2023/05/23 - 2023/05/25
4位(同エリア4761件中)
montsaintmichelさん
- montsaintmichelさんTOP
- 旅行記367冊
- クチコミ0件
- Q&A回答0件
- 3,058,978アクセス
- フォロワー141人
寺町寺院群を堪能した後は、エネルギッシュな商店街「竪町商店街・新竪町商店街」へ繰り出しました。いずれも伝統の中にも新しさを秘めた魅力的な店舗が軒を連ねています。
今回の旅行のプランニングは基本的にカミさんが行いました。当方は多少のリクエストをしたに過ぎません。カミさんのお目当ては、新竪町商店街にあるアートスポット「おはなしのつづき」です。ここはガラスペン画家 細川理衣(りえ)さんのギャラリー兼ショップです。2階がギャラリーになっており、6部屋の和室には計52枚のメルヘンタッチの襖絵が描写されており圧巻です。
ガラスペン画で「不思議なアリス」の世界を愉しんだ後、石川県立図書館へ向かいました。今回は2012年に「世界で最も美しい公共図書館25選」に選ばれた「金沢海みらい図書館」ではなく、敢えて石川県立図書館を選りすぐりました。その理由は、「こどもエリア」が1階フロアの25%を占めるという未来志向のコンセプトに心打たれたからです。岸田総理はじめ政府関係者には「子育て支援」のお手本としていただければと思います。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 同行者
- カップル・夫婦
- 交通手段
- JR特急
PR
-
竪町(たてまち)商店街
1632(寛永9)年に油酒屋三郎右衛門という灯油と酒を扱う店が開店したのがルーツとされます。かつてはファッションストリートと呼ばれていましたが、時代の流れと共に変遷し、現在は国内外から様々な面白い人が集まる街を目指して色々なことに取り組まれています。
車道幅員6mの金沢市道とその両側の歩道各3m、計12mの通りが430m真直ぐに延びる壮観な道路で、その両側に商店が軒を連ねています。
こうしたアーケードのない商店街における通年のホコ天は、全国的にもあまり例がないそうです。 -
竪町商店街 加賀友禅金沢 竹屋
お目当てのひとつである加賀友禅の店「ゑり華」はお休みでした。
因みに香林坊や竪町周辺では基本的に水曜日が定休日の店舗が多いです。(この日は火曜日だったのですが…。)
ここは加賀友禅の文字に反応してふらりと入ったお店ですが、驚くことに創業1836(天保7)年の加賀友禅産元の老舗でした。加賀友禅をはじめ創作着物や和小物などのオリジナル商品も多く取り扱っておられ、店主さんの慧眼に適った厳選品だけが並んでいます。
www.kanazawa-takeya.co.jp -
竪町商店街 加賀友禅金沢 竹屋
店主さんは加賀友禅について時間を忘れるほど熱く雄弁に語ってくださいました。
友禅とは江戸時代中期の絵師 宮崎友禅斎が発案した「糊で防染した、きもの模様の技法」だそうです。手描き友禅は、その模様の輪郭をなす防線のための「糸目糊」が最大の特徴であり、美しさの生命線だとか。また、加賀友禅の特徴は加賀五彩の色使いにあり、臙脂・黄土・藍・草・古代紫の5色があります。それらの色を使い、虫食いや先ぼかしの技法を駆使して仕上げるそうです。
また、加賀友禅には、素人目には判らないのですが、本加賀友禅と京加賀友禅、新加賀友禅の3種あるそうです。
本加賀友禅は、
1.伝統の加賀友禅の技法で制作される。
2.師匠と弟子の師事関係がしっかり構築されている。
3.協同組合で落款や証紙まで厳格に管理されている。
シンプルな見分け方は、表と裏がほぼ同じ色目になっていることだそうです。
京加賀友禅や新加賀友禅などは一般に「加賀調」と呼ぶそうです。加賀友禅の一部の技法を省略して廉価版にしたものですが、決して粗悪品ではなく、中には本加賀友禅と区別が付かないものもあるそうです。 -
新竪町商店街
キャッチフレーズは「あたらしくてレトロ、渋くてかわいい商店街」。
ご覧の通り、まるで昭和時代にタイムスリップしたかのように、時間がゆったり、のんびりと流れているのが新竪町商店街の魅力です。
歴史を紐解くと、1621年に徳榮寺の引っ越しと共に寺院を中心に商店が並んだ寺内町がルーツと伝わります。戦前は、野田の練兵所の兵隊さんが多く訪れて賑わったそうです。昭和28年、商店の青年部が中心となって新竪町3丁目通りの両側に42基のネオン灯が設けられ、その後商店街活動が本格化したそうです。
現在約60店舗のお店が並んでいます。老舗の他 衣料品、雑貨、骨董品、生鮮食料品、飲食店などバラエティーに富んでいます。 -
新竪町商店街 おはなしのつづき
2階建の昭和レトロ(昭和4年築)な「旧中嶋医院」をリノベーションして2019年5月にオープンした、ガラスペン画家 細川理衣(りえ)さんのギャラリー兼ショップです。
細川理衣さんのインスタです。
https://www.instagram.com/rienkatsuu/ -
新竪町商店街 おはなしのつづき
この建物は、細川さんの義理の曽祖父が開業し、2代に亘って診療を続けた内科・小児科 中嶋医院でした。
細川さんは子どもの頃から「すてきな洋館」と目を細めて眺めていたそうです。ここ10年ほど空き家同然でしたが、「何か楽しいことができたら」と一念発起してショップ&ギャラリーとして蘇らせたそうです。 -
新竪町商店街 おはなしのつづき
味わいのあるかつての医院の看板を今でも掲げられています。
因みに細川さんの御主人は柔道整復師であり、「おはなしのつづき」の北隣で「オステオパシー整体院コロバ」を営んでおられます。ステオパシーの施術は、痛みの症状がある局所に注目するだけでなく、体の構造や精神状態に着目し、痛みの原因を取り除くものだそうです。 -
新竪町商店街 おはなしのつづき
元病院と言うこともあり、白を基調にした清潔感溢れる内装です。
かつて待合室だった1階はショップに変身し、アクセサリーなどのオリジナルグッズを展示販売しています。
また、床に近い壁には「グリム童話」の世界にでも迷い込んだような「こびと専用」の小さくカラフルな扉が幾つか並び、遊び心溢れる空間を演出しています。 -
新竪町商店街 おはなしのつづき
細川さんは金沢市出身で、物語のワンシーンのような繊細で温かみのある絵を描き、「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2019」のメインビジュアルを手掛けるなどで活躍中のアート作家さんです。
また、四ヶ浦弘著『金沢のルーツ砂金を探せ!』や同『賢治の描いたサイエンスファンタジー』の挿絵も描かれていますので、理衣さんの絵を目にしたことのある方も多いのでは!
「ものがたり」性のあるものをテーマにした絵など、金沢を拠点に制作活動をされています。ガラスペンとの出会いは2005年のことだそうで、独学でガラスペンとインクを用いて絵を描き始めるようになったそうです。 -
新竪町商店街 おはなしのつづき
窓際にそれとなく置かれた小さなぬいぐるみたちは、今にも飛び出してくるかのような躍動的なディスプレイになっています。 -
新竪町商店街 おはなしのつづき
可愛らしいアニマルやお化けの形をした手作りのブローチが所狭しと並んでいます。
目移りして困ってしまうのですが、この中から厳選して「雲の子 ねこ」を猫好きな娘へのお土産用にGETです。 -
新竪町商店街 おはなしのつづき
ワークショップのようなスペースもあります。
最近は不定期に「CLOSE」になっていることが多いようです。
この日も訳ありで12:30にオープンしたばかりだったそうで、ラッキーでした。
細川さん一人で切り盛りされているため、こんな状況が続いている模様です。 -
新竪町商店街 おはなしのつづき
かつてレントゲン室として利用されていたスペースには「夜のサーカス」をイメージした一画があります。サーカス小屋のテントを彷彿とさせる入口にはブランコが吊り下げられています。
因みに、このブランコには大人も乗れるそうです。
その奥にはポストカードが並んでいます。 -
新竪町商店街 おはなしのつづき「風の間」
2階にはギャラリーになっている6部屋の和室があり、ユニークなインスタレーション作品「月の間」や「鏡の間」などテーマの異なる世界観が52枚の襖絵で描写されています。
出迎えてくれるのはメルヘンタッチで可愛らしい襖絵「風の間」です。「風に吹かれながらそれぞれの物語へと飛ばされて欲しい」との思いが直に伝わってきてワクワクしてきます。襖絵はまるで大きな絵本のようです。 -
新竪町商店街 おはなしのつづき「森の間」「花の間」
「風の間」から始まるストーリーは「森の間」「花の間」「月の間」「夢の間」「鏡の間」へと引き継がれていきます。
そのひとつ一つが誰かを主人公とする物語になっています。
童心に返って、このお話の続きに思いを馳せてみるのも愉しいかもしれません。 -
新竪町商店街 おはなしのつづき
成巽閣にある「群青の間」を彷彿とさせる立派な部屋もあります。
旅程に時間がない場合は、ここで代用してもよいかと思います。
ここなら写真も撮れますから…。 -
新竪町商店街 おはなしのつづき
妖精や動物たちが登場し、確かに女性の心を鷲掴みするような感性に訴える緻密な作品です。 -
新竪町商店街 おはなしのつづき
時の内閣総理大臣 中曽根康弘から受けた「勲五等双光旭日章」の賞状と勲章が置かれています。義祖父 中島正明氏は金沢市医師会長も務められており、その貢献により受勲されたものと思います。
往時は昼夜問わず患者を受け入れており、お金のない患者さんには「後で支払ってもらえればいい」と無償で診たこともあったそうです。患者本位の医療を続けられ、長く地域の人々に愛されてきたのでしょう。
因みに、義父も白山市(旧松任市)で中島内科医院を開院されていたそうです。 -
新竪町商店街 おはなしのつづき「月の間」
小さな頃に憧れた不思議な物語の世界観を余すところなく表現されていて吃驚です! -
新竪町商店街 おはなしのつづき「夢の間」「鏡の間」
理衣さんは、幼い頃、ヨーロッパの魔女のお話が大好きだったそうです。
特に、魔女が生まれたらトネリコの木を植え、その子が大きくなったらその木で箒を作って空を飛ぶというお話がお気に入りだったとか。
妖精が空を飛んでいる絵が多いのはその名残でしょうか!?
今風に言えば『魔女の宅急便』のようなお話だったのかなぁ~。 -
新竪町商店街 おはなしのつづき「鏡の間」
お茶屋を彷彿とさせる「紅殻の間」もあります。
ネット情報には2階ギャラリーは見学料¥200と書かれているものもありますが、インスタの話をしたところ、どうぞ上がって見ていってくださいと言われ無料でした。
そんな時は、お礼の気持ちを込めてショップでお買い物をすればよいかと思います。 -
新竪町商店街 おはなしのつづき「鏡の間」「夢の間」
昭和レトロな建物と現代的な可愛らしいイラストが、違和感なく融合している不思議な空間です。
絵本好きな方であれば、何時間でも長居できそうな癒しの時空かもしれません。 -
新竪町商店街 松田久直商店
町家をリノベーションした店舗に色彩豊かな野菜やフルーツが所狭しと並ぶ、2009年春にリニューアルオープンした八百屋さんです。2階の軒に吊るされた「籠」が目印です。
後継者のいなかった創業百年を超える老舗の青果店を事業承継し、取り扱い商材も見直して地元客だけでなく観光客も訪れる店に文字通りリニューアルしたのが店名にもなっている松田久直さんです。その転機は、大学の同期が卒業を機に八百屋のアルバイトを続けられなくなり、その代役を務めたことでした。そして店主から「後継者にならないか」と誘われ、縁も所縁もない八百屋業に足を踏み入れました。この新竪町に惚れ込んだことも背中を押したようです。約15年の修行を積み、先代から野菜や経営の哲学を学ばれたそうです。
今では新竪町商店街の顔のひとつとなり、八百屋本来のスタイルに拘りながらも、新しい挑戦にも余念がありません。
https://www.yaomatsu.jp -
石川県立図書館
繁華街のある香林坊からは少し距離があるため、公共交通機関でのアクセスならバスが便利です。香林坊(アトリオ前)あるいは広坂・21世紀美術館(しいのき迎賓館前)から北鉄バス 10 東部車庫行か10金澤学院行、43 辰巳高校行に乗車し、崎浦・県立図書館口で下車します。乗車時間は10分程ですが、バス料金は¥250になります。
尚、「北陸鉄道バス1日フリー乗車券」はギリギリ適用範囲内であり、利用できます。バスの難点は本数が少ないことです。日中は約30分毎になります。
時間に制約がある場合はタクシー利用をお勧めします。主要道路なら「流し」もキャッチできます。 -
石川県立図書館
「思いもよらない本との出会いや体験によって、人生の1ページをめくることができる場所」を目指す図書館。これが新県立図書館のコンセプトです。
旧県立図書館から規模や設備を大幅にパワーアップし、小立野の金沢大学工学部跡地に建設されました。図書館全体では現在100万冊以上の蔵書数があり、開架冊数は約30万冊で閲覧席約500席、地下1階にある書庫の収蔵能力は約200万冊で、これは全国トップレベルの規模だそうです。今後、50年間に亘る図書の収集を見据えてのことだそうで、図書館としての高いポテンシャルを持ちます。
こうした図書館としての機能はもちろん、建物としての魅力やインテリアなどにも拘り、多くの注目ポイントが満載です。 -
石川県立図書館
建物は長辺76m、短辺66.5mのほぼ整形な平面建築で、地上4階、地下1階の免震構造です。設計コンセプトは「知の殿堂 ー 知の玉手箱 めぐる・めくる・めくるめく図書館」です。シンプルな四角い箱状の外観を玉手箱、雁行する外壁パネルを本のページに見立て、そのパネルが捲れた姿は「本のページを捲る時のワクワクする期待感」をイメージさせます。外壁パネルと大判ガラス(カーテンウォール)とを小刻みに雁行させて凛とした立面構成にするに留まらず、直射光を適切に排除する半開放的な閲覧空間を創出することを意図した設計です。
また、図書館の周辺が住宅街との事情から、外構には豊かな緑を設け、外壁パネルには金沢の古い町並みを意識したアースカラーのタイルを用いています。パネルの色彩は、石川の原風景から抽出した大地のブラウンと自然の緑である落ち着いたグリーンを伝統的な市松模様に貼っています。
更には、天井ルーバーのスギ板や床材の能登ヒバ材など内装には県産材を使用されています。 -
石川県立図書館 正面玄関
正面玄関は特に奇を衒うような仕掛けはなく、ごく普通の設えで安心しました。
新図書館の愛称は「百万石ビブリオバウム」と言います。「百万石」は「加賀百万石」に由来し、建物の規模や収蔵能力の優位さを表しています。「ビブリオ」はイタリア語で「図書」、バウムはドイツ語で「木」の意味。「木」の温もりのある空間と 大閲覧空間を巡り、様々な本や人・物・情報などと出会うことで 県民の「成長」を後押しし、「進化」を続ける図書館であって欲しいという期待を込めて名付けられました。また、木の年輪のように県民と共に成長する図書館でありたいという思いも込められています。 -
石川県立図書館 屋内広場
正面玄関から入って上を仰ぐと、天井は同心円状に中心へと連なる格子構造になっており、自然と体が中心へと引き込まれていくような感覚に陥ります。
尚、この屋内広場はイベントやミニコンサート会場、催場としても利用されます。 -
石川県立図書館 屋内広場
目線を天井から床へ落とすと、可愛らしいトリケラトプス親子のストールが出迎えてくれています。「トリケラトプス」という名は「三本の角を持つ顔」を意味しています。
中生代後期白亜紀(マーストリヒチアン期)に現在の北米大陸に生息した植物食恐竜です。既知の非鳥類型恐竜の最後の属のひとつとされ、6600万年前に絶滅しました。 -
石川県立図書館 屋内広場
このピアノは金沢市の木材販売会社 フルタニランバー株式会社から期間限定で無償貸与されたものです。樹齢80年程の「能登ヒバ(アテ)」製であり、誰でも自由に演奏することができ、能登ヒバ特有の音色が愉しめます。
能登ヒバの楽器は、音響が良く、地元の木を使うことで林業を活性化させるなど、新たな価値を創造する目的があるそうです。また、能登ヒバには抗菌や防虫効果もあるそうです。 -
石川県立図書館 屋内広場
大樋陶冶斎(大樋焼:文化勲章受章者)「花鳥風月・能登 2022」
大樋焼の特徴である飴色の釉薬「飴釉」に拘った陶板を組み合わせた作品です。作品に設けられた凹凸により、光の当たり具合で表情が変化する点も特徴です。
カウンター前の壁面にはこうした文化勲章受章者や人間国宝ら県を代表する名匠たちの伝統工芸品が展示されており、美術館を彷彿とさせ、既成の図書館では見られない文化的空間を演出しています。
対となる「花鳥風月・加賀 2022」もこの左側にあります。 -
石川県立図書館 屋内広場
武腰敏昭(九谷焼:日本芸術院会員)「瞬」
5月の手取川。一羽の水鳥が川を泳ぐ魚(獲物)に狙いを定め、上空から一直線に水面に挑む「一瞬」を切り取っています。
これは故人の遺作でもあり、ユネスコの無形文化遺産に登録された縁付金箔が彩りを添えます。 -
石川県立図書館 閲覧空間(グレートホール)
閲覧エリアに足を踏み入れると、巨大な吹き抜けを夥しいほどの書架が取り囲み、ドームスタジアムあるいはコロッセオのような円形劇場を彷彿とさせる開放的かつ立体的な大閲覧空間が目の前に広がります。その壮観さにはただただ圧倒されます。
人々が集う建築において円形平面は古くから用いられてきた歴史ある形式ですが、1階から最上階の4階まで書架が吹抜けの周囲を同心円状に波紋が広がるようにすり鉢状に重畳する姿は圧巻です。
自然に好奇心がインスパイアされると共に、図書を基調としたインテリアにも温もりが感じられる空間になっています。 -
石川県立図書館 閲覧空間
欧州では古くからストックホルム市立図書館(1928年竣工)など円形図書館が造られてきましたが、それをお手本にしつつもユニークさを追求された設計です。単純な円形ではなく、段状の半円形閲覧空間を高さ違えて互いに向き合わせた断面構成にしています。そうすることで、図書に360度囲まれつつも、視線を上下に抜けさせ、包まれることと開放感の両立が図られています。
因みにグレートホールという中心的な空間は、天井高約18m、長径約56m、短径約48mの長円状をしています。 -
石川県立図書館 だんだん広場
屋内広場と隣接するのが階段とソファが一体となった「だんだん広場」です。
通常は休憩や読書など自由に利用できる「休憩スペース」として開放されており、飲食をしながらの読書や勉強、デスクワークもOKです。
一方、スペースを間仕切ると講習会や研修会、上映会の会場にも早変わりします。
約160人収容可能だそうです。 -
石川県立図書館 本との出会いの窓
大円形閲覧空間の中央左側(西)には、窓をイメージした書架やデジタルウィンドウに「石川コレクション」を除いた、「暮らしを広げる」「好奇心を抱く」「身体を動かす」など11のテーマの魅力を凝縮して紹介するコーナーが設けられています。
日頃あまり本を読まない人や何気なく図書館を訪れた人に、本や図書館の魅力に気付いてもらうためのコーナーです。 -
石川県立図書館 本との出会いの窓
中央右側は、残りのテーマである石川県が誇る多彩な「伝統文化」と「里山里海・生物多様性」に関連する「里の恵み、文化の香り~石川コレクション~」や資料が紹介されています。 -
石川県立図書館 2F
開架図書は30万冊を数え、全国有数の規模です。うち7万冊はテーマ毎に並び、その並べ方にも特徴があります。円形書架に並ぶ7万冊については「世界に飛び出す」、「仕事を考える」、「暮らしを広げる」、「好奇心を抱く」など、一般的な図書館の分類とは異なり、思わず手に取ってみたくなるようトラップが散り嵌められています。身近で親しみやすい分類で構成され、細分化された小分類は約700にも及びます。書架から書架へ、階段を上ったり、スロープで移動したりと、気の赴くままに、思いがけない一冊を求めて巡る「図書の回廊」です。 -
石川県立図書館 2F
フランツ・リスト自筆入り筆写譜(1844年)が展示されています。
作品名:歌曲『墓と薔薇(La tombe et la rose)』のピアノと声楽譜です。
歌詩はビクトル・ユーゴです。
リストは「ピアノの魔術師」としてロマン派音楽の盛期を全力で駆け抜けました。有名なエピソードが、欧州で起きた「リスト・フィーバー 」です。情熱的で卓越した演奏技術の中に見え隠れする脆さや憂いに満ちた表情に、多くの人々が熱狂し、特に女性は失神するほどだったと言います。
また、マリー・ダグー伯爵夫人との出会いが運命をもたらしました。その時、リストは21歳。6歳年上のマリーはパリ社交界で3本の指に入る美貌の持ち主であり、2人は忽ち恋に堕ちました。しかし、既にマリーには夫と2人の娘がいました。往時のフランス貴族の間では珍しくもない不倫関係でしたが、マリーがリストの子を身籠ったことから大スキャンダルへと発展しました。やがてマリーは全てを捨ててリストと共に生きる道を選びました。
スイスに駆け落ちした後、イタリアへ渡って各地を旅して回りました。その間に3人の子どもをもうけ、次女 コジマは後にワーグナーと結婚しています。リストはこの時期の美しい思い出を作品集『巡礼の年』に遺しています。 -
石川県立図書館 2F
床フローリングや天井ルーバー、書架などには能登ヒバや杉などの県産木材を多用し、木の温もりに包まれた落ち着きのある閲覧空間を構成しています。尚、「全館避難安全検証」における前提条件として内装に不燃材料を用いることとしているため、天井ルーバーには不燃処理が施されています。
また、円形の館内では自分が何処にいるのか判らなくなることもしばしばです。そんな時に役立つのが床や壁面、ソファなどに使われているエリアカラーです。加賀友禅に用いられる金沢の伝統色「加賀五彩」を用いており、東は「草」、西は「黄土」、南は「臙脂(えんじ)」、北は「古代紫」と色分けされています。迷路のような館内でも、色彩の違いから自身の居場所の見当が付きます。加賀伝統色を適用するところは心憎い演出です。
こうした方位に対応する色分けやグラフィックデザイナー 廣村正彰氏によるサインのデザインは、空間ナビゲーションには効果的です。 -
石川県立図書館 3F
閲覧エリアの照明は面出薫氏のデザインです。
反射拡散光で空間全体に落ち着いた明るさ感を演出する「アンビエント光」と、利用者に近い位置で読書や学習、資料探索等に十分な明るさを供給する「タスク照明」の2つの要素をバランスよく組み合わせています。
また、不要なまぶしさ(グレア)の削減や適切な色温度を持つ光の採用などにも留意してあります。 -
石川県立図書館 3F中央部「ブリッジ」
図書館を一望できる場所が閲覧エリアを中央で結ぶ3階のブリッジです。ここからは全体を360度見渡せます。
中央吹き抜け上部のトップサイドライトからは、柔らかな自然光が差し込み、館内に心地良い絶妙な明るさをもたらします。また、ブリッジの通路にはソファーが設置され、この開放的な空間で休憩したり、読書したりして寛げます。 -
石川県立図書館 3F中央部「ブリッジ」
天井のトップサイドライトから降り注ぐ光は格子状の架構を優しく照らす「藍色」です。
これも前田家の成巽閣の「群青の間」の天井をイメージしたものかもしれません。
また、柱のない空間を実現した屋根の架構にも注目です! -
石川県立図書館 3F
外観から想像できるように、雁行し波打つようなデザインにより、多くの「窓辺」が構成されています。閲覧エリアにある窓辺席は、座席が壁や書架で遮蔽された半個室になっています。そのため、手元は窓からの自然光で明るく、また周囲の視線を気にせずに集中できる環境が整えられ、隠れ家のように籠れる場所が提供されます。高さ約15mと比較的低めの外観からは想像できないほど、自分の時間をマイペースで心地よく愉しめる工夫が随所に凝らされています。 -
石川県立図書館 3Fサイレントルーム
既存の図書館にはあまり見られない仕掛けも幾つか盛られています。
本来図書館は「静粛」が原則ですが、ここでは開架エリアでのおしゃべりがOKです。館内が広いため、多少のおしゃべりは気にならないとの発想です。それでも気になる場合はサイレントルームが利用できます。館内端末で予約するとランダムに席が割り当てられます。 -
石川県立図書館 3F
山田義明(九谷焼)『黄菖蒲と翡翠』
閲覧席の一画には、石川県の伝統的工芸品でもある九谷焼や加賀水引、輪島塗、加賀繍などの作品が展示されています。
工芸と図書といった洗練された2つの文化が違和感なく融合され、図書館でもあり美術館でもある粋な化学反応を創生しています。 -
石川県立図書館 3F
手代木チカ『ふらここの森』(国際ガラス展・金沢2019入選)
ランプワークとサンドブラストで制作されており、油絵具で着色を施した幻想的な作品です。
雨上がりのザワザワした森をイメージし、作者の心象風景を表現しています。 -
石川県立図書館 3F
100種類にも及ぶデザイン椅子にも注目です!
館内には、「百脚繚乱」と表現するのが相応しいほど、色・形・素材を違えた椅子が配置されています。ベンチやスツール、ソファなど500座席ほどあり、訪れた人がその日の気分や目的に応じて選べます。
一部の椅子はデザイナー 川上元美さんが石川県立図書館のために特別にデザインしたものです。更には、家具の選定やレイアウトについても川上さんが監修されています。多種多様な世界中のデザイン椅子を上手く配置し、心地良い空間に仕上げられています。 -
石川県立図書館 3F
館内の整備に当たって図書館員は北欧の図書館30館を視察されたそうです。その報告書によると、日本と北欧で最も差を感じた点のひとつが「閲覧席へのこだわり」だと言います。北欧の図書館には多種多様で「ここに居たい」と思わせる魅力的な閲覧席がありました。そのコンセプトを手本にすべく、家具全般のデザイン・監修をデザイナー 川上元美さんに依頼したそうです。そして品格があり居心地のよい「オーセンティックな環境づくり」を主眼に100種を超えるバラエティ豊かな閲覧席を館内随所に設けました。一人になりたい時、友人と語り合いたい時、集中したい時、寛ぎたい時などその日の気分を多彩な椅子が受け留めるという仕組みです。 -
石川県立図書館 3F
スツール:西エリア・南エリア
座席のクッションを極端に小さくしたスツールです。
ベロア素材のクッションと木材の脚、上品なデザインとカウンター風のテーブルも相俟って、座るとバーにでも居るような寛いだ気分にさせられます。実は計算し尽くされた設計であり、クッションが小さく見えますが、実際に座ってみると意外にもジャストフィットサイズになっています。
また、エリアカラーで自分の居場所が判る仕組みです。 -
石川県立図書館 3F
ヤマカワラタンジャパン「ハンギングエッグチェア」:東エリア
ヤシ科の植物である籐の強靭性と柔軟性を巧みに利用したハンギングチェアはエキゾチックな雰囲気を醸し、通りがかった人が必ず吸い込まれていくほど魅力的です。世界中で長く愛される定番デザインである所以がここにあります。
この椅子に座り、揺られながら読書をすれば、日常の憂さが晴れること間違いなしです!直ぐに眠りに落ちてしまうかもしれませんが…。 -
石川県立図書館 3F
ハーマンミラー「ネルソンマシュマロソファ」:南エリア
カラフルな加賀五彩をあしらった特別仕様です。
電子ドラムを彷彿とさせるキャッチーなビジュアルはインパクトに富みます。実はこのデザインは1956年に誕生したもので、知る人ぞ知るトラディショナルな意匠です。座り心地は思いのほか安定感があります。
2人掛けできる大きさですので、友人や恋人と並んで座ってデザインや座り心地について語らってみては如何でしょうか? -
石川県立図書館 4Fリング
最上部の4階部分は、「リング」という、書架と閲覧席に挟まれた1周約160mの回廊式書架に囲まれた贅沢なスペースです。
ここも大閲覧空間を一望できる絶好のビューポイントです。 -
石川県立図書館 4Fリング
屋根裏部屋を彷彿とさせる隠れ家的な雰囲気を湛え、ワクワク・ドキドキが止みません。
カーペットは群青の間に用いられている「加賀群青」色となっており、落ち着きのある雰囲気を演出します。 -
石川県立図書館 4Fリング
群青色をした天井も間近に仰ぐことができます。 -
石川県立図書館 4Fリング
個人的には書架と閲覧席に挟まれた巨大な回廊「リング」が気に入りました。
青裳堂書店や「金沢」文圃閣といった書誌学系の図書や昭和時代の全集類、海外百科事典などが開架され、重厚長大だった時代の書籍文化に抱かれながらキャレルで読書に耽ることができます。 -
石川県立図書館 4Fリング
書架には中原中也著『在りし日の歌』(1938年発行)や泉鏡花著『高野聖』(1908年発行)、宮沢賢治著『注文の多い料理店』(1924年発行)などの初版本も置かれ、希少価値の高いものゆえ貸し出しは不可ですが、実際に手に取ってページを捲れるという貴重な体験ができます。
『在りし日の歌』と『高野聖』は「禁帯出(館外への持ち出し禁止)」のシールが貼られていますので、復刻版ではないように思います。 -
石川県立図書館 4Fリング
金沢ゆかりの室生犀星著『李朝婦人』と坂口安吾著『日本文化私観』です。
小説を通して主人公に感情移入し、ゆっくりと時間をかけて新しい価値観に触れる。これが小説の醍醐味ではないでしょうか?
動画のようにテンポが速いものでは到底味わうことのできない贅沢な時間です。 -
石川県立図書館 4Fリング
「おい地獄さ行ぐんだで!」で始まる小林多喜二著『蟹工船』と芥川龍之介著『羅生門』、日本初のノーベル文学賞受賞作品 川端康成著『雪国』が仲良く肩を並べます。
余談ですが、2021年度の地方交付税交付金のうちの図書購入費が全国平均で支給額の57%に留まったとのニュースを耳にしました。交付金の用途は自治体の判断に任されていますが、財政難対策として社会保障やICT整備に予算が回わされたようです。学校図書が適切に新陳代謝されないのは、今を生きる児童たちには不幸なことです。それが将来、日本国へのツケとして跳ね返ってくるのですが…。 -
石川県立図書館 1Fブックリウム
好きな言葉を選ぶとその言葉に関連する図書がプラネタリウムの星座団のように幅15mのウォールスクリーンに浮かび上がるという、デジタル技術を駆使した空間アートです。
「関連した本を瞬時に集めて一覧する」という実際の本棚とは違う出会いが体験できます。星座団には「子どもを育てる」「暮らしを広げる」「世界に飛び出す」「好奇心を抱く」など幅広いテーマがあり、各々のアンテナに引っかかるテーマに出会える仕組みです。
プラネタリウムのような美しさと心地良さを感じながら、未知なる本と出会うことができます。 -
石川県立図書館 1Fこどもエリア
新図書館の目玉商品のひとつが「こどもエリア」です。
申し訳程度に小さく子どもエリアを設けた図書館はありますが、1階の4分の1がこどもエリアで占めます。屋内外合わせて約2000平方mあり、書架を対象年齢別に緩やかにゾーニングし、大小様々な形の家具や遊具などを備え、まるで遊び場のような空間を演出しています。ハンモックに揺られながら読書したり、一人空間で誰にも邪魔されずに寝転んだりできます。中には秘密基地を彷彿とさせる狭隘な空間も設けられ、きっと子どもたちには居心地の良いエリアでしょう。 -
石川県立図書館 1Fこどもエリア
新図書館のプロポーザルコンペは2017年に開催され、応募24チームから建築家 仙田満+環境デザイン研究所のデザインが選ばれました。
因みに仙田氏は、半円形の段状の空間で有名な国際教養大図書館や軽井沢風越学園などを設計されています。 -
石川県立図書館 1Fこどもエリア
仙田氏で特筆すべきは、1986年に環境デザイン研究所を設立し、長きに亘って「こどものあそび空間」について研究され、次世代を育む豊かな環境づくりに取り組まれてきたことです。これが新図書館の「こどもエリア」として具現化され、「こどものあそび空間」のための「遊環構造」の要素が随所に展開されています。
仙田氏が学生時代に培った建築手法が、半世紀を経て現在における到達点に至ったとの思いです。仙田氏の「こどもたちの生活する環境をつくる建築家の責任は重い」という言葉は、建築を志す学生たちにも強く響くものと思われます。
翻って、政府は「異次元の少子化対策」と銘打って「子育て支援」名目でバラマキを勘案していますが、ターゲットが子育て世帯に偏り、的外れとの指摘もあります。事実、現案の施策では結婚や出産未満の人たちへの支援は皆無です。ましてや、財源を勘案すれば、結婚や出産未満にも負担が増え、結婚は経済的に無理と言う現状を更に悪化させます。つまり、結婚を断念する人が増えるということです。更には子育て世帯にしても、子育てが終わった途端に負担だけが残るというジレンマがあります。
従って、「子育て支援」であるならば単なるバラマキではなく、こうした図書館をロールモデルにして子育ての本質に迫ったより実効性の高い対策を講じていただけたらと思います。 -
石川県立図書館 おはなしの森
こどもエリアの外側には「おはなしの森」というスペースもあり、石川県の里山をイメージした造営です。屋内で遊んで読書し、屋外でも気分転換して読書が愉しめる趣向です。
こどもから高齢者、県民、県外から訪れる人すべてにとっての「知の殿堂」となることを意図されている気がします。 -
石川県立図書館 カフェ HUM&Go#
館内にあるカフェ「HUM&Go#」は、石川県内に複数店舗を構える無機質・無国籍な内装で若者に人気のお洒落なお店です。内装は、抽象化された「森」をイメージしており、図書館のコンセプトに合わせた県産材を使用した温かみのあるデザインです。
カフェ設計者の「地元の風景には地元の木材で造った建物が最も美しく映える」という思い入れから、県産材を用いる案が浮上。その際、オーナーは林業の専門家にヒヤリングし、地元石川県の林業の厳しい現状を痛感。コストが嵩んでも石川の森と林業に貢献したいと考え、クラウドファンディングも活用しつつ、県産材による内装を実現したのがこの店舗です。
コーヒーブレイクを含め、2時間弱の滞在でした。
次の目的地「金沢神社」へは北鉄バスを利用しました。5分強歩いた県道10号線沿いにある崎浦・県立図書館口バス停から 12香林坊行あるいは 10 金沢駅行なら広坂・21世紀美術館(しいのき迎賓館向い)に停車します。尚、崎浦・県立図書館口バス停は崎浦交差点から若干南側に位置します。
この続きは松風水月 加賀紀行⑤金沢神社・しいのき迎賓館でお届けいたします。
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