広島県　天空のニュータウンに誘うゴンドラ　廃止が決まった「スカイレール」に乗って5分間の空中遊泳を堪能する　オッサンネコの一人旅

2023/11/22 - 2023/11/23

オッサンネコです。

唐突ですが、ロープウェーの様な摩訶不思議な交通システムが
広島市の山間にある事をご存じでしょうか。
ロープウェーの様相を見せながら、車輪はしっかりレールの上を走っている。
その交通システム、名前を「スカイレール」と云ふ。

スカイレールはモノレールとロープウェーを組み合せた様な乗り物であり、
その構造は斬新かつ独創的、正に新時代の到来を予兆させるものだったのですが、
惜しくも2024年4月末で運行を終了し、路線自体の廃止が決まったそうな。

しかし、交通システムでありながらアトラクションの様なわんぱく具合、
普通の住宅地には見られない、空にレールが走っている唯一無二の風景、
そんな興味深い情報を聞いてしまったからには…
廃止を迎える前に行かねばならぬでしょう。

果たして新時代を彷彿させた「スカイレール」とは如何なる乗り物なのか。
その時の記録です。

エリア 広島市(広島)

• 旅行の満足度: 4.0
• 観光: 4.0
• 交通: 4.5

• 同行者: 一人旅
• 一人あたり費用: 3万円 - 5万円
• 交通手段: ANAグループ 新幹線 JRローカル 私鉄 徒歩

どうもどうも、オッサンネコことモリネコちゃんです。
本日は、広島県はJR瀬野駅まではるばるやってきました。
広島駅からは山陽本線でわずか20分ほど。
鉄道マニアの中では有名な話ですが、隣の八本松駅までは通称「セノハチ」と呼ばれる急勾配が連続する区間になっています。

さて、そんな瀬野駅ですが、ホームに降り立つと早速異様な光景を目にする事ができるのです (*｀艸´) ｳｼｼｼ

それがアレ。
駅のホームからも見える、まるでジェットコースターの様なアレ。
そう、アレに乗るために本日ははるばる広島までやってきたのです（笑）

本日のテーマである『スカイレール』であります (*´艸`*)ｼｼｼ

まず、スカイレールとは何か？　から入っていきましょう。
スカイレールとは、ものすごーく簡単に言ってしまうと、懸垂式モノレールとロープウェーのいいとこ取りをした唯一無二の輸送手段となります (*ﾟ∀ﾟ)ﾉ
支持方式は懸垂式モノレール、要はレールにタイヤでぶら下がる方式。
ただ、駆動方式は曳索（えいさく）、要はロープにつかまって走る方式。

一般的な交走式のロープウェーは2台のゴンドラをロープに固定し、つるべ式に2台を同時に動かす必要があるため、2台以上増減ができないというデメリットがあります。つまり大量輸送には向かないって事ね。
しかし…　スカイレールはロープに車両が固定されておらず、動いているロープを掴んだり離したりできる構造を取る事で、大量輸送には向かないロープウェーの原理をクリアしているのでっす (。ﾟωﾟ) ﾌｧｯ!

それでは、スカイレール、行ってみませう ( ﾟ∀ﾟ)
こちら、スカイレールの起点になる「みどり口駅」。
JR瀬野駅とは連絡通路で繋がっています。

何でこんな奇抜な鉄道がここに敷かれたのかと言いますと、話はバブル期の土地開発から始まります。バブル期において都市部の人口は増える一方で、都市部の地価は高騰していたので、土地デベロッパーは郊外にベッドタウンの開発を進めていく事になります。ただ平坦な土地なんて潤沢にあるわけではないので、山を切り崩して宅地をつくる手法が全国各地で行われる様になります。
そんな折、積水ハウスと青木建設（現：青木あすなろ建設）がタッグを組んで開発したのが、ここ、瀬野駅北側のニュータウンでだったわけですが、元々山を切り崩して宅地を造成したので、ニュータウンへの勾配がハンパねぇ事になってしまったのです。ニュータウンの住民がひぃひぃ言わない様に、っていうか誰も好んで坂の上の分譲地なんて買わないので、ニュータウンの生活者への足として開発されたのが、この「スカイレール」になるのですぅ (*´з`)

折角なので、地図上でニュータウンの位置をご確認。
地図は国土地理院から拝借。いつもお世話になってます (*´з`)

JR瀬野駅で乗り換えて、終点のみどり中央駅までは1.3km。
でも勾配差が160mあるので、スカイレールの様な奇抜な輸送方式が採用された所以になります。

ただ…　|-ω-)
学生時代に住んでいた神戸では、160mの高低差は普通だったような…。

それでは実際にスカイレールに乗ってみましょう ヽ(´∀`｡)ﾉﾟ
ローカルの第三セクターあるあるですが、SUICAやICOCA等の交通系ICカードは使えません…。
お隣の券売機で切符をお買い上げする事になります。

とは言っても、改札口には独自のQRコード読み取り装置が付いてます。
なんとICOCAが世に広まる前からこの装置は採用されたのですが、先に開発をしてしまったが故に、後から開発されたICOCAの仕組みを入れる事ができなかったそうです。
時代を先読みし過ぎたのか…　実に惜しい ( ﾟДﾟ)

お値段はリーズナブルな片道一律170円。
このQRコードを改札の読み取り部にピッして構内に入場するのだ。

これがスカイレールの車両内部ぅ。
まぁ少し大きめの観覧車だと思えばよろし。
座席は扉を挟んでの8席だが、定員は驚異の25名…。
そんな激コミの車両にギュウギュウ詰めにはなりたくないのだが、生憎この日は平日という事もあり同業者が数名いただけ。

そして発車･運行はすべて無人で行われるという正に画期的なシステム…。
なんか、すごいぞ ( ﾟДﾟ)

ベルが構内に鳴り響き、ゴトンと鈍い音と一緒に発車します。
先ほどスカイレールは曳索（ロープ）を掴んだり離したりできると言いましたが、停車している時は曳索を離している状態になります。動き出す時はもう一度曳索を掴まなければいけないのですが、動いている曳索を掴むのは非常に危ないので、発進時はリニア駆動で曳索と同じ速度まで加速し、動いている曳索を掴まえるという、なんともギミックでわんぱくな仕組みなのであります。

なんか、すごいぞ ( ﾟДﾟ)

ここからグーっと曲がっていきます。
このレールがずっと先まで続いているのがすごい景観。

ちょうど屋根の上の高さを走るので眺めはよきよき。
いざ写真を撮らんと張り切ってたのですが、想像以上に揺れる揺れる…。
4月末に廃止されるのが実にもったいない (ノД`) ﾊｧ･･

一つ目の駅、みどり中街駅に到着しました。
ホント、テーマパーク顔負けのアトラクションに近い感覚ぅ ( ﾟДﾟ)

みどり中央駅を出るとしばらくは斜面と水平に走ります。

間もなくして最後の急こう配を進むと、終着のみどり中央駅に着きます。
終点までわずか5分ほどですが、高度感があってめっちゃ楽しいっす。
千葉市のモノレールも懸垂式で似たトコありますが、それよりもエンターテイメント感がハンパねぇ ( ﾟДﾟ)

最後は大きく横揺れしながらみどり中央駅にピットイン。
素晴らしき空中遊泳のお時間でした ｳｼｼ(*´艸`*)

みどり中央駅からは先の分譲地までメタセコイアの並木道が続いてます。
秋じゃのう (ΦωΦ)ﾌﾌﾌ…

帰り道は折角なのでスカイレールを見上げながら戻りましょう♪
下から見るとみどり中央駅はまるで要塞の如くそびえていますね。
このゾーンでの軌道はものすごい高度感あります (。ﾟωﾟ) ﾌｧｯ!

ちなみに手前の階段…　インカの階段と命名されています。
なんでこんなネーミングなのかは後述…。

みどり中央駅前にある公園。
この辺りは「太陽の門」と「マチュピチュ階段」。
はぁ？おま、何言ってんの？と思われるかもしれませんが、ガチでこのネーミングが付いています。
恐らくは、丘の上のニュータウンを売り出すために、同じく高度感が溢れるマチュピチュ遺跡のロマンをあやかったのではないかと…。

そんなマチュピチュ階段から望むニュータウンの街並み。
嗚呼、なんと美しいのでしやうか　ｽﾝｹﾞｪ───(ﾟ∀ﾟﾉ)ﾉ───ｯ!!

下からゴンドラが上がってきました。
この景観が拝めるのもあとわずか。
致し方ない事なのだとしても、やはり少し寂しさを感じますねぇ。
って、今日初めてスカイレール乗ったけど (*´з`)

最近仕事で心が荒みっ放しですが、まだ景色が美しいと感じている内は大丈夫かなぁと。
うん、大丈夫、大丈夫。自己暗示かけとこ ( ﾟДﾟ)

総工費は当時の金額で60億円以上。
よくこんなんつくったもんだわ (´ｰ`) ﾌｩ

下のニュータウンから繋がっている階段。
どれだけこのニュータウンが急勾配なのかがよく分かるざんす。

最後にスカイレールが廃止に至った経緯を簡単にご説明。
スカイレールは1998年に営業を開始しているのですが、スカイレールの運行に合わせる形でニュータウンの分譲も進められていきました。ただ分譲は段階的に進められてた事もあり、スカイレールは最初から赤字経営でスタートしています。
営業直後、暫くの間の赤字は既定路線だったので、筆頭株主である積水ハウスが赤字分を補填する事になったのですが、毎年資金援助をすると税金がかかってしまうので、最初に20億円をプールして、そのプールを切り崩していく方法が採択されました。

ただ、住民の足は車が中心になり、分譲地が埋まっていっても経営が良くなることは無く、結局毎年1億円程度の赤字を計上し続ける事になります。当然20年後にはプールが枯渇し、とうとうスカイレールは存続の危機にさらされます。
さて、どうしよっか (-ω-;)
ここで裏目に出たのがスカイレールが唯一無二の構造だった事…。メンテナンスしようにも代えが効くものではなく、今後の修繕費は莫大に膨れ上がる事が予測されます。
というわけで、スカイレールは継続を断念。紆余曲折を経て2024年4月末に廃止される事が決定しました。

スカイレール沿線の道ではバス停の工事が着々と行われていました。
今後はスカイレールに代わってEVバスが運行されるという事で…
まぁやっぱこうなるよねって話 ┐( ¯ｰ¯)┌ ﾌｯ

こちらみどり中街駅。
軌道とか駅舎は全部撤去されるんでしょうね。

住宅地を疾走するゴンドラ。
意外と速い ( ﾟДﾟ)

下から見るスカイレールもまたふつくしい。
普通のニュータウンにはまず見られない光景。
最後に拝む事ができて良かったです ヾ(´∀｀*)ﾉ

JR瀬野駅まではもうひと踏ん張り。
下りはいいけど、登りは辛そうと言うのが正直な感想。
ただ、足腰は強くなりそうだと（笑）

みどり口駅に戻ってきました。
11月とは言え、ニュータウンの階段地獄で汗だくです。

さて、スカイレールは24年4月末を以って廃止となりますが、形は違えど都市型ロープウェーは今後間違いなく増えていくと思います。
空にレールを敷く時代の先駆け、スカイレールはひっそりと終わりを迎えますが、その勇士は語り継がれるものだと固く信じています (* -ω-)

広島のお話はもう少し続きます。それではまた～。

この旅行記へのコメント （3）

• Decoさん 2024/04/26 10:28:36

  スカイレールとニュータウン

  morisukeさん、こんにちは。
  
  こちらの旅行記、ちょっと前に拝見して、妙に心に残っていました。
  スカイレールと山肌に築かれたニュータウン。高度成長からバブルにかけてのものかと思ったら、1998年に運行開始だったのですね（計画されたのはバブル期だったのかも知れないし、まだ余韻のようなものがの少しは残っていたのかも知れませんが）。
  スカイレールは、今から振り返れば、赤字でいずれ終わってしまうのが予測できたのでは、とも思います。あのニュータウンだけでは利用客数も限られているでしょうし。バスに転換というのも、そうなるだろうな～という感じではあります。
  
  しかしながら、morisukeさんの写真を通じてみた景観は素晴らしい！　スカイレールからの眺めも、駅も、走行（？）する姿も。まさに昭和の頃に描かれていた未来の郊外都市の片鱗を感じるような。この景色が失われてしまうのは残念ではありますが、morisukeさんが旅行記に残されたことで、一つ記憶が失われずに残ったのだと思います。
  旅の目的や動機は人ぞれぞれですが、現地に行って体験して撮影されたmorisukeさんの志に、私はイイネを押したい気持ちです。
  　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Deco

• mi-naさん 2024/04/17 11:34:57

  スカイレール

  こんにちは。
  コメント失礼します。
  この光景、子供の頃球場に向かう際、電車に乗りながら見たのを
  懐かしく思い出しました。ですが、無くなってしまうのですね。
  この瀬野って駅名も思い出しました。
  こちらで紹介してくださらなかったらきっと思い出すことはなかった
  かと思いますので、感謝です。
  残念ですが、この景色焼き付けておこうと思いました。

  morisukeさん からの返信 2024/04/21 10:02:53

  RE: スカイレール

  mi-naさん
  こんにちはー。　書き込みありがとうございます(о´∀`о)
  少しでも思い出の回顧に貢献できて幸いです（笑）
  子供の頃当たり前に見てきた光景が消えていくのは誰にでもありますよね。
  私も廃止というニュースが無ければ、ここにはまず行っていないはずです。
  旅をするきっかけをもらったのですが、やはり旅人の目にも寂しい限りです。
  
  余談ですが、今親父様の法要で福井に帰っております。
  北陸新幹線が福井まで延伸し、駅前はガラッと変わりました。
  とてもいいことなんですが、私の知っている福井とは違う街にいる様で、
  スタバで珈琲を飲みながらちょっとおセンチな気分に浸っています( ´Д`)
  
  今後ともよろしくお願いします。
  
  
  Mori neko