2020/08/01 - 2020/08/14
1282位(同エリア17084件中)
ばねおさん
8月に入り、熱波に襲われ猛暑のパリ。
エアコンなど備えのない住居ではたまらず、おまけに階下の部屋でリノベーション工事が始まった。
暑さに加え、分厚い石材に穴をあけるらしき作業の音と振動の凄まじさに耐えきれず、ついに市中のホテルに避難した。
市民の7割がバカンスに出かけたパリ市内は人も車も激減し、普段は余地のない路上の駐車スペースもガラ空き状態で、排気ガスの少ない空気が清々しい。
例年ならば市民に代わって海外からの観光客だらけのはずが、今年はコロナウイルスによりほとんど見かけない。
閑散とした街路、客のまばらなカフェ
おそらくこれはかってない光景だろう。
こういっては何だが、パリに身を置いている今が観光名所を巡るには絶好のチャンスと言えなくもない。
ということで、ホテルを根城に数日間市内の名所巡りをと考えたが、炎天下であまり歩き回らずに済ませるには空調の効いたミュゼに限る。
折しもオルセー美術館ではコロナにより一時は開催を危ぶまれていたジェームズ・ティソ展が会期を変更して開かれている。
このジェームズ・ティソという画家については多くを知らずにいたが、滅多にない回顧展ということなのでこの機会を利用して鑑賞し勉強させてもらった。
19世紀後半のブルジョア社会を描いたジェームズ・ティソだが、ジャポニズムの先駆的存在で日本との意外なつながりもあった。
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- 高速・路線バス 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
冷房設備のないアパルトマンを脱出し、利用したのはサン・ジェルマン・デ・プレにほど近いK+K Hotel Cayré。
自宅からバス一本で行けるところを探した結果がここになった。
というよりは検索サイトでは希望するホテルにはことごとく空室がなく、残っていたひとつがここ。
直前予約とはいえ観光客が少ないはずなのに、なぜ? -
ホテルの部屋から見下ろすラスパイユ通りには人も車も極端に少なく、
街路樹の黒い影が強烈な日射しを感じさせる。
HPでオルセー美術館の予約状況を調べると、どの時間帯もOKなので翌日10:30を予約した。
オルセーに限らず今やどこの美術館も入場時間ごとの定員を設け、事前に予約が必要になった。
したがって入場待ちの長蛇の列という光景はこれからはなくなるかもしれない。
それは歓迎すべきことだが、一方で時間帯によっては希望の予約が取りにくいということも起きるに違いない。 -
翌朝、ホテルでの朝食はやめにしてサンジェルマンデプレを代表するカフェへ。
普段は横目で通り過ぎるだけの観光客の多い有名店。 -
ドゥ ・マゴ はお気に入りなのだけれど、今回はあえてカフェ・ド・フロール。
朝の9時半頃なのに、店内に客はほとんどいない。
手持無沙汰のスタッフたちがひと固まりになって雑談しているほどだ。 -
フロールの角のテラス席に陣取り、眺めるデプレの交差点も行きかう車がない。
あまりの静けさにちょっと現実感のない不思議な感覚になってしまう。
このカフェはアポリネールの縁で文学者や芸術家が集った場所。
戦後はサルトルとボーヴォワールーの活動の場としても有名になった。 -
さて、ギャルソンが持ってきたメニューは何とQRコードを読み取って表示する仕組み。
コロナ以来、紙のメニューを止めた店は多いが、QRコードは初めてだ。
あらかじめ注文は決めていたのでQRコードのお世話にはならなかったが
どのように表示されるのか経験しておけばよかったかも -
客の少ないのはドゥマゴも同様だ
テラス席に数人の客がいるのみ
昔、初めてこの店を訪れたとき、有名な2体の人形の下の席にギャルソンが案内してくれたことを今でも憶えている。
今はギャルソンという呼びかたも、ギャルソンには使えなくなってしまった。 -
ドゥマゴの向かいのサンジェルマンデプレ教会の周辺も静かなもので、路上の物乞いもみられなかった
-
フロールでの朝食を終えた後、オルセーの予約時間にはまだ少し余裕があるので界隈を散歩しながら向かうことにした。
セーヌに向かうボナパルト通り。
前方の右角にはマカロンで知られるラデュレのボナパルト店。 -
ラデュレを過ぎて右の小路がヴィスコンティ通り。
いくつかのギャラリーがあるこの小路には10数年前に幾度となく訪れ、縁あって知り合った人びととの思い出があるのだが、すでに物故者が何人もいる。
人の一生は短いものだとあらためて感じるが、建物は当時と比べていささかも変化はない。 -
普段でも人通りはほとんどなく、昼間でも薄暗いと思っていたヴィスコンティ通りだが、意外やこの時間は路上にまで陽が射していた。
この右側には、かってはバルザックの印刷工場があり、画家ドラクロアのアトリエがあった。 -
セーヌ河畔沿いに出てみると、名物ブキニストBouquinistesはいずれも休業中。
観光客がいないのでは商売にならないだろう。 -
通りかっかた観光遊覧バス
コロナがなければこのシーズン、観光客で満載のはずなのに乗客はわずか数人。 -
オルセー美術館の入り口
並んで待つこともなく予約チケットを提示してすんなりと入館 -
館内もいたってまばらな見学者
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ジェイムズ・ティソ展は3月~6月の予定であったが、コロナウイルスにより会期をずらしての開催となった
案内板をみると、当初の予定のままの日程表示が残っていた。 -
一時は開催も危ぶまれていたが、それだけに人気も増幅されたのか会場内はそれなりの人出であった。
やはり、この展覧会目当てに来館した人が多いようだ。 -
このジェイムズ・ティソJames Tissot というイギリス風な名前の画家はフランス・ナントの出身ながらイギリス好きが嵩じて名乗りまでイギリス風にしてしまった。
本名はジャック-ジョセフ・ティソ Jacques-Joseph Tissot -
イギリスに渡って5年目に知り合い、宗教上の理由で結婚はできなかったが共に暮らし、ティソの生き方や制作に多大な影響を与えた英国女性キャスリーン・ニュートン。
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少したれ目がちな彼女の姿はテッソの多くの作品に描かれている。
イギリスを好み、英国女性を愛したティソだが、知り合って6年目に結核でキャスリーン・ニュートンが亡くなると、翌週にはフランスに帰国してしまったという。
それだけにいかに彼女の存在が大きかったかということが窺える。 -
代表作の一つとされる『L.L嬢の肖像』
赤いボレロが印象的な作品で、オルセーに収蔵されている。 -
ティソの作品の主要部を占める19世紀後半のブルジョア社会の人物像。
いずれも豪華な衣装に装った女性たちが登場する。
衣装や小物類はその細部まで描きつくされ、当時のハイソな階級の装いが丹念に描かれている。
両親がナントで高級毛織店を営んでいたという来歴が、衣装を観察する彼の目を養ってきたのだろう。 -
ティソは人物に強い興味をもった画家であるというが、描かれた風景も隅々まで描きこまれ細部をおろそかにしていない。
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『Holiday』の一部
-
人びとの衣装や小道具もさることながら、人物の心の機微に触れる巧みさが読み取れる。
『キャプテンの娘』 -
『Waiting』と題された作品。
人待ち顔の女性の表情が、絵筆で心の動きを実によく表している。 -
『日本の工芸品を眺める娘たち』
ジャポニズムの先駆者と目されるティソだが、日本との意外なかかわりがあることを知った。
パリ万博の時に江戸幕府を代表して将軍徳川慶喜の名代としてやってきた弟の
昭武は万博後もパリに残り、さまざまな教育を受けたという。
その徳川昭武の絵画教師であったのがジェイムズ・ティソ
水戸の徳川ミュージアムにはティソの描いた昭武の肖像画が収蔵されているという。 -
彼のジャポニズムを代表する作品のひとつ。
『浴衣の日本女性』というタイトルだが、どうみても日本女性ではない。 -
『Le Rouleau Japonais』
直訳すれば日本の巻物だが、この場合、帯を意味しているのだろう -
せっかくのオルセー訪問なので、常設展示も一通り見て回った。
何度も見ているのに必ず立ち止まらずにはいられない多くの作品たち
見るたびに新しい発見がある。
ピエール・ピュヴィ・ド・シャヴァンヌ『貧しき漁夫』(1881年)
ピカソ『アブサンを飲む女』(1901)
フェルディナント・ホドラー『木を伐る人』(1910)
オディロン・ルドン『ドメシー男爵夫人』(1900) -
そしてオルセーに新たに加わった作品が何点かあった
モーリス・ドゥニMaurice Denis『青のキリスト』(1890年)
彼の作品は数多く展示されているが、これは宗教画という分類を超えた魅力を感じる -
ピエット・モンドリアン Piet Mondrian
『乾草の山Ⅲ』(1908年) -
絵を鑑賞するというのは案外疲れるもので、見て回るうちは夢中だが、ついに空腹に耐えきれずに外に出た。
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有名人ですら列に並ばなくてはならないというブラッスリー LIPP で食事をと思ってきたのが、あいにく改修工事で閉鎖中。
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やむなくホテルに戻る途中にあるカフェ Le Saint-Germain のテラス席で昼食。
行きかう人や車があれば、観察する楽しみもあるというものだが、
これでは出された皿の中身と向き合う他ない状況だ。 -
体感的にはまさに真夏の途上にあると思うのだが
路上には至る所でプラタナスの枯れ葉が舞い
もう夏の終わりを告げていた。
その一か月余り後の今では寒さに震えている
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