
2025/03/28 - 2025/03/28
5363位(同エリア8818件中)
AandMさん
- AandMさんTOP
- 旅行記254冊
- クチコミ2694件
- Q&A回答96件
- 784,687アクセス
- フォロワー22人
東京発のパック・ツアーに参加して、3月下旬にアンコール遺跡を訪れました。アンコール・ワットやアンコール・トムなどの遺跡は迫力があり(https://4travel.jp/travelogue/11976148)、壁に彫られたレリーフや石像に緻密な繊細さが感じられました。
ただ3月下旬は34~36℃ととても暑く、猛暑の中での見学では注意力が散漫になりますし、風雨に長年晒された彫像やレリーフの多くは劣化が進み黒ずんでいて繊細な構造などまでは良く分からないようにも思いました。
ツアーにアンコール国立博物館見学が組み込まれていました。空調の効いた博物館には、アンコール遺跡で発見された石像群が、汚れなどが除去された状態で説明付きで系統的に展示されていました。2時間ほどの博物館訪問でしたが、クメール王朝とその前後の時代に造られた素晴らしい石像群に巡り合うことができ、カンボジアの歴史をより詳しく学ぶことができたように思います。
今回訪問したアンコール国立博物館は2007年に開設された新しい博物館で、シェリムアップの街中にあります。ショルダーバッグなどの荷物やカメラの持ち込みは禁止されていました。小物入れ用に「巾着袋」を貸してくれました。また、一眼レフやデジカメはだめですが、何故かスマホ使用はOKでした。スマホで撮影した素晴らしい展示品の一端を紹介します。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 観光
- 4.5
- ホテル
- 4.5
- グルメ
- 4.0
- ショッピング
- 3.5
- 同行者
- カップル・夫婦
- 交通手段
- 観光バス 徒歩
- 航空会社
- ベトナム航空
- 旅行の手配内容
- ツアー(添乗員同行なし)
- 利用旅行会社
- クラブツーリズム
-
アンコール国立博物館、重厚感がある立派な建物です。
アンコール国立博物館 博物館・美術館・ギャラリー
-
建物前は庭園で、池には水連の花が咲いていました。カンボジアでは国民の90%以上が仏教徒で、仏教がカンボジアの国教に指定されています。
蓮の花は、仏教を象徴する花とされています。 -
建物入口でライオン像が出迎えてくれます。ライオン像は「シンハ(獅子)」と呼ばれ、寺院などを守る聖獣で、これらの像はアンコール遺跡で発掘されたものです。
-
博物館のチケット売り場です。入場料大人20ドル、音声ガイド5ドルと表示が出ていました。
我々の場合、ツアー費用に含まれていました。現地案内のガイドさんが、入場チケットと音声ガイドを配ってくれました。音声ガイドには日本語があり、展示品に表示されている番号を押すと、説明が始まりました。 -
最初は仏陀に関する室で、大小1000体以上の仏陀関連の展示が行われていました。
-
「ナーガの光背を持つ仏陀」、アンコール時代の12世紀の製作
「ナーガ」とはインド神話に由来する蛇神で、仏教の守護神です。 -
「魔王マーラに打ち勝った仏陀」、19世紀
19世紀に造られた色彩豊かな仏陀ですが、姿形はアンコール時代に製作された仏陀像と似ています。 -
19世紀に製作された「魔王マーラに打ち勝った仏陀」で、前掲の仏陀と同じスタイル。現在のカンボジアにある寺院に祀られている仏陀像もこのお姿のようです。
-
「涅槃の仏陀」、12世紀(アンコール時代)
-
別の展示室に移動しました。
プレアンコール期(アンコール王朝が成立した802年以前)からアンコール期の遺跡が展示されていました。
この像は「ビシュヌ神」で、6世紀の製作
ビシュヌ神は、ヒンドゥー教の神で世界の維持を司るとされています。 -
「クジャクに乗るスカンダ」、6世紀
スカンダ(Skanda)はインド発祥の「戦の神」で、孔雀に乗った形で彫られているのが一般的だそうです。製作から1400年以上経過していますが、孔雀の羽などの微細な文様が鮮明に残されています。長年土中に埋もれていたのでしょう。 -
象の頭を持つ「ガネーシャ」はヒンドゥー教の神で、障害の除去、知恵と学問、商売繁盛のご利益があるとされます。象は知恵と力の象徴とされています。
11世紀(アンコール時代)の製作で、プリヤ・カーン寺院にあったものだそうです。 -
「リシ像」、9世紀後半(アンコール時代)
ヒンドゥー教や仏教で、聖人あるいは賢者とされ、瞑想する姿が一般的です。この像は、アンコール・トムで発見されたそうです。 -
「ヴィシュヌ神の境界石」、10世紀後半~11世紀初頭(アンコール時代)
石柱の各面に小さなビシュヌ神が全部で1020体彫られています(説明パネル)。 -
近づいて見ると、緑色系の砂岩に緻密な彫で多数のビシュヌ神が彫られていました。信仰の対象であったと思いますが、同時に見事な芸術品でもあります。アンコール時代のクメール人芸術家のレベルの高さが感じられます。
-
アンコール時代に造られた円柱台座。緻密で美しい文様が彫られています。
-
「ムカリンガ(Mukhalinga)」、プレアンコール時代
「ムカ」は梵語で「顔」を意味し、「リンガ」はシバ神の象徴もしくは男性器を表します。赤味がかった半球状の砂岩にシバ神の姿が彫られています。
「リンガ」は、下段が四角形、中段が八角形、頂部が半球状になっているのが一般形で、それぞれヒンドゥー教の神である「ブラフマー」、「ヴィシュヌ」、「シバ」を表しているそうです。 -
金属で造られた「ムカリンガ(Mukhalinga)」
円頂部にシバ神の細やかな像が彫られています。
「リンガ」の対として「ヨニ」があります。「ヨニ」は女性器を表します。ヒンドゥー伝説では「リンガ」は太陽、「ヨニ」は地球で、両者が接すると人、動物、植物などの生命が生まれると伝えられます。クメール神話でも生命の起源に関する似た言い伝えがあるとのこと、興味深い話です。 -
形が少し異なる「シバ・リンガ(Shilva Linga)」、アンコール時代
-
「男性神(Male Divinity)」、12世紀初頭(アンコール時代)
砂岩に彫られた像です。 -
「菩薩像(Bodhisattva)」、ジャヤヴァルマン7世(1181-1218)時代の製作
4本の手をお持ちで、表情にインド仏教の影響が感じられます。 -
「女性菩薩像(Bodhisattva)」で仏陀の配偶者、「全ての仏陀の母」と呼ばれています(説明板記述)。
日本に伝来した仏教では、確か、仏陀(お釈迦様)は独身とされていますが、クメールに伝わった仏教では違うようです。アンコール時代に製作された女性菩薩や女神像は上半身を露出されています。
京都や奈良では、このような仏像は見かけません。ちょっぴり驚かされました。 -
「ナーガ光背を持つ仏陀」、12世紀後半~13世紀初頭(アンコール時代)
ナーガ(蛇神)を光背にお持ちの仏陀像は、日本や中国では殆ど見かけません。ナーガはインド神話が起源の蛇神で、東南アジアでは一般的なようです。
保存状態の良い立派な仏陀像です。 -
「ナーガ光背を有する仏陀」、12世紀後半~13世紀初頭(アンコール時代)
アンコール・ワットにあった仏陀像、表面が金泥で塗られています。保存状態良好ですので、恐らく屋内に安置されていたのではないでしょうか? -
「ナーガの欄干」、12世紀初頭(アンコール時代)
ナーガ神の石像欄干は、アンコール・ワットなどのアンコール遺跡で頻繁に見かけました。これはプレイ寺院にあったものです。保存状態良好で、蛇神の鱗の細かな様子まで認識できます。 -
「観音像(Lokesshvara)」、12世紀後半~13世紀初頭(アンコール時代)
砂岩に彫られた像で、アンコールワット寺院にあったもの。保存状態良好。 -
「観音像の頭」、9世紀後半~10世紀初頭(アンコール時代)
シェリムアップの西方にあるオブロック寺院にあった仏頭。クメール・ルージュがカンボジアを支配した時代に多くの仏像が破壊されたそうですが、この仏頭もその時に壊されたのでしょう。クメール・ルージュは、原始共産主義を標榜した武装組織で、従来宗教を否定しています。
アフガニスタンのタリバンと同様に民族文化歴史の破壊者です。 -
「観音像の頭」、12世紀後半~13世紀初頭(アンコール時代)
カンボジア北西部のバンテアイ・チュマール寺院にあったもので、見事な仏頭です。 -
「切妻屋根上部(Pediment)」、10世紀(アンコール時代)
緻密で繊細な彫刻が施され、中央部にヒンドゥー教のインドラ神が彫られています。インドラ神は戦いの神で、東方の守りとして切妻などに彫られていることが多いようです。 -
「屋根破風の飾り(Peak of Pediment)」、10世紀(アンコール時代)
砂岩に彫られた緻密で美しい彫刻です。 -
ヒンドゥー教もしくは仏教神の周囲に、蓮の花や葉が緻密の彫りこまれています。見事な美術品で、アンコール時代に活躍したクメール職人や芸術家のレベルの高さが想像される一品だと思います。
-
「石積柱(Lintel)の文様」、7世紀後半(プレアンコール時代)
砂岩に彫られた見事な彫刻、シュリムアップ地域にあるヒンドゥー教寺院(Trapang Tortoeng Thngai Temple)で発見されたものです。 -
「石積柱(Lintel)の文様」、9世紀後半
ヒンドゥー教のバコン寺院(Bakong Temple)にあったもので、中央にガルーダ神が彫られています。 -
同じような模様が彫られた「石積柱(Lintel)文様」、9世紀(アンコール時代)
Trapeang Phong Templeにあったもの。 -
10世紀(アンコール時代)にKok Angkanh Templeに建造されていた「石積柱(Lintel)文様」
中央に彫られているのは神の中の王とされるインドラ神、3つの頭を持つ像にのっており、右手には武器である稲妻を保有しています。上部列の中央に彫られているのはシバ神、両側に12人の隠者(hermits)を従えています。 -
ヒンドゥー教の神々が彫られた「石積柱(Lintel)文様」、11世紀後半(アンコール時代)の作品
中央部にはヒンドゥー教の3大神である、ブラーマ神、シバ神、ビシュヌ神が彫られ、中心に彫られたシバ神は配偶者(Shakti)と共に牡牛に乗っています。ヒンドゥー教の神々の関係を教えてくれる興味深い石像です。 -
細やかな彫刻が施された円柱が展示されていました。ヒンドゥー教や仏教寺院にあったものです。
円柱状と八角形状の柱が一般的で、円柱はプレアンコール時代(7-8世紀)、八角形状はアンコール時代(9-13世紀)のものだそうです。 -
八角形状の柱、アンコール時代の10世紀の建造
-
上部、中部、下部に別々の文様が刻まれています。殆どは花や葉を模した繰り返し文様ですが、それぞれの文様の彫が緻密です。
-
「方形柱(Pilaster)文様」、7世紀半ば(プレアンコール時代)
砂岩に花や葉を模した幾何学模様が彫られています。 -
「シバ神像」、12世紀(アンコール時代)
-
「女神像(Female Divinity)」、12世紀(アンコール時代)
寺院には男神と女神が並んで安置されていたようです。 -
「男神像(Male Divinity)」、12世紀(アンコール時代)
-
アンコール時代に造られた男神像と女神像
-
博物館にアンコールワットのジオラマ模型が展示されていました。現在のアンコールワットは壊れていた個所が順次復元されつつありますが、この模型では完成時の形態が再現されています。
全盛期のアンコールワットの全貌が分かります。 -
博物館の2階通路にも沢山の石像が展示されていました。
-
12世紀後半~13世紀初頭(アンコール時代)に造られた「阿修羅の頭部(Head of Asura)」
アンコールワットやアンコールトムへの入り口に石仏列がありましたが、多くの石仏の頭部が無くなっていました。クメール・ルージュ(ポルポト政権)の支配時代に、破壊が行われたそうです。展示されている頭部像の多くは、カンボジアが現政権に変わってから発掘されたもののようです。 -
12世紀後半~13世紀初頭(アンコール時代)に造られた「阿修羅の頭部(Head of Asura)」
阿修羅像の顔や表情は、同じではありません。 -
これも12世紀後半~13世紀初頭(アンコール時代)に造られた「阿修羅の頭部(Head of Asura)」
-
幼ない表情の阿修羅像
-
いかめしい表情の阿修羅像
-
悩んでいるような表情の阿修羅像
-
「テーヴァの頭部(Head of deva)」、12世紀後半~13世紀初頭(アンコール時代)
「テーヴァ」はインド系の宗教神です。阿修羅と頭部の様子が異なり、概して穏やかな表情をされているように思います。 -
「テーヴァの頭部(Head of deva)」、12世紀後半~13世紀初頭(アンコール時代)
「テーヴァ」の顔付や表情も、個体ごとに異なり個性的です。当時の修行僧の顔付などを模して造られたように思われます。 -
「菩薩像もしくは観音像(Lokesvara)」、12世紀後半~13世紀初め(アンコール時代)
-
「瞑想する仏陀」、13世紀後半
-
「菩薩像(Lokeshvara)」、12世紀後半~13世紀初め
複数の顔と沢山の手を持っておられる菩薩像、千手観音菩薩像と似ているように思います。 -
「仏教境界石(Buddist Boundary Stone)」、11世紀初頭
柱状の砂岩に複数の仏像が彫られています。寺院の境界部に置かれていたようです。
製作されてから千年以上が経過していますが、保存状態は良好です。見応えのある境界石です。 -
「ナーガ(蛇神)」、12世紀後半~13世紀初め(アンコール時代)
体は人間で頭部が蛇の形のナーガ像 -
「仏教境界石(Buddist Boundary Stone)」、12世紀初頭(アンコール時代)
2匹の蛇を手に持った神の肩上に載っているのはビシュヌ神でしょうか?ヒンドゥー教の神々の世界の一端が彫られている境界石と思われます。 -
「西バライで発見された文字碑」、プレアンコール時代
8世紀初頭に造られた文字が彫られた砂岩の石碑で、1939年に行われた遺跡発掘調査で発見されたそうです。2面に57のサンスクリットとクメール文字の文章がが彫られています。 -
石碑の文字は判読可能で、碑文にはジャヤヴァルマン1世の娘や女王のことが記述されているそうです。713年に製作されたことが明らかにされています。
アンコール遺跡での発掘物には石像が多い中、このような文字碑は珍しいと思います。 -
小さな発掘品も多数展示されていました。
-
ヒンドゥー教の神が持っていた神具(Trishula)、金属製です。アンコール時代に金属鋳造や加工が行われていたことが分かります。
-
金属製や石造の小さな置物類。像の頭を持つ置物は、ヒンドゥー教の神「ガネーシャ」と思われます。
-
広い展示室に男神や女神の石像が展示されていました。大部分の像では、頭や手の一部が欠けています。仏教やヒンドゥー教が軽んじられた時代に破壊されたのでしょう。
ギリシャやローマ時代に造られた大理石像の多くが全身像がほぼそのままの形で今日まで多く残されています。
これに対し、クメール文明の高度な芸術性を今日に伝えてくれる文化財が破壊されていること、誠に残念に感じます。 -
展示品には、いずれも小型の石像ですが、破壊を免れた例もあります。これらは女神像で、バンテアイ・デイ寺院(Banteay Kdei Temple)で発見されたもので、製作は12世紀~13世紀です。
-
展示品の一例、12世紀(アンコール時代)に製作された天女(Apsara)像
-
12-13世紀(アンコール時代)に製作された天女(Apsara)像
クメール人女性の表情が彫られているのは、当時宮廷に仕えていた女官などがモデルになっているように思われます。 -
展示室の出口に博物館ショップがあり、多様な品々が販売されていました。
-
博物館の展示品を模して造った仏陀や像の置物
-
青銅製の仏像に$130(約2万円)の値札が付けられていました。大きい割に価格は高くありませんが、持ち運びが大変そうです。
-
小物アクセサリー類の価格は50-100ドル程度でした。
-
ショップの棚にアンコール遺跡を紹介した本が並べられていました。日本語の本もありました。
-
博物館の見学を終えて、建物の外に出てきました。外は35℃程度の高温でした。猛暑の中でツクツクが客待ちをしていました。シュリムアップではタクシーよりもツクツクの方が一般的な乗り物です。
アンコール国立博物館、建物内はエアコンが効いていて快適でした。国宝級の立派な展示品が多く、しかも系統的な展示が行われています。展示品に添えられた英語説明もしくは音声ガイドの日本語案内で、カンボジアの歴史や宗教、展示品の価値や意義などを学ぶことができました。2時間ほどの訪問でしたが、大変意義深くて面白かったと思います。
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
この旅行で行ったスポット
シェムリアップ(カンボジア) の旅行記
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
シェムリアップ(カンボジア) の人気ホテル
カンボジアで使うWi-Fiはレンタルしましたか?
フォートラベル GLOBAL WiFiなら
カンボジア最安
117円/日~
- 空港で受取・返却可能
- お得なポイントがたまる
0
75