2018/12/01 - 2018/12/10
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タヌキを連れた布袋(ほてい)さん
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「現在68歳のヒン・ティムさんは美術局の公務員だが,もともとはソ連留学の経験もある考古学者で,一時期はプノンペン国立芸術大学の教授職も務めていた。境遇が暗転したのは,ポル・ポト派が権力を握ってからである。彼も他の多くの学者とともに投獄されたが,二年間の獄中生活を経て,どうにか生還する。
その後,どのような経緯を辿って,シソポン支部長という仕事に就いたのかは不明だが,70歳近い年齢のこともあって,現場を離れ,プノンペンへ戻る誘いもあるという。
『月に250米ドルという高給で誘われたこともあるが,断ったよ。私は現場を離れたくない』
そんな話をした後,現在も盗掘は続いているのかと質問すると,
『最近では泥棒も少なくなった。悪い奴は皆,エイズで死んでしまった』
と,ひどく飛躍した返事が返ってきた。盗掘の話題には触れたくないのかもしれないと,私は感じた。
食事が終わり,クルマでシソポン市内のオフィス兼自宅まで送り,私たちは国境の町ポイペトへの帰途に着いた。
10分ほど走ったところで,助手の携帯電話が鳴った。ヒン・ティムさんだった。
『見せたいものがある。シソポンへ戻れないか』
即座に同意して,クルマをUターンさせた。
オフィスのある建物は三階建てで,一階は学習塾になっている。この国では,給与収入だけでは生活の苦しい公務員が,政府の建物を使って副業を営むことも珍しくない。
驚いたのは,三階のオフィスに入ったときだった。大きな鍵を開けて招き入れられた室内には,所狭しと彫像などの発掘品があり,足の踏み場もない。その数は100や200ではきかないだろう。2500年ほど前の女性の人骨もあり,白いペンキで番号の書かれたものも混じっている。
彼は,切迫した表情で,自分のおかれている状況を語りはじめた。
『ここには自分を含めて4,5人の所員しかいない。この陣容ではとても遺跡を守ることはできないんだ。バンテアイ・チュマールの遺跡を見ただろう。あそこにはもともと300のアプサラがあり,八体の千手観音像があった。いまではアプサラは一体も残っていないし,千手観音も二体しかない。それだって,いつ盗まれるかわからない』
さらに彼は,こんな話もしてくれた。
『タイのアランヤプラテートの税関では,これまでに密輸が発覚して54トンの美術品が押収されたが,そのうち戻ってきたのは17トンにすぎない。というのも,予算がないので,残りの美術品を受けとるためのトラックを出せないのだよ。5年前から日本の総合商社M社に,保存倉庫の建設を頼んでいるが,実現の目途はいまだに立っていない。アンコールには国の予算もたくさん割かれているし,世界各国から派遣された専門家が保存と修復のために働いてくれている。しかし。ここには,人もお金も回ってこない――』
夜が更けるまで,考古学者の話は続いた。
ヒン・ティムさんがその気になれば,もっと経済的に恵まれた,楽な仕事があるはずである。しかし。彼がここを離れてしまえば,バンテアイ・チュマールをはじめとする遺跡群はどうなってしまうのか。
ここから離れられない,だが,保存することも盗掘をなくすこともできない考古学者の悩みを聞いても,私には何もいうことができなかった。」
三留理男著「悲しきアンコール・ワット」(集英社新書)より
スレイ・サフォン(シソポン)逍遥その2:日本文民警察隊遭難の地とバンテアイ・チュマール
https://4travel.jp/travelogue/11483458
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.0
- ホテル
- 4.0
- グルメ
- 2.5
- ショッピング
- 2.0
- 交通
- 2.0
- 同行者
- その他
- 一人あたり費用
- 25万円 - 30万円
- 交通手段
- 高速・路線バス タクシー 徒歩
- 航空会社
- ベトジェットエア
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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-
朝,コンポントムの中心部にあるアルンラスホテルの東側,道路向かいにあるバスチケット売場へ向かう。
プノンペンから来るバスが,ここに10時半頃停車するので,それに途中乗車する手筈になっている。 -
プノンペンから来るバスは,おそらくタイ国境のポイペト行きで,それに乗車してスレイサフォンで途中下車するのだ。
スレイサフォン(Serei Saophoan)は「シソポン(Sisophon)」とか「スヴァイ(Svay)」とも呼ばれる。
シソポンというのはシャム的な呼び方らしい。そして,切符売場のバスの行き先案内板には「スヴァイ」と表記されていた。
しかし,切符売場のおばさんも,これから乗るバスの乗務員も,スレイサフォンのことは「バンテアイ・ミエンチャイ」(スレイサフォンを州都とする州の名)と呼んでいた。
よそ者にはもう,どうなっているのか分からない。 -
スレイサフォンまでの運賃は一人10USD。
バスは結局10:50頃に到着して,それに乗車し,休憩なしでシェムリアプに13時頃着いた。ここで乗客のほとんどは下りていった。 -
シェムリアプでは,乗客が下りて空いたスペースに貨物を積み込み,13:20に再出発。休憩なしで2時間ほど走り,スレイサフォン市街に入った。
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市街中心部のOld Bus Terminalの横にバス会社のオフィスが軒を連ねている通りがあり,そこでバスから降ろされた。
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そこから徒歩15分くらいのところにある「Botoum Hotel」(ボトゥムH)にチェックイン。ツイン一泊10.8USD。
エアコンは使用不可の料金だが,12月初旬の気候では何とかなった。 -
さっそく市場の周辺へ出かけてみる。宿から徒歩10分前後。
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スレイサフォン市場の外縁に夕市が立っている。
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豚ホルモンのヤムを売る露店。
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腸詰め。
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カンボジアではおなじみの,味つけシジミ。
個人的には,「旅先では貝を食べない」というマイルールに抵触するので食べない。美味しいらしいが。 -
ベンケイガニの塩漬け。
潰してソムタムに入れるやつの調味タイプだ。これも寄生虫が怖いので食べない。 -
市場の建物の外観。
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一番良い場所には金行が並ぶ。
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ヌンパン。
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焼きバナナと焼きトウモロコシ。
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蒸した落花生,イモ類,バナナ。
こういう素朴な商品が並ぶと,いかにもカンボジアっぽい。 -
結構,ムスリムの姿を見かける。
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鶏肉の串焼きを売る露店にも。
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キャピトルのバス乗降所(事務所)は,Old Bus Stationからやや離れたところにあった。
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ここで発着する人のほうが多いのかも知れない。
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フランスのNGOが運営する「ECOLE D’ARTS ET DE CULTURE KHMERS」。
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これは学生の制作なのだろう。
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スレイサフォンの街で唯一見かけた日本商品の看板。
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市場の近くにあった食堂で夕食。
カンボジアでは,クメールBBQと称してムーガタを食べさせる店がたくさんあるが,焼肉ならこの店のように,
・炭火焼き
・店側で焼いてくれる
というスタイルのところが圧倒的に美味しい。 -
弁当を買って帰ればいいものを,贅沢をして店で食べてしまった。
この店のつけだれは,ニンニクとコブミカンのハーモニーが絶妙だった。
地元の人は,たれに漬け込んだもみじ(鶏足)の炭火焼きを米飯の上にのせた弁当をさかんに持ち帰っていた。すぐに売り切れてしまったので,この店の名物なのだろう。後日食べてみたら,たしかに美味しかった。
店の場所は「Ly Monaco Hotel」の近く。 -
今日のビールはアンチョー。
焼肉は15000KHRで,ビール小瓶4000KHR。支払いはリエルのみ。
(1USD=約4000KHR)
スレイ・サフォン(シソポン)逍遥その2:日本文民警察隊遭難の地とバンテアイ・チュマール
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