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《マカオ旅行記》 1990年4月<br /><br /><br />これは、1990年。<br /> 1987年に日本を出て、世界一周をして、日本へ帰る途中の話だ。<br /><br />この時は、日本へどうやって帰るかが、問題だった。<br />バンコクから香港へ飛んで、陸路中国の広州へ入り、できたら鉄道で上海へ移動して、日中を結ぶ鑑真号で日本へ行くことを考えていた。<br /><br />実家が九州なので、韓国からフェリーで日本へ帰ってもいい。<br />それは、広州で考えることにした。<br /><br />まずは、中国のビザを取って、広州への列車の切符を買う。<br />その間に、香港観光をして時間を潰していたときのこと。<br /><br />香港にはもう何度も来ているが、いつもどこかへ行く通過地点として訪れたに過ぎない。<br />ごみごみしてるし、宿泊費は高いし、ブランド品もそんなに安くはない。<br /><br />わざわざ金を払ってまで来るような所ではない。<br />そういえば一度は正月のパタヤビーチのツアーに女の子と参加して、オーバーブッキングで無理やり1日香港に泊まらされたこともある。<br /><br />長期旅行者の間では、香港に来る理由はただ中国への入口というのが常識だ。<br />ここでは中国のビザが簡単に取れる。<br /><br />金さえ出せば当日発給だって可能だ。<br />しかも宿泊費を考えるとそう高い訳ではない。<br /><br />チョンキンマンションには有名な旅行会社「タイムトラベル」があった。<br />ここでは「当日HK$210/翌日HK$150/2日後HK$110」の料金だった。(HK$1=20円)<br /><br />香港の宿泊費が高いのは有名なので、切符さえ手に入れば香港に一泊もせずに中国へ入ることも十分可能だ。<br /> 僕の以前の旅行では、女性と一緒のツアーか金持ち旅行でしか香港を訪れたことがない。<br /><br />僕のゼロハリバートンの大型スーツケースにはペニンシュラホテルやシェラトン香港のステッカーがバンコクのオリエンタルホテルなどと一緒に貼ってある。<br />その「酒と薔薇の日々」はすでに去った。<br /><br />貧乏な僕が泊まるのは、安宿の集合体・香港の中心地ネイザンロードに面したビル。<br />チョンキンマンションの8F「ニューアジアゲストハウス」1泊HK$115(2300円)。<br /><br />街角のセブンイレブンではフォスターズ一缶が3ドル(60円)で買えるのだからこの宿代も高過ぎるのがわかるだろう。<br /> 翌日にはチョンキンマンションのゲストハウスを訪ねまわって、結局6Fの「ロンドンゲストハウス」に移った。<br /><br />ここだと、1泊90ドル。差は25ドル。<br />この金でビールが8缶とつまみが買えることになる。<br /><br />チョンキンマンションを下りて右に曲がった並びに結構率のいい両替屋を見つけた。<br /> 空港ではU$100=HK$738だったが、ここではHK$770だ。<br /><br />共にノーコミッション。<br />すぐ横のトーマスクックだと741ドルと良くないので客がいない。<br /><br />両替に関しても、ちょっと旅行をしただけの旅行者は、どこがいいここがいいとウンチクを喋る。<br /> 実際は常にいい両替率の所なんてない(常に率の悪い所というのは存在するけどね)。<br /><br />その時期で率のいい所は変わるというのが常識だ。<br /> 例えば1987年の秋、ロンドンではバークレイ銀行の率が一番良かったが、1988年の同時期にはミッドランド銀行の方がぐっと良かった。<br /><br />情報を入手するのは大切だが、情報は更に確かめなければ却って害になる。<br /> 両替率のように簡単にチェックできる情報は何軒か当たって自分で確かめることが大切だ。<br /><br />この両替所を出ようとしたら、日本人らしい、かわいい女の子を見つけた。<br />スペイン以来の「日本女性を見たらすぐ話しかける自動装置」が働いて、これからマカオへ行こうと急いでいたのに、つい話しかけてしまう。<br /><br />マカオへは明日行ってもいいが、女性とは今日しか会えないかも知れないのだ。<br /> 念の為に、英語で話しかけて、日本人かどうか確かめる。<br /><br />大阪の女の子で名前を聞くと「サトコ」。<br />こういう答え方をするのは海外経験が豊富で、外人の友達がいた可能性がある。<br /><br />その予想通り、友達がいるという方向を見たら、外人の女の子が一緒だった。<br /> 海外慣れしているので、聞かれたときに、ファーストネームで答えたわけかな。<br /><br />2人ともユースホステル泊まりだという。<br /> 外人はナディーヌというフランス人だ。<br /><br />一緒に町をうろついているので「サトコ」「ナディーヌ」と呼び合っていたらしい。<br />サトコに「僕はフランス語ができるんだ」といって、ナディーヌにフランス語検定試験2級の実力で話しかける。<br /><br />「クロワッサン・カフェオレ・ミッテラン」<br /> 変に実力を自慢するよりは、笑いを取った方が勝ちだ。<br /><br />一緒にマクドナルドへ行ってラージコーヒーを飲みながら話をする。<br />サトコは大阪から台湾・ブルネイ・ダーウィン(オーストラリア)・香港・大阪という切符を17万円で買ったということだ。<br /><br />ナディーヌはパリ 香港と北京 パリのオープンジョーで6500フラン(約15万円)という話。<br />もちろん、航空券の値段は常に変化するものですが、とにかくこれは1990年の話。<br /><br />2人は香港が初めてだというので、勝手知ったる香港を案内することにする。<br />ただしマカオ行きのターミナルで明日のフェリーの時刻を調べるのに付き合うという条件付だ。<br /><br />スターフェリーでビクトリアハーバーを香港島へ渡る。<br /> 観光を兼ねてダブルデッカートラム(2階建て市街電車)のもちろん2階席に座って、マカオフェリー桟橋へ行く。<br /><br />海へ突き出した巨大なビルが桟橋だ。<br />マカオへはいろんな会社のいろんな種類の船が出ている。<br /><br />水中翼船もあるが、僕は遠慮したい。<br />ブエノスアイレスからウルグアイのコローニャにラプラタ川を渡った時にあまりの振動で酔ってしまい、危うく吐きそうになった経験がある。<br /><br />水中翼船は見た目は良いが乗り心地は最悪のうえ景色が見えない。<br /> 甲板でゆったりと景色を眺めて旅をするにはここでは高速フェリーが一番だ。<br /><br />時間を調べると高速フェリーは朝の7時半から2時間おきに出ている。<br />これにしよう。<br /><br />9時半のやつに乗れば良いだろう。<br />そうすれば、11時にはマカオに着く。<br /><br />しかし、いまは切符を予約しない。<br /> 明日朝早く起き過ぎた時に困るので切符は買わない(もっと早い船で行くかもしれないし)。<br /><br />これだけいろんな船が出てれば何とかなるはず、と判断する。<br /> 3人で70番のバスに乗ってアバディーンに行き、サンパンに乗って港を観光。<br /><br />サンパンの料金を、3人でHK$60に交渉する。<br />これは女の子が持っていたJTBのポケットガイドの値段HK$80よりぐっと安い。<br /><br />一人当たりHK$20だ。<br /> 3人で町をうろついている内に夕方になったので、ミニバスで中環(セントラル)へ戻る。<br /><br />またスターフェリーで尖沙咀(チムシャツイ)へ渡り、小さな中華料理店にはいる。<br /> 話をしていると、ついうっかり、翌日マカオに行く約束をしてしまう。<br /><br />正直言うと、約束はしたくなかった。<br /> 明日のことはわからない。<br /><br />明日の朝になれば僕の気が変わっているかも知れない。<br /> 僕の白馬に乗った「東京に土地を持っている金持ちで独身の30代までの」王女様が現れるかもしれない。<br /><br />その時に少しだって後ろめたさを感じていたくない。<br /> 本当は約束なんかしたくない。<br /><br />だけれど、女の子に「一緒に行って」と頼まれると断れない。<br />おじさんは若い女の子には弱いものだ。<br /><br />成り行きで約束してしまった。<br /> 次の朝は、国境を越える日の僕の常として早く(多分、朝6時ごろ)起きた。<br /><br />これだけ早く起きると、一人ならば、とっとと船に乗って、マカオに行けたはず。<br />でも、約束しているので、それに合わせて行動してしまう。<br /><br />9時半の約束なので、ゆっくりトイレにはいったりして、無理に時間を潰す。<br /> 8時頃にチョンキンマンションの前の尖沙咀駅から、MTR(香港の地下鉄)に乗る。<br /><br />香港島の上環(ションワン)駅へ直行する。<br />マカオフェリー桟橋の切符売り場へ行くと、昨日調べた9時半の高速フェリーは満席という。<br /><br />他の船も全部昼過ぎまで満席、という表示が出ている。<br />やはり約束に関係なく朝一番の船に乗れば良かった。<br /><br />僕はとにかく無理をしないというのが方針なので、こういう時は、一人ならマカオに行かない。<br /> 今日は止めにして、映画館にでも行く。<br /><br />だが、一応約束しているので出発時刻までは待つことにする。<br />サトコとナディーヌはぎりぎりに姿を現した。<br /><br />9時半の船は満席らしいと、説明する。<br /> 窓口の女の子に午前の便がないことを確認を取ろうと、「午前中にマカオに行く便はないんでしょ?」と聞く。<br /><br />「キャンセル待ちしなさい!」というのが返事。<br /> 3人でフェリー乗り場のゲートに行く。<br /><br />ゲートのお兄さんがフェリーの座席表を手にしている。<br /> 昔の飛行機の座席割当の時使っていたみたいな、座席のシールをはがして乗船券につけるという方式だ。<br /><br />残っているシールの数を見ると10席以上ある。<br />ぎりぎりで駆け込んでくる人もいるだろうが、僕たちは、乗れる雰囲気だ。<br /><br />料金はゲートで払うのでお金を握り締めて払う用意をする。<br />しかし係員は本当にぎりぎりまで席を出さない。<br /><br />いやに慎重だと、イライラする。<br /> 僕は無理をすることはイヤなので、この時点で、ホントは行きたくなかった。<br /><br />しかし、ついにGOの指令が出た。<br /> 切符を買う。<br /><br />指定席なので、3席続きのシールをはがして僕たちの切符に貼る。<br />フェリーに向かって走り出す。<br /><br />ここでは、ただ船に飛び乗れば良いという訳には行かない。<br />イミグレーションで出国審査を受けなければいけないんだ。<br /><br />出国ゲートの前に書類記入のテーブルがある。<br />ここで大失敗をしてしまった。<br /><br />慣れているので、つい香港出国カードを書き始めてしまったのだ。<br />これは香港入国時にパスポートにくっつけてくれた半券を出せば済んだのに!(今の状況は確認すること)<br /><br />僕は書類を書くのが異常に早いので、これに気付いた時は、もう書類を書き終えていた。<br /> 女の子も僕に釣られて出国カードを書いていた。<br /><br />「それは要らないよ!」と声をかけ、さっさと出国審査を受ける。<br /> 女の子たちも後に続くが、もたもたしている。<br /><br />がらんとしたターミナルに「高速フェリー乗り場」の案内が英語で出ている。<br /> 走りながら、その指示通りに通路を曲がる。<br /><br />途中に無線機を持った職員がいて僕を急がせる。<br /> 「女の子が2人後から来る!」と叫び、後ろを振り返るが人影が見えない。<br /><br />とにかく船に乗り込まないと、ここは香港なので勝手に出港するだろう。<br />やっと船のタラップにたどり着く。<br /><br />船はもうエンジンの出力をあげて、船尾からは激しい泡が沸き立っている。<br /> 船の上からターミナルを見るが誰も来る様子がない。<br /><br />仕方ない、このまま行こう。<br /> 船の中に入り、僕のA29のシートを見つける。<br /><br />彼女たちが座る予定だったA30と31の席がむなしい。<br /> 彼女たちは、次のフェリーに乗ることだろう。<br /><br />船はマカオに着いて、僕は有名なフローティングカジノまでバスに乗って行く。<br />カジノは想像していたよりもずっと小さい。<br /><br />もちろん現在のマカオは、ラスベガスにも匹敵する、大形カジノホテルが林立しているらしいですが。<br />さて、中国人の賭け方は激しい。<br /><br />最低でもHK$100(2000円)は賭けている。<br /> 僕の1日の宿泊費よりも多い。<br /><br />一人だけ船に乗れたのは運がいいのか悪いのか。<br /> 100香港ドル札を出して、「大小」に賭けてみる。<br /><br />この「大小」は昔マニラのフローティングカジノが焼ける前に、女の子と行って勘が冴え渡ったゲームだ。<br /> 昔、僕が某企業のエリートサラリーマンだった時、銀座のゲームセンターの大小ゲームで、何万円分もコインを積み上げたことがある。<br /><br />小・小と連続して取って、400ドルになった。<br /> 約8000円だ。<br /><br />これを女の子たちへの供養の気持ちで、8千円分全部小に賭ける。<br />すると、大が出た。<br /><br />400ドルがパア。<br />でもこれで、マカオでギャンブルをした話ができたので、旅行者としては気がすんだ。<br /><br />僕はただの観光客なので、カジノを出て名所見物を始める。<br />セントポール天主堂跡・モンテの砦・セントドミンゴ教会と歩き、ホテルリスボンへ行く。<br /><br />ホテルリスボンには、カジノがある。<br /> 今度は自分のためにまた小に100ドル賭けるが、最初に負けたので、100ドルで止める。<br /><br />街を歩いて、マカオのフェリーターミナルまでたどり着く。<br />いやに人が多いので胸騒ぎがしてチェックすると、船の切符を買うために2階の切符売り場から階段、さらに表まで人があふれている。<br /><br />マカオからの帰りのボートの切符が取りにくいと、そういえば香港の東急百貨店の日本書籍売り場で立ち読みしたガイドブックに書いてあったっけ。<br />とにかく、一番早くマカオを出る船の切符に並ぶ。<br /><br />香港フェリー社の「ホバーフェリー」だが、どうやら香港島のフェリーターミナルに着くのではないらしい。<br /> 良く解らないまま乗り込むと、百万ドルの香港の夜景の中を走って、船は九龍(カウルーン)サイドへ。<br /><br />着いた所はチムシャツイのチャイナフェリーターミナルで、僕の泊まっているチョンキンマンションのすぐそば、軽く歩いて帰れる距離だった。<br /> 結局、香港島のフェリーターミナルへ戻るより近かった。<br /><br />香港から日帰りで、マカオ観光も済ませたし、ギャンブルをした。<br />このお話はここで終わり。<br /><br />船着場で別れた女の子たちはどうなったかっていうと、次の日歩いていたら、出会った同じ両替所の前に2人でいるのを見かけた。<br /> 僕は慌てて身を隠してしまったが。<br /><br />2人とも、幸せになってねと祈る。<br />ナディーヌ、日本人はみんな僕みたいだって思わないでね。<br /><br />注)この話は、交通手段も、料金も両替レートも1990年のことです

日本人とフランス人の美女2人とマカオへ行くつもりが、フェリーターミナルではぐれた。@マカオ

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1987/09/07 - 1990/05/05

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みどくつ

みどくつさん

《マカオ旅行記》 1990年4月


これは、1990年。
1987年に日本を出て、世界一周をして、日本へ帰る途中の話だ。

この時は、日本へどうやって帰るかが、問題だった。
バンコクから香港へ飛んで、陸路中国の広州へ入り、できたら鉄道で上海へ移動して、日中を結ぶ鑑真号で日本へ行くことを考えていた。

実家が九州なので、韓国からフェリーで日本へ帰ってもいい。
それは、広州で考えることにした。

まずは、中国のビザを取って、広州への列車の切符を買う。
その間に、香港観光をして時間を潰していたときのこと。

香港にはもう何度も来ているが、いつもどこかへ行く通過地点として訪れたに過ぎない。
ごみごみしてるし、宿泊費は高いし、ブランド品もそんなに安くはない。

わざわざ金を払ってまで来るような所ではない。
そういえば一度は正月のパタヤビーチのツアーに女の子と参加して、オーバーブッキングで無理やり1日香港に泊まらされたこともある。

長期旅行者の間では、香港に来る理由はただ中国への入口というのが常識だ。
ここでは中国のビザが簡単に取れる。

金さえ出せば当日発給だって可能だ。
しかも宿泊費を考えるとそう高い訳ではない。

チョンキンマンションには有名な旅行会社「タイムトラベル」があった。
ここでは「当日HK$210/翌日HK$150/2日後HK$110」の料金だった。(HK$1=20円)

香港の宿泊費が高いのは有名なので、切符さえ手に入れば香港に一泊もせずに中国へ入ることも十分可能だ。
僕の以前の旅行では、女性と一緒のツアーか金持ち旅行でしか香港を訪れたことがない。

僕のゼロハリバートンの大型スーツケースにはペニンシュラホテルやシェラトン香港のステッカーがバンコクのオリエンタルホテルなどと一緒に貼ってある。
その「酒と薔薇の日々」はすでに去った。

貧乏な僕が泊まるのは、安宿の集合体・香港の中心地ネイザンロードに面したビル。
チョンキンマンションの8F「ニューアジアゲストハウス」1泊HK$115(2300円)。

街角のセブンイレブンではフォスターズ一缶が3ドル(60円)で買えるのだからこの宿代も高過ぎるのがわかるだろう。
翌日にはチョンキンマンションのゲストハウスを訪ねまわって、結局6Fの「ロンドンゲストハウス」に移った。

ここだと、1泊90ドル。差は25ドル。
この金でビールが8缶とつまみが買えることになる。

チョンキンマンションを下りて右に曲がった並びに結構率のいい両替屋を見つけた。
空港ではU$100=HK$738だったが、ここではHK$770だ。

共にノーコミッション。
すぐ横のトーマスクックだと741ドルと良くないので客がいない。

両替に関しても、ちょっと旅行をしただけの旅行者は、どこがいいここがいいとウンチクを喋る。
実際は常にいい両替率の所なんてない(常に率の悪い所というのは存在するけどね)。

その時期で率のいい所は変わるというのが常識だ。
例えば1987年の秋、ロンドンではバークレイ銀行の率が一番良かったが、1988年の同時期にはミッドランド銀行の方がぐっと良かった。

情報を入手するのは大切だが、情報は更に確かめなければ却って害になる。
両替率のように簡単にチェックできる情報は何軒か当たって自分で確かめることが大切だ。

この両替所を出ようとしたら、日本人らしい、かわいい女の子を見つけた。
スペイン以来の「日本女性を見たらすぐ話しかける自動装置」が働いて、これからマカオへ行こうと急いでいたのに、つい話しかけてしまう。

マカオへは明日行ってもいいが、女性とは今日しか会えないかも知れないのだ。
念の為に、英語で話しかけて、日本人かどうか確かめる。

大阪の女の子で名前を聞くと「サトコ」。
こういう答え方をするのは海外経験が豊富で、外人の友達がいた可能性がある。

その予想通り、友達がいるという方向を見たら、外人の女の子が一緒だった。
海外慣れしているので、聞かれたときに、ファーストネームで答えたわけかな。

2人ともユースホステル泊まりだという。
外人はナディーヌというフランス人だ。

一緒に町をうろついているので「サトコ」「ナディーヌ」と呼び合っていたらしい。
サトコに「僕はフランス語ができるんだ」といって、ナディーヌにフランス語検定試験2級の実力で話しかける。

「クロワッサン・カフェオレ・ミッテラン」
変に実力を自慢するよりは、笑いを取った方が勝ちだ。

一緒にマクドナルドへ行ってラージコーヒーを飲みながら話をする。
サトコは大阪から台湾・ブルネイ・ダーウィン(オーストラリア)・香港・大阪という切符を17万円で買ったということだ。

ナディーヌはパリ 香港と北京 パリのオープンジョーで6500フラン(約15万円)という話。
もちろん、航空券の値段は常に変化するものですが、とにかくこれは1990年の話。

2人は香港が初めてだというので、勝手知ったる香港を案内することにする。
ただしマカオ行きのターミナルで明日のフェリーの時刻を調べるのに付き合うという条件付だ。

スターフェリーでビクトリアハーバーを香港島へ渡る。
観光を兼ねてダブルデッカートラム(2階建て市街電車)のもちろん2階席に座って、マカオフェリー桟橋へ行く。

海へ突き出した巨大なビルが桟橋だ。
マカオへはいろんな会社のいろんな種類の船が出ている。

水中翼船もあるが、僕は遠慮したい。
ブエノスアイレスからウルグアイのコローニャにラプラタ川を渡った時にあまりの振動で酔ってしまい、危うく吐きそうになった経験がある。

水中翼船は見た目は良いが乗り心地は最悪のうえ景色が見えない。
甲板でゆったりと景色を眺めて旅をするにはここでは高速フェリーが一番だ。

時間を調べると高速フェリーは朝の7時半から2時間おきに出ている。
これにしよう。

9時半のやつに乗れば良いだろう。
そうすれば、11時にはマカオに着く。

しかし、いまは切符を予約しない。
明日朝早く起き過ぎた時に困るので切符は買わない(もっと早い船で行くかもしれないし)。

これだけいろんな船が出てれば何とかなるはず、と判断する。
3人で70番のバスに乗ってアバディーンに行き、サンパンに乗って港を観光。

サンパンの料金を、3人でHK$60に交渉する。
これは女の子が持っていたJTBのポケットガイドの値段HK$80よりぐっと安い。

一人当たりHK$20だ。
3人で町をうろついている内に夕方になったので、ミニバスで中環(セントラル)へ戻る。

またスターフェリーで尖沙咀(チムシャツイ)へ渡り、小さな中華料理店にはいる。
話をしていると、ついうっかり、翌日マカオに行く約束をしてしまう。

正直言うと、約束はしたくなかった。
明日のことはわからない。

明日の朝になれば僕の気が変わっているかも知れない。
僕の白馬に乗った「東京に土地を持っている金持ちで独身の30代までの」王女様が現れるかもしれない。

その時に少しだって後ろめたさを感じていたくない。
本当は約束なんかしたくない。

だけれど、女の子に「一緒に行って」と頼まれると断れない。
おじさんは若い女の子には弱いものだ。

成り行きで約束してしまった。
次の朝は、国境を越える日の僕の常として早く(多分、朝6時ごろ)起きた。

これだけ早く起きると、一人ならば、とっとと船に乗って、マカオに行けたはず。
でも、約束しているので、それに合わせて行動してしまう。

9時半の約束なので、ゆっくりトイレにはいったりして、無理に時間を潰す。
8時頃にチョンキンマンションの前の尖沙咀駅から、MTR(香港の地下鉄)に乗る。

香港島の上環(ションワン)駅へ直行する。
マカオフェリー桟橋の切符売り場へ行くと、昨日調べた9時半の高速フェリーは満席という。

他の船も全部昼過ぎまで満席、という表示が出ている。
やはり約束に関係なく朝一番の船に乗れば良かった。

僕はとにかく無理をしないというのが方針なので、こういう時は、一人ならマカオに行かない。
今日は止めにして、映画館にでも行く。

だが、一応約束しているので出発時刻までは待つことにする。
サトコとナディーヌはぎりぎりに姿を現した。

9時半の船は満席らしいと、説明する。
窓口の女の子に午前の便がないことを確認を取ろうと、「午前中にマカオに行く便はないんでしょ?」と聞く。

「キャンセル待ちしなさい!」というのが返事。
3人でフェリー乗り場のゲートに行く。

ゲートのお兄さんがフェリーの座席表を手にしている。
昔の飛行機の座席割当の時使っていたみたいな、座席のシールをはがして乗船券につけるという方式だ。

残っているシールの数を見ると10席以上ある。
ぎりぎりで駆け込んでくる人もいるだろうが、僕たちは、乗れる雰囲気だ。

料金はゲートで払うのでお金を握り締めて払う用意をする。
しかし係員は本当にぎりぎりまで席を出さない。

いやに慎重だと、イライラする。
僕は無理をすることはイヤなので、この時点で、ホントは行きたくなかった。

しかし、ついにGOの指令が出た。
切符を買う。

指定席なので、3席続きのシールをはがして僕たちの切符に貼る。
フェリーに向かって走り出す。

ここでは、ただ船に飛び乗れば良いという訳には行かない。
イミグレーションで出国審査を受けなければいけないんだ。

出国ゲートの前に書類記入のテーブルがある。
ここで大失敗をしてしまった。

慣れているので、つい香港出国カードを書き始めてしまったのだ。
これは香港入国時にパスポートにくっつけてくれた半券を出せば済んだのに!(今の状況は確認すること)

僕は書類を書くのが異常に早いので、これに気付いた時は、もう書類を書き終えていた。
女の子も僕に釣られて出国カードを書いていた。

「それは要らないよ!」と声をかけ、さっさと出国審査を受ける。
女の子たちも後に続くが、もたもたしている。

がらんとしたターミナルに「高速フェリー乗り場」の案内が英語で出ている。
走りながら、その指示通りに通路を曲がる。

途中に無線機を持った職員がいて僕を急がせる。
「女の子が2人後から来る!」と叫び、後ろを振り返るが人影が見えない。

とにかく船に乗り込まないと、ここは香港なので勝手に出港するだろう。
やっと船のタラップにたどり着く。

船はもうエンジンの出力をあげて、船尾からは激しい泡が沸き立っている。
船の上からターミナルを見るが誰も来る様子がない。

仕方ない、このまま行こう。
船の中に入り、僕のA29のシートを見つける。

彼女たちが座る予定だったA30と31の席がむなしい。
彼女たちは、次のフェリーに乗ることだろう。

船はマカオに着いて、僕は有名なフローティングカジノまでバスに乗って行く。
カジノは想像していたよりもずっと小さい。

もちろん現在のマカオは、ラスベガスにも匹敵する、大形カジノホテルが林立しているらしいですが。
さて、中国人の賭け方は激しい。

最低でもHK$100(2000円)は賭けている。
僕の1日の宿泊費よりも多い。

一人だけ船に乗れたのは運がいいのか悪いのか。
100香港ドル札を出して、「大小」に賭けてみる。

この「大小」は昔マニラのフローティングカジノが焼ける前に、女の子と行って勘が冴え渡ったゲームだ。
昔、僕が某企業のエリートサラリーマンだった時、銀座のゲームセンターの大小ゲームで、何万円分もコインを積み上げたことがある。

小・小と連続して取って、400ドルになった。
約8000円だ。

これを女の子たちへの供養の気持ちで、8千円分全部小に賭ける。
すると、大が出た。

400ドルがパア。
でもこれで、マカオでギャンブルをした話ができたので、旅行者としては気がすんだ。

僕はただの観光客なので、カジノを出て名所見物を始める。
セントポール天主堂跡・モンテの砦・セントドミンゴ教会と歩き、ホテルリスボンへ行く。

ホテルリスボンには、カジノがある。
今度は自分のためにまた小に100ドル賭けるが、最初に負けたので、100ドルで止める。

街を歩いて、マカオのフェリーターミナルまでたどり着く。
いやに人が多いので胸騒ぎがしてチェックすると、船の切符を買うために2階の切符売り場から階段、さらに表まで人があふれている。

マカオからの帰りのボートの切符が取りにくいと、そういえば香港の東急百貨店の日本書籍売り場で立ち読みしたガイドブックに書いてあったっけ。
とにかく、一番早くマカオを出る船の切符に並ぶ。

香港フェリー社の「ホバーフェリー」だが、どうやら香港島のフェリーターミナルに着くのではないらしい。
良く解らないまま乗り込むと、百万ドルの香港の夜景の中を走って、船は九龍(カウルーン)サイドへ。

着いた所はチムシャツイのチャイナフェリーターミナルで、僕の泊まっているチョンキンマンションのすぐそば、軽く歩いて帰れる距離だった。
結局、香港島のフェリーターミナルへ戻るより近かった。

香港から日帰りで、マカオ観光も済ませたし、ギャンブルをした。
このお話はここで終わり。

船着場で別れた女の子たちはどうなったかっていうと、次の日歩いていたら、出会った同じ両替所の前に2人でいるのを見かけた。
僕は慌てて身を隠してしまったが。

2人とも、幸せになってねと祈る。
ナディーヌ、日本人はみんな僕みたいだって思わないでね。

注)この話は、交通手段も、料金も両替レートも1990年のことです

旅行の満足度
3.5

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