1976/08/01 - 1976/08/07
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おくさん
自転車の旅 飛騨路は今日も雨だった(1)
このタイトル、少々長いですねぇ。当時はやっていた「長崎は今日も雨だった」に引っかけたものです。それに、このタイトルは今回の自転車旅にぴったりなのですよ。サイクリングした7日間の内、4日間を雨に降られました。
今回からグループの通し番号はカッコでくくった数字にしてみました。今まで作った150編の旅行記では初の試みです(おおげさ)。他の人のブログはこうやってるのが多かったので真似です。
タイトルから分かるとおり、今年の夏のサイクリングは飛騨高山を往復します。高山へは北アルプスの中にある安房峠、平湯峠を始め、碓氷峠、和田峠、地蔵峠、青木峠(マイナーなので知らないと思います)、と飽きるほど峠だらけの中を越えて行くので頑張らないといけませぬ。しかも1976年の話なので安房峠と平湯峠にトンネルはまだ出来てはおりませぬ。私も若かったんですねー、今なら考えも付かないルートを走りました。
時は1976年の8月1日、いざ飛騨高山へ向かって出発。と、いつもなら一人でつつましく出発するところですが、今回は軽井沢で中学生会の合宿に参加する中学生3人と途中の軽井沢までは一緒に走るのです。何でこうなったんだったか記憶がありません。
集合場所の教会には中学生の保護者達まで見送りに来てくれて賑やかな出発となりました。親としたら長距離サイクリングに加え(半日で到着しますが子供にとっては長距離です)、天下の碓氷峠を越えなくてはならないので心配でしょうがないと顔に書いてあります。頼りなく見えても私はダントツの最年長なので保護者の皆さんから「宜しくお願いしますねぇ」と真剣な顔をして頼まれます。
8時45分、心配する親に手を振って貰って出発。団体では集合したりなんだりがあるので一人旅のように朝露払って出発とはいきません。まぁたまにはこういうのもいいでしょう。
中学生ともなると自転車をこぐのは大人並なので、足手まといになるってことはありません。ただ、I君の自転車が調子悪いらしくみんなから遅れ気味。釜飯で有名な横川のドライブインで見てみたら、タイヤが車体に接触していたらしく、それで余分な力を必要としたらしい事が判明。難所の碓氷峠に入る前に気が付いて良かった。子供だから言い出せなかったようです。簡単な調整でその後は調子良く走れるようになる。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 3万円 - 5万円
-
碓氷峠の旧道(写真)を随時休憩を入れながら登り切り中軽井沢の山荘には3時40分に到着。予想を上回って6時間も掛かった。でも良かった、一応引率者なので事故も怪我もなく無事に軽井沢まで届けられた。中学生の合宿指導は仲良しのマイケル神父さんなので、私みたいに余計なのが混じってても気にしない。山荘の宿泊費はご飯まで食べさせてくれて千円でいいそうだ。
8月2日、出発から2日目。
5時半に起床。ミサや朝飯を済ませて、山荘はゆっくり目の8時20分に出発。昨日は中学生を気遣いながらの走行だったが、これからはいつもの一人旅なので気ままだ。 -
飛騨へ行くには、まず松本に行かなくてはならない。軽井沢から松本への道は幾通りかあって、どこを通ったとしても峠を越えて行かなくてはならない。出発前に検討した結果、上田経由で青木村を通り地蔵峠・青木峠というのを越えて行くことに決めてある。何でこのコースにしたかという決めては、まだ走ったことのない道ってことの一点。特に山道は先が分からない初めての道の方が何かと有りがたい。
前橋側から軽井沢に来るには碓氷峠の難所を越えてくる。軽井沢が峠を登り切った一番高いところにあるので、その向こう側の上田へ行くには急な下りが控えている。下り坂は大好きだけど、ずっと直線の急坂ってのもスピードが出過ぎて怖いものがある。もったいないけどブレーキを掛けながら下らなくてはならない。放っておくと60キロ70キロのスピードが出てしまうから、路面のアクシデントでもあると大けがに繋がってしまう。スキーの直滑降みたいのは自転車にしても面白くない降り方なのだ。やっぱり適当にカーブがあった方が楽しめます。 -
上田市を通過すると田舎道になる。やっぱり車の多い国道よりは田舎道の方がのんびりできていいなぁ。しばらく走ると勾配がきつくなりだし、地蔵峠に差し掛かる所では雨が強く降り出してくる。今回は京都で買ったポンチョをちゃんと持ってきてあるので、急な雨でも慌てないで済む。それでも止んでくれないかなと期待して暫く屋根がるバス停で雨宿りをしてみるが、どうも止む気配はないようだ。すぐ前の店でジュースを2本飲んで、店のおばさんに大きなビニールを貰って荷物の上に掛けることにする。親切なおばさんであれこれ気を使ってくれ、新聞紙を持ってるといいよと一束くれる。濡れた靴の中に入れて乾かするためかな?
その後もずっと雨の中を走り続け、峠にあったドライブインでざるそばの昼飯にする。贅沢を言わない私でも不味い。信州てのは蕎麦の本場の筈だけど、こういう店じゃぁ本場もくそもないんだろう。ひょっとして昨日の売れ残りか? -
今晩、勝手に泊まる予定にしてある松本教会に3時半に到着。司祭館を訪ねて今晩の宿をお願いする。昨年のように不特定多数教会宛の紹介状は用意してなかったが、群馬県の信者だと言うだけで簡単に信じてくれる。外国人の神父さんだったが快く了解してくれたのでまずは一安心。走っている間中降り続いていた雨が、暫くしたらやっと止んだ。どうせ止むのならもっと早く止んでくれれば助かったのにな。
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松本教会は松本城のすぐそばなので、歩いて城を見物に行く。帰りに教会へのお礼用にと箱入りのメロンを購入。こいつは値段の割に高く見えるのでいいかも。教会のまかないをしてくれてる婦人の方に託す。案の定「マァーッ」と、とても喜んでくれている。ふっふっふ、ホントはそんなに高くないんだよ。
夕飯は街の中でカツ丼に生野菜、リボンシトロンとバランスのいい食事。今日は雨降りのため寒い一日だったのでビールを飲まなかった。
夜になったら神父さんが温泉に誘ってくれる。どこにあるのか分からないが、美ヶ原高原ホテルというところまで車で連れてってくれる。どうやらホテルのお風呂に入るようだ。外国人の神父さんだけど温泉が好きらしく、時々くるそうだ。感謝のつもりで入浴代は私が持つ。でっかいホテルの風呂で気持ちがいい。誰かが置いてったカミソリがあったのでヒゲをそってみる。
帰ってきてから明日の予定をざっと立ててシュラフにもぐり眠りにつく。明日は晴れるといいな。
8月3日、サイクリングも3日目。
5時に起きる。神父さんには朝早く出発するから挨拶しないで行く旨伝えといたので、予定より早いけど5時半に教会を後にする。すぐに雨がポツポツと降り出してくる。何なんだろなーこの雨は。昨日は到着したら止んで、今日は出発したら降ってきやがった。雲の上から誰かが見張ってるんじゃないだろな。
通りに小さな駅があったので、庇(ひさし)の下に自転車を止めて、荷物が濡れないようにとビニールでくるむ作業をする。昨日のおばさんに貰った大きなビニール袋が大活躍だ。えぇモン貰った、おばさんありがとー。早朝の内はポツポツで、その内ザーザー雨になる。くそ、また今日も雨の中か。 -
松本市街を抜けると、まわりは次第に田舎道になってきて、信州~って雰囲気になる。こういう風景の中をサイクリングするのがいいんだよなー。でも相変わらずポンチョ被ってるので今ひとつ景色を楽しめない。この158号は野麦街道とも言うそうだ。女工哀史で有名になった野麦街道か、あれは可哀想だったな。私が住む前橋市も養蚕が盛んだったが、女工哀史のような話は聞いたことがなかったけど、似たような話はあったのかもな~。その代わり、同じ群馬県の富岡蚕糸試験場がしばらく前に世界遺産に登録された。そこで働く女工さんは良いところの子女で一種のエリートだったそうだ。女工さんも所変われば何とかだったんだな。
雨降りも昨日に続いて2日目なのでポンチョの扱いも大分慣れてきた。京都で買った山岳用のポンチョだが、自転車にも持ってこいだったのが分かった。知ってる人は知ってるだろうが、山用のポンチョは一枚のビニールの真ん中に首を出すフードがあって、前後を垂らして着込む物です。何つってもでかいので、前に垂らした部分でフロントバッグもすっぽり包めてしまうので、荷物が濡れないから安心するものがある。後ろの垂れた部分はというと、ビニールの先端にひもが通っているので、そいつをギュッと締めて腰に縛ると自転車で走ってもバタバタとなびかないからスピードを出しても安心なのです。まるで自転車で使うために設計されたような機能的で便利なデザイン。上下で着込むカッパなんかより遙かに適しています。て言うか、雨合羽のズボンなんか履いたら股上げが大変でペダルなんか本気で漕げないよ。
新島々の駅にやってきた。朝飯に駅構内の天ぷらそばと自販機の暖かいココアを飲む。やっぱり雨が続くと山の中なので幾らか肌寒いな、ここであったかい物が飲めて人心地がつきました。
駅を過ぎるともう完璧な山道になり、トンネルも頻繁に登場するお陰で鼻の中は真っ黒け。真っ黒になっても自転車にとってはトンネルはあった方が断然走りやすい。疲れ方が全然違うのです。トンネルもっとどんどんあってください、排ガス吸い込んでも構いませーん。 -
上高地への分岐が見えてきた。入り口手前には大きな駐車場があって、一般車両はここに駐車して上高地にはバスで往復するらしい。上高地へは帰りに寄る予定なので、そっちは横目で見て本線に沿って高山を目指す。その分岐をすぎると、坂は急にきつくなる。知る人ぞ知る難所で名高い安房峠の玄関口だ。さすがに凄い急坂に加え、路面も相当痛んでいるので、ちょっとペダルを漕いで上るのは無理な所も出てくる。せめて車がいなくちゃヨタヨタしながら上れるのだが、松本方面から飛騨高山へ通じる唯一の道路なので結構な交通量がある。おまけにこの雨ときてるから、坂、車、雨の三重苦だ。唯一の救いはサイクリストが多いってこと。こんな山奥なのに自転車野郎にしょっちゅう行き交う。いや、むしろこういう所だからこそ自転車が集まると言った方が当たってるか。自転車やってる連中ってのはおかしな癖があって、険しい峠道に好んで集まりたがるようだ。少々マゾっ気があるのかも?
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(地図は安房峠付近の拡大図です)カーブで前を走っていたサイクリストが崖の下を見ていて声を掛けてきた。え、ロープを持っていないかって?何だろなと聞いてみると崖下に落ちた仲間を引き上げたいのだと言う!えーっびっくりホントかいの。下を覗くと確かに人と自転車がある。幸いなことに傾斜した草の上に落ちたお陰で怪我はなさそうだ、落ちた人は為すすべもなく崖下からボーッと上を仰いでいる。4m程の崖だし、落ちた所も下り坂になっていたからスキージャンプの着地点のように割合ショックが少なかったのかも知れない。
東京から来たと言う5人組で、カーブの所でビギナーのメンバーに「アウト回れアウト」とやっていたら外側のラインを取りすぎて崖下に落っこちてしまったと言うことだ。自転車乗りなら知っているテクで、自転車で山を登る場合、カーブでは外側を回ると比較的楽に上れるのですよ。試しに自転車で坂のカーブ内側と外側を回ってみればすぐに理解できること請け合いです。もう行って帰るほどの違いを体感できることでしょう。でも幾ら外側を走れば楽ちんだからと言って、崖から落ちるほど外側を回っちゃあいけねーよ。それにしても落ちた本人はその時どんな気持ちだったんだろう?「あ、俺死ぬのかな?」なんて一瞬思ったかも知れない。何はともあれ自転車仲間なので引き上げるのを手伝ってから、また雨の中を進む。 -
吐く息が白くなっているのに気づく。真夏なのに随分気温が下がってるんだなー。でもポンチョを被って奮闘している体に寒さなどは感じられない。ポンチョの中は汗でぐっしょり濡れているのだ。フーハーフーハー息を切らしながら上っていく。あんまり息苦しいので、頭は濡れてもいいやとフードを脱いでみると幾らかましになる。体だって、雨に直接当たらないだけで濡れネズミなんだからポンチョは着ても着てなくても似たようなものだろう。
峠の頂上付近になると腹が減ってペダルに力が入らず、まったく動きたくなくなってくる。腹ぺこってのは普段でも良くあることだが、腹ぺこの状態で自転車で山を登ると言うのは今まで無かったのでこれは大変なことなんだと気付く。山屋さんはシャリバテと言うそうで、深い山の中でシャリバテになるのは命に関わるらしい。
自転車乗りじゃない人は意外と思うか知れないが、足でペダルを漕ぐには腹筋も腕の力も必要なので腹ぺこだと腹に力が入らないんですよ。今の状態はホントに動けなくなってしまいそうだ。坂を下ってくるサイクリストに、その内ドライブインがあるかと聞くと、1Km位上ったところに土産屋があるとのこと。最後の力を振り絞って坂を上る。
ぼちぼち峠も頂上が近づいてきたらしく、傾斜は殆どなくなってきたので体力的には大分楽になってきた。お陰で何とか店までたどり着くことが出来た。人間、腹が減ると動けなくなるのがよ~く分かった。これからはサイクリングで山の中に入るときは必ず何か食べ物を携行しよう。
茶店みたいな店内に入ると、そこの人たちはセーターに綿入れのジャンパーを着込んでストーブにあたっている。こっちは相変わらずの半袖・半ズボンでTシャツは汗でビショビショ。何という落差なんだろう。暫くすると体温が下がって来て震えるほど寒くなってきた。腕にはゾックリ鳥肌が立ちだした。やっぱりこの人たちの服装の方が正しかったのだ。暖かい山菜そばを食べ、もう一杯月見そばも食べる。腹が減ったのもあるが、暖かい物を腹に入れたいのもあるのだ。デザート代わりにゆで卵と桃も食べさせて貰ったらやっと人心地が付いた。
崖に落っこちた5人組もそばを食べにやってきた。現在、外は雨と風でちょっとした嵐状態になっている。何だか凄い所に来ちゃったなー。この茶店は地獄に仏のようだ。ここに茶店があって助かった。
風も緩んできたので茶店を出発しようとしたら、盛岡から来たというサイクリストが声を掛けてくる。どういう事情か、車の伴走までいるそうだ。何かの大会じゃあるまいし、伴走付きとは珍しいというか、随分豪勢なツーリングがあったもんだ。
雨の中、今度は下りだ。出発する前から下りが寒すぎるのは分かり切っているので、長袖のぺらぺらジャンパーを着た中に新聞紙を腹に挟んで下ることにする。昨日、お店のおばさんから貰った新聞紙がいきなり役に立った。それでも寒い寒い。体温を上げるために腹に力を入れて息張りながら下っていく。ハフーンッ、フゴーッ。
下り切ったところは平湯温泉だった。通過しちゃおうとしたら平湯峠の巨大な山が目の前にドーンッと通せんぼをしているかのように立ちはだかっている。この雨の中をまた峠越えしなくちゃならないのかよ~。一難去ってまた一難とはこのことだ。恐れをなしてこの平湯温泉で泊まることにする。人間、引き際も大切だ。なんちゃって、ただビビッただけ。
びしょ濡れの体で野宿は自分が気の毒すぎる。安い宿を探そうと温泉内を探し歩くがどこも満員。峠からの坂を下ってくるときに目に付いた民宿の看板を思い出し、道を少し戻って訪ねてみるとOKとのこと。ここんちは温泉街からはちょっと離れているから空き部屋があったのだろう。何はともあれ良かった良かった。
宿で仕入れた情報によると、平湯峠は安房峠よりきついそうだ。その代わり、登りが4Kmでいいとのこと。どんなに急な坂でも、4Kmなら押して上ったとしても2時間もあれば頂上に着きそうだ。これはありがたやだ。それに平湯峠を登りきれば、多分その先はずっと下りが続いていそうな気がするので、明日は今日よりずっと気楽なツーリングになりそう。同じナンでもなるべく気楽な方に考えた方がお得だ。
※現在では平湯峠には平湯トンネルがあり、安房峠にも安房トンネルが完成して峠道を通ることはなくなりました。だから、松本から飛騨高山へはずっと行きやすくなってます。
風呂に入ってホッとしたところで本日の日記を書いておく。
今日は峠が凄いと思ったら、それもその筈、158号は北アルプスを横切ってるような道路だった。山ばっかりの峠道だからサイクリストなんか少ないだろうと思っていたら、単独、複数のサイクリストに断続的に出会う。カッパを着込んで上る奴、下る奴、みんな一生懸命にペダルを漕いでいる。こういった峠道で出会うと一段と嬉しく勇気づけられる。狭い道路なので顔を見合わせて声を掛け合うのだが、一人の奴に「がんばれよーっ」と声を掛けたら「おーっ、頑張るぞーっ」と返してきたのがいた。私は下り、奴は登り、返ってきた言葉が痛烈に分かる。一人でザーザー雨の中、果てしなく続く気がする山の中の急坂に長時間アタックしていると心細くなったり情けなくなったりするものだから、同じ苦しさを知っている者同士、心の底から声を掛け合うのであるよ。あの「頑張るぞー」は私への返事と同時に、自分自身に向けても叫んでるんだよね。自動車の中から声援を送ってくれる人もいるが、雨もあたらず苦労もしない車中から声援を送るのとは訳が違うのである。ちなみに私は自動車からの声援には大体無視を決め込んでいる。 -
民宿の部屋の窓から外を眺めると、夕闇迫る山々に深い霧が立ちこめてきた。あー、宿に泊まれて良かったぁ。明日は飛騨高山だ。
自転車の旅 飛騨路は今日も雨だった(2)へ続く
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