2025/08/31 - 2025/08/31
432位(同エリア552件中)
AandMさん
- AandMさんTOP
- 旅行記261冊
- クチコミ2768件
- Q&A回答97件
- 848,022アクセス
- フォロワー24人
2025年8月下旬、初めてモンゴルを訪れました。モンゴルと言えば、チンギスハーンが統治した歴史的な騎馬民族国で、大草原に住居ゲルや家畜が散在する牧歌的なイメージがありました。
今回、ウランバートルに滞在しましたが、ウランバートルは大都会で訪問前にイメージしていた牧歌的雰囲気は全く感じられませんでした。近年、ウランバートルの人口は急増中で、現在、モンゴル人口の半分近くがこの街に住んでいるそうです。道路は終日車の大渋滞でした。
徒歩でウランバートルを観光した際に(https://4travel.jp/travelogue/12012742)、街中に立派な美術館やギャラリーがあることに気付きました。モンゴルの方々、結構、美術に関心をお持ちのようです。「モンゴル」と「美術」の関係、訪問するまでは全く関心がありませんでしたが、「モンゴル美術」に興味が湧いてきました。”芸術家の価値観や関心は美術作品に表われる”、と言われます。
モンゴル国立近代美術館には、20世紀初頭から今日に至るまでのモンゴル人芸術家の作品が展示されています。モンゴル政治体制は1990年代に社会主義から自由主義に変わっています。政治体制の変化が美術作品に及ぼす影響などもあるかも知れません。
美術館はスフバートル広場東側、我々が滞在していたホテル(Best Western Premier Tuushin Hotel)向かい側にありました。
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.5
- ホテル
- 4.0
- グルメ
- 3.5
- ショッピング
- 4.0
- 交通
- 2.5
- 同行者
- カップル・夫婦
- 交通手段
- 徒歩
- 航空会社
- ユナイテッド航空
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
8月31日
滞在していたホテルと道路を隔てた場所に美術館がありますが、建物外見は普通の商業ビルで、美術館のようには見えません。
ただ良くみると、駐車場への入口上部に"The National Art Gallery of Mongolia"と書かれた案内表示が掲げられています。モンゴルの近代美術が展示されています by AandMさんモンゴル国立近代美術館 博物館・美術館・ギャラリー
-
駐車場への入り口を過ぎた個所が、美術館入口
-
入口ガラスに"The National Art Gallery of Mongolia"と書かれていますが、薄めの金文字ですので、注意しないと見落とします。
-
美術館受付がある1階フロアーです。平日の午前11時頃、訪問者数は少なく、ほぼガラガラ状態。入館料は大人4000 MNT(約200円)
-
2階が展示室ですので、階段を上ります。
-
壁に作品が展示され、作品にはモンゴル語と英語で書かれた簡単な説明があります。展示作品を一通り見て回ります。
モンゴルの近代美術が展示されています by AandMさんモンゴル国立近代美術館 博物館・美術館・ギャラリー
-
馬頭琴を弾く伝統衣装を纏った老人の絵、モンゴルらしさが感じられます。U. Yadatsilen (1905-1986)が、モンゴルが社会主義国であった1950年代に描いた作品
-
”After Work”、Odon Geleg (1925-1996)が1953-1954年に描いた作品
ゲレグ(Geleg)はモンゴル人民共和国の「人民芸術家」に選出された画家で、この絵の中で新聞を読んでいる白シャツの男として描かれている、と説明がありました。
作業後の茶菓を楽しむ人々が描かれていますが、新聞を読む姿には違和感があります。”農作業中でも学習に励め!”の意図? -
B. Gotboslen (1930-2000)が1951年に描いた作品
モンゴルではなく海外(恐らく、ソ連)の景観が描かれています。海外留学中に描いた作品と思われます。 -
O. Tsevergav (1915-1975)が1958年に描いた作品「馬乗りの戦い, The Horseman's Wrestle」
モンゴルならではの躍動感溢れる魅力的な作品です。 -
モンゴルが社会主義国であった時代に描かれた絵の隣に、モンゴルが自由主義国になった以降に描かれた作品群が展示されていました。
「気候オーバービュー, Weather Overview」の共通表題作品として展示されていた同人画家による一連作品です。この絵はJ. Munkhjargalによる"Candy Man"と題する2020年の作品 -
J. Munkhjargalによる「大地と水、Land and Water」と題する2020年の作品
-
同じ画家の作品
-
これも同じ画家作品
見て楽しめる作品だと思います。 -
人物、動植物が一体化されている不思議な感じの絵です。
-
これまでの絵と多少画風が異なりますが、「気候オーバービュー, Weather Overview」の共通表題の下で展示されていたA. Bayarmacnal作品「無題、Untitled」2025年に描かれています。
-
「芸術と女性, Art and the Woman」の共通表題の下で展示されていたB. Tulca 作品「願いと情熱, Wish and Passion」1999年
-
「芸術と女性, Art and the Woman」の共通表題での展示品、J. Mankhtsetsec による「Living and Impermanent Realism」2006年
-
木彫レリーフ作品が展示されていました。
モンゴルというより東南アジア的な雰囲気が感じられる作品です。 -
水牛が描かれたレリーフ作品
-
「平和の喜び、Joy of Peace」 と題するO. Baatarの作品で、モンゴルが社会主義国であった1987年の製作
-
「平和の3年、Three Years of Peace」と題するD. Canbelの1973年の作品
-
「投げ縄ホルダー, Lasso Holder」, M. Butemjによる1969年の作品
-
社会主義の影響が感じられる作品
-
「太陽、太陽が来た, Sun, Sun come Here」, T. Dorjsuremによる1969年の作品
単純化された絵柄ですが、興味深い作品です。 -
「馬使い, Horse Herder」, Do. Sosorbaramによる2007年の作品
-
「カル種牡馬, Khal Stallion」, G. Gandindejidによる1979年の作品
-
「羊飼いの少年, Shepherd Boy」, J. Baatarによる1969年の作品
-
水彩画やスケッチが展示されているコーナーがあり、モンゴル人民芸術家で国民画家の称号を持つLuvsangiin Gavaaの一連の作品が展示されていました。
これは「ゴビ, Gobi」と題する1962年の作品 ゴビ砂漠の景観が描かれています。 -
”Shivneen Water-Hole”と題する1996年の作品(水彩画)
-
「湖、Lake」と題する1996年の作品(水彩画)
-
「バーベンブルグ、Barbenberg City」と題する1960年の作品(油絵)
-
「入植地、Settlement」と題する1950年の作品(油絵)
-
「イスタンブールの街並み, Istanbul City」と題する1978年の作品(水彩絵)
-
「愉快なダンザン、Funny Danzan」と題する1971年の作品(水彩絵)
-
「2人の怠け者、Two Lazy People」と題する1965年の作品(油絵)
家畜の世話に忙しい老婦人の横に2人の若者が描かれています。「最近の若者は仕事をしない・・・」と文句が聞こえてきそうです。 -
「学生、Student」と題する1971年の作品(油絵)
-
「仕立屋、Taylor」と題する1996年の作品(油絵)
-
「貨物扱い人、Cargo Handler」と題する1996年の作品(油絵)
-
「残忍、Cruelty」と題する1971年の作品(水彩絵)
戦時中の状況が描かれています。 -
「通り、Street」と題する1985年の作品(油絵)
描かれているのはモンゴルの景観と思われます。 -
「トビリシの街角、Tbilisi Street」と題する1971年の作品(油絵)
「トビリシ」はジョージアの首都ですが、1970年代はソ連邦の地方都市。画家が若かった時代に訪問した際に描いたと思われます。 -
「ヴォルガ川、Volga River」と題する1971年の作品(油絵)
-
ゲルの前で休息する沢山の駱駝が描かれています。
-
「ロシア家庭のベッド、Russian Household's Bed 」1971年の作品(水彩絵)
画家(Luvsangiin Gavaa)がロシア留学していた時代に描いたようです。 -
「春、Spring 」と題する1992年の作品(油絵)
モンゴルの長閑な景観が描かれています。 -
”秋、Autumn”と題する1996年の作品(油絵)
前作「春」と対を成し、モンゴルの雄大な景観が描かれています。 -
モンゴル国立近代美術館には多くの素晴らしい作品が展示されていましたが、訪問者は我々を含めて数名ほどでした。
観客が少なかったのは平日の昼過ぎであったためかも知れませんが、海外からの観光客も含めて大部分の人々にこの美術館の存在が良く知られていないことが主な理由ではないかと思います。モンゴルの近代美術が展示されています by AandMさんモンゴル国立近代美術館 博物館・美術館・ギャラリー
-
次のコーナー、色彩豊かなカラフルな絵が沢山展示されていました。
先に見学した特設テーマ「芸術と女性, Art and the Woman」の作品群の続きで、女性を題材にした作品が並んでいました。
西欧的な顔立ちの女性が描かれています。 -
デフォルメされたヌード像、幻想的な作品です
-
"Nostalgia"と題した2003年の作品
-
モダンアートであることが一目で分かる面白い作品
-
民族衣装を纏った若い女性の絵、モンゴルらしさが感じられます。
-
デフォルメされた女性の絵、鮮やかな色彩が目を引きます。
-
オブジェ化された女性の像、画面中央部に描かれた小さな絵がモンゴル画家作品であることを物語っているように感じます。
-
丘上から下方の平原に展開する騎馬軍団を見ている女性達を描いた作品、モンゴル感一杯の興味深い絵だと思います。
-
抽象化して描かれた女性達
-
美術館には絵だけでなく、多くはありませんが、ブロンズ像などの彫像作品もありました。
-
版画コーナーの展示作品
1947年の作品で、戦闘場面が描かれています。モンゴルがソ連の影響下で社会主義国であった時代の作品 -
原爆を描いた版画がありました。
1985年のS. Batchuluunによる「広島を忘れるな、Never Forget Hiroshima」と題した作品です。モンゴルが社会主義国であった時代に、反原爆の意図を表した作品が発表されていたことに、驚かされました。 -
D. Jadambaaが1993年に製作した「駱駝を持ち上げることができます、Able to Lift Camel」と題する版画作品
-
S. Natsacdorjが1971年に製作した「輸送、Transportation」と題する版画作品
-
S. Jamfsが1977年に製作した「Virgin Land Series-1」と題する版画作品
-
R. Lkhamsurenが1967年に製作した「駱駝、Camels」と題する版画作品
ユーモラスで分かり易く、親しみの持てる作品だと思います。 -
赤旗を前に、地球儀を背に描かれているのは共産主義者のレーニン(V. I. Lenin)
この絵は、1922年にモンゴル画家B. Sharavが描いた油絵作品
ロシアでレーニン達による共産主義革命が起こった年に描かれたそうで、モンゴル国立近代美術館が所有する最も古い作品だそうです。 -
湖と背景の木立がカラフルに描かれた素晴らしい作品
-
草原を進む駱駝の群れ、モンゴルらしさが表現されています。
-
社会主義時代の人々の姿が描かれています。
-
澄み切った青い空を背景に草原を走り回る馬の群れ、モンゴルらしい絵です。
-
鏡を見ながら身繕いをする女性、社会主義時代に描かれた作品です。
-
1975年に描かれたTs. Dacvanyamによる「ナーダム祭、Naadam Festival」
ナーダムはモンゴル相撲大会のことです。 -
S. Baldanが1961年に描いた「羊飼い、Shephard」
-
D. Amgalanによる1966年の作品「赤ちゃんが生まれた、A Baby is Born」
-
同じ芸術家D. Amgalanによる1966年の作品「豊かな燕、Wealthy Swallow」
-
同じ芸術家D. Amgalanによる1966年の作品「成長、Grown Up」
「躍動感ある上向き姿」は、ソ連時代に造られた彫像や絵画作品で頻繁に見られる形態の一つで、この作品にもソ連の影響が強く反映されているように思います。 -
モンゴルが自由主義国になった1999年に描かれたD. Erdeneによる「舞台の裏側、Behind the Stage」
舞台出演を前にして緊張感を抑えようとしている少女の姿が描かれています。前掲の社会主義時代に描かれた作品と画風が様変わりしているのが分かります。 -
1991年にD. Munkhjargalが描いた「瞬間、Moment」と題する作品
-
1991年にB. Nasantsengelが描いた「芸術と女、Art and the Woman」と題する作品
-
美術館に展示されていた最も大きな作品、高さ1.2-1.5mで横幅数mはあったでしょうか。モンゴルが自由化された以降に製作された作品で、風に靡く長い髪を持つ女性の横顔が描かれています。自由な発想、開放的な考え方が芸術作品に反映され始めているように感じます。
今回訪れたモンゴル国立近代美術館は、ウランバートル中心部にあり、20世紀初頭から今日(1922~2025年)までに製作されたモンゴル人芸術家達の美術品が展示されていました。モンゴルは1990年代に社会主義国から自由主義国に変っています。社会が芸術家に影響を与え、更に「作品には芸術家の思想が反映される」ことに留意しながら一連の展示作品を見学させて頂きました。モンゴルの人々が過去100年間で体験された思いの一端を学ぶことができたように思います。
この旅行記のタグ
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
この旅行で行ったスポット
ウランバートル(モンゴル) の旅行記
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
0
79