2024/11/03 - 2024/11/17
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kawausoimokoさん
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プラド美術館とリスボンの国立古美術館でお気に入りの絵画を観るために15日間の旅に出かけました。
その途中、マドリッド近郊のエル・エスコリアル修道院やトレド、リスボン近郊のシントラも巡りました。
今回の旅でも、貸し出し中だった作品、祭日で閉館していた美術館、工事中で入れなかった教会などがありましたが、スペインとポルトガルの魅力を再認識しました。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 徒歩
- 航空会社
- エミレーツ航空
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
2024年11月5日(火)(Day3-2)
前回に引き続き、プラド美術館で特に印象的だった作品をいくつか。
中でも、「五感の寓意」を描いた一連の作品には興味を惹かれました。
「五感の寓意」といえば、1500年頃に制作されたタペストリー《貴婦人と一角獣》(パリのクリュニー美術館所蔵)がこのテーマを象徴する代表的な作品として知られています。
一方で、ブリューゲルは絵画や彫刻、美術品、楽器、科学機器、武具、花、動物、魚など多彩なモチーフを用いて「五感」を表現した最初期の画家とされています。その寓意的な表現は、後のフランドル絵画に多くの影響を与え、次第に定型化していきました。
なお、掲載した作品の画像はプラド美術館の公式ウェブサイトからダウンロードしたものです。
プラド美術館では作品の撮影は許可されていませんが、公式ウェブサイトに掲載されている作品画像を以下の目的でダウンロードして利用することが認められています。
・個人使用
・学術、研究、または個人学習、および学校や大学などの教育機関内での使用
・非営利で商業的配布を伴わない出版物、個人ウェブサイト、個人ブログ、またはソーシャルメディアでの利用
https://www.museodelprado.es/en/the-collection/art-works -
聖母の結婚:ロベルト・カンピン(フレマールの画家), 1420-1430年制作
高さ77cm x 幅88cm
1839年にはエル・エスコリア修道院のロイヤルコレクションでした。
プラド美術館はこの作品をロベルト・カンピン(通称「フレマールの画家」)によるオリジナルとしています。
「フレマールの画家」は、ネーデルラント・ルネサンスの先駆者として広く認識されており、一般的にはロベルト・カンピンと同一視されてきましたが、近年「フレマールの画家」をロヒール・ファン・デル・ウェイデンとする説が有力視され始めています。
表側には聖母マリアの生涯に基づく2つのエピソードが描かれており、旧約聖書(ユダヤ教)の世界から新約聖書(キリスト教)世界への移行を象徴するものと考えられています。
左側のユダヤ教のエルサレム神殿とみられるロマネスク様式のロタンダでは、ヨセフの杖が花を咲かせた瞬間、ヨセフが聖母の夫として選ばれた「花の咲く杖の奇跡」が描かれています。
右側のキリスト教を表すゴシック様式の教会の入り口では、聖母とヨセフの結婚が描かれています。
裏面には聖ヤコブ長老と聖クレアがグリザイユで描かれています。 -
恵みの泉(シナゴーグに対する教会の勝利):ヤン・ファン・エイクの工房, 1440-1450年制作
高さ181cm x 幅119cm
15世紀半ばにはセゴビアのサンタ・マリア・デル・パラル修道院に寄贈されていました。
ヘント大聖堂の祭壇画を制作中であったヤン・ファン・エイクに代わって、彼の工房で弟子の一人が制作したとされ、ヘント大聖堂の祭壇画と類似点がありつつも、建物の描き方や子羊の位置などに独自の特徴があります。
3つの平面で構成されており、上部には父なる神と聖母マリア、福音書記者聖ヨハネが描かれ、神の足元に子羊と命の泉が配置されています。
命の泉から流れる水は恩寵を象徴し、勝利の教会を照らす一方で、ユダヤ教徒を盲目にする役割を持っています。
中央には天国の聖歌隊があり、音楽家たちが集っています。
下部には左側ではにキリスト教徒の王や貴族、教皇、神学者らが整然と礼拝をおこなっているのに対し、右側では目隠しをした僧侶を始め混乱するユダヤ教徒が描かれています。 -
十字架降下:ロヒール・ファン・デル・ウェイデン, 1443年以前制作
高さ204.5cm x 幅261.5cm
14世紀にルーベンの石弓職人ギルドの依頼で制作され、ギルドの礼拝堂に設置されていました。
その後、1549年にネーデルラント総督であり、カール5世の妹であるマリア・フォン・エスターライヒが購入し、ベルギーのバンシュ城に展示されました。
彼女の死後、この作品は甥であるフェリペ2世が遺産として相続し、1564年にエル・パルド宮殿、1566年にエル・エスコリアル修道院へ移されました。
最終的には1939年、プラド美術館に収蔵され現在に至ります。
ブラバント地方で一般的だった大規模な翼祭壇画の形式で制作されていましたが、度重なる移設の過程で元の翼パネルは失われました。
等身大に近い人物像が描かれており、キリストの顔は苦痛の中で無精ひげを生やしており、視覚的な美しさと宗教的な意味合いを強調しています。
三人の男性が十字架からキリストを降ろし、聖母マリアはキリストの姿と呼応する形で倒れ込むように描かれています。
その周囲には、アリマタヤのヨセフ、ニコデモ、聖ヨハネ、マグダラのマリア、そして聖母マリアの姉妹たちが深い悲しみに暮れています。
この作品は、劇的な構図と登場人物の感情豊かな表現、そして、ディテールへの徹底的なこだわりが特徴で、精神性と感情表現を重視しつつも、緻密な描写でリアリズムを追求する作風は、後のフランドル絵画に多大な影響を与えました。 -
東方三博士の礼拝(三簾祭壇画):ハンス・メムリンク, 1470-1472年制作
高さ95cm x 幅271cm
カルロス1世(カール5世)によってトレド近郊のアセカにある王立宿舎の礼拝堂に飾られていましたが、後にアランフェスの王宮に移されました。
左パネル「キリスト降誕」では聖母と天使が子供を崇拝し、聖ヨセフが象徴的なろうそくを持っています。
中央パネル「東方三博士の礼拝」に描かれている、衣装のブロケードの見事な描写が目を引く黒人従者の部分が、現在のプラド美術館マップの表紙に使われています。
右パネル「神殿での奉献」ではモーセの律法に基づく儀式が描かれており、シメオンの傍らに立つ黒服の男と女預言者アンナはこの作品の依頼主とみられています。 -
聖母と洗礼者ヨハネに囲まれるキリスト:ヤン・ホッサールト, 1510-1515年制作
高さ122cm x 幅133cm
1584年にフェリペ2世がエル・エスコリアル修道院のロイヤルコレクションに収めました。
元は三連祭壇画の中央パネルであった部分で、ファン・エイク兄弟のヘント大聖堂の祭壇画に強い影響を受けているとみられるキリスト、聖母、洗礼者ヨハネの人物像が描かれています。
ヤン・ホッサールトはフランドル絵画とイタリア・ルネサンス様式を融合させた画家でしたが、この作品では天使ガブリエルが円窓から身を乗り出して歌う様には三次元的な立体感があり、それぞれの人物が纏う衣装が非常に緻密に描かれていることなどから、ヤン・ファン・エイクに通じるフランドル様式が色濃く感じられます。 -
五感の寓意「視覚」:ピーター・パウル・ルーベンス; ヤン・ブリューゲル (父), 1617年制作
高さ64.7cm x 幅109.5cm
メディナ・デ・ラス・トーレスの公爵ラミロ・ヌニェス・デ・グスマンのコレクションとして記録されており、その後1636年にはマドリード王宮のロイヤルコレクションに記録されています。
ヤン・ブリューゲル(父)とピーター・パウル・ルーベンスの共作であるこの作品は、二人の特性が見事に融合しており、その完成度の高さから、共作の中でも特に傑出したものと評価されています。
ブリューゲルがモティーフの質感を繊細かつ的確に描写して宮廷の背景を優雅に表現する一方、ルーベンスは官能的な人体表現によって寓意的女性像を生き生きと描き出しました。
「五感の寓意」はフランドル絵画で広く採用されたテーマであり、中でも「視覚」はアリストテレス哲学の影響を受け、当時最も重要な感覚と考えられていました。
この作品では、宮殿内の一室を舞台に、女神がキューピッドの指し示す宗教画に見入る場面が描かれています。そこには絵画、古代ローマの胸像、美術品、科学機器が満ちあふれ、「視覚」の物理的・霊的な両面が象徴されています。
さらに、ラファエロの「聖チェチリアの法悦」やローマ風の胸像が描かれており、これらは魂の内省、純潔、美徳を象徴しています。
ヤン・ブリューゲル(父)はアルブレヒト大公とその妃イザベル・クララ・エウヘニアの庇護を受けて活躍した画家であり、この作品には彼らの肖像画や居城であったマリエモント宮殿の眺望が描かれています。 -
五感の寓意「聴覚」:ピーター・パウル・ルーベンス; ヤン・ブリューゲル (父), 1617-1618年制作
高さ64cm x 幅109.5cm
メディナ・デ・ラス・トーレスの公爵ラミロ・ヌニェス・デ・グスマンのコレクションとして記録されており、その後1636年にはマドリード王宮のロイヤルコレクションに記録されています。
女神がキューピッドに伴われ、アルブレヒト大公夫妻に捧げるマドリガーレをリュートで奏でる場面が描かれています。
その音楽を聞き入る牡鹿は、優れた聴覚を持つ動物として知られ、音楽への深い愛着から「聴覚」と音楽そのものの象徴とされています。
左側にはさまざまな楽器や楽譜、右側には狩猟用の角笛が配置されています。さらに、女神のそばに置かれた銃は一般的に「力」の象徴とされており、発射音を通じて「聴覚」と関連づけられています。 -
五感の寓意「嗅覚」:ピーター・パウル・ルーベンス; ヤン・ブリューゲル (父), 1617-1618年制作
高さ66.5cm x 幅110cm
この作品は、「花のブリューゲル」とも称されるほど多くの花の絵画を残したヤン・ブリューゲルの、鮮やかな色彩と繊細な筆致が際立っています。
画面には、女神がキューピッドとともに花が咲き誇る庭園の中に座る姿が描かれています。
この庭園には、アルブレヒト大公の妃イサベル・クララ・エウヘニアが愛したユリ、バラ、タチアオイ、チューリップなど、さまざまな花が咲き誇っています。
彼女は母国スペインを思い起こすため、自身の庭園に多くの花や果樹を植栽したとされており、この庭園は彼女への敬意を象徴していると考えられます。
さらに、花の芳香はジャコウ猫の強烈な臭いをもかき消し、「嗅覚」の象徴である犬の鋭敏な鼻ですらその臭いに気づかないほどです。
女神の足元には香水瓶も描かれており、香りの豊かさが視覚的に表現されています。 -
五感の寓意「味覚」:ピーター・パウル・ルーベンス; ヤン・ブリューゲル (父), 1618年制作
高さ64cm x 幅109cm
メディナ・デ・ラス・トーレスの公爵ラミロ・ヌニェス・デ・グスマンのコレクションとして記録されており、その後1636年にはマドリード王宮のロイヤルコレクションに記録されています。
作品の中心では、サテュロスが食べ物であふれるテーブルに座るニンフの持つ豪華なゴブレットに神々の蜜を注いでおり、味わいと豊かさを暗示すると同時に、異教的で欲望に満ちた雰囲気を漂わせています。
背景に描かれた花や3枚の絵画には、道徳的およびキリスト教的な警句が込められています。
そのうちの1枚である「キュベレーへの捧げもの」は、豊穣と富裕への過剰な執着を象徴しています。
また、「食材豊富な台所」や「カナの婚宴」では、宮殿の食卓ほどの洗練さはなく、大食に関する人間の弱さが示唆されています。
さらに、ニンフの背後ではサルが果物を盗み食いしており、このサルは「味覚」の象徴として描かれています。 -
五感の寓意「触覚」:ピーター・パウル・ルーベンス; ヤン・ブリューゲル (父), 1618年制作
高さ64cm x 幅111cm
メディナ・デ・ラス・トーレスの公爵ラミロ・ヌニェス・デ・グスマンのコレクションとして記録されており、その後1636年にはマドリード王宮のロイヤルコレクションに記録されています。
左側にある廃墟では、ヴァルカンの鍛冶場を暗示する壁の前で、鍛冶職人たちが大砲やその他の金属武器を鍛造しています。
右側の背景には戦争を主題とする絵画があります。
上空では鷹が獲物となる鳥とともに舞っており、この鳥は寓意的人物の手にとまるものであり、「触覚」を表現しています。
画面左側には破棄された武器が描かれ、それと対峙するように右側では、身体的接触を通じた「触覚」の寓意として女神とキューピッドが描かれています。
画面下部右端にいるカメも「触覚」の象徴であり、下部左端に描かれた尾を上げるサソリも、その刺す行為から「触覚」を示しています。
左側のテーブル上には歯を抜くための医療器具やヤットコが置かれており、抜歯に伴う痛みを象徴しています。 -
視覚と嗅覚:1620年頃制作
高さ176cm x 幅264cm
この作品は、五感を「視覚と嗅覚」と「「味覚、聴覚、触覚」の2枚の作品に分けて描かれた対作のうちの1枚で、1731年にブリュッセルのクーデンベルグ宮殿の火災で失われたオリジナル作品の忠実なレプリカとみられています。
1636年のマドリードのアルカサル宮殿の目録にこの作品は記録されており、アルブレヒト大公夫妻がアントワープからマドリードの親族に贈ったものとみられます。
オリジナルは、ヤン・ブリューゲル(父)の監督の下、当時のフランドルの代表的画家12名によって制作され、各画家が専門に応じて異なる部分を手掛けたとみられていますが、作者に関しては議論が続いています。
1636年のアルカサル宮殿の目録ではピーター・ポール・ルーベンスと静物画家フランス・スナイダースが関与したとされています。
その後、18世紀から20世紀半ばまではヤン・ブリューゲル(父)の単独作とされましたが、近年では他の画家たちの協力も示唆されています。
例えば、「視覚と嗅覚」の背景にはフランス・フランケン2世の作風が見られ、彼が得意とするスタイリッシュな人物描写や「盲目の男の癒し」といった絵画が描かれています。
さらに、寓話的な人物像や風景画の描写は、ヘンドリック・ファン・ベーレンやヤン・ウィルデンス、ヨース・デ・モンペールの作風が指摘されています。 -
Cafe Prado
この日は朝10時から夕方6時過ぎまで館内にいたので、3回もカフェに通ってしまいました。
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この旅行記へのコメント (2)
-
- World Traveler 1959さん 2024/12/26 11:55:23
- 6月に
- kawausoimokoさま
ご無沙汰しております。World Traveler 1959 Samです。
kawausoimokoさまに勧められて、パリ、ブエノスアイレス、オークランド、シドニー、アデレード、パース、シンガポールなど、いろんなところで美術館や博物館に出かけました。知識もセンスもありませんがおかげさまで旅がより充実したような気持ちになれました。
来年、2年ぶりに世界一周に出かけます。今のところ3月にオセアニア、5月下旬から6月末までヨーロッパ、7月は北米、南米を周遊する予定です。ヨーロッパでは、ポルトガルやスペインも見て回るつもりでいるので参考になりました。ありがとうございました。
良いお年をお迎えください。これからもよろしくお願いします。
- kawausoimokoさん からの返信 2024/12/26 17:22:01
- RE: 6月に
- World Traveler 1959 Samさん
美術館や博物館を訪れることで、旅がより深く特別なものになるという感覚、大いに共感します。
来年の世界一周旅行の計画、とても素晴らしいですね! 羨ましいかぎりです。
ぜひ、いろんな場所で色んな体験をなさってください。
旅の旅行記を楽しみにお待ちしています。
どうぞ良いお年をお迎えください!
こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします。
kawausoimoko 拝
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