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 「蟻の戸渡り」は、そそり立つ岩山が雨風で浸食された、幅50cmにも満たない断崖の稜線だった。<br /> こんな危険な岩山に、体力もおぼつかないお爺とお婆が、ロッククライミングさながらに、よく登って来れたものだ。<br /> 戸渡りの通路は恐ろしくて歩けなかったが、そんなことは問題ない。<br /> 人間、いざとなればやれるものだ、と自信を深め、自分たちを褒め讃える。

獅子ヶ鼻(ししがはな)トレッキング(2/3)山中の迷路を歩いて『浮き石』『八畳岩』へ

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2020/05/01 - 2020/05/01

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旅行記グループ 獅子ヶ鼻公園

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motogen

motogenさん

 「蟻の戸渡り」は、そそり立つ岩山が雨風で浸食された、幅50cmにも満たない断崖の稜線だった。
 こんな危険な岩山に、体力もおぼつかないお爺とお婆が、ロッククライミングさながらに、よく登って来れたものだ。
 戸渡りの通路は恐ろしくて歩けなかったが、そんなことは問題ない。
 人間、いざとなればやれるものだ、と自信を深め、自分たちを褒め讃える。

同行者
カップル・夫婦(シニア)
交通手段
徒歩
  •  降りるのも大変だった。<br /> しかし体力的には楽で、多少の擦り傷はあったものの、大きな怪我もなく何とか降りて、「浮き石」に向かう。<br /> コースは道なき道で、息が抜けない。

     降りるのも大変だった。
     しかし体力的には楽で、多少の擦り傷はあったものの、大きな怪我もなく何とか降りて、「浮き石」に向かう。
     コースは道なき道で、息が抜けない。

  •  「浮き石」は高い場所にあると、勝手に想像していたが、浮き石へのコースは下る一方だ。<br /> 下る以上は、登らなくはならないはず。<br /> それを考えると憂鬱になって、薄暗い森の中で一休み。

     「浮き石」は高い場所にあると、勝手に想像していたが、浮き石へのコースは下る一方だ。
     下る以上は、登らなくはならないはず。
     それを考えると憂鬱になって、薄暗い森の中で一休み。

  •  雨水の流れる窪みを進んで行くと、小さな標識が立っていた。

     雨水の流れる窪みを進んで行くと、小さな標識が立っていた。

  •  「沢歩きコース」「沢沿いコース」と記されているが、何が何だか分からない。<br /> どちらを選んでも、道らしい道ではないのだ。<br /> <br /> <br /> 

     「沢歩きコース」「沢沿いコース」と記されているが、何が何だか分からない。
     どちらを選んでも、道らしい道ではないのだ。
     
     
     

  •  「沢沿いコース」と指し示す方向に進むことにする。<br /> この山中では、観光マップは役に立たない。<br /> グーグルマップを見ても、道も目印もなく、緑一色の山、山、山だ。 

     「沢沿いコース」と指し示す方向に進むことにする。
     この山中では、観光マップは役に立たない。
     グーグルマップを見ても、道も目印もなく、緑一色の山、山、山だ。 

  •  次に現れた標識は、「道祖神に出る近道」「沢歩きコース」の分岐点を表していた。<br /> ここから先は完全に道がなくなっている。<br /> 私たちはしばし立ち尽くす。

     次に現れた標識は、「道祖神に出る近道」「沢歩きコース」の分岐点を表していた。
     ここから先は完全に道がなくなっている。
     私たちはしばし立ち尽くす。

  •  「ええい!近道の矢印の指し示す方向だ。」<br /> と崖を登る。

     「ええい!近道の矢印の指し示す方向だ。」
     と崖を登る。

  •  小さな祠が見つかった。<br /> 道祖神だ。<br /> 切り株の空洞(うろ)に、板の屋根を取り付けただけの質素な社だ。<br /> しかしこれが、森に溶け込んでいて、なかなか味がある。

     小さな祠が見つかった。
     道祖神だ。
     切り株の空洞(うろ)に、板の屋根を取り付けただけの質素な社だ。
     しかしこれが、森に溶け込んでいて、なかなか味がある。

  •  「手を合わせ 今日も獅子トレに来れた 幸せに感謝」<br /> と記された板を読んで、手を合わせる。<br /> 樹木や岩や森の精霊が、この祠に眠っているようだ。<br /> 日本古来の神は、こういうものだ・・と感じるひととき。

     「手を合わせ 今日も獅子トレに来れた 幸せに感謝」
     と記された板を読んで、手を合わせる。
     樹木や岩や森の精霊が、この祠に眠っているようだ。
     日本古来の神は、こういうものだ・・と感じるひととき。

  •  心を新たにし、草木を分け入るように登って行くと、

     心を新たにし、草木を分け入るように登って行くと、

  •  頭上に現れたのは、大きな岩の塊だった。<br /> 今にも転げ落ちて来そうな、危険な岩だ。<br /> 

     頭上に現れたのは、大きな岩の塊だった。
     今にも転げ落ちて来そうな、危険な岩だ。
     

  •  浮き石だ。<br /> 想像していたよりも、一回り小さいが、<br /> 土台との接点はほんのわずかで、浮き石と呼ばれる由縁が分かる。<br /> 転げ落ちないのは、下の岩と一体なのか?<br /> まさか森の神の力が支えている訳ではないだろう。

     浮き石だ。
     想像していたよりも、一回り小さいが、
     土台との接点はほんのわずかで、浮き石と呼ばれる由縁が分かる。
     転げ落ちないのは、下の岩と一体なのか?
     まさか森の神の力が支えている訳ではないだろう。

  •  浮き石の近くに、丘があった。<br /> 伐採されて日当たりの良い絶好の丘。

     浮き石の近くに、丘があった。
     伐採されて日当たりの良い絶好の丘。

  •  その丘に座って弁当を広げ、

     その丘に座って弁当を広げ、

  •  風を浴び、緑豊かなパノラマ風景を楽しみながら、

     風を浴び、緑豊かなパノラマ風景を楽しみながら、

  •  あっと言う間に、持参してきた全てを平らげてしまった。<br /> 小食な私たちなのに、ここでは大食漢となってしまい、まだ物足りなくて、飴玉を口に含む。<br /> 生きているって嬉しいことだ。<br /> あと何年、こうしたことができるのだろうか・・

     あっと言う間に、持参してきた全てを平らげてしまった。
     小食な私たちなのに、ここでは大食漢となってしまい、まだ物足りなくて、飴玉を口に含む。
     生きているって嬉しいことだ。
     あと何年、こうしたことができるのだろうか・・

  •  「サクラ台」への標識に従って、青空の広がる方向を目指す。<br /> この丘陵の向こう側には、整備された道があって、楽々と目的に進めそうだ。

     「サクラ台」への標識に従って、青空の広がる方向を目指す。
     この丘陵の向こう側には、整備された道があって、楽々と目的に進めそうだ。

  •  ところが丘の向こう側は下り坂で、そしてまた次の丘陵に向かって登り坂。

     ところが丘の向こう側は下り坂で、そしてまた次の丘陵に向かって登り坂。

  •  この山の地形は複雑で、たくさんの岩山と、何本もの稜線と谷間でできている。<br /> ここは岩山地帯だったんだ!

     この山の地形は複雑で、たくさんの岩山と、何本もの稜線と谷間でできている。
     ここは岩山地帯だったんだ!

  •  至る所に崖があり、<br /> 命がけのアドベンチャーが続く。

     至る所に崖があり、
     命がけのアドベンチャーが続く。

  •  腕や手の平に擦り傷を作り、レンジャー部隊さながらの大冒険だ。<br /> その場では、緊張感で痛みなど感じないが、足腰に力が入らなくなってきたことを感じる。

     腕や手の平に擦り傷を作り、レンジャー部隊さながらの大冒険だ。
     その場では、緊張感で痛みなど感じないが、足腰に力が入らなくなってきたことを感じる。

  •  森の中でゴソゴソと音がする。<br /> 何かが歩いているようだ。<br /> 「あっ! カモシカ!」<br /> 先月、大尾山で見たのと同じものが目に入った。

     森の中でゴソゴソと音がする。
     何かが歩いているようだ。
     「あっ! カモシカ!」
     先月、大尾山で見たのと同じものが目に入った。

  •  「すごい!」<br /> 慌ててカメラを構えると、すぐにその姿は消えてしまった。<br /> 驚きでものも言えず、立ち尽くすのみ。<br /> 残念ながら写っていたのはほんの数枚だった。

     「すごい!」
     慌ててカメラを構えると、すぐにその姿は消えてしまった。
     驚きでものも言えず、立ち尽くすのみ。
     残念ながら写っていたのはほんの数枚だった。

  •  整備された道路に出た。<br /> 車も走れる林道らしい。<br /> 立ち入り禁止の看板があるので、そこを横切って、再び山の中に。<br /> 

     整備された道路に出た。
     車も走れる林道らしい。
     立ち入り禁止の看板があるので、そこを横切って、再び山の中に。
     

  •  観光マップを見ると、<br /> もう少しでサクラ台だ。

     観光マップを見ると、
     もう少しでサクラ台だ。

  •  サクラ台の北には、藤見平や冷泉や鐘掛岩がある。<br /> 「どうしよう?」<br /> 「帰ろうよ・・もう疲れちゃった・・」<br /> と言うことで、サクラ台も見ずに歩いていると、 <br /> 

     サクラ台の北には、藤見平や冷泉や鐘掛岩がある。
     「どうしよう?」
     「帰ろうよ・・もう疲れちゃった・・」
     と言うことで、サクラ台も見ずに歩いていると、 
     

  •  巨大な岩が立ち塞がった。

     巨大な岩が立ち塞がった。

  •  「もしかしたら、これが八畳岩じゃない?」

     「もしかしたら、これが八畳岩じゃない?」

  •  岩をよじ登っていくと、

     岩をよじ登っていくと、

  •  二人の女性が岩の上に座っていた。<br /> 怖そう場所だ。<br /> 「見晴らし、いいですよ!」<br /> 「どうぞ、こっちに来てください。」<br /> と言ってくれるが、

     二人の女性が岩の上に座っていた。
     怖そう場所だ。
     「見晴らし、いいですよ!」
     「どうぞ、こっちに来てください。」
     と言ってくれるが、

  •  見晴らしが良過ぎて、目が回りそうで、身体が思うように動かない。

     見晴らしが良過ぎて、目が回りそうで、身体が思うように動かない。

  •  四つん這いとなって岩の上に座ったが、<br /> 身体がムズムズして、どうにも落ち着けない。

     四つん這いとなって岩の上に座ったが、
     身体がムズムズして、どうにも落ち着けない。

  •  我を忘れて飛び降りてしまったらどうしよう・・<br /> などと考えてしまうのだ。<br />https://youtu.be/BCC5pqyVMos

     我を忘れて飛び降りてしまったらどうしよう・・
     などと考えてしまうのだ。
    https://youtu.be/BCC5pqyVMos

  •  近くに、八畳岩の見える展望台があった。<br /> 「八畳ということでしたが、実測は12畳あります。<br /> その下の洞窟は9畳あります。」<br /> と書かれた案内板が立っている。

     近くに、八畳岩の見える展望台があった。
     「八畳ということでしたが、実測は12畳あります。
     その下の洞窟は9畳あります。」
     と書かれた案内板が立っている。

  •  洞窟はどこだと目をこらすと、頂上の真下にあった。<br /> 洞窟の下にはしごが架けられている。<br /> 下から登っていけそうだが、高所恐怖症では無理だ。

     洞窟はどこだと目をこらすと、頂上の真下にあった。
     洞窟の下にはしごが架けられている。
     下から登っていけそうだが、高所恐怖症では無理だ。

  •  帰ることにする。<br /> 帰路も両側は谷間で、樹木があるから歩けるが、むき出しの岩場ならすくんでしまうだろう。

     帰ることにする。
     帰路も両側は谷間で、樹木があるから歩けるが、むき出しの岩場ならすくんでしまうだろう。

  •  樹木の中から何かが飛び出して、目の前の道を駆けて行く。<br /> リスだ。<br /> 小さくてはっきりとは見えないが、大きな尻尾がある。<br /> とっさにシャッターを押したが、写っていなかった。

     樹木の中から何かが飛び出して、目の前の道を駆けて行く。
     リスだ。
     小さくてはっきりとは見えないが、大きな尻尾がある。
     とっさにシャッターを押したが、写っていなかった。

  •  再び林道に出た。<br /> 何と歩きやすい道!<br /> 整った道のありがたさを感じる。

     再び林道に出た。
     何と歩きやすい道!
     整った道のありがたさを感じる。

  •  案内標識を見て、山の中に入って行く人が見えた。

     案内標識を見て、山の中に入って行く人が見えた。

  •  その場に行ってみると、<br /> 蟻の戸渡りへの入口だった。<br /> 戻って来れたんだと、ほっと一息。<br /> 一周してきた距離はたいしたものではないのに、身体はくたくたで、ふくらはぎが硬直している。<br /> しかしこれは、充実感の裏返しだ。

     その場に行ってみると、
     蟻の戸渡りへの入口だった。
     戻って来れたんだと、ほっと一息。
     一周してきた距離はたいしたものではないのに、身体はくたくたで、ふくらはぎが硬直している。
     しかしこれは、充実感の裏返しだ。

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