロマネスク様式のアーチを持つ１階ピロティです。