2022/07/29 - 2022/07/29
1317位(同エリア17044件中)
ばねおさん
パリには良く知られた名前の通りがいくつもあるけれど、ムフタール通りもそのひとつであるに違いない。
普段はあまり行くこともない街だが、7月の末に近くまで行く用事があって久しぶりにこの通りを歩いてみた。
この時期は、多くの観光客がいるだろうと予想していたのだが、意外にも人出はまばらだった。営業をしていない様子の店もいくつかあり、以前の賑やかさはまるでなく、通り自体がちょっとしょんぼりした感じだ。
え、ムフタール街ってこんなんじゃなかったよね?と思わず誰かに確めたくなってしまうほどだ。
この近辺、観光客目当ての店も多いので、バカンス休暇とは無縁と思っていたのだが、案外バカンス休業中の店もあったのだろう。
それにしても、ここ数年のパリの街の変貌というのは結構あって、以前の記憶を頼っているとまるで違っていたりもする。
その最大の原因はコロナだと思うけれど、オリンピックや都市政策、さらにはロシアの侵攻問題等々さまざまな要因が絡み合っているようでなかなか単純ではない。
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- 高速・路線バス 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
7月の末、知人の作品展の案内を受けたので出かけてみた。
いつもはひとり歩きが多いのだが、この日はパートナーと連れ立っての外出。
作者ご本人との面識はもちろんであるが、そのご夫人とはパートナーが15年以上前からのお付き合いで、パリで最もお世話になった方々のお一人だ。
共に美術に関わっているイスラエル出身のご夫妻は、なぜか別々の住まいを持ってお互いを行き来する生活スタイルをとっている。 -
開催場所がムフタール通りにほど近いので、しばらく立ち寄っていないこの通りを久しぶりに歩いて行ってみることにした。
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この時期、パリ市民は地方にバカンスに出かけている人が多く、その穴埋めをするかのように多くの観光客が押し寄せている。
市内中心部の観光名所はいずこもラッシュ状態だ。
ムフタール通りにもやはりそれらしき姿もちらほら見受けられる。 -
最後にムフタール通りに来たのはいつだっただろう。
コロナ後は来ていないので、少なくても3年ぐらい前だった気がする。 -
飲食店が多いのがこの通りの特徴だが、閉じている店が目立つ。
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物品の販売店やサービス業は、どこでも店頭にバカンス休業期間の掲示をしているのが常であるのだが、何も断り書きもなく閉じている店もちらほらある。
観光客の多いこの地区の飲食店が同じように休むというのも考えにくいのだが.. -
ムフタール通りから脇へ抜け、特徴のある書店前を通って作品展の会場へ。
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さて、会場に着いてご本人に挨拶をしたところ、東洋人が来てくれるのは珍しいと喜んでくれた。
はじめは冗談を言っているものと解していたが、次第にそうではなく自分たちを忘れているのだということに気がついた。
夫人とは1週間ほど前に引っ越し祝いの名目で転居先にお招きして歓談したばかりなのだが... 夫君とは数年ぶりになる。
それにしても忘れられているとは!?
思い出してもらおうと、いろいろなヒントやら、夫人の名前を出したりしたのだが、どうも最後まで本当には分からなかった様子。
ご高齢ではあるけれど、ボケてしまったとも思えないし...
後日、夫人にこの話をしたら大層驚いて恐縮していた。
その後の夫君の消息は聞いていないが、もしかしたら、こっぴどく凹まされたのではないかと心配している。 -
再会のご挨拶をしたつもりが、思い出してもらえなかったのはいささか残念だったが、誰でも濃淡の記憶というものがあるからやむを得まい。
展示会場を後にして、来た道をもう一度たどることにした。
せっかく来たのだから、ムフタール街で良さげな店を見つけて食事をしようと思ったのだが、やはり開いている店があまりない。 -
「La Grotte de Chypre 」
入ったことはないがキプロス料理?地中海料理らしい。
ただ、店内営業はしていない様子。 -
通る人も少ない。
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行きも帰りも行列を目にした 「 Au P´tit Grec 」。
名前からギリシャ料理の店のように思ってしまうが、ガレットやクレープなどのテイクアウトのみのファストフード店。
カルチェラタンのソルボンヌ近くにも同じ店があって、大人気のようだ -
やはり、ゆっくりと腰掛けた食事をしたいと思い、通りがかかりの店を覗きながら歩いて行くが、どうやらバカンス休業の店もあるようだ。
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こちらも開店しておらず。
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この通りで目印ともなる書店は通常営業中。
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何だか街全体に活気があまり感じられない。
以前はもっと人出も多くゴミゴミした感じだったのだが妙にスカスカした印象だ。 -
誰ですかこんなところに座り込んでいるのは。
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見上げれば壁には玩具で遊ぶ少女の姿。
いずれも Sethの名で知られるストリートアーティストの作品だ。 -
ムフタール通りの脇道にもさまざまな国の料理店があるのだが、あまり食指が動かない。
どうも食事に関しては保守的になってしまったのか、新奇なものにチャレンジしようとする気が起きてこない。 -
それでもカフェは多くが営業している。
カフェ飯でも悪くはないが、何となくピンとくる店がない。 -
桐の木があるコントルスカルプ広場。
広場を囲むようにカフェ、レストランが並んでいて、ここだけはどの店も賑わっていた。
観光客もここに集中しているようで、賑わい過ぎている様子を見て遠慮した。 -
ヘミングウェイの『移動祝祭日』には、冒頭にこの広場と近辺の店々の様子が描かれているが、あまり好意的には書かれていない。
というか、はっきり言ってクソミソである。
だからと言うわけではないのだが、結局、これといった店に出会えなかったのでムフタール街での食事は諦めて、この先のエコール通りまでの道筋界隈で探すことにした。カルチェ・ラタンの中でも美味しくて手頃な店が多い地区だ。 -
途中にあるハチミツ専門店。
14区のダゲール街にも量り売りをしてくれるハチミツ店があるのだが、こちらは品揃えが随分多い。ぜひ、また寄ってみよう。 -
ムフタール通りから続くデカルト通り。
39番地はフランスを代表する詩人のひとりヴェルレーヌが亡くなった建物で、壁には銘板が掲げられている。 -
1階はレストラン「メゾン・ド・ヴェルレーヌ」。
階上のホテルで亡くなったヴェルレーヌの名前を利用しているだけで、ヴェルレーヌと縁がある訳ではない。 -
ヴェルレーヌの下にはヘミングウェイのプレートがある。
1921年から1925年にかけて、ここで暮らしたと記されている。
『移動祝祭日』を読むと、最上階の部屋を仕事場に用いていたもので、当時の住まいはカルデイナル・ルモアーヌ通りに別にあったと書かれている。
それにしてもヘミングウェイさん、パリにいくつプレートを掲げているのでしょうか。 -
店頭にはヴェルレーヌやヘミングウェイの写真などがガラスケースに収めて飾られているのだが、資料的に価値のあるものはない、と言ってよい。
あくまでも客寄せ用の設なのだ。 -
そしてヴェルレーヌの隣の建物(デカルト通り37番地)には辻邦生の名が刻まれている。「日本の作家辻邦夫が1980年から1999年までここに滞在した」とある。
もっとも、辻邦夫ってだあーれ?と今では言われそうな気もするが.. -
振り返るとこんな感じ。
左の建物が辻邦夫の37番地、右側がヴェルレーヌとヘミングウエイ。
それにしても時代も異なり共通点もない3人がこうして同じ建物、あるいは隣同士に居たというのも面白い。 -
デカルト通りを上り、クロヴィス通りとの交叉路に出た。
来た道を振り返って見ると、この近辺の目印になっている壁画が目に入る。
ベルギーの現代画家ピエール・アレンスキーの作品「青い木」。目立つ場所でもあるが、このブルーはとても視認性が良い。
その横には写真では分かりづらいが、イヴ・ボヌフォワ(Yves Bonnefoy)の詩句が書かれている。
どちらも日本の文化に触発された創作で知られている。 -
その交差路の角の建物に日本食らしき店があるのが目に入った。
店頭には板書きでメニューが記されている。
以前には無かったと思うのだが、どうやら日本人経営の食事処のようだ。
念のため店内を覗いてみて、中華系でも韓国系でもない日本食店であることを確かめた。
そもそも日本食にするつもりは毛頭無かったのだが、目に飛び込んできた文字に魔力があった。「冷やし中華」&「ナスの煮浸し」。
この品書きには圧倒的な磁力があって、気がついたら席に座っていたという次第。 -
店内のショーケースにはケーキ類がきれいに並べられてあって、どら焼きもあった。ケーキの作りを見るとフランス風ではなく、日本の洋菓子店に置かれているものと雰囲気が似ている。
店内には5、6名の先客がいて、日本人と思しき女性が一人で対応していた。 -
ひとりだけで切り盛りしている様子で、なかなか声もかけられないほどの忙しさだ。
自分たちの注文を受けてどこかへ姿を消したが、どうやら地下が調理室になっているようで、その間に食事を終えた客が支払いのためにレジ待ちや、新たな入店客が店のスタッフの姿が見えないのを訝しんでいる様子で、見ているこちらがハラハラしてしまう。 -
登場したナスの煮浸しソーメン。
なかなか旨い。ただボリュームが少ない。
値段は13.5ユーロ。冷やし中華も同じで、決して安くはない。
特に円安になった昨今では、円換算では1900円以上となる。
もともとパリの外食は高いが、それにしても極端な円安は日本人の懐を痛撃している。
かっては政治は二流だが経済は一流と豪語?していたニッポンだが、今やどちらも二流になったか。いや政治は二流以下か? -
冷やし中華は、自分の好みとはちょっと違っていた。
好きなのは、ハムときゅうりと卵焼きを刻んだものに紅生姜をちょいと載せて、しょうゆベースのタレという、町の中華屋さんでお目にかかる至ってフツーのスタイルだ。
こちらは盛り付けもオリジナリティで、あまり歓迎しないゴマダレが添えられている。
でも、食べたらおいしくて味にはとても満足した。
ただ、やはり量が少ないのが物足りない。
デザートと思ったが、注文に追われている姿を見てやめにした。
レジで会計をしているところへ、別のスタッフが外から入ってきた。
そうだよね、いくら何でも一人で切り盛りするには無理がありすぎる。 -
「KAWAKAMI」という名の店を出てすぐ近くのサンテティエンヌ・デュ・モン教会横の89番のバス停を利用して帰宅することにした。
この教会はパリの守護聖人である聖ジュヌヴィエーヴの聖遺物が祀られていることで有名だが、パスカルやラシーヌもここに眠っている。
詩人としては第一級だが、支離滅裂な生き方で最後は娼婦に看取られたというヴェルレーヌの葬儀を執り行ったのもこちらの教会だ。 -
このバス停は3年前の冬の時期に度々利用したことがあって、バスを待つ間はいつもこの角度の光景を眺めていた。
教会の向かいにあるのはフランスでトップの名門リセ、アンリ4世校でマクロン大統領もこちらの出身。
校舎の一部にはフランス革命で破壊されたサン・ジュヌヴィエーヴ修道院の建物が使われていて、クロヴィス塔と呼ばれる鐘楼が特徴だ。
その先にはパンテオンのドームが頭を覗かせている。
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この旅行記へのコメント (2)
-
- yunさん 2022/10/01 22:40:54
- パリさえも変わる
- 5年や10年程度では変貌しない街…、そんな概念をパリには抱いています。
が、ここ数年の重なる困難にはパリも姿を変えていくのでしょうか。
先日『移動祝祭日』を改めて読み、ヘミングウェイさん結構言いたい放題で、ひねくれ坊主かもと思いました。以前にはそんな感想持たなかったので、ひねくれているのは今の私かも。
KAWAKAMIちょっと寄ってみたい、ケーキ確かに日本風ですね。
そーめんや冷やし中華にのっているスプラウトについて。
薄緑色の細い茎に黒い頭という美しい姿に魅せられパック購入、サラダにしてパクッと一口。凄~く辛くて飛び上がった思い出あり、何の芽だかいまだ知らず。
最近、日本のスーパーでもたまにみかけます。
面識のある相手を忘れてしまう…、そんな事が無いようにしなくっちゃ。
東京の片隅で座り込んでいる自分に警報発令。そろそろ足も痺れました。
ばねおさん、来年は新たなる活動拠点が加わるようですね。
yun
- ばねおさん からの返信 2022/10/03 03:14:52
- RE: パリさえも変わる
- そうですね、広角の眼と長いスパンで考えたらパリは大きく変貌しない街と言えるでしょうね。
特に歴史的景観を保全する地区の外観は変えることができませんから。
ただ、現在パリ市が進めている大パリ計画はオリンピックを念頭に置いた整備事業もあって、ご承知のように市内はどこへ行っても工事だらけの状態が続いています。とりわけ道路と交通区分にはかなり手が加えられています。
そして何よりもコロナ以降の人々の意識と生活の変化がありますね。
以前と変わらないと思っていても、話を聞くと意外なほど生活のありようが違っていたりして驚かされることがあります。
地球環境や資源保護というテーマが日常的な話題として登場し、エネルギー問題を云々するのですから、自ずと変わらざるを得ないとも言えます。もっともこうした変化が根本的なのか一時的となるのかはまだ分かりませんが。
> 先日『移動祝祭日』を改めて読み、ヘミングウェイさん結構言いたい放題で、ひねくれ坊主かもと思いました。以前にはそんな感想持たなかったので、ひねくれているのは今の私かも。
いやいや、ヘミングウェイは好悪の感情が激しい人で、彼の身辺人物評は本質を押さえていることもありますが、かなり割り引いてみなければならない場合も多いと思いますよ。
> そーめんや冷やし中華にのっているスプラウトについて。
> 薄緑色の細い茎に黒い頭という美しい姿に魅せられパック購入、サラダにしてパクッと一口。凄?く辛くて飛び上がった思い出あり、何の芽だかいまだ知らず。
スプラウトはスプラウトだと単純に思っていましたが、何かの芽でしたか!?
> 面識のある相手を忘れてしまう…、そんな事が無いようにしなくっちゃ。
本当は、こうしたことは黙っておくことがスマートだとも思います。
ただ、私は母親の認知症で随分と困った経験があって、もしそうであれば早い気付きが大事だと考えたのですが、杞憂に終わればよいと思っています。
> 東京の片隅で座り込んでいる自分に警報発令。そろそろ足も痺れました。
成し遂げた旅の内容を考えれば、費やした時間の倍以上の休養は必要でしょうと勝手に思いますが、同時にユンボ稼働再開を期待しています。
ばねお
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