2023/09/17 - 2023/09/17
1939位(同エリア17026件中)
ばねおさん
ヨーロッパ文化遺産の日、2日目。
前日のBNF(国立図書館)リシュリュー館に未練が残るが、二兎を追わずということで、この日は当初から予定していたアンリ4世校のみを目的として出発。
アンリ4世校と書いたが、正式の名称は「 Le lycée Henri-IV リセ・アンリIV」。
パリ5区カルチェラタン、サント・ジュヌヴィエーヴの丘,にある公立中等高等学校。フランスを代表するエリート校として知られ、現大統領も同校の出身だ。
興味があるのはその校舎で、12世紀から18世紀にさかのぼる旧サント・ジュヌヴィエーヴ修道院時代の建物のいくつかが継承されている。
普段は関係者以外は立ち入れない学校施設なので、こうした機会でないと実際に見ることはできない。
*タグが15以字内の制限となっているため、サント・ジュヌヴィエーヴ...を聖ジュヌヴィエーヴ、サン・テティエンヌ...を聖テティエンヌと置き換えました。
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- 高速・路線バス 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
パリの守護聖女が鎮座する、サント・ジュヌヴィエーヴの丘。
写真左から サント・ジュヌヴィエーヴ図書館、サン・テティエンヌ・デュ・モン教会( Eglise St-Etienne du Mont)、アンリ4世校のクロヴィスの塔、そしてもともとは サント・ジュヌヴィエーヴ教会として建てられたパンテオンの北側面。 -
11時少し前にアンリ4世校に到着したのだが、扉が閉まったままだ。
ちょうど中から学生らしき男女が出てきたので、入れ替わるように中に入ったらすぐに守衛に見咎められた。
開場は12時からだという。 -
さて、あと1時間をどうするか。
あまり遠くへも行けないので近くのカフェで時間を潰すことにした。
サン・テティエンヌ・デュ・モン教会の北側、デカルト通り沿いの小さな広場に面したカフェに腰を落ち着けた。
普段ならカルチェラタンの中央にあたるこの辺りは学生が大勢いるのだが、今日は通行する人もまばらだ。 -
改修のためだろうか、カフェの横手にあるエコール・ポリテクニーク École polytechnique の校舎がフェンスで囲まれていた。
エコール・ポリテクニークはフランスを代表する工科学校で、1794年に発足し、1804年にナポレオンによって軍事的役割が与えられたという歴史をもっている。一般に「ポリテクニーク」と呼ばれ、イクス「X」(L'X) の愛称がある。
時間潰しのため、飲み物だけのつもりでいたのだが、隣席のカップルが何やらおいしそうなものを食べ始めた。そろそろ昼も近いので、同じものを注文し、見学の前に昼食を済ませることにした。 -
食事を終える頃には、12時を回っていた。
サン・テティエンヌ・デュ・モン教会の北側階段。
映画『ミッドナイト・イン・パリ』で、主人公が腰掛けていた階段にはいつも誰かしら居て、写真を撮ったり撮られたりしているのだが、今日は珍しく誰もいない。 -
アンリ4世校へ戻ったら相変わらず扉は閉まったままだ。
入り口横に張り紙があった。何と、14時から公開開始と書かれてある。
1時間調整するために昼食を手早く済ませてきたのに、これは参ったなあ。
見学先を近くのソルボンヌや別の公開施設に変えようかとも考えてみたが、いずれも混雑を考えると気が進まない。それよりも、ここまで来て諦めるのも悔しい。 -
仕方ない、天気も良いので近くのムフタール街をぶらつくことにした。
店を冷やかしながらのんびりと往復するだけでも1時間はかかるだろう。
ムフタール通りへ出る途中の店内からどこかで見覚えのある3人がこちらを見ていた。 -
どの国のガイドブックにも紹介されていると見えて、ムフタール街にはやはり観光客が多い。英語、スペイン語、イタリア語様々な言葉が飛び交っている。
最近は、アジア系はどこへ行っても少ないが、目立つのはインド人の多さだ。 -
一番多く観光客が集まるコントレスカルプ広場 Place de la Contrescarpe を囲むカフェはハイシーズンでもないのにいずれも空席が見つからないほどだ。
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ちょうど昼時とあって、通り沿いの飲食店は大いに賑わっていた。
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こちらはレバノン料理の店らしい。
人気と見えて、入店待ちの行列が出来ていた。 -
常に行列の絶えることがないクレープ、ガレットの持ち帰り店「 Au P'tit GREC」。
並んで待つのが嫌でいつもパスしているが、そんなに旨いのなら一度は食べてみたい、と心の中では思っている。 -
一時は鳴りを潜めてしまったかのようなムフタール通りだったが、コロナ前のような活気をすっかり取り戻していた。
路上でライヴ演奏をするトリオ。
この街には常に音楽がある。 -
商店街が終わる地点にあるサン・メダール教会 Église Saint-Médard。
15世紀から18世紀にかけて建てられ、サント・ジュヌヴィエーヴ修道院とも密接な歴史を持っている。 -
教会の周囲はカフェのテラス席で埋め尽くされていた。
こうなるとまるでカフェ付属の教会だ。 -
隣接するサン・メダール広場 Square Saint-Médard。
かなり高齢とお見受けするマダムがマイクを手に取って熱唱していた。
伴奏付きの路上カラオケ。 -
続くムスタキ広場 Place Georges Moustaki ではダンスに興じる老若男女。
いや、正確には老老男女だ。
これもまた、文化遺産というべきか -
もっと素敵なダンス写真がたくさん撮れたのだが、あまりアップだと掲載できそうもないのでこの辺で収めておこう。
この人たちはお互いに知り合いでもなく、即興で組んで踊っている。
考える前に、自然に身体が先に動き出している。
まさにラテン民族ここにあり。 -
歌や踊りを楽しませてもらって、のんびりしているとここまで来た目的を忘れそうだ。
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腰を上げて、本来の目的地に戻ることにした。
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途中、喉も渇いたので、こちらのパン・パテイスリー店「Le Fournil de Mouffetard」でケーキとコーヒーを調達し、軒先の椅子テーブルを借りて暫し休憩。
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小休憩の後、安くて良質なワインを取り揃えているワイン専門店「La fontaine aux vins」にも立ち寄った。
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いつも来ると、覗いては安いワインを数本買い求めていく。
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気取りのない この並べ方が好きだ。
今日はこれからアンリ4世校見学を控えているので1本だけにしておいた。 -
戻ってみると、まだ2時前だったがすでに入場待ちの列が出来ていた。目で数えてみるとおおよそ5、60人が並んでいる。
隣り合うサン・テティエンヌ・デュ・モン教会を眺めながら開場を待つことになった。 -
もともとは、サン・テティエンヌ・デュ・モン教会と現アンリ4世校は サント・ジュヌヴィエーヴ修道院 L'abbaye Sainte-Geneviève の敷地建物として一体であった。
今、自分たちが行列に並んでいるクロヴィス通りには、かっては修道院の建物があったのだ。(左の写真中央の建物)
それが大革命後に修道院の建物を壊して道路を通したという経緯になっている。 -
この一帯を有していたサント・ジュヌヴィエーヴ修道院は、502年頃にフランク王クロヴィスによって建てられたと伝えられている。
そもそもは聖ペテロと聖パウロに捧げられた教会だったのだが、パリの守護聖人となった聖ジュヌヴィエーヴに再奉献されたということになる。 -
その後、大革命後の1807年に新しく道路(クロヴィス通り)を通すため障害となる古い建物は全て壊されが、例外として残ったのがクロヴィスの塔で、塔を北東の角に組み込む形で1824年に学校の校舎が建てられている。
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利用する人は限られるが、クロヴィス通り沿い、アンリ4世校側に面してサン・テティエンヌ・デュ・モン教会の出入り口がある。
裏口と言っては失礼だが、ここから入っていくと素敵な出会いがある。
(写真は2023.6月撮影) -
通路を辿って進むと、細長いギャラリーに17世紀初頭(1612年から1622年の間)のステンドグラスが12枚ある(当初は24枚あったそうだが、現在は半分しか残っていない)。
パリでも指折りと評される美しさを持っているステンドグラスで、その繊細な技法でも注目されている。
仰ぎ見るような位置ではなく、腰高なので本当に間近で見ることができる。
観光客も数多く訪れる教会だが、ここまで入ってくる人はごくごく僅か。「表側」からも来れるのだが、仕切りの扉があるので気がつく人が少ないのだろう。教会側も保存管理のため積極的な案内はしていないようだ。 -
12枚中の一枚。
上は旧約聖書のノアの方舟。下は教会の船を率いるキリスト。
16世紀に始まったプロテスタントの宗教改革に対抗するために、カトリックの教義を分かりやすく示すための構図と解されている。
とても繊細な表現で細部にまで手が及んでいる技術は驚くばかりだ。 -
通路の壁には一枚の古地図が貼られていて、それを見ると現在のアンリ4世校は「ナポレオン校」の名称になっている。
1796年にフランス最初の公立学校としてスタートしたアンリ4世校は、これまで何度も名称が変わっている。
エコール・サントラル・ドゥ・パンテオン(École Centrale du Panthéon 1794-1804)→ リセ・ナポレオン(Lycée Napoléon 1804-1815)→コレージュ・アンリ・キャトル(Collége Henri IV 1815-1848)→リセ・ナポレオン(Lycée Napoléon 1848-1870)→リセ・コルネイユ(Lycée Corneille 1870-1872)、そして1873年からは現在の名前である。 -
サン・テティエンヌ・デュ・モン教会は、もともとはパンテオンの前身であるサント・ジュヌヴィエーヴ大修道院の付属教会だった。
この教会の見どころはいくつもあるが、パリではここでしか見られない「ジュベ Jube」がある。ジュベとは教会の内陣と身廊の間に作られた仕切りのことで、聖職者と非聖職者(一般参拝者)を分ける為に設けられていた。
この教会のジュベは、1535年に造られた非常に古いもので、まるで橋のように設置され、白い石の螺旋階段と繊細な透かし彫りが見事である。 -
さて、時間が来てアンリ4世校は開門となったのだが、列はなかなか進まない。
ようやく自分の番になり、中に入ってからその理由が分かった。 -
ここは自由見学ではなくて、ツアー見学だったのだ。
公開にあたっての案内を、すっかり読み落としていた。
20人ほどの人数でグループ分けして、定められたコースを進んでいくのだが、前のグループが説明を受けている間は、次のグループは待機していなければならない。時間がかかっているわけだ。 -
ようやく移動が開始した。
グループを率いて校内を案内してくれるのは、在校生の女子学生だ。
昔の修道院を思わせる回廊が残っていた。
13世紀に建てられた回廊は荒廃し、16世紀に木造で建て替えられ、さらにその後18世紀になって現在のような姿になったという。 -
回廊から見えるサン・テティエンヌ・デュ・モン教会の鐘楼。
こうしてみると間に道路があることは抜きにして、昔日の一体感が伝わってくる。 -
クロヴィスの塔 Tour Clovis の下の2層は11世紀後半に建てられているものであるという。
塔に上れぬまでも、せめて近くで見てみたいと思ったが、残念ながら設定された案内コースには含まれていないため距離を置いた場所から眺めるだけとなった。 -
歴史的建造物として保存されている旧礼拝堂。
修道院時代には食堂としての役割もあったようだ。 -
旧礼拝堂のサント・ジュヌヴィエーヴの像。
ノートルダムと同時期の1220年頃に制作されたものであるという。 -
校舎に囲まれた中庭の一つ。
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校内の床下にある修道院の遺構。
状態が見えるように強化ガラスが嵌め込まれ保存されている。 -
旧い時代の墓石のレプリカが壁に展示されていた。
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旧修道院の中でも象徴的な存在であった、「L'escalier des prophètes」 預言者の階段あるいは聖母の階段と呼ばれている。
階段の上から場所の説明をしているのは、我々のグループを引率する女子学生。 -
「L'escalier des prophètes」は、17世紀の聖母子像を中央に階段が左右に分かれている。
右側の階段は、上がるとすぐに「聖職者のための扉」となり、その先は閉ざされた狭い部屋になっているという。
左側は寮に繋がっていく通路となる。 -
時の流れを感じさせる聖職者のための扉。
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左側の階段の先には古くからの見事な建築があったというが、破壊されてしまい、今は近代的な通路になっている。
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通路を進むと明るく広々とした修道院長の部屋となっている。
見学者が映り込んでいるので、ここでは天井だけ。 -
そしてやってきたのは図書室。
502年あるいは506年に創設された修道院は、王室の後ろ盾を受けて繁栄し、ソルボンヌを構成する一部ともなり、巨大な図書館を有していた。
1790年に革命政府が図書館の目録を調査したところ、約6万冊の蔵書と2千冊の写本が確認され、国王の図書館に次ぐ規模であったという。 -
図書館のシンボル的な存在、八角形で形成されている天井ドーム。
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天井のフレスコ画は、聖アウグスティヌスが天使の雲に乗って天国に導かれる図であるという。
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製作者はジャン・レストゥー (Jean II Restout あるいは Jean Restout le jeuneと呼ばれる)。
1692年ルーアンに生まれ1768年パリで没したロココ画家である。 -
現在の図書室・読書室の一部。
もともとあった膨大な書籍や彫像類は 1850年にサント・ジュヌヴィエーヴ図書館に移されている -
図書室からの北側の眺め。
右にクロヴィスの塔、向かいにサン・テティエンヌ・デュ・モン教会。 -
西側には校舎の向こうにパンテオンのドームが覗いている。
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修道院時代の図書館は週2回、一般にも公開されていたが、訪問者たちが歩き回って聖職者の妨げになるため、一般利用者と聖職者専用のスペースを分けるようになったという。
聖職者のための読書室の入り口に設けられたオーク材製の大きな扉が記念碑のように残っていた。
ここでツアーは終了となった。
振り返ってみると、今年の文化遺産の日は、意図したわけでもないのに図書館に始まり図書館で終わるという次第になった。
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