2011/01/16 - 2011/01/16
635位(同エリア1206件中)
のうりかさん
遠くで目覚ましのアラームが響いている。
ネバーランドは夢と現実の間あるとティンカーベルは言った。
僕を信じろ!とウィンディに手を差し出したのは、ピーター・パン。
妖精の粉をふりかければ、この空だって自由自在だ。って、まだ外は日の出前の暗い朝。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- ホテル
- 4.0
- グルメ
- 5.0
- 交通
- 4.5
- 同行者
- 友人
- 交通手段
- 高速・路線バス タクシー
- 旅行の手配内容
- 個別手配
PR
-
昨夜のタイ式マッサージが効きすぎて、nakaさんとエクアトリアルのロビーであっさりと別れてしまったのが、いまだもって返す返すも不可解。
確かに、あとはもう部屋で泥のように眠ってしまいたいだけの一心だったことは否定しまい。
鳥の鳴く声がする。
グッドウッドパーク・ホテルで聞いたときと同じ鳴き声。
時間どおりにルームサービスで朝食が届いた。 -
焼きトマト。
ブリテンの食い物。
朝に卵を食べる習慣は世界の常識だとは思っていないが、生タマゴだけは無理なの僕。
これは、僕の飼い主も同じ。
おかげさまで、長い人生の半分以上の食卓に「卵かけごはん」が登場したことはない。
実に幸福でありがたい。 -
移動は朝と決めている。(例外もあるが)
今日はこれから、KLIAまでバスを使い、エアアジアでバンコクへ向かう。
散らかった衣類をまとめバッグに詰める。
バルコニーに干した昨日の半ズボンも、デッキシューズもマラッカの湿った風では乾かなかった。
ふと、何かし忘れていることに気づく。
ヒゲ剃ったし、トイレ行った。歯も磨いたぞ。
バッグのポケットを探ると、その忘れ物の正体が現れた。
nakaさんに、「これ」を渡すんだった。
「これ」(それ)をホテルの封筒に入れ直し、宛名を殴り書き。
ここまでしてからは、腹は決まった。 -
人生ではしばしば、この瞬間を逃したら絶対に後悔するときというものがある。
「あの時・・・」と悔やむのは明日ではない、1年後でもないかもしれないが、今このとき、きっとあとで後悔したくなければ、昨夜のライブショウの余韻につつまれて至福の惰眠の真っただ中にいる友を、無呼吸状態でも、鼻から提灯つくっていても、電話でタタキ起こすことを僕はこれっぽちもためらわない。
nakaさんへコーリング。
「渡したいものがあるから来てほしいんだ」
電話の向こうのnakaさんは、四の五の言わず事情を理解しないまま「よっしゃ、行ったろ!」とは言わなかった。
「急がなあかんね!」
と短く一言。
ほんとに僕ってわがままなヤツだ。
自分でもこんな友だちは要らないと思う。
誰もいないラウンジのデスクでチェックアウト。 -
ロビーを出るとベルマンの挨拶。
「どちらまで?」
タクシーでマコタ・ホスピタルまで。
この時間に待機しているタクシーもいるんだな。 -
太陽が昇っても町はまだ起きたばかりの佇まい。
-
「空港までのバスに乗るのですか?」と運転手。
「そう」
本当にバスは病院から出ているらしい。 -
マコタ・ホスピタルに到着。
予想以上に新しい建物で、マラッカでも
最新医療サービスは受けることができるらしい。
外国人(日本人も含む)が高度な治療を受けるためにマラッカに限らず、東南アジアの病院を選択することは今や珍しいことではない。 -
NATIONAL社のバスは既に病院の西に駐車していた。
北緯2度11分20秒の空に朝日が昇る。
朝陽のカロリーがチリチリと、すでに赤道直下の熱エネルギー。
KLIA行きのバスが発車するのは10分後。
タバコを一本。
nakaさんは、ずいぶん前に禁煙に成功している。
「1本、1本をあきらめる」のが大事だと言っていた。 -
バスに乗り込む客あり。
運転手が降りてきて、トランクに積み込むのを手伝ってくれる。
運転手が「乗っていいですよ」と言ってきた。
「ありがとう。友だちが見送りに来るんだ」
運転手くんは、なるほどと頷き、僕と一緒にタバコタイム。
「日本人ですか?」と運転手。
うん。
「待ってる友達も?」
いや、日本人のシンガポール市民だよ。
改めて、nakaさんは日本人だったんだと気づいた。
I'll be Waiting.と聞いてRaymond Chandler作と答える人は、よほどのハヤカワミステリィファン。
僕はただ静かに彼の到着を待っている。
Mr.Nakamasa O.と書いた、ホテル名入りの封筒の上質な手触りを感じながら。 -
やっぱり、ネコオヤジには暑いマラッカの朝。すでに汗ばんできた。
「のうりかさん!おはよう!」
はたして、nakaさんがに只今到着!
(ハツラツとしていりゅ)
帽子とサンダルはどこかに放り投げ、シャツも半ズボンも汗まみれ、息も絶え絶えに現れるのではないかという、僕の期待を見事に裏切った、中年オヤジにあるまじきアスリート魂。恐るべし。
「新記録かな。やっぱりタバコやめて、有酸素運動を続けた当然の成果やわ!」
と、まだまだ余裕のポーズ。
「nakaさん、ごめんなさい。しかしすごいね!何分できたの?」
「20分ジャストやね!」と言う。
「nakaさん、僕より20歳以上若いよ!体力年齢が!」とアプローズ。 -
「見送りに来い」と、電話でたたき起こすという暴挙に及んだ、わけのわからん友のために、「走れメロス」よろしく、GPSのモニタに示された赤いポインタを目指し、まさに、サイクロンがマレー半島のアブラヤシを次々となぎ倒すような勢いで、彼のサンダルがマラッカの赤い土の歩道をけ散らし、ひた走る姿を思い描いていたのは、ネコオヤジの勝手きわまりない、大きな妄想だった。
自分の非礼、無礼、傲慢な振る舞いについてあらゆる言葉を並べ、頭を下げ、謝意を伝えると、nakaさんはあっさり、こう言ったのだった。
「ゆうべ見送りに行くよ!って言おうと思ってたから、ええよ」
「それにしても、なんでバンコクなん?バックパッカーじゃあるまいし」
と、nakaさん。
「行ったことがないからですねん」
(正直に、就職超氷河期の娘のために、「祈り」の町へ行ってみたかったんだよ。と答えることを躊躇した僕) -
エクアトリアル・ホテルの封筒を取り出し、nakaさんへ渡す。
「中身はお金じゃないよ、現金だと受け取ってくれないから」
怪訝そうにnakaさんが封筒を裏返しても「僕が出発するまで開けるな!」の封印(ネコオヤジはとことんいぢわる)
「見送りにきてくれて、ほんま、おおきにね!」と握手。
ついでにお約束のツーショットをカメラにおさめる。
最期まで、「???」は消えないnakaさん。
「気をつけて、行ってらっしゃい!」の言葉を背にバスへ乗るネコオヤジ。
バスが動き出しnakaさんが笑顔で手を振っていた。(すかさずカメラでネコオヤジを捕えるnakaさん、流石ですぜ) -
かかる場面で脳内に流れるはずの効果音楽は、ルイ・アームストロングのWhat a wonderful world.がオートマチックに流れるはずなのだが、目の前で手を振るnakaさんを見て、ネコオヤジが口ずさんでいたのはどこの引き出しから掘り当てたかも定かでない、吉田拓郎の「落陽」だった。
♪みやげにもらったサイコロ2つ
手の中で振ればまた振り出しに
戻る旅に陽が沈んでゆく♪
(朝陽の逆光に立つnakaさんであるにもかかわらずだ)
かかるシュールな情景ののなかで、なんだか、おいら納豆が食べたくなっちまったよ。 -
バスのチケットを取り出し、写真におさめてみる。
nakaさん、ありがとう。
このチケットなくして、僕の旅は完結しなかった。
いつしか、ひとり旅が自分のスタイルになってしまっても、旅の記憶を反芻するとき、出会った人たちの顔が浮かび上がる。
ディゾルブ効果で。 -
それは、高級ホテルで歓待を受けたスタッフではなく、香港の屋台で僕の差し出すコインから代金分をピックアップしてくれたお姉さんだったり、完璧なまでに言葉の疎通が叶わぬと諦めるも、ダッシュボードに貼り付けた孫の写真で盛り上がり、ホテルまで観光案内を始めてくれた京城のタクシーのオヤジ。
あるいは、台北でレストランを仕切るにはこれ以上のオバちゃんはいないと確信させるほどの、福々しい笑顔と、再会の抱擁とか、旅の「かけら」たちと呼ぶにはあまりにも愛おしくて、不確かな記憶のなかでホログラムのように時折輝いては現れる人たち。
僕が旅を終えても、また次の旅に出ようとするのは、あの人たちの笑顔から自分が確かにもらったはずのなにかを、虹のふもとが今そこにあるような錯覚にとらわれ、一昔のジェット・ストリームで流れていた言葉を借りれば「あの光と風に、もういちど会いたくて」の思いもだしがたく、機上の人となり、ここではないどこかへ向かおうとしている・・・のだと。 -
バスはマラッカの街を抜け、バスターミナルを経由して、アブラヤシが続く高速道路へ。
-
SMSが届いた。nakaさんだ。
「なんでー?おいらの走りが○○円???
バンコク気をつけてねー!」
封筒開けちまったんだな。
お金じゃないよ、有価証券のライクザット。
一般的にはVISAの商品券という。
「だから、『走れメロス』は恥ずかしい」
と、今は亡き景山民夫は30年前の雑誌ブルータスに書いている。
だって、nakaさん。
僕のお金受け取らないじゃん。
プライスレスなマラッカの時間をありがとう。
nakaさん、「走れメロス」はね。
メロスが恥ずかしいんじゃないんだ。それを書いた太宰治という人間が恥ずかしいのは、ともかく。
つまりは、「走れメロス」を読んで感動してしまった40年前の自分が猛烈に恥ずかしいんだよ。
バンコク、せいぜい気をつけて行ってきますっさ!
酔っぱらって、TATOO入れられたりせんように。
マラッカ Vol.3 - 完 - -
【僕のバスを見送ったnakaさんのつぶやき】
だんなうまくバス乗れてよかった
LCCT行きがあんなとこからでてるなんて知らなかった
頼まれたわけじゃないけど実は席に限りがあるし、週末やしエアアジアやし乗り遅れたらタクシーしかないと心配になり、でもシンガポールでは購入不可、事前にJBのラーキンにて先週遊びに行くついでに購入しておいた、マコタホスピタル発って書いてあるからだんなのホテルからは歩いて10分ほど、ちょうどええなと思ってたん
ねこにシカトされたのは残念やったけどだんな曰く「ねこはこれでいい。」やったっけ・・・
『ピンホールから覗いてみたMelaka,Malacca,マラッカ』 by nakamasananiwaへつづく・・・。http://4travel.jp/travelogue/10555028
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この旅行記へのコメント (4)
-
- M-koku1さん 2019/01/02 06:03:46
- Welcome back!
- 明けましておめでとうございます
でも何故 今 この旅行記?
九年前の整理?
この旅行記に関連した
何かが起きたのかしら?
というのは 深読みしすぎでしょうか?
今年もどうぞよろしく
Mより
- のうりかさん からの返信 2019/01/02 11:37:05
- Re: Welcome back!
- Mさん、あけましておめでとうございます!
長期出張とのこと。ますますご活躍ですね。
しかし、相変わらずMさんの勘は鋭い!
日本の裏側からよう見えますなあ。
TY局に勤める娘がメディアのカンファレンスだとかで、
コンテンツを海外へセールスするために訪星したのです。
当然、サマセットはカッページプラザの仲正さんにご挨拶
せんとならん。などと思ったらしく父の代わりに暖簾を
くぐり、歓待をいただき大酒飲んでお代も払わず帰って
きましたとさ。(近いうちに父を訪星させます!とか
言って)
実は2012年にはトランジットを利用して仲正さんには
ウビン島へ連れていってもらい、チリクラブをごちそうに
なってまして、9年越しの不義理を今年はなんとしても
解消したいと心に誓った年末の旅行記UPでした。
Mさん、そちらの寒さはどうですか?どうかお健やかに
お身体をご自愛なさって、ご活躍ください。
-
- nakamasananiwaさん 2019/01/01 04:01:20
- (^^♪
- ねぇ のうりかさん、
再訪してこんどは井戸の中を覗いてごらん。きっと謎がとけるかもやで
- のうりかさん からの返信 2019/01/02 11:20:41
- Re: (^^♪
- nakaさん、あけましておめでとうございます!
もう読んでしもうたんですかい?
井戸の中はまた今度必ずのぞいてみますわ。
魔が刻でないデイライツにね。
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