2018/11/30 - 2018/11/30
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JIC旅行センターさん
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■郷土博物館とチェーホフ記念文学館
サハリンに点在する日本統治下の遺構の代表格はサハリン州立郷土博物館だ。ここは旧樺太庁博物館だったところで、展示室の配置も旧樺太庁のそれを踏襲しているそうだ。地下1階がサハリンの地質や考古学に関する展示、1階が自然、先住民に関する展示、2階がサハリン開拓以降の展示になっている。興味を惹かれたのは近現代史の展示で、日本統治下の生活や駐留していた旧日本軍の軍装などの展示が数多くあった。かつて日本とロシアの国境に置かれていた標石もあり、表と裏に大日本帝国とロシア帝国それぞれの紋章が刻まれている。戦後ソビエト時代の展示室もあったが閉鎖されていた。
続いて訪れたのはチェーホフ記念文学館。1890年にロシア帝国の流刑地だったサハリンを訪れて踏査した文豪チェーホフの業績を展示した博物館だ。チェーホフゆかりの品々だけでなく、当時のサハリンの生活用品などが、マネキンや再現映像と組み合わせてわかりやすく展示されている。日本語の解説文もあった。チェーホフに関心のある人だけでなく、帝政時代のサハリンの様子を知る上でも興味深い博物館だ。
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■手厚い定住促進策、しかし若者は都会に出たがる
昼食は、オリガさんお薦めのレストラン「チョールナヤ・コーシカ(黒猫)」へ。メニューには定番のロシア料理も並んでいたが、折角なのでサハリン名物・キュウリウオのフライと魚スープ(ウハー)、サバのピロシキをチョイスする。オホーツク海の恵みを堪能した。
オリガさんによると、サハリン州の住民はロシア本土に比べて割増賃金、割増休暇が与えられ、年金受給開始年齢も本土より早い。さらに年1回希望するロシア国内都市への無料航空券がもらえるそうだ。このような定住促進策はある程度功を奏しているようだが、若者はやはり都会へ出たがるので、モスクワ大学へ進んだ息子さんがサハリンに戻ってくれるのか気にしている様子。賃金が高い分、物価がモスクワ並みに高騰しているのも悩ましいという。
オリガさんと別れ、歩いてユジノサハリンスク駅を見に行く。この駅を発着する列車は1日最大8往復しかないが、駅前広場はサハリン内の各都市を結ぶ中長距離バスターミナルを兼ねており、沢山の人が往来している。列車の発車直前まで乗客はホームに入れないので、駅の待合室は大きな荷物を持った人たちでごった返していた。駅前バスターミナルには泥だらけの中小型バスが並んでいたが、行先を示す標識や時刻表はいくら探しても見つからない。乗客はフロントガラスに掲示された行先を見て、運転手に出発時刻を尋ねて確認している様子だった。
バスターミナルの先はレーニン広場につながっており、ロシアであまり見かけなくなった巨大なレーニン像が立っている。クリスマスまで1カ月近くあるというのに、もう巨大なツリーがレーニン像をふさぐように立てられていた。1917年の十月革命から100余年、レーニン像は何を想うか。ちなみに、前年に建てられていたツリーは、クリスマスのさなかに飾り付けの電気配線のショートで全焼した。レーニンの呪いではないかと噂されたらしい。 -
■ジョージア料理店「チフリス」と日本食レストラン「ふる里」
夕食は、サハリン駐在の知人とレーニン通り沿いにあるジョージア料理店「チフリス」に入った。モスクワにあってもおかしくないようなおしゃれなレストランで、サハリン駐在の日本企業などが接待でも利用しているそうだ。ハルチョー(仔牛のシチュー)、ハチャプリ(ジョージア風卵入りピザ)などでお腹いっぱいになった。外へ出ると、中心街は遅くまでネオンがついており、賑やかに人が行き交っている。その風景はかつて抱いていたサハリンの暗いイメージを払拭するのに十分だった。
翌日は前日と打って変わってマイナス8度、吹雪が舞う。風が強いので体感温度はもっと寒く感じる。地理的には北海道のすぐ北に位置するサハリンだが、ここはやはり北海道ではなくロシアの一部なんだと思う。
昼食は、混雑時を外して少し遅めに、サハリン随一と言われる駅前の日本食レストラン「ふる里」へ行った。店の雰囲気もスタッフのサービスも良いが、チャーシューメン550ルーブル(約1100円)、天丼400ルーブル(約800円)など、価格も日本食レストランとしてはリーズナブルで嬉しい限り。
食事を楽しみながら、御年84歳になられるオーナーの宮西豊さんのお話を伺うことができた。宮西さんはサハリンに渡って28年。当初はこの地でタクシードライバーなどを勤めたこともあったそうだが、現在ではレストラン経営の傍ら孤児院への寄付や桜の植樹など慈善活動を行い、ユジノサハリンスク名誉市民の称号を授与されている。数日後には日本に一時帰国し、海外での日本食普及への貢献で外務大臣表彰を受けられるそうだ。地道な活動を続けてこられた宮西さんのような方々の貢献の上に、今日の日ロ交流があることを強く実感した。 -
2泊3日の滞在は瞬く間に過ぎ、早くもサハリンを離れる日が来た。吹雪の中、市内からホムトヴォ空港へ車で向かう。帰国はハバロフスク経由になるので搭乗するのは国内線だ。ゲートの先に待っていたのは128席仕様のエアバスA319型機。機内は半分くらいしか埋まっていない。Q400なら満席だったろうに、せっかくのエアバスがもったいない気がする。機内アナウンスはロシア語・英語だが、安全のしおりには日本語・中国語・韓国語も記載されていた。定刻17:30に離陸。機体が雲海を突き抜けると、下界の吹雪と打って変わって晴れた空に躍り出る。夕方の空が少しずつ赤く染まり始めている。
機内食のサンドイッチは魚かチキンのチョイスだった。かつてロシア語を習い始めた頃、サンドイッチはブティルブロッドと言うと教わったが、パッケージには「サンドイッチ」とロシア語で書かれている。そういえば最近ロシア風のオープンサンド=ブティルブロッドをあまり見かけなくなったなと唐突に思い出した。
西に向かう飛行機は、太陽を追いかけて飛ぶので、夕陽はなかなか沈まない。ソ連邦解体から30年近くたち、ロシアもサハリンも時代とともに急速にその姿を変えつつある。夕陽に照らされながら、多くの旅人に今のサハリンを見てほしいと思った。
(了)
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