2020/05/01 - 2020/05/01
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motogenさん
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「蟻の戸渡り」は、そそり立つ岩山が雨風で浸食された、幅50cmにも満たない断崖の稜線だった。
こんな危険な岩山に、体力もおぼつかないお爺とお婆が、ロッククライミングさながらに、よく登って来れたものだ。
戸渡りの通路は恐ろしくて歩けなかったが、そんなことは問題ない。
人間、いざとなればやれるものだ、と自信を深め、自分たちを褒め讃える。
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- 徒歩
-
降りるのも大変だった。
しかし体力的には楽で、多少の擦り傷はあったものの、大きな怪我もなく何とか降りて、「浮き石」に向かう。
コースは道なき道で、息が抜けない。 -
「浮き石」は高い場所にあると、勝手に想像していたが、浮き石へのコースは下る一方だ。
下る以上は、登らなくはならないはず。
それを考えると憂鬱になって、薄暗い森の中で一休み。 -
雨水の流れる窪みを進んで行くと、小さな標識が立っていた。
-
「沢歩きコース」「沢沿いコース」と記されているが、何が何だか分からない。
どちらを選んでも、道らしい道ではないのだ。
-
「沢沿いコース」と指し示す方向に進むことにする。
この山中では、観光マップは役に立たない。
グーグルマップを見ても、道も目印もなく、緑一色の山、山、山だ。 -
次に現れた標識は、「道祖神に出る近道」「沢歩きコース」の分岐点を表していた。
ここから先は完全に道がなくなっている。
私たちはしばし立ち尽くす。 -
「ええい!近道の矢印の指し示す方向だ。」
と崖を登る。 -
小さな祠が見つかった。
道祖神だ。
切り株の空洞(うろ)に、板の屋根を取り付けただけの質素な社だ。
しかしこれが、森に溶け込んでいて、なかなか味がある。 -
「手を合わせ 今日も獅子トレに来れた 幸せに感謝」
と記された板を読んで、手を合わせる。
樹木や岩や森の精霊が、この祠に眠っているようだ。
日本古来の神は、こういうものだ・・と感じるひととき。 -
心を新たにし、草木を分け入るように登って行くと、
-
頭上に現れたのは、大きな岩の塊だった。
今にも転げ落ちて来そうな、危険な岩だ。
-
浮き石だ。
想像していたよりも、一回り小さいが、
土台との接点はほんのわずかで、浮き石と呼ばれる由縁が分かる。
転げ落ちないのは、下の岩と一体なのか?
まさか森の神の力が支えている訳ではないだろう。 -
浮き石の近くに、丘があった。
伐採されて日当たりの良い絶好の丘。 -
その丘に座って弁当を広げ、
-
風を浴び、緑豊かなパノラマ風景を楽しみながら、
-
あっと言う間に、持参してきた全てを平らげてしまった。
小食な私たちなのに、ここでは大食漢となってしまい、まだ物足りなくて、飴玉を口に含む。
生きているって嬉しいことだ。
あと何年、こうしたことができるのだろうか・・ -
「サクラ台」への標識に従って、青空の広がる方向を目指す。
この丘陵の向こう側には、整備された道があって、楽々と目的に進めそうだ。 -
ところが丘の向こう側は下り坂で、そしてまた次の丘陵に向かって登り坂。
-
この山の地形は複雑で、たくさんの岩山と、何本もの稜線と谷間でできている。
ここは岩山地帯だったんだ! -
至る所に崖があり、
命がけのアドベンチャーが続く。 -
腕や手の平に擦り傷を作り、レンジャー部隊さながらの大冒険だ。
その場では、緊張感で痛みなど感じないが、足腰に力が入らなくなってきたことを感じる。 -
森の中でゴソゴソと音がする。
何かが歩いているようだ。
「あっ! カモシカ!」
先月、大尾山で見たのと同じものが目に入った。 -
「すごい!」
慌ててカメラを構えると、すぐにその姿は消えてしまった。
驚きでものも言えず、立ち尽くすのみ。
残念ながら写っていたのはほんの数枚だった。 -
整備された道路に出た。
車も走れる林道らしい。
立ち入り禁止の看板があるので、そこを横切って、再び山の中に。
-
観光マップを見ると、
もう少しでサクラ台だ。 -
サクラ台の北には、藤見平や冷泉や鐘掛岩がある。
「どうしよう?」
「帰ろうよ・・もう疲れちゃった・・」
と言うことで、サクラ台も見ずに歩いていると、
-
巨大な岩が立ち塞がった。
-
「もしかしたら、これが八畳岩じゃない?」
-
岩をよじ登っていくと、
-
二人の女性が岩の上に座っていた。
怖そう場所だ。
「見晴らし、いいですよ!」
「どうぞ、こっちに来てください。」
と言ってくれるが、 -
見晴らしが良過ぎて、目が回りそうで、身体が思うように動かない。
-
四つん這いとなって岩の上に座ったが、
身体がムズムズして、どうにも落ち着けない。 -
我を忘れて飛び降りてしまったらどうしよう・・
などと考えてしまうのだ。
https://youtu.be/BCC5pqyVMos -
近くに、八畳岩の見える展望台があった。
「八畳ということでしたが、実測は12畳あります。
その下の洞窟は9畳あります。」
と書かれた案内板が立っている。 -
洞窟はどこだと目をこらすと、頂上の真下にあった。
洞窟の下にはしごが架けられている。
下から登っていけそうだが、高所恐怖症では無理だ。 -
帰ることにする。
帰路も両側は谷間で、樹木があるから歩けるが、むき出しの岩場ならすくんでしまうだろう。 -
樹木の中から何かが飛び出して、目の前の道を駆けて行く。
リスだ。
小さくてはっきりとは見えないが、大きな尻尾がある。
とっさにシャッターを押したが、写っていなかった。 -
再び林道に出た。
何と歩きやすい道!
整った道のありがたさを感じる。 -
案内標識を見て、山の中に入って行く人が見えた。
-
その場に行ってみると、
蟻の戸渡りへの入口だった。
戻って来れたんだと、ほっと一息。
一周してきた距離はたいしたものではないのに、身体はくたくたで、ふくらはぎが硬直している。
しかしこれは、充実感の裏返しだ。
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