2015/09/20 - 2015/09/20
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チロル州の州都インスブルックからザルツブルク/ウィーン方面にオーストリア国鉄ÖBBの列車で20分ほど、イエンバッハの駅で接続するのがアッヘン湖鉄道(アッヘンゼー鉄道/アッヘンゼーバーン)。
標高530mのイエンバッハから970mの峠を越え、標高931mのアッヘン湖を結ぶ全長6.8km、線路幅1mの狭軌路線で、1889年の開業以来130年近くにわたって、蒸気機関車だけで運行してきました。
アッヘン湖鉄道には1000分の160の急こう配があるため、イエンバッハを出てから途中の列車交換駅エーベンまでの間には、線路の間にリンゲンバッハ式のラックレールが設置され、これに車両の歯車を噛み合わせて登ります。
全線の所要時間50分。終点、アッヘン湖の湖畔のゼーシュピッツでは、遊覧船に接続しています。
ウイキペディアによると、アッヘンゼー鉄道は、1889年の開業時に1号から4号まで4両の蒸気機関車を導入したそうです。4号は第二次世界大戦後に他機への部品供給のため書類上は一旦廃車となります。それ以後2005年までは残った3両で運行してきたが、古い部品や予備の部品を使って4号機が再建され、4両体制に戻ったのだとか。
イエンバッハからアッヘン湖を往復する、クラシックなSL列車を詳しくご紹介します。
なお、下記のURLでは動画も掲載しています。
イエンバッハからアッヘン湖へ往路。
https://omoidenoshasoukara.web.fc2.com/tabinoshasoukara/achensee/achensee1.html
このページの下の方。
アッヘン湖からイエンバッハへの復路。
https://omoidenoshasoukara.web.fc2.com/tabinoshasoukara/achensee/achensee3.html
このページの中ほど。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 交通手段
- 鉄道 船 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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オーストリア国鉄ÖBBの高速列車レイルジェットでイエンバッハ駅に到着。
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オーストリア国鉄ÖBBイエンバッハの駅舎。コインロッカーがあります。
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二階建ての国鉄イエンバッハ駅舎につながった一階建ての部分が、アッヘンゼー鉄道のイエンバッハ駅。土産物の売店を兼ねたカウンターで、アッヘンゼーまでの往復乗車券を購入します。
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アッヘンゼー鉄道には160‰の急勾配があるため、イエンバッハを出てから途中の列車交換駅エーベンまでの間には、線路の間にリンゲンバッハ式のラックレールが設置され、これに車両の歯車を噛み合わせて登ります。国鉄とアッヘンゼー鉄道の共用のホームには、ラックレールと歯車のモニュメントが。
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アッヘンゼー鉄道は、現存するオーストリア最古のラックレール式の鉄道です。構内の入口には、こんなゲートが立っていて、中央には歯車のマーク。
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ゲートの下に設置されたラックレールと歯車の実物。蒸気機関車のピストンで駆動したホイールから歯車に動力を伝達する構造がよくわかります。
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ラックレールに噛み合うもう一つの歯車。これは動力を持たない客車の車輪でしょう。
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列車の出発まで時間があり、構内の向こうに扉が閉まった車庫らしきものがあるので行ってみることに。
内部を見学させてもらおうと、大きな扉の真ん中に付いた小さな扉に手をかけると、鍵はかかっていません。中に入って声をかけてみたけど、誰もいない様子。 -
車庫の中には、赤と白に塗り分けたクラシックな2軸の客車が1両。車内に通路はなく、各ボックスシート毎に設けたドアを開けて乗車する構造です。
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もう1両、青と黄色に塗り分けた小さな客車は、片側にだけデッキがあります。手前に置かれた資材などを移動しないと外に出せないので、通常使用はされていないようです。
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奥にはL型車体の小さな入れ換え用ディーゼル機関車。
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その横では2両の客車を組み立て中。出来上がればクラシックなスタイルになるのでしょうが、実はアルミ製の最新型。
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その裏に別の建物があり、4つの扉の前にトラバーサーが設置されています。もとは、右側のハンドルを回して手動で横移動していたものを、フォークリフトで動かすようにしたと見受けます。扉の上の壁が黒く煤けているので、ここが蒸気機関車の機関庫のようです。
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機関庫に向かう線路の横に給炭設備があります。石炭をベルトコンベヤーで貯蔵場所に上げ、重力で落として機関車に供給する構造のようです。
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この口から機関車に石炭を積み込む。
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給炭設備の横の本線は、駅構内の外れから急勾配にかかるため、ラックレールが始まります。その導入部分に、木枠に切ったゴムタイヤを貼り付けたものが設置されていますが、目的は何でしょうか。
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2号機がバック運転で1両の客車を牽き、山から下りてきました。何故か乗客は乗っていません。
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続行運転で3号機が2両の客車を牽いて国鉄のホームの向かい側に到着。こちらから乗客が降りてくるので、2号機は団体客でもアッヘン湖に送り届けた帰りの回送列車だったのかもしれません。
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3号機は一旦客車から切り離され、機関庫の手前で給水中。
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バックで戻ってきて、
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ポイントを切り替え、
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客車の後部に連結。機関車は、急勾配で水平を保ってボイラを空だきしないよう、平坦線では前屈みの姿勢になっています。
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先頭の客車に前部デッキに前方監視の職員が乗車すれば発車準備完了。この前部デッキにもベンチがあり。車掌さんに聞いてOKをもらったので、この特等席に陣取ります。
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イエンバッハ駅の構内を出るとすぐに急勾配が始まるため、2本のレールの真ん中に、リンゲンバッハ式のラックレールが設置されています。ここを通過する時、客車の床下からガチャンと歯車とラックレールの噛み合いが始まる音が響きます。
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列車は右に左にカーブしながら住宅の庭先を抜け森の中へ。機関車は黒煙を噴き上げ全力で列車を押し上げます。イエンバッハから1.4kmのところにリクエストストップのブルゲック駅があったはずですが、いつ通過したのか気付きませんでした。
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途中には踏切もあり、機関車が甲高い汽笛を鳴らし、前部デッキに添乗の職員は、屋根からぶら下がった機関車とつながる紐を握って前方監視を続けます。
デッキのベンチに座っている私たちに、ここがこの鉄道で最も勾配のきついところだよと教えてくれます。 -
視界が開けると、長閑な山里の景色が広がります。
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イエンバッハから3.6km、30分ほどでラックレール区間を抜け、列車交換駅のエーベンに到着します。
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停車時には、前方監視の職員も、デッキのハンドルを手で回して客車にブレーキをかけます。
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標高970mのエーベン駅で上りの急勾配が終わるため、客車の後部に連結していた機関車を切り離し、列車の前部に連結します。
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バックしてきて、
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中央のバッファを付き合わせ、左右のチェーンを客車のフックに引っかけて連結完了。これでは急勾配では機関車が後ろから押し上げないと安心できませんね。
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でも、機関車が前向きで先頭に立つ方が絵になります。
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前方から、4号機がバックでイエンバッハ行きの列車を牽引してきました。ポイントの切り替えは全て手動です。
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エーベン駅で列車交換。
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4号機のイエンバッハ行きが先に発車していきます。
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機関車が前に付いたので、先頭客車の前部デッキは機関士の運転操作が目の前で見られる特等席に。
機関士がハンドブレーキを緩めてゼーシュピッツ行きも発車すると、機関助士が火床の整理を始めます。 -
ここから先はアッヘン湖に向けて緩い(といっても最急勾配は25‰)下り勾配のため、機関助士の投炭作業はもうありません。
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途中の街中に、マウラッハとマウラッハ・ミッテの2個所の駅があり、機関士が機関車のハンドブレーキを巻いて停止。先ほどまで前方監視の役に当たっていた客車のデッキの職員も、同時にハンドブレーキを扱います。両方の駅では、数名ずつの乗降があります。
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エーベンから先は速度を上げ、草原の先にアッヘン湖が見えてきます。
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こうして、イエンバッハから50分でアッヘン湖畔の終点のゼーシュピッツに到着。
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すぐに機関車への給水作業が始まります。
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隣接する桟橋には、列車に接続して運航する遊覧船が接岸中。船のデッキから見た列車。
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遊覧船に乗り換えて15分程のペルティサウで下船。
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船はさらに細長いアッヘン湖の奥に向け出港していきます。
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湖岸の村、ペルティサウ・アム・アッヘンゼーのホテルのレストランで昼食をとり、付近を散策していると先ほどの船がゼーシュピッツに向け戻ってきます。
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遊覧船はペルティサウを出港。
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船がゼーシュピッツに近づくと、湖岸では到着した列車の機関車の付け替え作業中。
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4号機が客車と連結。バック運転で出発の準備を終えて待機中。
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ゼーシュピッツで遊覧船と並んだアッヘン湖鉄道の列車。
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4号機の足回り。
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空港バイク間では、ラックレールに噛み合う歯車。
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帰りはバックでけん引。
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発車時刻が近づくと乗客が集まってきた。
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書類上は一旦廃車になった後に、21世紀になってから復活した4号機。車体の側面には製造時の1889年のプレートが。車体も当時のものが残っていたのでしょう。
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石炭はキャブの中に置いている。
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帰りは、機関車の次位に連結した窓ガラスのある客車に乗ることに。
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ドアのガラス窓だけが開閉式で、閉めるときは窓枠の下辺に取り付けた革のベルトを引き上げる構造。車内側にはドアのノブがないので、下車時には先に窓を開けて車外に手を出し、外からドアを開けるイギリス式。
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先頭客車から、前に連結した機関車にご対面。
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イエンバッハに向けて発車した列車は、草原の中を快調にとばします。
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客車内に通路がないため、車掌さんは走行中に車外のステップをつたってやってきます。
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窓を開けて外から検札です。
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途中のマウラッハとマウラッハミッテの2駅からも乗車があり、10分余りで交換駅のエーベンへ。
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オーストリアは、クルマは右側通行でも路面電車や地下鉄を除く鉄道の多くは左側通行。アッヘン湖鉄道も列車交換時は左側の線路へ。
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先に到着したゼーシュピッツ行きの列車が交換を待っています。機関車の前部への付け替えは、列車交換の後のよう。
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2人の乗客を降ろして先に発車。向こうの牽引機は往路に乗った列車の3号機。こちらの列車の後を追ってゆっくりバックをはじめ、機関車の前部への付け替え作業が始まる模様。
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ここからラックレール区間が始まり、列車は急勾配をゆっくりと降りていきます。
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ゼーシュピッツから40分余りで終点イエンバッハに到着。乗客を降ろした列車は機関車の推進で車庫に向かいます。
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2両の客車間の連結器は切り離してあったようで、機関車がブレーキをかけると1両目の客車はそのまま車庫の中へ。車庫入れは突放で行われ、客車のデッキに乗った職員がハンドブレーキで所定の位置に停止させます。
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夕刻の列車は乗客が少ないためか、4号機と客車1両の短い編成でゼーシュピッツに向けて発車。
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本日の最終列車がゼーシュピッツに向けて発車。
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先に機関庫で休む2号機の横を抜け、ラックレール区間にかかります。
イエンバッハとアッヘン湖の間にはバスも運行されているので、アッヘンゼー鉄道の乗客の大半は観光客。運行は、毎年4月末から10月末頃まで。
詳しい運行日や時刻等は、公式ホームページへどうぞ。
http://www.achenseebahn.at/
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