2008/02/16 - 2008/02/19
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Mark & Risbeauさん
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【http://4travel.jp/traveler/marktanaka/album/10221821/からつづく】
南国キイ・ウエストを後にして、海の上のハイウエイを北東に走り始めた。気に入った街をたった一泊で去るのは、後ろ髪を引かれる思いである。りす坊が、帰り道は海の上を運転したいと騒ぐので、決意して命を託することした。これが夫婦愛というものである。
海上ハイウエイの脇には、マイル・ゼロから1マイル毎に累計マイルが表示してある。フロリダ・キイの各コミュニティでは、「マイル**」にある〜ホテル、のように言及されるようだ。リニアな世界である。
マイル50の手前に、7マイル・ブリッジと呼ばれる長〜い海上橋がある。おそらくフロリダ・キイといえば、まず誰もが頭に思い浮かべる橋ではないだろうか。こいつは、見逃せない。というわけで、橋を東に渡りきったところで道路脇の駐車場に入ってみた。
現在の7マイルブリッジは1982年に建造された往復2車線の高架道路だが、その傍らには1912年建造の錆びた狭い旧橋が残っている。旧橋は1935年以来自動車道路に変換されて使われていたが、現役を新橋に譲った1982年以来、歩行者、自転車、釣り人専用になっている。しかしながら、ハリケンの被害だろうか、途中何カ所か橋桁が落ちている部分があるので、走り幅跳びによほど自信がないと対岸まで完歩することはできない。もしできたとしても、ゆうに3時間半かかる距離である。
1990年の映画「True Lies」のクライマックス・シーンは、この旧橋が撮影に使われた。ジェイミー・リー・カーティスが囚われたまま暴走するストレッチ・リムジンは実際にこの旧橋の上を疾走したが、最後にミサイルで破壊される部分は精巧に作られたスケイル・モデルだった。機会があれば、そのシーンを見てみてほしい。
僕は、時代を感じさせるこの旧橋が大変気に入ってしまった。もともとマイアミからキイ・ウエストまで路線を延長するためにフロリダ東岸鉄道が建設した鉄道橋らしく、錆びた手すりは鉄道の線路を溶接したものだった。1911年メリランド(スチール社)製と刻印されている赤錆のガードレイルから体を乗り出して、20メートル下の海をのぞき込んでみる。見渡す限り広がる南洋の彼方から渡ってくる海風が、なんとも快適だ。土曜日の午後にのんびりビールを飲みながら釣り糸を垂らすには、恰好の環境かもしれない。
さて、りす坊はもう運転に飽きたらしく、早々に降板。ここから先は、またまた早送りとさせて頂く。
マイアミに着くちょっと手前の道路脇に、突然この看板が現れる。りす坊の懇願により、道を逸れて駐車場に向かった。
アメリカならどこにでもありそうじゃないか、と思われるかもしれないが、実は西海岸では全く見かけない。クリスピー・クリームの激甘に舌を巻いたりす坊は久しく米国のドウナツ屋から遠ざかっていたが、この懐かしい看板を見て日本の記憶が蘇ったらしい。嬉々として入口に向かったが、店内を覗くと、ガラ〜ンとひと気がない。スーパーボウルのTVコマーシャルで金を使い過ぎて、潰れちゃったのか?そういうと駐車場には車が1台もない。「24時間営業」の看板の立場はどうなるのか?やむなくそのままスクランブル発進したが、アクセルが重く感られじたのは、りす坊のため息のせいだったかもしれない。
次第に天気が悪くなり、マイアミのダウンタウンを通り過ぎて、マイアミと、島のように大西洋に浮かぶマイアミ・ビーチを繋ぐ橋にさしかかったころには雨が降っていた。りす坊が持参したカーナビのおかげで道に迷ったり(僕は地図派)したものの、なんとか今晩から2泊の宿に到着。
僕らの宿のあるマイアミ・ビーチの南端はサウス・ビーチと呼ばれる。南北に延びる砂浜を見渡す海岸沿いはアールデコ調のホテルが並ぶ、マイアミ屈指の観光スポットになっている。「south beach art deco」でグーグル画像検索すれば、よく絵はがきになるこの界隈の写真がご覧いただけるはずだ。
ホテル前の通路は延々続くレストランのテイブルが歩道を占領し、砂浜と歩道の間の狭い片側一車線の車道は、車がひしめき合っていた。さすが人が多い観光地だけあって、流しのタクシーが多いが、ここの運ちゃんたちはマンハッタン並に運転が荒かった。僕らのホテルはそんな混沌のまっただ中にあったので、ホテル前に強引に横付けし、ホテルのバレイに車を預けるしかなかった。
キイ・ウエストと打ってかわって活気溢れる雰囲気に、急激に気分が高揚するのを感じた。僕らのホテルは古い建物ながら、それほど悪くない。そもそも多くの人が大枚叩いてここに泊まる目的のひとつは、20年代〜30年代風のレトロな宿を体験するためである。チェックインを済ませ、部屋に入って、ほっと一息。内装は予想していたよりはマシだった。よその街なら最高級のホテルに泊まれるくらいの宿賃を払ったけど、あいにく窓から海は見えない。世界的観光地のピークシーズンに来たのだからそれも仕方ないか。
荷物を広げる前に、界隈の散歩に出かけた。ホテル毎に前の歩道にレストランが開店しているので、歩きにくいことこの上ない。おまけに、通りがかるたびウエイタやウエイトレスが客引きをするので、おもしろがって話を聞いたりすると、まんまと席に座らされてしまう。どの店も似たようなロブスタ・エビなどの海鮮と肉料理だ。気をつけてNo graciasと言い続けないと、油断した隙に求めもしないメニュー解説を始められてしまう。予想通り、値段はどの店も安くなかった。
2ブロックも歩くと各店の積極的すぎる営業活動に辟易して、道を折れて内陸側(といっても幅1マイル程度の細長い島だが)の通りを歩くことにした。海岸通りからひとつ奥になるコリンズ通りにはアパレル関係の有名店が並んでいたが、レストランは少ない様子。ぐるりと周辺を歩いたところで、自称「ザギャット味部門で26点中20点」のキューバ料理Puerto Saguaに行き当った。結構広い店内がほぼ満席なうえ、庶民的な雰囲気に釣られて入ってみることにした。20点のキューバ料理、楽しみである。
キューバのビールをたのんだら、セルベサ・プレジデンテがでてきた。よく見るとドミニカのビールじゃないか。でもあまり旨かったので、2本も飲んでしまった。なるほど、米国はキューバと禁輸状態でした。
りす坊は魚、僕はキューバ風フィレイ・ミニョンを注文した。驚いたことに、看板にイツワリなし、いずれも期待を上回る味である。そればかりか、ウエイタの突慳貪さと、料理の無造作な盛り付けで、いやが上にもキューバ情緒が盛り上がる。ところで、僕らのウエイタは英語が達者だがものすごく無愛想。一方、隣のテイブルのウエイトレスは愛想はいいが、LAでもおなじみエスパニョル8割の怪し〜い英語。う〜ん、甲乙つけがたい。
イディッシュで話していた隣のカップルは、テイブル常設のオレンジ色チューブに入った液体がサラダ・ドレッシング(的なもの)とわからなかったらしく、僕らに尋ねてきた。僕らはそれほどロウカル色を醸していたのだろうか。たまたま先に味を試していたので、オイルとビネガーで食べた方が無難ですよ、と率直なアドバイスをしてあげた。それほど、あり得ない味だったのだ。隣のおばさんは気の毒なことに、ばかでかいサラダを注文していた。
店を出るとき念のため再確認してみたら、サービス、内装部門はかなりキビシイ評点...。内装はご愛敬として、ある意味、どの客にも安定したクオリティのサービスを提供しているのか!と思うと、彼らの裏表ない実直さに俄に好感を覚えた。でもチップは弾まない。
依然怪しい雲行きの夜空の下、空虚に派手で俗なサウスビーチの夜は更けていく。
【http://4travel.jp/traveler/marktanaka/album/10224423/につづく】
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旅行記グループ 冬のフロリダの旅(2008)
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