2021/09/17 - 2021/09/17
17位(同エリア201件中)
かっちんさん
北海道オホーツクの小さな町「上湧別(かみゆうべつ)」。現在は湧別町として統合。
かつて屯田兵が開拓し、リンゴで栄え、レンガ製造が盛んだったところです。
町の中にはレンガ建造物が多く、サイロや住居、倉庫といった形で数多く残されています。
ボランティアグループ「かみゆうべつ20世紀メモリープロジェクト」では、町中を歩きまわり、2000年12月に「レンガマップ」が完成しました。
パンフレットはすでに廃版になっていますが、「デジタル・レンガマップ」をネットで閲覧することができます。
http://www.phoenix-c.or.jp/~santaku/web-renga/htmls/panhu.html
レンガの積み方は、イギリス積み・フランス積みが一般的ですが、ここではオランダ積みと空間積みに出会います。
北海道のレンガ産業は、明治5年に道南の茂辺地煉瓦化石工場がはじまりで、耐火構造のレンガ建築が開拓使により推奨されました。
上湧別のレンガ製造は、町内の重粘土地帯に着目し、大正7年「中湧別煉瓦工場」が創業します。
その後、経営者が幾度か変わり、現在は「興農セラミックス」が素焼き土管を中心に製造しています。
今日は「レンガ建造物63個所」のうち、朝散歩で中湧別にある6ヶ所を巡ります。
次に昭和62年(1987)まで走っていた国鉄湧網線(ゆうもうせん)廃線跡に沿って町営バスでサロマ湖畔の「計呂地(けろち)」へ向かいます。
その先にある佐呂間町とはバス路線でつながっていないため、タクシーでサンゴ草群落のある「キムアネップ岬」(サロマ湖東側)まで一気に移動します。
なお、旅行記は下記資料を参考にしました。
・かみゆうべつレンガマップ
・興農セラミックスのHP
・煉瓦研究ネットワーク関東「煉瓦ミニ知識」
・都窯業「レンガ積パターン」
・日本マンホール蓋学会「紋別群湧別町のマンホール」
・湧別町「産業レンジャーは、こんなヤツラだ!!」「湧別町の町花・町木」「遊園地「Family 愛 Land YOU」」
・神社と狛犬見て歩き「中湧別神社」
・道新りんごステーション「北海道を農業王国にしたレンガの積み方とは?」:空間積み
・日本ガイシ「シャトルキルン」
・開基百年上湧別町史「開基百年記念」「湧別屯田兵」
・丘の歳時記「キガラシ」
・井伊影男の植物観察「ズミとエゾノコリンゴの見分け方」
・ウィキペディア「芭露駅」「北海道振興」:緑館
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 交通
- 4.5
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- 高速・路線バス 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
PR
-
宿泊した「伊勢屋旅館」(中湧別)
「レンガマップ」を見ながら「レンガ建物巡り」に出発します。
計呂地行きバスまでの間、1時間ほどの朝散歩。 -
立派なレンガ倉庫(中湧別南町)
佐々木歯科診療所棟続きの倉庫。
旧上湧別町最古のレンガ建造物です。 -
大きなレンガ倉庫(中湧別南町)
JA中湧別倉庫です。 -
レンガの積み方は「オランダ積み」(JA中湧別倉庫)
イギリス積みとオランダ積みは、煉瓦の長い面(長手)と短い面(小口)を一段ずつ積み重ねて並べます。
両者の積み方の違いは角の処理に違いが現れます。
「オランダ積み」は端の長さを合わせるために「七五分(しちごぶ)」の煉瓦を使います。
写真では、一段おきに積まれている長手の右端に小口よりも長く、長手よりも短い煉瓦が使われ、これが「七五分」。
また、イギリス積みは「ようかん」と呼ばれる正方形状に見える煉瓦を小口と小口の間に入れて端の長さを合わせます。
なお、「オランダ積み」には長手面の位置が小口を挟んで互い違いになる積み方にする解釈もあります。 -
デザインマンホール(中湧別南町)
湧別町のイメージキャラクター「チューピット」をデザインした旧町名「かみゆうべつ」のマンホール。 -
デザインマンホール(中湧別南町)
大きなチューリップと後方に「かみゆうべつチューリップ公園」をデザインした旧町名「かみゆうべつ」のマンホール。 -
「興農セラミックス」本社(中湧別南町)
上湧別では大正7年に煉瓦製造がはじまり、現在は「興農セラミックス」が引き継ぎ、素焼き土管、継手管、レンガブロック等を製造しています。
「興農セラミックス」は昭和17年(1942)「北見興農土管製作所」として設立し、2022年に80周年を迎えます。 -
「湧別戦隊・産業レンジャー」出動・・・(中湧別小学校前バス待合所)
こどもが喜ぶ「湧別戦隊」が描かれ、湧別町「産業まつり」で大活躍します。
左から、熱い闘志は誰にも負けずチームの切り込み隊長「ウシフラック」。
続いてデントコーンと言われ少し落ち込んでいる「コーンイエロー」。
煮エビだろうと突っ込まれているが産業レンジャーのムードメーカー「エビレッド」、酒を飲むとすぐ寝てしまうが、生まれ持った回帰本能により必ず家に帰る最年長の「シャケブルー」。
最年少ながら広いネットワークで情報収集に余念がない「ホタテホワイト」。マイペースで正義感が強く、挟まれると痛い。
どれも湧別町の特産品ですね! -
中湧別小学校の校章(中湧別南町)
「みんなで頑張ろう~」イメージの校章。
由来を想像してみると
旧上湧別町の町木「オンコ(イチイ)」の葉に、町が見渡せる「五鹿山(ごかざん)」を表す「鹿の角」がベース。
また、旧中湧別小学校は中湧別神社の参道脇にあったことがあり、参道両脇には「オンコ」の木が並んでいます。
こどもたちは、中湧別東町・中湧別北町・中湧別南町から通学してくるので、3つの「中」に囲まれた小学校という意味が込められていると思います。 -
きのこのような「オンコ」(中湧別小学校の前庭)
もう赤い実がチラホラ。 -
現代アートのような「オンコ」(中湧別小学校の前庭)
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開校90周年記念碑の「チューピット」(中湧別小学校の前庭)
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赤い三角屋根の「防火水槽」(中湧別小学校の前庭)
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美しい彩りのレンガ倉庫(中湧別南町)
昭和34~35年の建築で、我妻商店の倉庫。
昔は酒蔵で、現在は物置。 -
イチオシ
レンガ倉庫の裏手(我妻商店倉庫)
レンガの積み方は「空間積み」。
レンガの広い面「平(ひら)」を寝かせて積むのではなく、地面に対して垂直に立てて積みます。
さらに立てたレンガを90度回転させながら交互に積み上げています。
レンガの内部に空間ができて外部の冷たい空気をシャットアウトし、倉庫内の農作物を凍れから防ぐ役割を果たします。 -
横にある鉄扉の入口(我妻商店倉庫)
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レンガの笑顔(民家の玄関)
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窓のあるレンガ倉庫(中湧別南町)
こちらも昭和34~35年の建築で、我妻商店の倉庫。
空間積みで、住宅の一部になっているようです。 -
円錐型屋根の消防水利(中湧別南町)
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まもなく「興農セラミックス工場」(中湧別東町)
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素焼き土管が並ぶ工場(興農セラミックス)
素焼き土管は暗渠排水に使われます。
小さな多くの孔によって形成されているので、常時水分や土壌の微生物等が多く含まれており、異物が付着しにくく、機械の諸圧にも強く、長い間安定的に通水ができる特徴があります。 -
歴史を感じる「レンガ煙突」(興農セラミックス)
興農セラミックス第一工場の煙突。
昭和16年頃の建設で、現在も1号シャトルキルン煙突として使用中。
シャトルキルンとは、製品を乗せた台車を炉内に収納したまま焼成するバッチ式の焼成炉のこと。 -
イチオシ
鉄枠にて補強した煙突(興農セラミックス)
倒壊防止のためです。 -
オランダ積みの煙突(興農セラミックス)
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綺麗に積まれている「素焼き土管」(興農セラミックス)
黒い部分の「継ぎ手管(エコソケット)」が、「素焼き土管」接続時のズレを防止します。 -
穴のアート(興農セラミックス)
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2本立つ煙突(興農セラミックス)
昭和16年頃の建設です。
後に工場窯用煙突として使用される計画でしたが、昭和24年の米国の「ドッジ・ライン政策」の経済打撃により使用されること無く現在に至っています。 -
イチオシ
綺麗に残る煙突(2本のうちの1本)
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鮮やかな色の「ノアザミ」(中湧別東町)
白い綿毛も可愛いですね。 -
「ヒマワリ」(中湧別東町)
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上湧別百年記念公園の「百年記念塔」(中湧別中町)
上湧別町は平成8年(1996)開基百年を迎え、「百年記念塔」が建設されました。
記念塔の製作に当たった関根伸夫(環境美術研究所)は、作品のタイトルを「かみゆうべつ わられの心の調べ」とし、
「この記念塔は日本一の巨大な風のハープで、屯田兵がこの地に鍬をおろし安住の地と定めてから100年、過酷な自然と闘いながら、それでも美しいこの大地に理想郷を実現しようとしてきました。
そして大きな節目にとなる開基百年記念塔は「もの」から「心」の時代に告げる21世紀を目指すものでなければなりません。
そんな熱い心を受けて、関根氏の提案する記念塔は、巨大なハープ形、熱情を伝える赤いハート形、そして大地の底から放たれた矢がハート形を突き抜ける姿を形象化しました。
風がハープの弦を鳴らし、環境音楽となってこの場に近づいた人々の心の調べと同調する・・・
なお上部の形態は矢の先端で、未来を掴む手、風の音のイメージである」と述べています。 -
イチオシ
中湧別駅記念館(記念公園)
平成元年(1989)に廃止となった名寄本線中湧別駅の木造跨線橋とレール、ホームが保存・展示されています。 -
赤い実をたくさんつける「エゾノコリンゴの木」(記念公園)
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小さな「エゾノコリンゴの実」(記念公園)
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民家の庭に飾られている「黒曜石」(中湧別南町)
中湧別を流れる湧別川上流で黒曜石が採れます。
原石の外観は白っぽいのですね。 -
民家の「レンガ煙突」(中湧別南町)
レンガマップには掲載されていない民家です。 -
屯田兵陸軍経営部と仮学校の跡(中湧別南町)
屯田兵の上湧別入植は明治30~31年(1897~1898)のこと。 -
「中湧別TOM」バス停
レンガ建物巡りを終え、「中湧別文化センターTOM」前に来ています。 -
計呂地行きの町営バス
9:05発の計呂地行きに乗ります。 -
玉ねぎ畑(湧別町の車窓)
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草を食む乳牛(湧別町の車窓)
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赤い帽子を被ったサイロ(湧別町の車窓)
二つのサイロを上部で繋いだツイン型サイロもあります。 -
コンクリート製サイロ(湧別町の車窓)
上部に詰め込み口があり作業者がいます。
飼料(牧草)を下から送風機でブロワーシュートを通して詰め込み口まで上げて貯蔵するようです。 -
ブロック積みサイロ(湧別町の車窓)
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イチオシ
サイロ兄弟(湧別町の車窓)
どちらがカッコいいかな?
いろんな種類のサイロを見つけることができました。 -
広大な牧草地(湧別町の車窓)
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「芭露駅跡」(湧別町の車窓)
昭和62年(1987)国鉄湧網線の廃止に伴い、芭露駅(ばろうえき)は廃駅となりました。
廃駅後も20年近くにわたって駅舎、ホーム、レールが保存されていましたが、国道から奥まった目立たない場所にあったため訪れる人は少なく、平成18年(2006)に解体。
現在は介護福祉施設「サポートセンターばろう 湖水の杜」が建てられ活用されています。 -
「ファミリー愛ランド YOU」(湧別町の車窓)
サロマ湖を望む小高い丘に遊園地「ファミリー愛ランドユー」があります。
遊園地に隣接して道の駅「愛ランド湧別」と「サロマ湖いこいの森」もあります。 -
多田牧場のサイロ(湧別町の車窓)
バス停の名前は「多田宅前」。 -
サロマ湖と円山(湧別町の車窓)
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志撫子漁港(湧別町の車窓)
かつて国鉄湧網線「志撫子(しぶし)仮乗降場」があったところです。 -
バスを「計呂地交通公園」で降ります
前の旅行記で紹介したところです。
ここから先はバス路線がなく、佐呂間町のタクシーを事前に予約していたので乗ります。 -
漁船の浮かぶ「サロマ湖」(富武士地区)
小さな峠を越えて佐呂間町に入り、最初の町が富武士(とっぷし)地区。 -
ルートイングランティアサロマ(富武士地区)
現在は休業中。
以前は「サロマ湖温泉ホテル緑館」だったところで、道東サイクリングの途中に泊まった思い出があります。 -
「キムアネップ岬」入口(幌岩地区)
国道239号から左へ曲がり、「キムアネップ岬」へ向かいます。 -
イチオシ
一面黄色の「キガラシ畑」(幌岩地区)
夏から秋にかけて、一面黄色の「キガラシ」の花が咲き乱れます。
菜の花の仲間で、花が咲いたらそのまま畑に埋められ、緑肥になります。 -
サロマ湖キムアネップ崎「サンゴ草群落」に到着
オホーツク海を彩る「サンゴ草群落」巡りの4番目です。
続きは次の旅行記で紹介します。
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この旅行記へのコメント (2)
-
- 横浜臨海公園さん 2022/01/07 11:43:23
- オランダ積煉瓦
- かっちんさま、こんにちは。
旅行記を拝見させて頂きました。
勇別のオランダ積煉瓦建築、本州でオランダ積煉瓦建築はたいへん珍しく旧山陽鉄道第1~3期開業区間内のものぐらいしか目にする事が無く貴重な物ですが、北海道でのオランダ積建造物は道内各地に残存しており、北海道で何故オランダ積煉瓦建築が発生したか謎です。
本年も亦何卒宜敷くお願い申します。
横浜臨海公園
- かっちんさん からの返信 2022/01/07 16:22:16
- RE: オランダ積煉瓦
- 横浜臨海公園さま
こんにちは。
オランダ積煉瓦の積み方は、湧別のレンガマップで知ることができました。
今までイギリス積と勘違いしていたのが恥ずかしいです。
北海道に多く、本州で少ないのは確かに謎ですね。
本年もこちらこそ宜しくお願い致します。
かっちん
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