2026/03/28 - 2026/03/30
4892位(同エリア13643件中)
ST&Gさん
太平洋から日本海、そして再び太平洋へ。
日本縦断の旅を締めくくるのは、山梨・実相寺に咲き誇る満開の桜でした。
曇天を撥ねのけるような可憐な薄紅に包まれ、「日本人でよかった」と情緒に浸ったのも束の間。
翌日、静岡で口にしたランチのイカ墨料理が、その感動のすべてを上書きしました。
ふと鏡を覗き込めば、そこにいたのは天女も裸足で逃げ出すレベルの「漆黒の魔物」。
私はその禍々しいスマイルを湛えたまま、伝説の地・三保の松原へと向かいました。
世界遺産の絶景を前に、お歯黒状態で佇むその姿には、もはや情緒の欠片もありません。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 観光
- 4.0
- グルメ
- 4.0
-
越後から信州、そして甲州へ。
三県を跨ぐ壮大な県境越えドライブ。
その甘い相棒に選んだのが、山梨が誇る銘菓「桔梗信玄餅」でした。
車窓に流れる山並みを眺めながら、とろりとした黒蜜を香ばしいきな粉の海へ。
それらが柔らかなお餅に絡み合う様は、まさに至福の極みだったのですが、ここからが、信玄餅という『難攻不落の銘菓』との真剣勝負の始まりでした。
一口運ぶたび、あるいは鼻からフッと息を吐くたびに、きな粉が車内にふわっと舞い上がります。
「自分はどれだけ鼻息が荒いのか…。」とセルフツッコミを入れずにはいられませんが、もはや舞い散る粉は演出の一部。
膝の上に容赦なく降り積もるベージュの雪も、今は完全に見て見ぬふりです。
「後の掃除? 何のことでしょう。」
そんな未来の自分への宿題は潔くスルー。
今はただ、車内に充満する香ばしさと、黒蜜の甘い誘惑に身を任せるのみです。
目的地に着く頃、私の服とシートがどんな惨状になっているかは神のみぞ知る、いえ、きな粉のみぞ知るところ。 -
山梨の名刹・実相寺を訪ねました。
前日の日曜日は快晴と満開が重なり、界隈は日本三大桜の一つ「山高神代桜」を求める人々で溢れかえったといいます。
その圧倒的なカリスマ性は、今なお健在。
賑わう境内を歩く中、私の目を引いたのは桜ではなく干し柿でした。
しかし、ここで一つの疑問が浮かびます。
かつて2月に品切れで買えなかった苦い経験がある私にとって、4月に干し柿が並んでいる状況は、あまりに不可解でした。
長期保存の賜物か、あるいは時空の歪みか。
そのミステリーに気圧されて購入は断念しましたが、あの凝縮された甘みは間違いなく本物だったのでしょう。
山梨の春は、桜の美しさと共に、小さな干し柿への未練を心に残していきました。 -
山高神代桜が見ごろと聞いて駆けつけた、通算3度目の実相寺。
「今が見ごろ」と聞いて駆けつけたものの、空はあいにくの全力グレー。
映えるはずの景色も、私の手にかかれば、法事で回ってくるような切ない写真に近い仕上がりです。山高神代桜 花見
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善光寺に呼ばれるのが3度目なら、磁石に吸い寄せられるように実相寺へ辿り着くのも、また3度目のこと。
ここまで重なると、もはや単なる偶然とは思えません。
満開の桜を媒介に、私をこの地へと引き寄せるご縁。
それは、仏様が仕掛けた何とも巧妙で、慈悲深い罠なのかもしれません。 -
見に来たのは、桜界の生ける伝説『山高神代桜』。
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駐車場からこれほどスムーズに拝謁できただろうか…。
疑問に思いながら進むと、目の前に現れたのは感動の再会を阻むかのように、私と桜を隔てる「柵」でした。
あまりの状況に戸惑っていると、見かねた通行人から「入口はあちらですよ」と声をかけられ、現実へと引き戻される始末。
文明の利器がなければこの場所に辿り着くことすら危うく、また以前利用した駐車場の場所さえ記憶の彼方でした。
桜が長い歳月を経てレジェンドとしての威厳を増していく一方で、私の脳内では「老化」という名の断捨離が、着々と進んでいるようです。
思い出まで捨て去る必要はないのだと、己の脳細胞に切実な願いを込めたひとときでした。 -
実相寺の入口へと向かう道中、あろうことかレジェンドのお姿を正式な拝謁前に目撃してしまうというフライング。
「道は間違えたものの、その先には息を呑む絶景が待っていた」
そんな感動的な一節を添えて紹介したかったのですが、現実は非情です。
スマートフォンのカメラが、必ずしも思い描いた通りの光景を写すとは限りません。
画面に収まっていたのは、絶景とは程遠い昭和の生活感が漂う一枚。
自身の不器用さを苦笑いと共に受け入れた瞬間でした。 -
爛漫と咲き誇る桜と、それを優雅に引き立てている水仙。
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既に十分な満足感を覚えていた私は、ふと「もう、ここで引き返してもいいかな」という思いに駆られましたが、その誘惑を振り払うようにして、寺の門へと向かいました。
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入口は相変わらずの行列でしたが、この日は月曜日。
「毎日が日曜日」という生活を謳歌する世代から、この日のために有給休暇を勝ち取ったであろう若者まで、境内は熱気に包まれていました。
しかし、ここの桜には間違いなく、その休暇を捧げるだけの価値があります。
参拝料(500円)と駐車場代(500円)の計1,000円。
絶景を維持するための「管理費」というよりは、桜が活力を保つための「栄養代」だと捉えれば、決して高いものではありません。 -
視界を埋め尽くす、圧巻の桜並木。
晴天とはいきませんでしたが、このタイミングで訪れることができたのは幸運でした。 -
今回の写真は、かなり渋めなトーンになったかもしれません。
しかし、不思議なことに私の頭の中では、プロが補正した写真のようにあの景色がくっきりと再現されているのです。
画面越しの色以上に、私を魅了したあの美しさ。
その感動を、少しでもお裾分けできれば嬉しいです。 -
春旅の旅行初日にに撮影した八ヶ岳。
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こちらは実相寺からの帰り道、ふと目を向けた八ヶ岳。
ここ数日の暖かさで、山頂の雪も溶けてしまいました。 -
弾丸旅行の余韻、あるいは心地よい疲労感が色濃く残る中、翌日の昼餉を求めて静岡へ。
訪れたのは、一歩足を踏み入れれば異国情緒に包まれるスペイン料理店サングリア 久能山店です。
折に触れて他店舗を試みることもありますが、最終的には「やはり久能山店が好き」という結論に至ります。サングリア 久能店 グルメ・レストラン
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最大の理由は、何といっても海が見えるこの景色。
晴れた日には遠く伊豆半島まで見渡せる贅沢なパノラマが広がります。
「もし今津波が来たら」というスリル満点な考えが頭をよぎることもありますが、料理を一口運べばそんな生存本能はどこへやら。 -
至福のランチを楽しむためには、まず駐車場選びという課題をクリアしなければなりません。
海岸線には広々とした駐車場が完備されていますが、そこに車を止めると、店舗へ行くために階段を上る必要があります。
弾丸旅行による疲労の蓄積に加え、膝への負担を考慮した結果、私たちは海岸線を避け、店舗裏手の高台へと続くルートを選択しました。 -
案内されたのは、オーシャンビューの席。
この日は運良く、遠方に伊豆半島までをも見渡せるコンディションでした。
しかし、この海を眺めていると、富士山県民としての悲しき性が頭をもたげます。
料理を待つ間、心の中で静かに唱えるのは「今、津波が来ませんように!」
まさに、絶景と戦慄が背中合わせの状況です。
優雅に海を愛でるべきか、それとも即座に避難経路を再確認すべきか。
揺れる煩悩を抱えながら、私たちは運命の料理を待つのです。 -
今回は、お店の予約サイトから「ランチCコース」をセレクト。
●サングリア久能山店予約サイト
https://www.tablecheck.com/shops/kunou-sangria/reserve
家人の「海老のカタラン風、イカの墨煮、ガーリックチキン、そしてパエリアだけは譲れない」という熱いリクエストに応えるには、このコースが最適でした。
今回はランチで来店。
ディナーならアラカルトであれもこれもと欲張りますが、ランチコースでこのボリュームなら内容も文句なし。 -
運ばれてきた前菜を一口含めば、意識は瞬く間にスペインへと誘われますが、現実は静岡の久能街道。
訪れたことのない異国の風を、これほどまでに鮮明に感じさせてしまうサングリアの表現力には、ただ脱帽するばかりです。 -
続いて登場したのは、「海老のカタラン風」。
その濃厚なソースは、思わず「罪深い」と表現したくなるほどの美味しさです。
次から次へとパンを求めてしまう衝動に駆られ、自制心を保つのが精一杯。
これはもう、「魔性の一皿」と言わざるを得ません。 -
イカ墨煮は、それ単体で食卓の主役を担うにふさわしい濃厚な味わいですが、海老の凝縮されたソースも決して引けを取りません。
海老のコクとイカ墨の深み。
両者が織りなすその美味しさに、ただただ圧倒されるばかりでした。 -
続いて運ばれてきたのは、ジャガイモ入りのガーリックチキンです。
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海老、イカ、そして鶏。
まさに「濃厚三兄弟」と呼びたくなる顔ぶれですが、もしこの中から一つだけを選ぶとなれば、私にとっては非常に難しい究極の選択になります。 -
重厚な料理が続く展開に、私は既に圧倒されていましたが、ここでさらなる一皿、漆黒のイカ墨パエリアが供されました。
一口食べれば、口元が黒く染まるのは避けられません。
その様子は、まるでかつての貴族が施した鉄漿を彷彿とさせます。
微笑むたびに覗く漆黒は、美味しい食事を堪能した証。
伝統的な高貴さを思わせる色に口元を染め、現代の静岡で思いがけず雅なひとときを過ごすこととなりました。 -
その状態で向かった先は、天下の名勝・清水の三保。
三保松原 自然・景勝地
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美しい松原に降り立ったのは天女ではなく、口元を闇に染めた令和の魔物です。
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これはもう天女も驚いて、慌てて羽衣を掴んで空へと逃げ帰ってしまうレベル。
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「鉄漿の魔物の降臨に、あろうことか松林が枯れ始めた!?」
ふと見れば、三保の松原の松林が枯死し始めており、その痛々しい姿に胸が痛みます。
先ほどの冗談が不謹慎に思えるほどですが、この原因は明らかに松くい虫による被害でしょう。
名勝の景観が損なわれていく現状を目の当たりにし、自然保護の厳しさを痛感せずにはいられませんでした。 -
無事に帰宅し、最後の大仕事であるお土産配りの儀式が始まりました。
友人や実家へ献上するのは、3月限定の『北海道・名古屋・博多ばかうけ』と田中屋の『笹だんご』。
自分用の胃袋へ直行させてしまおうかという強烈な誘惑に駆られたものの、ここは武士の情け…ならぬ鉄漿魔物の情けで、泣く泣く実家へと放出することにいたしました。
これにて、新潟から始まり、長野、山梨、そして静岡へと駆け抜けた春旅旅行記も完結です。
私の怒涛の珍道中にお付き合いいただき、有難うございました。
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