冬のフロリダ その2

2008/02/16 - 2008/02/19

【http://4travel.jp/traveler/marktanaka/album/10221288/からつづく】

僕の飛行機嫌いは、20年ほど前、サンフランシスコからロサンゼルスへの出張の帰り道に始まった。ロサンゼルスでの仕事のあと、数時間遅れで夜遅く出発した僕らのフライトは、最初から激しい乱気流に巻き込まれ、フライト中程で突如エアポケットに落ちた。席から離れていた人々は床から体を投げ出され、あらゆるところでカップの飲み物が天井にたたきつけられた。航空機は数十秒の間落下を続け、墜落するときのあの不気味な音は今思い出してもぞっとする。あのときほど、死を身近に感じたことはなかった。

幸い今回のフライトはそのようなドラマもなく、予定通り東海岸時間1時半にマイアミ空港にタッチダウンした。飛行機を降りたときの空気の温度と湿度と臭いから南国に来たことを実感する。ジャカルタやバンコクとどこか通じるような臭いだ。レンタカーをピックアップし、そのまま南に向かった。

僕は90年代の初めに、一度だけマイアミに仕事で来たことがある。しかし、一泊の滞在だったのでほとんどこの街の記憶はない。通過する道すがら見る風景は、同じ南国ながらロサンゼルスとは異なる、さらに大雑把で野放しな雰囲気だ。

マイアミからキイ・ウエストまでの距離は160マイル（≒256キロ）、うち127マイルは海の上を走る国道号である。国道（US Routes）は一部分高速道路になってはいるが基本的に交差点のある幹線道路で、インターステイト高速のようにスピードが出せない。したがって、160マイルを走るのにたっぷり3時間半かかる計算だ。

フロリダ半島の南端から海の上を走る部分はOverseas Highway（海上道路）と呼ばれる、無数の小島（キイ）を繋ぐ往復2車線の道路である。フロリダ南端の約1700のキイは、大西洋とメキシコ湾の境界線となっている。キイ・ウエストは、その最南端にある、人が住む最後の島である。

途中何回か停まって風景を楽しみながら、のんびり走っているうちに日暮れが迫ってきた。どうやら「夕日の故郷」キイ・ウエストで夕日を見ることは出来なそうだ。

途中渋滞や速度制限があったため、キイ・ウエストについた頃にはどっぷりと日は暮れていた。

予約していたモウテルにチェックインすると、夕食を求めて街に歩いて出た。冬のフロリダはシーズンたけなわで、すべてが高い。僕らのモウテルは繁華街から歩ける範囲で残っていた最後の宿だったが、よそではせいぜい数十ドルの部屋が、今の季節のキイ・ウエストでは200ドルもする。しかも、これは破格の宿であり、「ホテル」の名が付くといくら古い建物でも一泊300ドル以上になる。

キイ・ウエストのもっとも賑やかな通りデュバル通りを歩いた。観光地然とした店が並ぶ中、ちょっと通りから引っ込んだところにある静かなパティオのレストランで夕食を食べることにした。待ちに待ったビールは、ご当地Key West Sunset Ale。甘味の強いちょっとしつこい目のエイルだ。暑い気候では、どんなビールでも冷えていれば文句はない。

ビールで元気が出たところで、僕は地元で獲れるハタ（grouper）の炙り焼き、りす坊はいつものシーザーサラダを注文した。ハタの淡泊な味と辛目の付け合わせが絶妙で、米国で食べるシーフード料理で久々に旨い魚だった。

なお、東海岸の観光地によくあることだが、伝票には自動的にチップが乗せられてくる。よく気をつけないと、ダブルでチップを払うことになってしまう。

デュバル通りには、ゲイの店が集中する地域がある。そこにあるドラッグ・ジョイント（女装バー）の前では、タイツ姿の「おネエさん」たちが客引きをしていて、めざとく日本人と認めると、耳を覆いたくなるような日本語を投げかけてくる。これにはすっかり興ざめして、そそくさと宿に戻ることにした。

【http://4travel.jp/traveler/marktanaka/album/10221821/につづく】

≫過去の旅行記を見逃した方は、http://marktanaka.spaces.live.com/に急行だ！

エリア キーウエスト(アメリカ)

• 同行者: カップル・夫婦
• 一人あたり費用: 15万円 - 20万円
• 交通手段: レンタカー
• 航空会社: アラスカ航空

マイアミ空港に到着!

南向き国道1号

地元のキイ・ウエスト・サンセット・エイル

見た目も鮮やかなハタ（Grouper）の炙り焼き

キイ・ウエストのデュバル通り