2015/07/28 - 2015/07/28
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montsaintmichelさん
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6月16日~9月27日の期間、京都市美術館にて開催されている『ルーヴル美術館展 日常を描く - 風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄』を観に行ってまいりました。京都市美術館へ行くのは、2012年秋季に開催された『大エルミタージュ美術展』以来ですので2年半ぶりになります。また、こうしたルーヴル美術館の至宝と再会したのも3年ぶりです。ルーヴル美術館で出会った時のことを思い出しながら、再会の喜びを噛みしめることができました。
いつもなら絵画を鑑賞するだけなのですが、このところ近代建築に関心を持ち、美術館そのものを再発見してみることにしました。京都市美術館は、市民や企業からの寄付金で建築された、京都の帝冠様式を代表する建造物です。中央に載せられた千鳥破風に視線を集める帝冠様式は、一目で日本のものと判ることから、戦時下の満州や中国などで流行し、「軍服を着た建物」との異名を持つ様式です。しかし、敗戦後はGHQに接収されるなど時代に翻弄された美術館でもあります。そうした歴史の一駒を交えながらルーヴル美術館所蔵の珠玉の絵画と共に紹介したいと思います。
京都市美術館のHPです。
https://www.city.kyoto.jp/bunshi/kmma/
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 同行者
- カップル・夫婦
- 交通手段
- 高速・路線バス 私鉄
-
京都美術館 ネームプレート
京の字が亰(旧字)となっているのが時代を感じさせます。一部の文字が削り取られていますが、「大禮記念」の文字がそれとなく読みとれます。
建設資金107万円(現在の107億円相当)が全て企業や市民からの寄付で賄われたのですが、実は美術館の建設が市議会で決まった時から全額を寄付で賄う計画になっていたようです。
何故、「寄付が集まる」との確信があったのでしょうか?それはこの美術館が、往時の京都人にとって誇らしい出来事を永久に記念するために建造されるものだったからです。その出来事こそ、1928(昭和3)年に京都で行われた昭和天皇の即位式、つまり「昭和の御大典」でした。思い起こせば 「平成の御大典」は、これまで慣例だった京都を外して行われて物議を醸しました。これが最後になるかもしれないと「昭和の御大典」を永久に記念しようとした京都人には、先見の明があったのかもしれません。当初は大礼を記念することから、「大禮記念 京都美術館」と名付けられ、GHQの接収が解除されたのを機に現在の「京都市美術館」に改名し、この時にプレートから「大禮記念」の文字が削がれました。この改名は、京都が新たな一歩を踏み出す意欲の象徴だったのでしょうが、古い銘板を差し替えず、文字を削除して使用し続けたところに京都人の複雑な心境が滲み出ています。
「大禮記念」の文字を削除したのがGHQでなかったことに、胸をなでおろすことができました。 -
京都市美術館
岡崎公園内にある洋風建築の美術館です。京都近代建築の名作のひとつで重要文化財級とされ、自然光を取り入れた展示室は作品が映えるとして各専門家からも評価が高く、京都画壇を中心に作品2900点を収蔵し、大型美術展も開催され年間100万人の来館者が訪れます。 -
京都市美術館
1928(昭和3)年に京都で挙行された天皇即位の大礼を永久に慶祝記念する美術館として、関西の財界はもとより、多くの市民の協力を得て1933(昭和8)年に「大禮記念 京都美術館」の名称で日本で2番目の大規模公立美術館として開設されました。 総工費は107万円。当時としては破格の額ですが、その全てが寄付で賄われました。
「日本趣味を基調」としたデザインコンペに帝冠様式を採用した鉄筋コンクリート造2階建で応募した「コンペの前健さん」の異名を取る前田健二郎氏の設計図案を基に、京都市設計課が若干手を加えて完成させています。帝冠様式は、モダニズムに反抗するように太平洋戦争開始前の10年間だけに採用された様式で、国粋主義に猛進する日本で編み出された折衷様式と言われています。重厚な銅板葺屋根の中央の千鳥破風が視線を集めます。螻(けら)という昆虫の羽根の形に似た瓦の螻羽瓦(けらばがわら)をあしらった本格的なものです。因みに、螻羽とは、切妻屋根や入母屋屋根の切妻部分において妻側の壁より突き出した部分の総称です。 -
京都市美術館
公立美術館としては創建当時の姿を残す国内最古のものであり、近代建築として高く評価されています。戦後は一時期GHQに接収されましたが、1952(昭和27)年に改めて「京都市美術館」として再開しました。
螻羽瓦を説明しているサイトです。
http://www.w-wallet.com/page845.html -
京都市美術館
京都市民自慢の美術館なのですが、老朽化で雨漏りや館内空調設備の故障が頻発しています。この日も空調が故障して急遽マグリット展が閉館されたほどです。何も知らずにマグリット展を楽しみに訪れた方々の心中は、推して知るべしでしょう。収蔵庫が手狭で喫茶店もなく、使い勝手の悪さが指摘されています。 -
京都市美術館
京都市は、文化財的価値の高い建造物である美術館を次世代にも継承するとの方針を打ち立て、それを具現化すべく活動をされています。再整備に当たっては、近代建築として評価の高い本館の文化財指定も視野に外観を保存し、閉鎖している中庭の活用や常設展示室の整備を改修の柱にしながら、京都の文化や芸術の中核にしたいとの意向を示されています。いつになったら快適な美術館になるのか、経過を見守っていきたいと思います。 -
京都市美術館
扉には豪華絢爛な金色の装飾細工が輝いています。
扉を閉じるとどんな意匠が現れるのでしょうか? -
京都市美術館
今までは気にも留めなかったのですが、入ってすぐの所にある左右のステンドグラスもアール・デコ調のモダンなデザインです。絶妙に渋みを感じさせる和の色彩にうっとりさせられます。 -
京都市美術館
正面には吹き抜けのエントランスホールと大階段があり、ほぼ東京国立博物館と同類の構造になっています。内部の装飾は、アール・デコと一部にエジプト風を採用し、往時の最先端のデザインだったそうです。重厚壮大な趣に満ち、照明や窓、手摺、天井、細部の意匠も凝ったもので見応えがあります。特に、グリーン系の階段の色彩がシックです。今は入手不可能とされる上質の大理石が柱や壁にふんだんに使われています。階段の親柱は、燈籠を模した和風デザインです。
映画に登場するような階段で、そこからすでにストーリーが始まっている感じです。 -
京都市美術館
『ルーヴル美術館展 日常を描く - 風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄』
世界初の、時代と地域を横断した風俗画の歴史を一堂に集めた展覧会です。ルーヴル美術館のコレクションを通し、ルネッサンスが最後の花を咲かせた16世紀初頭から現実に目を向けるレアリスムが勃興した19世紀半ばまで、約3世紀半に亘るヨーロッパ風俗画の多彩な変遷を約80点の名画を通して紹介しています。このテーマは、日本の「風俗画」である浮世絵に敬意を表し、ルーヴル側から提案されたものだそうです。 -
京都市美術館
目玉商品は、待望の初来日となる17世紀オランダを代表する画家フェルメールの円熟期の珠玉の名画であり、かのヒトラーも愛した『天文学者』です。この作品は第2次世界大戦中にはヒトラー率いるナチス・ドイツの手に渡るという数奇な運命を辿った作品で、ルーヴル美術館を離れることはほとんどなかった作品です。
風俗画とは、身分や職業の異なる様々な人々の日常が描かれる一方、必ずしもありのままの現実が描かれているとは限りません。日常の装いの中に、複雑な道徳・教育的意図や寓意が込められていることも少なくありません。このように風俗画には読み解きの愉しさも含まれているのが魅了でもあります。厳選された作品から、その奥深い魅力が体感できる趣向になっています。
ここから先は入場口ですので、ここでカメラを片付けます。 -
クエンティン・マセイス 「両替商とその妻」
(1514年)フランドル絵画
ブリューゲル以外の作品の写真は、4年ほど前にルーヴル美術館で撮影したものです。ルーヴルでは照明が映り込んで見難く、写真もこのような角度でないと見られるものではなかったのですが、京都市美術館の展示は、少し暗いものの照明が映り込まないように配慮されています。
マセイスは、15世紀末までに常套化したフランドル絵画を新しい視点で16世紀のルネサンス絵画に橋渡しした中興の祖として名高い画家です。
絵の中の2人は夫婦で金貸しと両替商を営んでいます。金貨を天秤で量り、金の含有量を調べて値踏みしています。机には真珠や指輪などが所狭しと並べられ、聖書を読んでいた奥さんもマリア像の頁の所で手を休めて忘我の境地で見とれています。
この絵には、聖と俗の道徳的寓意が込められているそうです。つまり、重さをごまかさないという商業道徳の遵守を求める絵なのです。手前の凸面鏡には人影が映っており、不正を監視されています。また、聖書のマリア像も監視しています。人はどこかで誰かに見通されているということを暗示する絵画です。 -
リュバン・ボージャン 「チェス盤のある静物」
(1630−35年)古典主義
17世紀、静物画では、現世を否定し来世のために身を律する「メメント・モリ(死を想え)」の考え方が流行りました。一般的には「現世の虚しさ」と称されるジャンルで、その中でこの絵は最高傑作と言われています。
この絵は「五感の寓意」とも称されます。リュートと楽譜は聴覚。パンとワインは味覚。カーネーションは嗅覚。鏡は視覚。チェス盤、財布やカードは触角を表現しています。何気ない配置に思えますが、手前では賭け事や音楽の遊興生活を否定し、奥の聖体を表すパンと受難のワイン、三位一体の3本のカーネーションの宗教生活へと導く構図が読めます。しかし、最後に行きつくのは壁に掛けられた鏡。そこには何も映っていません。つまり、あの世の象徴なのです。 -
ジャン・シメオン・シャルダン 「買い物帰りの女中」(1739年)
三角形の構図のお手本のような絵画です。
描かれているのは、買い物から帰宅した女中の姿です。女中の左脇には大量のパンが置かれ、右手に下げた袋からは鳥の足がはみだしています。その表情は、ほっと一息ついているかのような安堵を感じさせます。一方、左側には、背景として奥の部屋で若い女中がさらに隣の室内へと入っていく姿や銅製の給水器がひとつ描かれています。前景の買い物帰りの女中の居る室内のやや暗い光と奥の部屋の明瞭な光の対比は17世紀のフランドル風俗画の影響を感じさせますが、庶民階級層の生活の野卑な雰囲気を感じさせず、むしろ温もりと優しさに溢れた静謐な場面描写や独特の色彩描写による高度な詩情性の表現がなされている作品です。 -
ピーテル・ブリューゲル1世 「物乞いたち」
(1568年)フランドル絵画
膨大なコレクションを誇るルーヴル美術館でも、わずか1作品しか所蔵していないという貴重なブリューゲル作品です。ルーヴル美術館では時間の関係もあって見つけることができなかった作品ですので感慨も一塩です。それもそのはず、吃驚するほど小さな作品でした。
この作品の解釈には諸説あります。そのひとつは、乞食たちが道の上で歌いながら施しを求めるという、年に一度の乞食の祭りを描いているというものです。それと同時に、伝統的なカーニバルの「逆さまの世界」を描写しているとも言えます。すなわち、皮肉たっぷりに茶番を演じる乞食たちは、破滅へと向かう社会のある階級の役を演じており、ボール紙の王冠、兵隊の紙帽子、ブルジョワ階級のベレー帽、農民の縁無し帽、司教のミトラ(僧帽)といった彼らの被り物がそれらのメタファーだとの説です。
もうひとつが、往時のスペイン国王の支配に対し、「貧者の反乱」と呼ばれる抵抗運動が勃発しており、その抵抗を表現したものとの説もあります。すなわち、この絵の貧民たちの上衣にぶら下がった状態で描かれている狐の尻尾こそ、抵抗のシンボルだったからです。
実際のところ、仮説のどれもが未だに証明されているとは言い難く、一筋縄ではいかない作品であることは確かなようです。
さて、芸術的評価はともかく、金銭的価値では、1平方cm当たりの価格で表せば、今回の展示作品の中で最高額かもしれません。
この写真は、ルーヴル美術館のHPから引用させていただきました。
http://www.louvre.fr/jp/oeuvre-notices/%E3%80%8A%E4%B9%9E%E9%A3%9F%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%80%8B -
ヨハネス・フェルメール 「天文学者」(1668年)
バロック美術 フランドル絵画
フェルメールは17世紀のオランダの画家です。作品はどれも静かな空間に満ち、それでいて全ての素材が精巧な描写により不思議な存在感を持ち、強く惹き付ける力を持っています。大変人気のある画家で、各所で「フェルメール展」が催されるとその混雑ぶりが話題になります。現存する作品は、疑問作も含めて30数点です。生前、フェルメールは画家として評価を得ましたが、その後美術史から突如姿を消します。そして没後約200年経ってから再び脚光を浴びるのです。ある種ミステリアスなこの背景が、「作品を見たい」という気持ちに拍車をかけているようにも思います。
フォーカスは、天文学者よりも天球儀に当てられています。
絵のモデルは、フェルメールと同年生まれで同じデルフトの住人であった科学者アントニ・ファン・レーウェンフック説が有力です。レーウェンフックはアマチュア科学者として活躍し、微生物学の父と称されています。天文学者は天球儀に向き合い、手前にはアストロラープという天体の角度を測る器械が置かれています。机上の本はアドリアーン・メティウス著『星の研究と観察』であることが判明し、どのページが開かれているかまで解明されています。壁の絵は『モーセの発見』で、ユダヤの民を導いたモーセは天文学にも縁のある人物だと解釈されています。 -
京都市美術館 螺旋階段
展示室の第?章と第?章の間にある階段ホールです。
カーブを描くゆったりした階段で、普通ならこれが正面階段でもおかしくないほどです。トイレや休憩ができるスペースにあり、今までにCMやポスターなどに度々登場してきたクラシカルな螺旋階段です。
普段なら気にも留めずに通り過ぎてしまうのですが、近代建築に興味を抱くようになったため、仕舞い込んでいたカメラを取り出してみました。 -
京都市美術館
出口付近にあるショップを抜けて再び正面ホールへと戻ってきました。
大きな吹き抜けではありませんが、華やかに2階の天井を埋め尽くすステンドグラスの一部が見られます。
格天井と和風ステンドグラスという組合わせは、京都ならではの斬新さです。 -
京都市美術館
マグリットの代表的名画「ピレネーの城」の前でするポーズと言えば、ひとつしかありません。
彼女等がどんなポーズをとっているか、判りますよね! -
京都市美術館 南入口
普段なら見に行くこともない南入口です。 -
京都市美術館 南入口の扉
金色の装飾模様が荘厳な感じを醸しています。
ここまで回って来た甲斐がありました。
意匠的には正面玄関のものとほぼ同じだと思われます。 -
平安神宮 大鳥居
美術館前の道路に聳え立つ平安神宮の大鳥居です。
毎度のことですが、この色の鮮やかさと大きさには、ただただ圧倒されるばかりです。
現在の大鳥居は、1929(昭和4)年に道路をまたぐ形で立てられたコンクリート製です。鳥居はいわば神社の正門ですが、大鳥居などは他の大きな神社の神域につづく参道にもあり、結界を示す鳥居とは別もののようです。これは、平安神宮の生い立ちにも関わっています。つまり、平安神宮は、第4回内国勧業博覧会(1895(明治28)年)の一環として、平安宮の一部を模して創建されたものです。現在の応天門・大極殿は一種のパビリオンに過ぎず、本殿がその後方に造営されており、それが平安神社だったそうです。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。恥も外聞もなく、備忘録も兼ねて徒然に旅行記を認めてしまいました。当方の経験や情報が皆さんの旅行の参考になれば幸甚です。どこか見知らぬ旅先で、見知らぬ貴方とすれ違えることに心ときめかせております。
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