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ロシアのバレエ学校 バレエ劇場への案内<番外編>(1)

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2001/07/01 - 2001/07/01

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JIC旅行センター

JIC旅行センターさん

■驚異的!ロシアのバレエ学校

 ロシアはバレエ大国である。ボリショイバレエ、マリインスキー(旧キーロフ)バレエ、モスクワ音楽劇場バレエ、マールィ劇場バレエ(レニングラード国立バレエ)団などは、毎年のようにロシアから日本へ公演に来るし、他のヨーロッパや世界の国々で活躍するロシアのバレエダンサーも多い。ソ連崩壊後の踊り手やバレエ教師の海外流出などでロシアバレエの停滞説が囁かれる中でも、毎年次々と才能ある若手が現れている。

ではそのバレエという芸術を生み出す基盤はなんだろうか。それはしっかりとしたメソッドに基づいた伝統ある教育制度ではないだろうか。ソリストでもコール・ド・バレエ(群舞)でも、ロシアのバレエダンサーなら必ず経験するのがバレエ学校での8年間である。

 ロシア全土にバレエ学校は合計23校ある。これはまさに驚くべき数字で、ヨーロッパのバレエが盛んな国々でも国立となればひとつあればいい方で、アメリカや日本はバレエに関心が高いと言っても、恥ずかしながら国立のバレエ学校は存在しない。つまり、日本においてバレエはまだまだお稽古事の域を出ないのだ。

 ロシアの2大バレエ学校はモスクワにある国立モスクワ舞踊アカデミー(通称ボリショイバレエ学校)と、サンクト・ペテルブルクの国立ワガノワバレエアカデミーである。これ以外にペルミのバレエ学校とあわせて3大学校ともいわれるが、ほかの2校と比べるとペルミは若干レベルが落ちる。これらの学校はバレリーナへの登竜門で、卒業者はボリショイ・マリインスキーをはじめロシア中の舞踊団に招かれる。しかし、それだけに入学の競争率は大変厳しいものだ。

 ワガノワバレエ学校について言えば、毎年3000人?4000人の子供たちが、わずか70ほどの席をねらって試験に望む。そしてさらにこの生徒数は8年後の卒業時には半分ほどに減るというのだから、まさに長難関・エリートコースと言える。入学試験はまず身体条件、そして念入りな医学的総合チェックを経て、最後に舞踊および音楽的芸術表現における素質の試験と、3回にわたって行われる。これだけ厳しいので、有名ダンサーの中には2回、3回受けてやっと合格したという人もいるほど。最近では各学校が準備コースを設けていたり、私立のスタジオに通わせたり、とロシアにも「お受験」に熱心なお母さんはいる。


■ワガノワ・メソッドと学校教育

 ロシアのバレエ学校での教授法はワガノワ・メソッドといって、20世紀初頭の名教師アグリッピーナ・ワガーノワによって完成されたものである。ワガノワ・メソッドの特徴は脚の動きだけでなく、頭の角度や腕の位置、上体の使い方すべてに気を配り、身体全体の調和を大切にするところである。腕や上体の動きは脚の動きを助け、無理なく大きな動きができる。そしてまた、ワガノワ・メソッドで教えられる足の裏の使い方は、上手く床をつかみ、床を味方につけることによって、一本の軸脚で動く時の安定したバランスや大きなジャンプとやわらかな着地を生み出す。バレエはその国によって踊りのスタイルが違ってくる。ワガノワ・メソッドを身体に叩き込まれた旧ソ連出身のダンサーの踊りはのびやかでキレがあり、また音楽的で、どこにいても一目でわかる。

また、すべてのバレエ学校が同じメソッドで教育しているため、特に「白鳥の湖」第2幕などで見られるコール・ド・バレエにおいての美しさは、ロシアのバレエ団が世界一である。2、30名の群舞が列をなし、整然と揃って踊る姿は美しく、観客を幻想の世界へと導く。頭や腕、脚の角度が揃っているだけでは体操競技のようになりがちなコール・ド・バレエを、同じスタイルを持つダンサーが踊ることで音のとり方や解釈、すべてが教えられるのではなく、自然に揃うことによって見事なハーモニーが生まれる。これがロシアバレエの精髄でもあり、世界の頂点にたつ所以である。

 バレエ学校での教育は約10歳から8年間で、5年と3年とに分けられる。生徒たちの踊りはプロに比べて技術的には未熟であるけれど、決してプロの踊りを下手にしたものではない。学校では学習の各段階で徹底し完璧な技術の習得を求められる。だから単純な動きしかできない10歳前後の子供たちでも、その動きは究極に美しいものになる。

 クラッシックの初級のクラスでは筋肉を発達させ、靭帯や関節を柔軟にするために、何度も同じ動きを繰り返す。中級では、様々なコンビネーションも取り入れられるが、ここでは上級に進んだ時に舞踊的教養を養うことができるように集中力をつけるように指導もされる。上級になると下の学年で行われている練習はすべて毎日行われる。ただ、技術が上達しているため、練習のテンポが速く、その内容は無限に変化していく。

 学校での授業はクラッシックのほかに、キャラクターダンスや現代舞踊のレッスンもある。また一般科目の授業もあり、その中にはピアノやフランス語、またバレエ学校ならではの舞台芸術史・美術史・舞踊史・音楽史も含まれている。キャラクターダンスの授業はバーレッスンからすでに、クラッシック舞踊のレッスンとほぼ同じ動きが民族舞踊風にアレンジされていて興味深い。この授業を通して生徒たちはロシアや世界各地の民族舞踊を学び、「白鳥の湖」第3幕のスペインの踊りのように情熱的な雰囲気を作り上げることができるようになる。上級生で始まるデュエットの授業では、女性のサポートの仕方やリフト等技術的なことを習得するなかで生徒たちはパ・ド・ドゥで踊るときのパートナーシップの重要性を学び取っていく。男子生徒にはフェンシングも教えられる。

またこの他に演技指導の授業もある。この指導法はロシア演劇の伝統を取り入れており、多くの名優ダンサーを生み出してきた。この演じることのできるダンサーたちが、ソビエト時代から多く作られてきた、伝統的な物語性の強いドラマ・バレエを支えてきたのである。

 学校の授業や定期公演、卒業公演のほかに、生徒たちは子役として、ボリショイ劇場やマリインスキー劇場他、生の舞台に立つことができる。劇場でのリハーサルと舞台出演は、生徒たちにとって絶好の学習の場である。生徒たちは実際の舞台に立つことにより、役柄を演じることや、芸術家としての自覚に目覚めていく。このように生徒たちは8年間の学校生活でプロとして送り出すために様々な方面から「完成」されていくのである。

 このような教育方法をもつため、これだけのバレエ大国でありながら国際コンクールでの低年齢の受賞者はそう多くない。日本人にありがちな、テクニック重視のいわゆる大人のミニチュア版バレリーナがほとんど存在しないのはこういうわけだ。

(つづく)

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