梅雨の合間に山口県北長門海岸国定公園の下関市の角島から萩市の沿岸部の絶景を探訪

2023/06/12 - 2023/06/16

山口宇部空港から山口県中央部の酒蔵を巡り縦断し、長門市湯本温泉の界長門に2泊して温泉三昧。2日目は特別天然記念物でありMine秋吉台ジオパークのメインスポット秋吉台カルストを堪能。(ここまでは既報)
3日目は界長門を発して湯本温泉の大寧寺に寄った後、農免道路で角島へ、沿岸部の元乃隅稲荷神社、道の駅センザキッチンを経て萩市へ横断。

エリア 角島・下関北部(山口)

2泊した湯本温泉の界長門の玄関で見送りのスタッフに写真撮影をしてもらって、ゆっくり出発。

界 長門 宿・ホテル

湯本温泉を去る前に隣接する大寧寺に参詣する。
横浜市鶴見区に本山が移った総持寺の系統の寺院。
広大な敷地で、6世紀を超える複雑な歴史があり短時間の滞在では味わい切れない古拙である。
国道316号線を長門市街に向かう途中から、沿岸部の国道191号線に並行した農免道路「みのりロード」を利用。交差点や信号が少なく、見通しも良く走りやすく、長門市と下関市の境界近くまで行ける。

大寧寺 寺・神社・教会

下関市の角島灯台公園に順調に到着。
公園には公営駐車場はなく、隣の民間有料駐車場を利用。未利用地が広大にあるので公営で駐車場を整備して無料開放しても良さそうだが、駐車場料金が地域の貴重な収入源になっているのか。ぼったくり価格ではなく舗装され停めやすいので良心的なもてなしとも理解できるのだが。

晴天に恵まれず色彩が分かりにくいが、白色無塗装の石積造の灯台であり、暗く潰れて見え無いが上部には装飾も施されている。日本海側の響灘に初めて建設されたもので、点灯は明治9年。日本に16箇所ある「のぼれる灯台」のひとつで、内部を参観できる貴重な灯台だ。高さは地上から頂部まで30m、平均海面から灯火まで45m。
平成21年度の土木学会選奨土木遺産、2020年に国の重要文化財に指定されている。

角島灯台/角島灯台公園 名所・史跡

角島灯台の内部の参観には300円以上の寄付を募っている。安価な設定で潮風に曝される厳しい環境で傷んだ設備を、観光にも適するように維持するのは簡単ではなく、海上保安庁や燈光会の皆さまの努力によるものだ。

角島灯台/角島灯台公園 名所・史跡

灯台の隣に灯台守の宿舎を再現した資料館があり、明治政府が外国人技師プラントンへ依頼して設計建設、運営した当時の様子について解説されていて参考になる。

角島灯台/角島灯台公園 名所・史跡

明治の古い貴重な写真資料が展示されているが、基礎的な知識が無いとすんなり体系的に理解出来ない。
ガイドツアーは特に日々開催してないようだが、常駐している方が居るので尋ねれば解説してもらえる。

角島灯台/角島灯台公園 名所・史跡

模型資料館や解説板は、平成12年の角島大橋の架橋に合わせて作成されたようで比較的新しく充実している。

角島灯台/角島灯台公園 名所・史跡

さあ、いよいよ灯台に登ってみよう。灯台の内部の螺旋階段は、灯光のあるレベルの屋外に設けられた展望台への出入口直前が急傾斜になっていて、結び目のあるロープが手掛かり用に吊るされている。
城の天守閣の急傾斜を彷彿させるが直線でなく螺旋でねじれているところが異なる。

角島灯台/角島灯台公園 名所・史跡

展望台からの眺め。残念ながらすっきりしない曇天で海と空の色彩も冴えない。
平日なので駐車場は空いているが、灯台にはこの駐車場が満車になるほどの人数が押寄せるのを受け入れるキャパシティはなく、入場規制され待ち行列ができるのだろうか。
周辺に響灘の絶景を望む公園の他に、飲食店や土産販売店がある。朝食たっぷり満腹なので寄りません。

展望台は360度に配置されているものの、扉が開いた状態で固定されると通行できず折返しする状況。
鉄鋼構造物は潮風の塩害による錆などが著しく。
足元はしっかりしているものの恐怖感がある。

角島灯台/角島灯台公園 名所・史跡

最上部の階段の降り口。かなり急なうえ、幅が狭くすれ違い困難で、通行は譲り合いが必要。。
左手が特大の回転式の1等フレネルレンズと光源だ。通行が多くて撮影仕損ねたがレンズは高さ2.59m、仏製、光度は67万カンデラ。当初は石油灯火、1947年に商用電源化され1500Wの電球に変更されている。

角島灯台/角島灯台公園 名所・史跡

螺旋階段の壁は、平成7年に耐震補強されたらしく、赤く塗装されている。段数は105。

角島灯台/角島灯台公園 名所・史跡

燈光会の掲示板。燈光会は航路標識事業の発達を助成し、航路標識に関する知識の普及を図ることを主目的に大正４年１月に設立された組織で、海上保安庁から委託され燈光会が参観事業を行っている。のぼれる灯台16のスタンプラリーも開催している。

角島灯台/角島灯台公園 名所・史跡

角島灯台をあとにして角島に整備された直線的な道路を行く。途中港や海浜公園に興味を惹かれつつ先を急ぐ。

角島 自然・景勝地

本州側から角島方向を望む角島大橋の撮影が主流だが、逆方向の眺めをご覧頂きましょう。
右手にあるのが鳩島。自然景観保護のため鳩島を避けて架橋されている。
休日には島から戻りの渋滞が発生するようだがこの時は車列は無くて快適。

角島大橋 名所・史跡

車をパーキングに停めて振り返ってみる。
Ｔ字路には信号機は設置されていない。
強風で通行止めにするらしく、長時間戻れなくならないよう注意。全く車や人の姿が無い撮影は厳しい。

角島大橋 名所・史跡

パーキングとは反対側に角島展望台が設置されている。

角島大橋 名所・史跡

展望台から海士ケ瀬公園のパーキング方向。パーキングは珍しく無料。
砂浜が白く美しいが降り口は見当たらなく、砂浜には人影は無かったようだ。降りるつもりが無かったので見落としたかもしれないが、前方には島戸海水浴場がある。

角島大橋 名所・史跡

展望台からパーキングと反対側の西方向。
ホテル西長門リゾートが見える。眺めの良い景勝地で温泉も湧き宿泊先候補として検討したが、萩市街への移動に時間を要するので断念した。ホテル西長門リゾートは千葉県の鴨川グランドホテルのグループで、角島大橋の建設後にできたのかと思いきや1977年に開業している。
なお鴨川グランドホテルグループはコロナ禍の影響で2022年から日本産業推進機構グループ(NSSK)の支援で経営再建中である。

角島大橋 名所・史跡

そして角島展望台から西長門海岸国定公園に含まれる響灘の角島大橋と角島を望む。陽射しが弱くコバルトブルーもしくはエメラルドグリーンに映える海の撮影はできず。
角島は面積4.1km2、海岸線長17.1km、最高標高66mの島。平成27年国勢調査では人口726人。
角島大橋は全長1786m、橋脚数28、幅6.5mの2車線、1993年着工、2000年開通、総工費148億円。当初は下関市と合併する前の旧豊北町の町道として整備される計画だったが、県事業・市町村道代行橋梁整備事業に移管され、県道276号線となっている。完成時は通行料無料の離島架橋として最長だったが、橋長3,540 m(取付道路を含む全長は6,500 m)の伊良部大橋などに抜かれている。伊良部大橋を5年前に渡橋しているので約半分の橋長ではインパクトは薄く。
なお、東京湾アクアブリッジは全長4,384 m、日本最長の全長9,607 mの海底トンネル東京湾アクアトンネルを含む東京湾横断道路(東京湾アクアライン)の総事業費は約1兆4409億円とされ(出典ウィキペディア)、高額な通行料金に対して千葉県と日本国政府の補助事業による社会実験割引が次々に施されても、開通20年後(2017年)の推定交通量64,000台/日に達していなく。角島大橋の事業採算については新たな観光名所となって批判的な議論は目立たないが、経年劣化が進むと維持費の捻出に苦労することになるだろう。

角島大橋 名所・史跡

国道191号線を単線非電化のJR山陰本線に沿って東へ向かう途中の油谷湾を望む高台にある油谷湾温泉ホテル楊貴館。山口県の地酒が揃う日本酒BAR「海と月」に興味を惹かれたが、萩市街への往復移動に時間を要するのでやはり断念。

油谷湾温泉　ホテル楊貴館 宿・ホテル

そして次の寄り道スポットに到着。レンタカーのカーナビが古いためか検索できず、アクセス路の一部がすれ違い離合困難な狭さなのに観光バスも通行するとあったので途中ハラハラした。

元乃隅神社 (もとのすみじんじゃ) 寺・神社・教会

「ビュースポットやまぐち」として山口県観光プロジェクト推進室の案内板が掲げられていた。
「元乃隅稲成神社は昭和30年に白狐のお告げにより、島根県津和野町にある太皷谷稲成神社から分霊された神社です。日本海の大パノラマを背に連なる123基の鳥居の景色は圧巻。神社敷地内にある大鳥居の上部に設置された賽銭箱に、見事、賽銭を投げ入れることができたら願いが叶うと言われています。」と紹介されている。

元乃隅神社 (もとのすみじんじゃ) 寺・神社・教会

123の鳥居群の最先端から望む。
厳島神社と異なり海側から鳥居を潜って参詣することはほぼ無いので配置が妙だが特にしきたりはないなだろうか。1万基に達するともされる伏見稲荷大社の千本鳥居に肖った数の呼称にはしていなく、各地に同様の事例が多くあるのか？

元乃隅神社 (もとのすみじんじゃ) 寺・神社・教会

鳥居は塗装されたばかりのようで艷やかだが、朱色ではなく赤色である。よほど慌て養生せずに作業したのか酷く塗料が垂れたり飛び散っていて神域に対して失礼であるが見苦しさを強く感じた。また奉納の表示が直書きではなく札が掲げられていたのも見慣れなく今ひとつ神秘に対する配慮が感じられずとても大らかな印象、これを雑などと言ってはいけないのであろう。

元乃隅神社 (もとのすみじんじゃ) 寺・神社・教会

もともと「龍宮の潮吹」と言う名勝に、地元の漁師などの方々が昭和の時代に神社を建立して鳥居を並べたようである。

元乃隅神社 (もとのすみじんじゃ) 寺・神社・教会

国指定天然記念物及び名勝とのこと。
この日は風が無く、打ち寄せる波は穏やかで「潮吹」現象は全く観られなかった。
そう言えば長門市はジオパーク参加登録が無いが、海蝕地形などの宝庫で他にも奇観が多そうだ。

龍宮の潮吹 自然・景勝地

西側の海岸線の景観。目立たった人工構造物が見あたらなく。なかなかこのような風景を目にする機会は減っている。グローバルな海岸線長に対する人為的利用度からすると、日本の工業地帯や各種沿岸施設の密集が特殊なのかもしれない。

龍宮の潮吹 自然・景勝地

西側には漁港と集落があり、強固そうな護岸や高架道路が見える。

龍宮の潮吹 自然・景勝地

潮吹の起きる位置は分からないが岬の先に鎮座する大岩。人気観光スポットとして紹介されているものの、手摺などの安全対策は全く設置されてなく、自然のままの景観と危険性を体感できる。
サンダル的な履物のインバウンド観光客らしき方々がいて、特に湿ったり濡れたりした岩肌には滑りやすい箇所もあり、落ちて海の藻屑と消え帰国できなくなる方がでるのでは無いかと不安に。

龍宮の潮吹 自然・景勝地

上部の大鳥居へ移動すると、動画などでも多く登場している鳥居の上部に賽銭箱があり投げ入れるという異質な光景が。来訪者、特に外国人に常識と異なる知見を植えつけそうだが、山口県をはじめ大半は気にしないのだろう。

鳥居の先の境内には立派な鳥居の製作所、風雨に曝され短期間での交換が必須なのだろうか。更にお利益を得るため増設を計画しているのか、強い執念を感じた。

元乃隅神社 (もとのすみじんじゃ) 寺・神社・教会

変わった狐の石像が立つ社もあり、ややちぐはぐな印象もあり。

元乃隅神社 (もとのすみじんじゃ) 寺・神社・教会

念のため由緒を確認。八百万の神々を信奉する日本国にあっては神々に序列を付けるものではなく、信教の自由も保証されるべきとは言え、地縁がないと不合理な伝説に感じられ、排他的に考えないようもっと修行が必要なようだ。
駐車場の台数は少なく連休などには道が渋滞するほど混雑するそうだが、予習しても失敗することはあり、実態を確認できて良かったとは思うが、Webの不十分な情報を適切に理解して活用する力量を養うことが重要とつくづく感じ、忘れ難い良い経験になった。

元乃隅神社 (もとのすみじんじゃ) 寺・神社・教会

国道191号線に戻り萩市へ向かう。
途中道の駅センザキッチンにより小休止。
美祢市の石灰石は宇部市と小野田市へ運ばれているて思い込んでいたが、秋芳鉱業がベルトコンベアで日本海側長門市仙崎港の住友大阪セメント山口事業所へ運び、港から船舶で出荷していて、その専用埠頭設備を眺めることができた。

道の駅センザキッチン 道の駅

埠頭へもトラック輸送ではなくベルトコンベアで搬送しているようだ。
石灰石と言えばセメントだが、良質な石灰石は用途が広く様々に活用されているそうだ。

道の駅センザキッチン 道の駅

センザキッチンは物産店がとても充実している。

道の駅センザキッチン 道の駅

日本酒の小瓶、クラフトビールの品揃えも豊富。

道の駅センザキッチン 道の駅

永山本家酒造場で入手したスパーリング貴が未だ残っていたので日本酒の追加入手はぐっと我慢だ。

道の駅センザキッチン 道の駅

界長門で仙崎に寄るならぜひ蒲鉾をと薦められただけあって品数豊富。要冷蔵なので未だ旅程半ばなので土産購入は断念。

道の駅センザキッチン 道の駅

界長門のライブラリーラウンジで試食した鶏卵せんべい、鶏卵塩せんべいのお得なパッケージを見つけて入手。朝食を普段より多めにとり腹持ちが良く昼食がまだだったが、宿に着いたら早めの夕食が待っているので、本格的に食すことはせずに惣菜を少し調達した。

道の駅センザキッチン 道の駅

道の駅センザキッチンには青海島観光汽船の乗り場もある。青海島一周航路には興味があったが、最近観光船で事故が多く、外海で激しい航路のようなのでスルー。と言っても最終便は既に出発していた。

青海島観光汽船 青海島一周航路 乗り物

部分的に開通したばかりの山陰道の無料区間を利用して萩市に入る。萩市の観光は明日にして夕食の前に温泉浴をしたく宿に入る。
6月は年間でもっとも日が長く、明るいうちに部屋から長年念願にしていた指月山を鑑賞することができて感無量。

指月山 自然・景勝地

高台や旧武家街の宿も惹かれたが、萩沿岸の火山島群を眺められてご満悦。
目の前が海水浴場なので夏休みシーズンは大人気だろう。

海が奏でる癒しの宿 リゾートホテル美萩 宿・ホテル

そしてお待ちかねの夕食タイム。ふぐ刺しコースと言う割には河豚の刺身の量は少ないが、その他ね皿数は多く全体的には適量。かつて故首相が露プチーン氏に贈呈して話題になった赤いおかめラベルで有名な澄川酒造「東洋美人」を頂く。利き酒セットは無く。海外出身とみられる風貌の方が給仕していて、深刻な人手不足は西日本の観光地にも広がっているのかと動揺。

海が奏でる癒しの宿 リゾートホテル美萩 宿・ホテル

指月山に沈む夕日。旅の中日の3日目は思いの他色々ありお疲れさまでした。部屋からの眺めは、波が穏やかで、騒ぐ人等も居なく静かで良く。
明日は長距離移動せず、萩市街に集中。萩八景遊覧船に乗り、夏みかん丸漬の老舗店、松蔭神社、蒲鉾店、萩市街の酒蔵、明倫館、萩城址などを巡る予定。
梅雨の合間の山口県探訪記第4段を編集する間に、関東地方も梅雨明け。既に30℃超えの猛暑日が続いているので、皆さまコロナなどのウィルスだけでなく熱中症や豪雨にも注意して、2023年の夏を有意義にお過ごし下さい。
最後までめくって頂き感謝します。前編や続編も含めてご愛顧もよろしくお願いします。ごきげんよう。

指月山 自然・景勝地