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1980代から始まった米国移民は1924年に禁じられてしまう。それでもしたたかに生活基盤を築いていく日系移民1世たちの物語。<br />-----------------------------------------------<br />横浜にある海外移住資料館(Japanese Overseas Migration Museum)のおかげで、日系アメリカ移民の歴史を俯瞰することができた。しかし、米国に移住した日系移民1世の詳細を知ることは極めて困難な状況にある。前回に記した通り、太平洋戦争勃発により、日系人たちは急遽、着の身着のままに近い形で収容所に送られることになったからだ。その際、日系人の記録はほとんど失わなれてしまった。連行される過程で、携行品の所持が許されなく泣く泣く廃棄したものもあった。また、連行時にスパイ容疑をかけられることを恐れて、官憲の目にとまる前に処分した写真や手紙などもあったと言う。<br />こうした資料が枯渇している中で、アメリカに移住した日系人1世へのインタヴューを記録した書籍に出会った。タイトルは『フッドリバーの一世たち』、まさしくツーリングの途中で立ち寄った、その町であった。<br /><br />● 『フッドリバーの一世たち―アメリカ・オレゴン州フッドリバーに入植した日本人移民の肉声による歴史』 リンダ タムラ著 を読む<br />● 移民1世の悲喜こもごも<br />● フッドリバーの日系人<br /><br />この本の「序」によると出版目的は以下とある。<br />①口承による日系移民1世たちの体験談を残すこと<br />②困窮、差別、戦中の迫害を味わった1世の記録とすること<br />③フッドリバー日系人コミュニティの発展史を残すこと<br /><br />研究の一環としてしたためられた本なので、複数の聞き取り対象者から詳細にヒアリングをおこなっており、描写も正確である。それ故迫力満点の日系移民達の渡航記、体験記として読むことができる。<br /><br />実際、この本によるとアメリカへの移住を決意した者は、まずは渡米前のプロセスで苦労を強いられている。そして、渡米後に待ち受けていたのは重い労働や人種差別であった。また、日本人女性にとっての米国移住生活は男性以上に過酷であった。農作業に加えて家事、更には威張る男性への追従と、あまりの生活の厳しさに我慢ならなかった女性も多い。<br />こういった日系移民1世から直に聞く苦労話は初めて耳にするものであり、これらの話が見事に横浜の海外移住資料館の展示内容と呼応している。<br /><br />移民の第1世代の方々は既に多くが亡くなってしまっている。1980代から日本からの渡航が始まったが、米国が日本からの移民を1924年に禁じて、移民の歴史は途絶えた。その為、生存している日系1世はとても少ない。また、太平洋戦争によって1942年に定住地から収容所に日系移民たちが強制転居させられた際に、移民1世の記録の大半が失われた。そもそも1世たちは困窮した生活であり記録も充分にとっていた訳ではなかった為、この強制移住による記録の喪失は大きなものだった。<br /><br />この記録の少ない中から、かろうじて口述を書きとめたものがこの書籍であり、たいへん貴重なものだ。そして、昔のこととは言え、インタヴューされた方々の饒舌なことに驚く。とにかく細かなことまで良く覚えているし、事細かに説明をしてくれている。翻訳が優れていることも手伝って、目の前に当人たちがいるかのように感じながら読むことができた。<br /><br />詳細はコチラから↓<br />https://jtaniguchi.com/oregon-california-hood-river-issei-linda-tamura/<br /><br /><br />

フッドリバーの一世たち リンダ タムラ著 を読む / ハーレーダビッドソン エレグラで走るオレゴンとカリフォルニア 5

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2023/10/05 - 2023/10/06

4位(同エリア186件中)

ごーふぁー

ごーふぁーさん

1980代から始まった米国移民は1924年に禁じられてしまう。それでもしたたかに生活基盤を築いていく日系移民1世たちの物語。
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横浜にある海外移住資料館(Japanese Overseas Migration Museum)のおかげで、日系アメリカ移民の歴史を俯瞰することができた。しかし、米国に移住した日系移民1世の詳細を知ることは極めて困難な状況にある。前回に記した通り、太平洋戦争勃発により、日系人たちは急遽、着の身着のままに近い形で収容所に送られることになったからだ。その際、日系人の記録はほとんど失わなれてしまった。連行される過程で、携行品の所持が許されなく泣く泣く廃棄したものもあった。また、連行時にスパイ容疑をかけられることを恐れて、官憲の目にとまる前に処分した写真や手紙などもあったと言う。
こうした資料が枯渇している中で、アメリカに移住した日系人1世へのインタヴューを記録した書籍に出会った。タイトルは『フッドリバーの一世たち』、まさしくツーリングの途中で立ち寄った、その町であった。

● 『フッドリバーの一世たち―アメリカ・オレゴン州フッドリバーに入植した日本人移民の肉声による歴史』 リンダ タムラ著 を読む
● 移民1世の悲喜こもごも
● フッドリバーの日系人

この本の「序」によると出版目的は以下とある。
①口承による日系移民1世たちの体験談を残すこと
②困窮、差別、戦中の迫害を味わった1世の記録とすること
③フッドリバー日系人コミュニティの発展史を残すこと

研究の一環としてしたためられた本なので、複数の聞き取り対象者から詳細にヒアリングをおこなっており、描写も正確である。それ故迫力満点の日系移民達の渡航記、体験記として読むことができる。

実際、この本によるとアメリカへの移住を決意した者は、まずは渡米前のプロセスで苦労を強いられている。そして、渡米後に待ち受けていたのは重い労働や人種差別であった。また、日本人女性にとっての米国移住生活は男性以上に過酷であった。農作業に加えて家事、更には威張る男性への追従と、あまりの生活の厳しさに我慢ならなかった女性も多い。
こういった日系移民1世から直に聞く苦労話は初めて耳にするものであり、これらの話が見事に横浜の海外移住資料館の展示内容と呼応している。

移民の第1世代の方々は既に多くが亡くなってしまっている。1980代から日本からの渡航が始まったが、米国が日本からの移民を1924年に禁じて、移民の歴史は途絶えた。その為、生存している日系1世はとても少ない。また、太平洋戦争によって1942年に定住地から収容所に日系移民たちが強制転居させられた際に、移民1世の記録の大半が失われた。そもそも1世たちは困窮した生活であり記録も充分にとっていた訳ではなかった為、この強制移住による記録の喪失は大きなものだった。

この記録の少ない中から、かろうじて口述を書きとめたものがこの書籍であり、たいへん貴重なものだ。そして、昔のこととは言え、インタヴューされた方々の饒舌なことに驚く。とにかく細かなことまで良く覚えているし、事細かに説明をしてくれている。翻訳が優れていることも手伝って、目の前に当人たちがいるかのように感じながら読むことができた。

詳細はコチラから↓
https://jtaniguchi.com/oregon-california-hood-river-issei-linda-tamura/


旅行の満足度
5.0
観光
5.0
同行者
カップル・夫婦
交通手段
バイク

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