2025/08/30 - 2025/08/30
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AandMさん
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ウランバートル中心部スフバートル広場の西側数百メートルの街中にザナバザル美術館があります。1966年に開設された国立の美術館で、主に18~20世紀に製作されたモンゴルの工芸品や仏教関連美術品が展示されています。滞在していたホテルから徒歩10分程の場所でしたので、見学することにしました。
20世紀初め頃までは、モンゴル各地に寺院や伝統的な建物が多数ありましたが、ソ連影響下で社会主義国になってから、これ等建造物の多くが放置・破壊され、沢山の美術品が失われています。このような時代、ゴビ砂漠などに密かに隠されていた仏教美術品があり、モンゴルが自由化された以降に美術館に戻され、展示されはじめたケースもあるようです。
「バナバザル美術館」名称は、モンゴルの仏師バナバザル(Zanabazar, 1635-1723)に因んで、モンゴルが自由化された以降の1995年に付けられました。美術館にはバナバザルや彼の弟子達が製作した仏像などが展示されています。いずれも姿、形、表情が洗練されていて、とても美しい美術品です。
この美術館を訪れると、モンゴル伝統文化に触れることができるように感じます。
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.0
- ホテル
- 4.0
- グルメ
- 3.5
- ショッピング
- 4.0
- 交通
- 3.0
- 同行者
- カップル・夫婦
- 交通手段
- 徒歩
- 航空会社
- ユナイテッド航空
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
8月30日
ザナバザル美術館は、国立チンギスハーン博物館の西南側約1kmにありました。ただ建物は普通のビルで、美術館らしくなく、入り口にあるポスター表示を見て、美術館であることを確認してから入館しました。
この建物は20世紀初めにソ連の実業家が銀行として建てたもので、1966年に美術館に転用され、一般公開されたそうです。 -
入口脇のポスターに"THE FINE ARTS ZANABAZAR MUSEUM"と書かれています。
入場料15,000MNT(700円)、写真撮影許可証30,000MNT(1400円)でした。 -
美術館の内部です。
1階にも展示品はありますが、主な美術作品は2階に展示されていますので、前方の階段を上ります。 -
展示室の様子
工芸品、衣装、仏画などが展示されています。 -
美術館名称になっているザナバザル(G. Zanabazar, 1635-1723)の肖像
ザナバザルはモンゴルで活躍したチベット仏教の高僧でしたが、画家、彫刻家、衣装家などとしても名を残しています。
モンゴル国旗紋章に用いられているソヨンボ(Soyombo)も彼の作品だそうです。 -
美術館の展示品、古い時代の作品から見学することにします。
これは7世紀頃に製作された石仏(Stone Statue)、顔立ちがモンゴル的です。 -
菩薩(Bodhisattva)の壁画、7世紀頃
古いモンゴル仏教寺院遺跡にあった壁画のようです。 -
菩薩(Bodhisattva)の壁画、7世紀頃
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仏陀(Budha)の壁画、7世紀
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僧(Priest)の壁画、8-9世紀
ウイグル時代に書かれた壁画、との説明がありました。 -
鬼子母神(Tara Haliti)の壁画、7世紀
カラカジャ寺院(Kara-kaja Temple)にあった壁画、との説明がありました。7世紀は、日本では飛鳥-奈良時代に相当します。法隆寺金堂の壁画と似ているようにも感じます。この壁画があったカラカジャ寺院は、廃寺となっています。20世紀初めにモンゴルは社会主義国になり、多くの伝統寺院が廃されましたが、この寺院もその一つであったのかも知れません。 -
壁画(Bazarvaani)、8-9世紀
ターフェン寺院(Turfen Temple)にあった壁画、との説明 -
作品が製作された時代が、急遽、千年ほど後世に移行していました。
これは19世紀に製作された文殊菩薩(Manjushuri)の像、「絹織物」とありました。タペストリー(絨毯)技法で製作されています。
仏教寺院で信者達に崇拝されていた、と思われます。製作年が比較的新しいので、7-9世紀に描かれた壁画に比べて像が鮮明です。ただ描かれている仏像の形や表情は、殆ど変わっていません。7世紀から19世紀頃まで、変わることなくモンゴルの人々は仏教信仰を続けていたことが分かります。 -
シュリ デヴィ(Shri Devi)、絹織物、19世紀
シュリ デヴィは悪を退けるとされるチベット仏教の女神 -
大きな曼荼羅(Mandala)が展示されていました。
曼荼羅は諸仏が集まる楼閣を模式的に示した図像で、チベット仏教では様々な形態があるようです。カラフルな色彩で、建物、人物などが描かれている見事な美術品 -
ナンディカ ブパラ(Nandika-bhupala)、絹織物、19世紀
チベット仏教の化身仏 -
六つの腕を持つマハ-カ-ラ(Six Armed Mahakara)、絹織物、19世紀
マハカラは大黒天として知られている仏神 -
ラマ・ダルマラージャ(Yama Dharmaraja)、絹織物、19世紀
ラマ・ダルマラージャは閻魔大王で、地獄、冥界の主 -
展示室は広々として、混みあってもいませんので、マイペースでゆったりと見学できます。
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白マハ-カ-ラ(White Mahakala)、綿に鉱物で色付け、19世紀
チベット仏教では、富の神だそうです。 -
チンスジット・ノマンカーン寺院(Chin sujit Nomun Khan Monostery)にあった壁画(修復)、18世紀初期
修復された壁画ですが、18世紀初期に製作された割に色彩劣化が激しく、破損個所も認められます。廃墟状態になっていた寺院に残されていた壁画で、モンゴルが社会主義国になった際に、寺院の僧達が追放され、そのまま放置されたため寺院が荒廃したようです(モンゴル語説明と修復様子を示す写真がありました)。 -
様々な仏画が展示されていました。19世紀の製作、綿布に鉱物顔料
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白マハ-カ-ラ(White Mahakala)、綿に鉱物色付け、19世紀
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マハーカーラ、綿布に鉱物顔料、19世紀
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マハ-カ-ラ(Mahahala)、綿布に鉱物顔料、19世紀
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マハ-カ-ラ(Mahahala)、綿布に鉱物顔料、19世紀
前作と同じ仏神で似通っていますが、被り物や周囲の様子が異なっています。幾つかのバリエーションがあったことが分かります。 -
獅子に乗る温厚な表情の仏神、綿布に鉱物顔料、19世紀
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複数の頭と多数の手を持つマハーカーラ、綿布に鉱物顔料、19世紀
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仏陀の集合樹図(The assembly tree of the lord buddha)、綿布に鉱物顔料、19世紀
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釈迦の十二行為図(Twelve deeds of Shakyamuni Buddha)、綿布に鉱物顔料、19世紀
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白多羅菩薩(White Tara)、綿布に顔料色付け、19世紀
白多羅菩薩は、守護と自愛の観音様 -
ツォンカパ、綿布に鉱物顔料着色、19世紀
ツォンカパ(Tsongkahapa, 1357-1419)は、チベット仏教の最高の学僧だそうです。 -
緑多羅菩薩(Green Tara)、綿布に顔料色付け、19世紀
多羅菩薩は、緑、白、赤、青、黄色で表現され、白と緑の多羅菩薩は自愛に満ちた優しい女神とされています。 -
曼荼羅(Mandala)、綿布に鉱物顔料で着色、19世紀
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これも曼荼羅(Mandala)、綿布に鉱物顔料で着色、19世紀
曼荼羅は諸仏が集まる楼閣を表したもので、概略の形は似通っていますが、多様な表現があることが分かります。 -
大きな部屋に多数の仏像が展示されていました。
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ほぼ同じ大きさ、高さ十数センチメートルの沢山の仏像がありました。
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仏像は、粘土に色付けされた塑像
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各仏像の大きさな似通っていますが、手の組み方は様々です。
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ガラスケース内に金属製仏像が展示されていました。ザナバザル(G. Zanabazar, 1635-1723)および彼の門弟たち(Zanabazar School)の作品です。
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文殊菩薩像(Statuette of Manjusri), 18世紀
ザナバザル(G. Zanabazar, 1635-1723)作品 -
カルーダ(Karuda)、19世紀
ザナバザルの門弟達(Zanabazar School)による製作 -
ザナバザルの門弟達による作品
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阿含菩薩像(Statue of Akshobhya)、18世紀
ザナバザル(G. Zanabazar, 1635-1723)作品
清楚な美しさが感じられる見事な阿含菩薩像です。 -
ザナバザル(G. Zanabazar, 1635-1723)作品
前作と姿形が似通っていますが、これも美しい菩薩像です。 -
手の所作が異なっていますが、ザナバザル(G. Zanabazar, 1635-1723)作品です。
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これもザナバザル(G. Zanabazar, 1635-1723)作品
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白多羅菩薩(White Tara)、ザナバザル(G. Zanabazar, 1635-1723)作品
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見る角度を変えて観察した白多羅菩薩(White Tara)
この美術館に展示されていた作品群の中で、最も美しい菩薩像
ザナバザル美術館を訪れたなら、必見作品だろうと思います。 -
小さな仏塔、ザナバザルもしくは彼の弟子の製作
造りが繊細で、美しい作品です。 -
銅製金具類、17-18世紀
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ヴァジュラパーニ(Vajrapani)、綿布に鉱物顔料で色付け、19世紀
ヴァジュラパーニは金剛手菩薩、日本では金剛力士(仁王) -
ヴァジュラパーニ(Vajrapani)、綿布に鉱物顔料で色付け、19世紀
描き方が前作とは異なっています。 -
ヴァジュラパーニ(Vajrapani)、綿布に鉱物顔料で色付け、19世紀
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観音菩薩像、版画、19世紀
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版木の原板、19世紀
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版木の原板、19世紀
金剛般若経(Vajracedika Sutra)が彫られています。 -
飲み物セット(Set of beverages)、銅器、19世紀
仏教儀式で用いられていた道具と思われます。 -
香炉(Incense burner)、20世紀
寺院に置かれていたようです。 -
善子の仏陀(Buddas of the good eon)、20世紀
額に沢山の小さな仏像が飾られていました。 -
小さな仏像の拡大
粘土像に赤、金、青などの顔料で着色され、仏像の姿はいずれも似通っています。 -
装身具類、19-20世紀
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装身具類、19-20世紀
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ハルハ族の女性の肖像画(Portrait of the Khalkha woman)、綿布に着色、1962年
モンゴルの伝統的装身具と衣装を纏った女性像 -
弥勒行列の儀式用馬車(Maritreya procession ceremonial chariot)、20世紀初め
王の信任状捧呈式で使用された馬車
モンゴルが社会主義国になる以前の君主制であった時代に用いられていたようです。 -
木工品(Woodcraft)、20世紀
木製人形ですが、中段の人形顔付がヨーロッパ的です。モンゴルがソ連の影響で社会主義化した時代に製作されたことが想像されます。 -
上部に飾られていた夫婦像は、衣装や顔付がモンゴル的です。
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モンゴルゲーム駒(Mongolian game)、木製、20世紀
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鼠、猿、牛、蛇、鳥など様々な動物が彫られています。
どのようなゲームで使われていたのか分かりませんが、個々の駒の彫は緻密で美しさが感じられます。 -
モンゴルの伝統楽器、馬頭琴、20世紀初め
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モンゴルの伝統的な馬具、20世紀初め
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木彫「老人像, White old man」、19世紀
小さな像ですが、多種類の動植物が彫りこまれている美しい芸術品です。 -
ラマのゲゲニー寺院(Lama's Gegeenii Temple)、20世紀
チベットのラマにある寺院が緻密に再現されています。モンゴル仏教徒にとって、ラマは聖地であったと思われます。
モンゴルの宗教は仏教でした。社会主義であったモンゴル人民共和国時代(1924-1992)は宗教が禁止されていましたが、1990年代に自由主義国になって宗教の自由が認められています。現在、人口の半分以上が仏教徒だそうです。 -
展示室は混みあってはおらず、自由に見学できました。
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パクパ・ラマ(Phagpa Lama, 1235-1280)、絹織物、19世紀
パクパ・ラマはチベットから招かれた仏教の高僧で、モンゴル仏教の発展に尽くされた人物です。 -
19世紀に製作された仏画、絹織物
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19世紀に製作された仏画、絹織物
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白象に乗っているグンダリ(Gundali sitting on a white elephant)、絹織物、19世紀初め
グンダリ(軍荼利明王)は、密教明王の一人 -
緑多羅菩薩(Green Tera),絹織物、19世紀
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白多羅菩薩(White Tera)、絹織物、19世紀
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モンゴル伝統衣装が展示されていました。シャーマンあるいは僧が儀式の際に使用していた衣装のようです。
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ジナミトラ(Jinamitra)面、19世紀
観音菩薩が怒りを表した表情の仮面だそうです。 -
白老人(White old man)、19世紀
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宗教儀式で用いられていた仮面と衣装、19世紀
モンゴルが社会主義化した1924年以前に使用されていましたが、社会主義時代(1924-1992)は宗教儀式が禁じられていました。どこかで大切に保存されていた仮面と衣装、モンゴルが自由化した以降(1992~)、この美術館で展示され始めたようです。 -
宗教儀式で用いられていた仮面と衣装、19世紀
このお面、牛の頭部が用いられ、恐ろしい表情をしています。異形の仮面をつけているのは、秋田県の「なまはげ」と類似性があるように感じます。 -
モンゴル最後の君主、ボグトハーン(Bogd Khaan, 1869-1924)と妃の肖像、絹地に彩色、1956年
ボグトハーンの在位期間は1911-1919年、1921-1924年
ボグドハーン死去後、モンゴル人民共和国が建国されています。社会主義体制下では、モンゴルの伝統宗教であった仏教やシャーマニズム活動は禁止されています。
ザナバザル美術館の展示品は、概略、ボグドハーンの統治時代までに製作された美術、芸術品のようです。
モンゴルが共産主義ソ連の影響下で社会主義国であった時期(1924-1992)は、モンゴルの伝統的な活動が抑えられた「文化的抑圧の時代」であったのではないかと想像します。
ザナバザル美術館に展示されている仏教美術と関連展示を見学することで、モンゴルの伝統文化に触れることができるように思いました。ザナバザル美術館は、モンゴルの貴重な文化財が保存・展示されている立派な美術館です。
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