キタ(大阪駅・梅田)旅行記(ブログ) 一覧に戻る
 長年の浅田次郎文学のファンである。<br /> もう嫌というほど浅田次郎作品は読んできた。その作品の数々を記せばきりがないのであるが、<br /> 「鉄道員」、「壬生義士伝」、「月のしずく」、「蒼穹の昴」、「輪違屋お糸」、「中原の虹」、「オーマイガア!」、「地下鉄に乗って」等々、書ききれない。ところがこの3月、新作「長く高い壁」が出版された。しかも浅田次郎初の本格ミステリーだという。これもう買うしかないかないと思っていたところ、新聞広告でサイン会が行われるということを知った。今年の3月から4月にかけ、東京、大阪、福岡の三か所で行われるという。大阪の場所と日程を調べてみると、3月17日(土)に梅田のMARUZENジュンク堂で行われるらしい。予定を調節してさっそく浅田次郎先生サイン会に行くことを決めた。<br /> MARUZENジュンク堂梅田店は日本最大の売り場面積を誇る大阪の大型書店である。地下一階から七階までの巨大ビルのすべてに本が詰まっている。ぼくはサイン会の一週間前に電話をして整理券を確保した。<br /> サイン会は午後の四時開始であった。<br /> 当日2時半にはMARUZEジュンク堂梅田店に着いた。着くとすぐ地下一階から7階まで見て回った。まあ、本好きには堪らない本の山であった。その逐一を述べる間もないが、なにせ洋書が七万冊、和書が二百万冊もあるのである。この店だけで2時間や3時間は充分に過ごせると思う。<br /> 7階まで見て回ってぼくがサイン会の前までに買った本は、『ウオッカの背中』という本である。”ウオッカ”は洋酒の名前ではない。その名を付けた牝馬の競走馬である。牝馬で日本ダービーを勝った歴史的名馬の本である。<br /> この本を買った理由は、ぼくの趣味が競馬であるからである。しかもぼくは競馬の師匠として浅田次郎先生を崇めているからである。浅田先生は40年以上にわたって競馬に携わりしかも馬券収支はいつも黒字だという。そういう先生をぼくは競馬の師匠として慕っているのである。浅田次郎先生は競馬のエッセイもまた多数執筆している。これらの本もぼくの座右の書である。(「サイマー!」、「競馬どんぶり」等々)岐宿もこの日のサイン会は阪神大賞典の前日であった。<br /> 僕は「長く高い壁」のサイン会で、浅田先生の眼の前にサイン本をさし出すと、<br /> 「先生、明日は阪神大賞典ですね。先生は何を買いますか」と尋ねたのであった。<br /> 「きみも、競馬が好きなのかね。ぼく最近は忙しくてねえ!。今日はまだ競馬新聞を見てないんだよ。明日のキミの予想はどうなんだい」<br /> 浅田先生はサインをしながら逆にぼくにそう尋ねてきた。<br /> 「ぼくは、クリンチャー、レインボーラインあたりが来るのかななと思っているんですが」<br /> 「なるほどね。いいところ狙ってるね。競馬はいいよなあ! 俺も原稿書き止めて明日は競馬場へ行ってみようかな」<br /> すると、そばにいた編集者が慌てふためいた。<br /> 「先生、それは駄目です。こちらがお願いしてる原稿の締め切りが明日までなんですから。いまから先生につきっきりでいますからね。離しませんからね」<br /> 「これだよ、これ!。ねえ、中尾さん。困ったものだ。競馬もできなくなっちゃったんだよ。作家も好きな競馬もできなくなったら駄目だね」<br /> そこでぼくは、サインしてもらった本を受け取りながら、<br /> 「先生、でも、いい作品をこれからも書いてください」<br /> 「ありがとう。そういってもらえると嬉しいよ。じゃあ、記念に写真でも撮るかい」<br /> 「ええ、いいんですか! 先生。ありがたいです。ぜひお願いします」<br /> そう云って、家人と一緒に浅田次郎先生に写真を撮っていただいたのであった。<br /> シャッターを押したのは、くしくも、苦虫を潰したような顔をした、件(くだん)の編集者であった。<br /> これが、浅田次郎サイン会の顛末である。<br /><br />

浅田次郎のサイン会に行ってきた

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2018/03/17 - 2018/03/17

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nakaohideki

nakaohidekiさん

 長年の浅田次郎文学のファンである。
 もう嫌というほど浅田次郎作品は読んできた。その作品の数々を記せばきりがないのであるが、
 「鉄道員」、「壬生義士伝」、「月のしずく」、「蒼穹の昴」、「輪違屋お糸」、「中原の虹」、「オーマイガア!」、「地下鉄に乗って」等々、書ききれない。ところがこの3月、新作「長く高い壁」が出版された。しかも浅田次郎初の本格ミステリーだという。これもう買うしかないかないと思っていたところ、新聞広告でサイン会が行われるということを知った。今年の3月から4月にかけ、東京、大阪、福岡の三か所で行われるという。大阪の場所と日程を調べてみると、3月17日(土)に梅田のMARUZENジュンク堂で行われるらしい。予定を調節してさっそく浅田次郎先生サイン会に行くことを決めた。
 MARUZENジュンク堂梅田店は日本最大の売り場面積を誇る大阪の大型書店である。地下一階から七階までの巨大ビルのすべてに本が詰まっている。ぼくはサイン会の一週間前に電話をして整理券を確保した。
 サイン会は午後の四時開始であった。
 当日2時半にはMARUZEジュンク堂梅田店に着いた。着くとすぐ地下一階から7階まで見て回った。まあ、本好きには堪らない本の山であった。その逐一を述べる間もないが、なにせ洋書が七万冊、和書が二百万冊もあるのである。この店だけで2時間や3時間は充分に過ごせると思う。
 7階まで見て回ってぼくがサイン会の前までに買った本は、『ウオッカの背中』という本である。”ウオッカ”は洋酒の名前ではない。その名を付けた牝馬の競走馬である。牝馬で日本ダービーを勝った歴史的名馬の本である。
 この本を買った理由は、ぼくの趣味が競馬であるからである。しかもぼくは競馬の師匠として浅田次郎先生を崇めているからである。浅田先生は40年以上にわたって競馬に携わりしかも馬券収支はいつも黒字だという。そういう先生をぼくは競馬の師匠として慕っているのである。浅田次郎先生は競馬のエッセイもまた多数執筆している。これらの本もぼくの座右の書である。(「サイマー!」、「競馬どんぶり」等々)岐宿もこの日のサイン会は阪神大賞典の前日であった。
 僕は「長く高い壁」のサイン会で、浅田先生の眼の前にサイン本をさし出すと、
 「先生、明日は阪神大賞典ですね。先生は何を買いますか」と尋ねたのであった。
 「きみも、競馬が好きなのかね。ぼく最近は忙しくてねえ!。今日はまだ競馬新聞を見てないんだよ。明日のキミの予想はどうなんだい」
 浅田先生はサインをしながら逆にぼくにそう尋ねてきた。
 「ぼくは、クリンチャー、レインボーラインあたりが来るのかななと思っているんですが」
 「なるほどね。いいところ狙ってるね。競馬はいいよなあ! 俺も原稿書き止めて明日は競馬場へ行ってみようかな」
 すると、そばにいた編集者が慌てふためいた。
 「先生、それは駄目です。こちらがお願いしてる原稿の締め切りが明日までなんですから。いまから先生につきっきりでいますからね。離しませんからね」
 「これだよ、これ!。ねえ、中尾さん。困ったものだ。競馬もできなくなっちゃったんだよ。作家も好きな競馬もできなくなったら駄目だね」
 そこでぼくは、サインしてもらった本を受け取りながら、
 「先生、でも、いい作品をこれからも書いてください」
 「ありがとう。そういってもらえると嬉しいよ。じゃあ、記念に写真でも撮るかい」
 「ええ、いいんですか! 先生。ありがたいです。ぜひお願いします」
 そう云って、家人と一緒に浅田次郎先生に写真を撮っていただいたのであった。
 シャッターを押したのは、くしくも、苦虫を潰したような顔をした、件(くだん)の編集者であった。
 これが、浅田次郎サイン会の顛末である。

旅行の満足度
5.0
観光
4.5
同行者
カップル・夫婦
交通手段
JRローカル 自家用車 徒歩

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  • 浅田次郎先生と家人とわたし。<br />浅田次郎先生は意外と大柄な人であったので驚いた。<br />ぼくは165㎝、50キロであるがそれよりも一回りも二回りも大きかった。作品からでは分からない、体格の大きさである。<br />

    浅田次郎先生と家人とわたし。
    浅田次郎先生は意外と大柄な人であったので驚いた。
    ぼくは165㎝、50キロであるがそれよりも一回りも二回りも大きかった。作品からでは分からない、体格の大きさである。

  • 浅田次郎最新作。「長く高い壁」。<br />浅田次郎初の本格ミステリーである。<br /><br />日中戦争の最中、探偵作家小柳逸馬は従軍作家として北京に向かう。そこに待っていたのは第一分隊10名が全員死亡という大事件だった。戦死ではなく死亡?<br />従軍作家の目を通し、日中戦争の真実がと闇が、いま、解き明かされる。<br />

    浅田次郎最新作。「長く高い壁」。
    浅田次郎初の本格ミステリーである。

    日中戦争の最中、探偵作家小柳逸馬は従軍作家として北京に向かう。そこに待っていたのは第一分隊10名が全員死亡という大事件だった。戦死ではなく死亡?
    従軍作家の目を通し、日中戦争の真実がと闇が、いま、解き明かされる。

  • MARUZENジュンク堂梅田店。<br /><br />梅田ロフトや毎日放送の近くにある。<br /><br />梅田茶屋町。<br />

    MARUZENジュンク堂梅田店。

    梅田ロフトや毎日放送の近くにある。

    梅田茶屋町。

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