2011/01/15 - 2011/01/16
586位(同エリア1205件中)
のうりかさん
ここからの旅行記は、nakaさんこと、nakamasananiwaさんの旅行記、「ピンホールから覗いてみたMelaka,Malacca,マラッカ」https://4travel.jp/travelogue/10555028とシンクロナイズしています。
僕がupしていない写真は、まさにnakaさん独自のマラッカを知り尽くしたオヤジでしかフォーカスできえないものばかり。
この際だから、覗いてみてください。
というか、2つの旅行記を合わせて、ようやっと納得してもらえるものになると(一粒でニ度美味しいかは別として)思われますので。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- ホテル
- 4.5
- グルメ
- 5.0
- 交通
- 4.0
- 同行者
- 友人
- 交通手段
- 高速・路線バス タクシー 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
PR
-
ネコオヤジを乗せたバスはシンガポール川を渡り、一路、マラッカを目指す。
シンガポールから朝8時発のバスに乗り、マラッカでnakaさんと合流する予定。 -
初めての国境越えにドキドキもんの僕をシンガポールの出国管理ゲートで目ざとく発見したのはnakaさん。
なんだか、とてもうれしい。
シンガポール市民と外国人の並ぶレーン越しに大声で挨拶を交わし、再びそれぞれのバスへ。 -
島国の国境は水道を渡る。
渡し舟ではなく、国境に架かる橋を。 -
そしてマレーシアのイミグレーション。
僕にとっては、これも初めての体験。
ヨーロッパで3か国回っても、国境は空で越えていた。
シェンゲン条約なるものを正確に理解してはいなかったが、最初と最後の空港以外でパスポートにスタンプを押されることもなく、旅行者はユーロ圏内をボーダレスと錯覚してしまう。 -
あとは、赤茶けた地面とアブラ椰子の
風景が延々と続く高速道路をマラッカへ。
途中、休憩のために高速道路を降りて、ドライブインへ。30分の休憩。 -
バスがマラッカの市街地へ入った頃、nakaさんからメールあり。
既に自分のホテルへ着いたらしい。 -
本日の宿はこのバスの終点。
エクアトリアル・ホテルに到着。
https://www.equatorial.com/mel/index.php?navi_id=1&lang=1 -
ありていに申し上げる。
マラッカのイメージは世界遺産の街並みしかなかったので、大きなホテルや、最先端の医療サービスを提供する病院があると言われてもピンとこなかった。 -
先にマラッカ入りしたnakaさん。
エクアトリアルのロビーでお出迎え。
Did you miss me ?(冗談です)
この時点で時間は午後2時。
半ズボンにサングラスの怪しいオヤジ2人の街歩きがスタート。
しかし、これが半端な歩き方ではなかった。 -
「人間歩かんようになったらようあかん」と言うnakaさんは毎朝奥さん、愛犬小タロを従えて散歩する。
毎日、ウォーキングをするnakaさんの健脚はマラッカを3Laps(同時に僕を周回遅れに)するくらいなんでもない。
かたや、僕の喫煙習慣は、もし今100mを全速で走ったり(まあ天変地異でも無い限りあり得ないが)したならば、目の前に闇の帳が落ちて絶命の危機だろう。 -
人生も半ばを過ぎようとする中年オヤジにとって、nakaさんの終始落ちることないウォーキングペースには嫉妬さえ感じる。
まずはホテルの前から西へ。 -
途中nakamasaオヤジが改修中の家屋に古い瓦を発見。
世界遺産の町屋は改修も原型を極力留めるよう注意を払われるらしい。
思い出したのは僕の親友Y。
世界遺産ではなかったが、Yのお母さんの実家もそうだった。
Yのお祖母ちゃん曰く。
「柱や梁を勝手に改修できない」らしい。 -
おおよそ熱帯でしか許容できない、ありえないほど、これでもかと極彩色にデコレーションされたトライショー(サイドカー付き自転車)が客待ちしている。
「のうりかさん。乗りたいでしょ?」
と、nakaさん。
「ええ、まあ」とお茶を濁すネコオヤジ。
僕は、こと観光地で、かようにド派手な、シラフではけっして凝視できかねるものに遭遇する度に、「世界はなんて素晴らしいのだろう!」と叫びながら、100mくらい走り出したい衝動にかられる。
エッフェル塔に3回登っても、東京タワーからは生涯を通じてその登頂する機会を見放された日本国市民ネコオヤジ。
自慢じゃないが、小樽の人力車はもちろん、NYCのベロタクシーも、馬車にも興味はない。
「ええ、まあ」を肯定的に受け取ったに違いないnakaさん。
「あとのお楽しみにとっておきまひょ!」
と、意味深な笑顔。 -
サンチャゴ砦跡。
nakaさんから、大砲が海に向かって鎮座する砦のあたりが、かつて海岸線だったと聞かされ、やっとマラッカが埋め立てでできた町だと気づく。 -
オランダ広場へ出た。
赤く塗られた外壁は大英帝国が支配したころのからのもの。それまでは白い外壁だったそうだ。
なぜ、赤く塗られたかは諸説ある。とnakamasaおやじ。 -
nakaさんから街案内の説明を受ける都度、
「ほほう!」
「へえ?」
「ほんとに?」
「はじめて聞いたよ!」
を何度も繰り返すネコオヤジ。
マラッカの街を南北へ流れる川を渡る。
名前は、まさか?とは思ったが、やっぱりマラッカ川というらしい。
ここがオールドタウンとの結界。 -
ここで、僕が「マラッカでしたい3つのこと」を紹介しておく必要がある。
① チキンライスを食べる
② 香林寺に参拝する
③ 海に浮かぶイスラム寺院を見る
nakaさんにとっては、「なんでそんなもん?誰も興味もたんとちゃう?」と思ったことは想像に容易い。
それでも「おやすい御用でっせ!」と案内してくれはるには、そうとうにネコオヤジのサプライズを引き出す自信に満ち満ちたご返答だったと思われる。 -
まずは、nakaさんおススメの「チキンライス」。
「勢いのある」とnakaさんが評するレストランの前には、勢いに引き付けられた客が長蛇の列 -
並ぶのが嫌いな僕を気遣って、nakaさんセカンドチョイスの店へ。
-
「古城鶏飯粒」
-
ライスが丸い団子になっている。これも「初めて見たよ!」
チキンはもちろん美味。
ライスボールをスプーンで食べるのも面白かった。
「マラッカでしたい3つ」の1つ目が達成された。 -
ジョンカー通りのGEOカフェ前をパスして、
-
nakaさんがご贔屓のケーキ屋を紹介され、夕方また来るよと僕まで握手。
-
たどり着いたのは「香林寺」
このお寺に参拝しようと思ったのは、マラッカの地図で散乱するモザイク、あるいは乱数表から3Dのように「香林」の文字が飛び出してきたから。 -
僕の娘と同じ名前という理由だけ。
想像していたとおり、広くない敷地。コンパクトな本堂。
僕とnakaさん以外に参拝者はいない。
しかし、線香からの立ち上る煙。 -
縁あって、nakaさんに案内され、ここまで来たお礼と家族の安寧、世界平和を祈ってみた。
nakaさんは、僕を急かすこともなく、にやにやしながら行儀の良い番犬のように待っている。 -
空の様子が怪しい。
スコールになるのかもしれない。 -
イスラム寺院の尖塔。
この通りのランドマーク。
本来ならミナレットはもっと高く天に聳えているものだと思ってはいけない。
ここはマラッカ。
かつてコンスタンチノープルが東西の文化の中心であったように、マラッカもまた世界中の文化が交差した地球上でも稀有なスポットだったのだから。 -
この通りはマラッカでも古い。
つまりマラッカ建国からの歴史がある。
初めてマレーシアに飼い主こと女房ニコトラと旅したとき、思い出すのは「カラーズ」という言葉。 -
英語の「カラーズ」は「旗」という意味もあるのだが、僕は人種のカラーズ(特色)なのだと旅の終わりに、整理しきれない刺激だらけのKL訪問について、いささか食傷ぎみになりながらも、旅の思いとして綴っている。
-
通りのはずれにあった骨董屋。
「片付ける、イコール、捨てる」が信条の飼い主ニコトラに言わせればここに並ぶすべてが「ゴミ」だと断言するだろうな。 -
ゴリラのデザインで人気のあるTシャツの店を確認。
4travelでKLのアドバイスをちょだいしたメンバーちょびれさんが、「思い出したらTシャツを買ってきて」と言っていたので。
nakaさんも興味ありげに店内へ。 -
自分のも含めてお買い上げしようという気持ちは満々だったものの
、nakaさんから「今、買ったのでは街歩きの荷物になりはしないか?」
との発言に異存はなく。
夕方食事の後に再度訪問することとしたわけですよ。
これが・・・。 -
マラッカ川をリバークルーズの船が溯る。
-
ここで、nakaさんのお友だちの店へ。
店のオーナー、ボブさんに紹介され、握手。
陽気なオヤジ。
nakaさんはマレー語も話す。 -
冷たいビールを飲んで小休止。
-
プラナカンの家並が続く。
nakaさん曰く、看板の「當」とあるのは「質屋」なんだってさ。
「!」やっぱり!
香港では「押」だよな。
中華文化圏でよく見る看板の正体が本日解明された瞬間。 -
ロンドンなら「TO LET」も目に付く看板。
質屋じゃないけど、「あれなに?」または、「What does it say ?」の対象は世界中にあふれているものだ。
マラッカは京都の町屋と同様に、通りに面した間口で固定資産税にあたる税を課せられたらしい。
とnakaさんの説明。
なるほどねえ。
だから、ウナギの寝床のように奥へ長い間取りなわけだ。
この際だから、なんでも初めて聞いたように感心しておく。 -
次に目指すのは、僕がnakaさんにエキストラでリクエストした聖ザビエル教会。
旅の雑誌で記憶にとどめていた一枚の写真をどうしても確かめたくなったから。
教会のステンドグラスに描かれた「ヤジロウ」こと「アンジロウ」に会いたい。 -
想像していたとおり、聖ザビエル教会のファサードは大きくない。
ゴシックのアーチをくぐり、聖堂の内部へ。
ミサの時間でなくとも、熱心な信者が祈る姿は、世界中のどんな宗教施設も同じ。 -
はたして、僕が会いたかったヤジロウはステンドグラスの中に立っていた。
ザビエルが宣教のため日本へ渡ったのは、ヤジロウの存在なしにはあり得なかったと伝えられている。
一説には鹿児島出身の武士だったとも、罪人として国を追われマラッカまで逃れていたとも諸説あるが、ヤジロウの出自もその最期も明らかにされてはいない。 -
教会の敷地内にあったルとヤジロウがブロンズの立像。
大昔に異国に渡り、帰国の願い叶わずにその地で生涯を終えた日本人は遣唐使の阿倍仲麻呂が最初だなどとはこれっぽっちも考えていないが、マラッカ川にかかる橋から狭い路地に入ったときにnakaさんが教えてくれた、1ブロック向こうが「からゆきさん」の通り・・・、という言葉には、なにやら心穏やかならざるものがわいて、数年前、NYCのユニオン駅へ向かう地下鉄で聞いた「人生をありがとう」の物悲しいメロディーが、東急製のステンレス車体とブレーキを軋ませんがら暗闇へ去って行った光景がよみがえった。
誰も故郷を忘れたりはしない。
毎週の国境越えという奥さんとの貴重な時間をオーバーテイクし、今日、マラッカの街案内を厭な顔ひとつ見せずネコオヤジのために費やしている、この目の前のオヤジこと、nakaさんこそ、遠い過去、祖国に自分の存在も思いも残したまま、人生をそっくりおいてきた、その一人なのだ。
すでにシンガポール市民としての時間が日本市民としての生きた歳月より長い。と、nakaさんは語っていた。 -
「よかったねえ。ヤジロウのステンドグラス見れて」と、nakaさん。
「うん。満足しました。ありがとうnakaさん」
「では、次の目標はどうしまひょ?」
もちろん。に浮かぶイスラム寺院につれってちょーだい!
サン・パウロの丘を迂回して、路地をのんびり歩くマラッカの猫にあいさつし、丘の東側まで歩く。 -
エクアトリアルの周辺に待機している
ライショーが数台。
nakaさんがドライバーの青年をつかまえて交渉に入った。
nakaさんがとのやりとりがマレー語なのか英語なのか判別しようもなく、ややあって商談成立。
ここから3kmはたっぷりとあるらしいコースを格安で乗せてくれるらしい。
ドライバーのお兄ちゃんと握手し、トライショーに乗り込むオヤジ2人。
2人は狭いよな。 -
怪しい雲が垂れ込めた街を海に向かってトライショーがスタート。
僕が行きたいとリクエストしたイスラム寺院はマラッカの海岸でも、埋め立てた先に位置するらしい。
インターネットでマラッカを検索すると画像でも見つけることができる。
大通りを横切り、水路に架かる橋の坂で、トライショーがスローダウン。
不本意ながら、お兄ちゃんもオヤジ2人の体重にはこの登坂を断念せざるを得ないらしい。
降りて、坂のピークまで歩くオヤジ2人。
我ながらシュールな光景だと感じる。
下り坂から海岸通りへ。
この海岸通り。なにやら雰囲気が怪しい。
生活の臭いが伝わってこない。
訝しがるネコオヤジの様子を察してnakaさんが解説。
「新しいアパートや店が並んでるけど、誰も住んでないんだよ。中国の資金が入った開発事業では珍しくないことなんだ。日本では考えられないでしょ?」
確かに。それにしても建設中の鉄骨がそのままで現場に放置してよいものなのか、そもそも。
わかりやすいと言ってよのかどうか、理解し難いこのありてい。
そして、当然のようにお約束のスコールがやってきた。 -
沿道に低い松が続く先、ドライバーというか、漕ぎ手?のお兄ちゃんが、僕らを振り返って前方を指さす。
驟雨のスクリーンに浮かび上がったのは、フローティング・モスク。
はますます強くなってきた。
異教徒に祝福の洗礼か?
または、いやがらせというべきか。
お兄ちゃんに待機してねとお願いし、モスクへ。
しかし、これはパンツまでではないけど、ビショビショだよ。 -
モスクの前で、濡れ鼠状態のオヤジ2人を年配の警備員がウェルカム。
当然のように、このままでは入れないらしい。
ずぶ濡れ以前に、半ズボンにスネ毛バリバリだ。
更衣室に案内され、ムスリム服だっけ?カンデューラ?それも青い布製を羽織り、モスクへ入る。 -
モスクの伽藍は、文字どおりガラーンとしていて、礼拝を行っているグループが数名
-
テラスに出ると、マラッカ海峡が広がり、沖には大型の船舶が航行する姿を確認できた。
-
なんと、雨があがっている。
-
遠くの晴れ間には陽光が海面を照射し、この世のものとは思われるぬシュールな光景。
さらに、虹まで出ちゃったよ!
nakamasaオヤジの神通力。
ここに極まる。 -
そのときなぜか、神の啓示などではさらさらないのだけれど、口ずさんだメロディーは、「On a Clear Day. You Can See Forever.」
口笛でそのままビル・エバンスの旋律を続けていたいほどに。
羽織ったムスリムのマントを翻しながら。
(さすがに踊りはしなかった。間違いなく警備員に通報されるのでね)
満足した。
なにか、心のどこかが救われたのだと感じた。
nakaさんに感謝した。 -
警備員のおじさんにお礼を述べ、もちろんムスリム服は着替えて。
はたして、トライショーのお兄ちゃんは待て、と言われた忠犬のように、モスク前の広場に笑顔でお出迎え。
こら、お代をはずまなあかんわね。 -
帰り道でも雨は断続的に降っていて、商売車備え付けのボロ傘を、お兄ちゃんが濡れないように僕が持ってみたけど、濡れ手に粟では、ないな。ザルで水を汲むようなヤケのヤンパチ状況。
そしてお約束の橋のスロープで再び車を降りるオヤジども2人。
トライショーを押すまで逼迫した事態ではないらしい。
nakaさんに、質問してもらった。
「今までフローティング・モスクまで乗せて行けと言った日本人はいたか?」
お兄ちゃんの回答、
「そんな客は日本人以外にもいないヨ」
ホテル前で車を降り、20リンギット増しでお支払い。
お兄ちゃんと握手してお別れ。 -
さて、最後のリクエスト「夕陽を見る」まで時間もあるし、着替えて出直しまひょ。と合意するオヤジ2人。
僕のホテルでシャワーしたら?という提案をnakaさんは丁重にお断りにならはったので、しつこくはすすめず。 -
部屋に戻り、シャワーし、濡れたものすべてをベランダに干した。
眼下のプールでは、水着にTシャツという理解しがたい集団が、おおよそ水泳とは思えない運動を楽しんでいる。
ここはイスラム文化圏だったんだ。
nakaさんとの約束した時間まで余裕がある。さっきずぶ濡れになったばかり。
プール大好きと自他ともに認める僕だが、ここはラウンジで一杯ひっかけるのがエクセレント・チョイス。 -
カクテルタイムが始まったばかりのラウンジには誰もいない。
スタッフの姿さえない。
串焼きのような揚げ物のサテーを皿にのせて、冷えた白ワインをグラスに注ぐ。
と、そこへポケットの電話がブルブル。
nakaさんからだ。
「早かったねえ。いま行きます」
白ワインを一気飲みし、ロビーへ。
今夜、このホテルでは結婚式の披露宴が2組あるらしい。
ドレスアップした老若男女が三々五々、ロビーにあふれてきた。
僕が滞在先に老舗のホテルを選ぶ理由の一つ。
ローカルの人たちは、どれくらいそのホテルが愛しているかを知りたくて、目的地に古いホテルがあれば、迷わず宿泊をチョイスしている。
それがシンガポールならグッドウッドパーク、台北ならアンバサダー、九龍のシャングリラ。そしてここ、マラッカではエクアトリアルだったということだ。 -
雨もあがって、気分も上々。
オヤジ2人の街歩きが再スタート。
サンチャゴ砦で記念写真を撮る仲良しご一行様。 -
ローカルな猫たち。
猫がネコオヤジとのコンタクトを避けていると感じたnakaさん。あれこれアドバイスして猫とネコオヤジの機嫌をとろうと気遣いしている。
「nakaさん、いいんだよ。猫はこれで」
猫は猫どうし、初対面で親しくなることはあり得ない。
家ネコでなければなおさらそうだろう。
それと、僕がローカル猫たちにある種の恐れを抱いたのを気取られたから。
nakaさんが「かわいらしい猫や」と目を細める先の、この砦を根城とするローカル猫たちの佇まいは、日本にいる猫とは明らかに違う妖気を醸し出していた。 -
夕陽のスポットは丘の上。
-
セントポール教会の白壁が現れ、薄暮の空に片手のないザイビエル像が僕たちを迎えていた。
マラッカの徘徊中、いや、探検中に僕が手を広げて「はて?」や「Oh,No !」のゼスチャをすると、「のうりかさんは、ザビエルさんみたいやな」とnakaさんに度々苦笑された。 -
マラッカ海峡を望む展望台に立つ。
「ああ、今日はむつかしいかなあ!」
とは、夕陽評論家(鑑賞家ともいう)nakaさんの弁。
水平線は雲に隠れてはいるが、水蒸気たっぷりの大気のかなたに、パリのマルシェに並んでいるトマトのような楕円の橙色が、本日最後の熱量をマラッカの空に滲ませていた。
nakaさんが僕に見せたかったのはこの夕陽。
午後のモスクでスコールの洗礼を受けたネコオヤジには、この夕陽も奇跡に思えてならなかった。
それは、「一日に奇跡が二回起きたら、人生はとてもつまらないものになってしまうでしょう」と、遠い昔誰かが言った言葉にうなずいていた自分がいたとしても。
「満足しましたか?」とnakaさん。
「美しい夕陽でした。ありがとう。nakaさん」 -
丘を下って、夕暮れのオランダ広場へ出た。
-
車が流れる切れ目をとらえ、いささか生命の危険を感じながら道路を渡った先に、古跡があって、nakaさんの解説もろくに聞きもせず、深く掘ったその先を覗き込んでいたのだと思う。
「のうりかさん、こんなもんいつまでも見てたらあかん」
nakaさんの声が、いつになく神妙なトーンに響いて我に返る。
「晩ごはん、どこにする?」とnakaさんのにんまり顔。
「地下に思いを馳せるのは危険」とnakaさん。
マラッカに囚われたと心配されたらしい。
そのとおりだよ。nakaさん。
価値あるものは地下に眠る。
ルーブルや故宮の収蔵品がそうであるようにね。 -
ヒーレン通りあたりから。
モコモコなコートでバッグをころがす大陸系のご一行様。ただ今到着なのか?それにしては空港からずいぶん時間が経過してないか? -
ホテル・プリ
このネオンサインがなんとも言えない味わい。クラシックな街並みに映える。
ほんとは、このホテルを予約しようと思ったんだけど満室だった。
KLIAまでのバスチケットをnakaさんに拝み倒して買ってもらった手前、「どうしてもプリに泊まりたいから!」とまでは言わなかったネコヤジ。 -
旅の基本は、今、その瞬間を旅すること。
旅を計画したときから、その旅が始まっていると言う人もいるけれど、僕はそう思っていない。
計画どおりの旅だったら、奇跡が起きても気がつかないほど、つまらないものになってしまうだろうから。 -
お昼に紹介されたケーキ屋のお兄さん。
エッグタルトの屋台で大忙し。
上品な甘さ、香港にも負けていないな。
nakaさんがおすすめしたい、というレストランの前でメニューをチェック。
確かに良さげ。
でもね。僕はサテーが食べたいんだよね。
ビール飲みたいし。
nakaさん、ごめんなさい。わがままで。
(親友Yがプラチナ・カード・ホルダーになったとき、フレンチのコースをご馳走したいという申し出をあっさりと断ってしまうようなネコオヤジなのさ) -
やっぱりというか、とうとう、ジョンカー通りの広場前のテーブルに陣取り、タイガービールで乾杯するオヤジども。
-
お疲れ様でした。
こんなにマラッカの街を歩いた日本人はいないんじゃないの?
ふと、僕が放った言葉をさもありなんという笑顔で返すnakaさん。
「いやいや、のうりかさんはまだ序の口。日本人の女性のツーリストのほうが、もっといろいろ歩きまわりますよ」とからかわれる。
「何事も上には上があるですねえ」
と妙に感心してみた。 -
今夜は恒例の大演芸会らしく、気合の入った衣装でカラオケを熱唱する自称、有名歌手。
ステージに向かって手拍子をとり、拍手喝采する老若男女、善男善女が溢れる楽園。 -
バケツ入りの氷。
甘辛タレのサテー。
ミーゴレンだか、フッケンミーだか、とにかくは炒めた、あるいは湯がいた麺のそれ。 -
足元には割れたおびただしい数のヤシの実たち。
ひょっとして・・・。
別の惑星にきてしまったのだろうか。
氷を挟んだトングを持つnakaさんの手が目に入って我にかえる。
ステージはトリをつとめるローカルスターが大熱唱、今夜のクライマックスを迎えていた。
通りが混雑しないうちに、テーブルを後にする。 -
実は、昼にリサーチしたオラウータンのTシャツ屋。
ひょんなことから、4traメンバーで度々アドバイスをいただいているCさんに、お土産として買っていくつもりだった。
あのとき、「荷物になるので、夜にまた来れば良い」とオヤジ2人の意見が一致。
昼に覗いたのは本店。
この通りの最寄にはブランチもある。
はたして、予定を忘れずピンポイントで辿り着いたTシャツ屋。
「本日の営業は終了しました」
そーだよなー。
今、午後8時過ぎだもん。
「のうりかさん。ごめんなさい」とnakaさん。
いえ、nakaさんが悪いんじゃないですよ。
僕が不注意だったんです。
しかし、Cさんがっかりするだろうな。
起きてしまったことは如何ともし難い。
なによりも、nakaさんをショ気させては申し訳ない。 -
話題を変えよう!
近くのGEO CAFÉに入る。
旅行者のランドマークだそう。
マルガリータをてんこ盛り。
ギターの弾き語りが、いつのまにか「Clair」
Gilbert O'Sullivanだっけ。
彼の姪のことを歌ってるんだよね。
僕の姪はシンディ(実際には信二)という青年と結婚してモニカだかモナカだか、モナコとか名づけた女の子の母になった。
酔っぱらって何言ってんだろうね。のうりかさんは。
そうだね。やっぱりヘンだよねえ。
でもさ、ドイツのミュンヘンは英語では発音がムーニックなんだけど、どう聞いてもモナコにしか聞こえないんだよね。
などと、ヨタ話は続く。 -
天使が横切ったように会話が途切れた。
「明日、見送ってもらわなくていいよ」
どうして、このときnakaさんに言ったのか今もって判然としない。
おそらくは、
「nakaさんのように誰かを幸せにするようような旅行記を書きたい」などと吐露した後に、nakaさんがやけに深刻な表情を浮かべており、明らかに困惑している様子を感じたからだったと思う。
要するにテキトーな言葉が見つからなかったので、明日に飛んでっただけ。
酔っぱらいなんてそんなもの。
(実はnakaさん、このとき隣のテーブルに独りでいた女性の後ろ姿に心つよく引き付けられ、心身耗弱状態で、僕の話が全く「耳に入ってこない」だけだったらしい)
さすがは、立派な酔っぱらいオヤジ。 -
「マッサージするでしょ?」とnakaさん。
あー、思い出した。nakaさんが予約してくれたたって言ってた。 -
その前に今夜の歌姫のチェックをしておきたいとnakaさん。
-
Discovery Caféのステージをチェック。
-
nakaさんが御贔屓の歌姫。
リハーサルの歌はホイットニー・ヒューストンだった。 -
マッサージは僕のホテルから南に少し歩いたところ。
「Scents & Senses」
タイマッサージの店。
これが、また。効いた。
nakaさんに合わせて歩き回った疲労がタイ古式だかオイルだか、ダースベーダじゃなくてアーユルベーダだっけ?
2時間のマッサージは、まるで、魔法の手を持つお姉さんだった。
nakaさんもアタリのマッサージだったらしく、ホテル前で「おやすみなさい!」
このときに、渡すものを渡しておけば、翌朝ややこしいことにならずにすんだのだな。 -
僕は当然のように、砂漠の彼方に蜃気楼のオアシスを発見したキャラバンよろしく、部屋のドアを開くなり、ベッドに倒れこみ、KLはマスジットジャメの泥のように惰眠を貪った。
眠りは、小さな「死」だと言った人がいる。
「大いなる眠り」はチャンドラーだったよ・・・。
To say good-bye is to die a little.
一方、そのころnakaさんは、ディスカバリー・カフェの件の歌姫のステージ最前列で浴びるほどビールと歌声に酔っていた(ハジけていた)らしい。
やるな、nakamasaおやぢ。
やるとは思っていたよ。
了・・・MELAKA Vol.3へつづく。
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