2017/05/08 - 2017/05/08
364位(同エリア1519件中)
ころたさん
すごい! すばらしいでも美しいでもない、すごいと言おう。
国立新美術館のMucha展で、チェコ国外では世界初のお目見えだという「スラブ叙事詩」を見た。名声を欲しいままにしたパリでの生活を捨て、祖国に戻った晩年のMuchaの渾身の超大作に、俺は圧倒されて動けなかった。6月5日までの会期に俺は何回もここに来ることになるだろう。惜しむらくはあと少しだけ人が少なければ・・
- 旅行の満足度
- 5.0
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今日の作品は重いぞ。じっくりと鑑賞するにはまず腹ごしらえだ。
って事でメトロの乃木坂駅から六本木交差点に向かってぶ~らぶら、よさげな店はないかなぁ。と、一風変わった設えのレストランを発見。入り口は目医者のようだが、レストランの立て看板があって、ランチは1000円、手ごろだよ。ふかさく グルメ・レストラン
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ドアを開けると、これまた変わっている。あれっここギャラリーなの? いや中2階はレストランになっている。でもギャラリーだし眼科医だし眼鏡屋だ。
http://www.f-e-i.jp/ -
どうやら院長の深作氏という人がマルチな人で、眼科医の傍ら絵も描くしギャラリーも運営している。これらは深作氏の作品。素人の域を超えている。
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目指すレストランは中2階。テーブル数は10卓ほど。
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まだできて間もない感じ。
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ランチは4種類でどれでも1000円。Wifeは魚のセット。俺はエビチリにした。ごはんは玄米か白米を選べる。味はとびっきりではないものの美味しい。この場所で1000円なら納得かな。
ふかさく グルメ・レストラン
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レストランの地下はギャラリーになっていて、この日は日本工芸品を展示。これは大学を出たての若い作家の木象嵌細工。種類の異なる木を薄く削り、象嵌細工の要領で立体物を作っていく。繊細な作業だ。この日は作家の福田亨氏が立ち会っていて、象嵌で立体的なものは自分が初めてと言っていた。
http://www.f-e-i.jp/coming/hfg/ -
このクロアゲハは繊細さがよく表れている。羽根の裏には何色もの色が使われている。応援したいが一作品の価格は30万円。ここは声で応援しよう。
「福田亨」って名前は憶えておいた方がいいかもよ。
https://www.facebook.com/pg/fukuda11woodworks/photos/ -
さて腹ごしらえも目のウォーミングアップもできた処で、いざ国立新美術館へ!
国立新美術館 美術館・博物館
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今日は企画展が目白押し。メインはミュシャ展でしょ。
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その隣では草間彌生展も開催中。
「アンタ、見に来ないと承知しないわよ!」
と言っているような、いないような・・・ -
それに国展なんてのもやっていて、月曜だと言うのにチケットブースに列ができている。俺達はランチのついでに六本木交差点脇の大黒屋でチケットを買ってきた。20円だけ安かった。(草間展は400円も安かったよ)
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庭木はどれも草間彌生調。何にでも赤い水玉模様を着けちゃう。そう言やぁ直島で水玉赤カボチャ見たのは、ついこの間だな。
http://4travel.jp/travelogue/11228944 -
今日は外人さんが多い。それも白人。
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新美術館の中に入る。ここももう10年たつんだ。
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中にもいっぱいの人。昨日までのGW中はどれだけの人が詰めかけたんだろう?
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Mucha展会場は2階。今回は入り口で音声ガイドを借りた。普段はガイドなど借りることはないのだが、スラブ叙事詩だけは作品の背景を知っておきたい。そのガイドではナレーターは[ムハ]と発音していた。チェコ語ではそう発音するそうだ。
あ~、武藤敬司が[ムタ]になるのと同じね。(イヤ、チョットチガウ・・・) -
そのスラブ叙事詩だが・・・、圧巻!まさにそのスケール、ち密さ、そして何よりMuchaの思いに圧倒される。天井から床までを占める全20作品、どれもが素晴らしい!
国立新美術館 美術館・博物館
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チェコで生まれたMuchaが、パリでアールヌーボの旗手として成功を収めたのが35歳。そして50歳にしてパリを離れ祖国に戻って、この超大作を描き続ける。20年もの間!
国立新美術館 美術館・博物館
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そして78歳の時、侵攻してきたナチスに愛国的な絵を(すなわちスラブ叙事詩を)描いたというだけで捕えられ、獄死する(釈放後という説も)。なんと数奇な人生か。アールヌーボの華麗で軽やかなポスター作品と、スラブ叙事詩の重厚感との対比にも似た人生は、大国の狭間で翻弄されたチェコそのもののようだ。
国立新美術館 美術館・博物館
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言い忘れたがこのビッグイベントの一部は何と撮影可能! ありがとうね。この一室の5点のみ撮影可能で、中途半端に話を聞いた何人かが別の部屋でもパシャっとやって怒られていた。
国立新美術館 美術館・博物館
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イチオシ
なので他の15点は紹介できない。すごい作品がいっぱいなのに。
例えば「 ヴォドニャヌイ近郊のペトル・ヘルチツキー」。戦争の後を描いた作品の中央で幼子を抱いて呆然と目を見開く女性。その空虚な表情がたまらない。
http://www.mucha2017.jp/slav/intro.html#link
(写真は別作品、あしからず)国立新美術館 美術館・博物館
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例えば「ヤン・アーモス・コメンスキーのナールデンでの最後の日々」。Muchaが崇拝していたと言うコメンスキーの静かな死を描いたこの作品にだけ、Muchaのサインがあった。なぜ?
(これも別作品) -
例えば「ベツレヘム礼拝堂で説教をするヤン・フス師」。何とも不思議な絵だ。左手で説教をしているフス師を聴衆は見ていない。視線がテンデンなのだ。そして右手の王妃のお付の女の驚いたような表情は何?分からないことが多すぎる。
(これまた別作品) -
そんなこんなに着目しながら作品に引き込まれていると、俺だけが群衆の動きから置かれていく。別に俺は作品の真ん前にデンと仁王立ちしていないから、じゃまじゃないよね。ある時は5m下がって、近くで見る時はしゃがんで見ているから。(ソンナコトシテイルノアンタダケヨ)
国立新美術館 美術館・博物館
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「聖アトス山」
かなり宗教画色の強い作品で、Mucha晩年の作品。 -
「ロシアの農奴制廃止」
逆にスラブ叙事詩では早い時期の作品だが、題材としている時代は最も新しい1点。この1点だけスラブ民族を描いていない。説明ではスポンサーのアメリカ人の要請によるものだとか。 -
農奴解放を描いているのだが、人々の表情は開放された喜びよりも、それまでの苦悩と未来への不安を表しているように見える。これは戦争の場面、特に勝利の場面を描いた何作かでも共通していた。
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この親子のこちらを射るような眼差しが、スラブ叙事詩のあちらこちらに出現する。スラブ叙事詩は国のプロパガンダでは決してなく、歴史に翻弄される民衆が主役なのだ。
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「スラヴ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い」
スラブ叙事詩、最後の作品であり未完成に終わってしまった。故に後列の人物には顔がない。 -
その絵の右下に描かれている少年はMuchaの息子がモデル。
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左下のハープを引く少女は長女がモデルとのこと。
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未完成故に後ろの人物には顔がないが、それが違和感を感じさせない。
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「イヴァンチツェの兄弟団学校」
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とにかく人物の表情が緻密。一人一人にモデルがいて、それぞれの表情を描写したとのこと。遠景の小さな人々も実に丁寧に描かれている。
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そうかと思うと、大胆に簡略化している部分もあり、それはMuchaの思いの差なのか?
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いよいよ最後の展示作品、「スラヴ民族の賛歌」
題名が示す通り、スラブ叙事詩の集大成的な作品。神々しいまでに美しいが、確かに手法は古臭さを感じる。この辺が当時の若者に受けなかったのかも。
しかしこれまでの20作をまとめるには、これくらいの「神々しさ」が必要なのではないか。 -
これはやはり全体を見なければ。この巨大な作品をガラスも無しにいい照明環境で見せてくれた美術館に拍手! 贅沢を言えば会場がこの倍とっていれば、混雑ももう少し緩和されただろうに。
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あ~もう出てきてしまった。旅行記のページ(というか写真)もない。Muchaのもう一つの柱、アールヌーボについてもいっぱい訴えたいことがあるのに!
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いいや、たぶんまた来るだろう。その時に新しい旅行記を載せよう。
隣の展示室では国典をやっていた。こっちの方が沢山の部屋を使っていた。まあ点数が多いからね。 -
ナチスの手によって不本意で非業な最期を遂げたMucha。しかし生涯を賭けたスラブ叙事詩がナチスの手に渡らずに保存されていた事は、まさに不幸中の幸い。いやMuchaは自分の命に代えてでもスラブ叙事詩を後世に残したかったはずだ。78歳のMuchaがどんな思いで牢獄に入っていたことか。胸が締め付けられる。
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あっと言う間に5時だ。仕事を終えた人たちで、我々が入場した時よりもチケットブースの列は伸びていた。
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再来を誓って国立新美術館を後にした。
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だめだって、草間彌生の顔にまで雲貼り付けちゃあ!
(オイオイ、コノリョコウキニ落ハイラナイデショ!)
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