2014/01/26 - 2014/01/26
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nakaohidekiさん
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商売とは難しいものである。
井原西鶴の『日本永代蔵』には、ちょっとした工夫や倹約で大儲けした人の話が紹介されている。例えば「神通丸」という話しでは、大阪の北浜に全国から米が運ばれ、陸揚げするとき米がこぼれるので、このこぼれた米を集めて大儲けした人の話が紹介されていたり、また「鯨取り源内」では、主人公の源内さんは鯨の骨も捨てず粉にして油を絞って金を儲けたという話しなどが紹介されている。いずれも倹約と目の付け所で商売が上手くいくという例であるが、これは現代でも共通するところであろうと思われる。
温泉施設・湯快リゾートは、倹約と工夫で倒産した旅館やホテルを立ち直らせているそんなリゾート会社である。徹底したコストカットと節約で、全国にその名を知らしめたのである。そんな温泉施設は全国に14か所もあり、そのほとんどは有名温泉地である。北陸では、山代温泉、粟津温泉、片山津温泉であり、東海エリアでは、恵那峡温泉、下呂温泉、中国・近畿では、白浜温泉、紀伊勝浦温泉、湯村温泉、湯原温泉などである。いずれもが全国に名の知れた有名温泉地であるが、ここには立ちいかなくなった温泉宿も多数存在していたのである。もちろん今なお温泉宿として隆盛を極めている温泉旅館も多数あるが、しかし、時流に合わず、倒産してしまったいくつかを買い取って再生しているが湯快リゾートなのである。その手法は徹底したコストカットで安価な料金設定を生み出し、そのことによってリピーターを呼び込む作戦をとったのである。
今回はそんな中の一つ、南紀白浜『白浜御苑』に行ってみた旅行記である。
1月の寒風吹きすさぶ日曜の午後であった。
行ってみると、コストカットした工夫が随所に垣間見えたのである。
まず二人一泊二食付の値段が、365日変わらずの7800円である。今の時期は特にキャンペーン中とあってさらにお安い6800円である。
では、いかにしてこの低料金を生み出しているのかというと、とにもかくにも人員削減である。
車で白浜御苑に着いてみると、玄関に迎えの従業員がまずいない。通常の旅館やホテルなどでは迎えの従業員がいて「お疲れ様でした。お泊りでしょうか。お荷物はお持ちします」などといってフロントまで荷物を持って案内してくれる。そんな人は誰もいないのである。自分で駐車場を探し、荷物を持ってホテルへ入る。基本はお客のセルフサービスである。
車はもちろん自分で入れるのであるが、駐車場には第一と第二。着いた日は日曜日であったが第一は満車であった。しかたなく第二駐車場に向かうと、第二駐車場は山の上である。しかし、そんなに遠くはなかった。帰りに荷物を持って坂道を登るのが少々しんどかった思いがあるが、着いた日はそれほどでもなかった。
玄関に入るとロビーは大きく綺麗な佇まいである。フロントには受付に二人いてチェックインはおおむねスムーズである。部屋のアップを希望していたので2000円の割り増料金で五階の眺望のいい部屋が割り当てられた。キーは棒の付いた長いお馴染みの旅館のキーである。
ロビーで自分のサイズの浴衣を選ぶのであるが、ここもコストカットで経費削減である。とにかく何もかも自分でやるのものである。
館内の施設はすべて元のあるものをリノベーションして使っている。よって新品の綺麗さはない。しかし贅沢をいわなければこれで充分快適さを味わえる。掃除も綺麗に行き届いているようだ。ただしセンスのいいホテルとはいかないのでその辺は我慢しなければならない。
部屋は確かに眺望はいい。室内も12畳と二人にしては大きすぎる広さである。しかしすでに蒲団が二組敷かれていて、いつでも寝れる体制ではあるが、座椅子に座りゆっくりお茶を飲むという楽しみはない。床の間に上がっているポットでお湯を急須に注ぐという味気ない到着後の一息である。トイレは新品同様で極めて綺麗であるが一番気になったのは洗面所である。これは非常に狭かった。とにかく一人立つのがやっとという状態。その上、コップが一個しかない。これでは歯磨きのとき、後の人は同じコップを使うしかない。これはいまいちいただけないと思った。これもコストカットで省略しているのかもしれないのだが。
そうはいっても温泉の楽しみはなんといっても大浴場である。これが楽しみで来ているようなものなのである。それに白浜温泉は日本書紀にも謳われた日本三古湯の一つ、かつては熱海、別府と並ぶ日本三大温泉となっているのである。
白浜温泉の泉質は、無色透明の炭酸水素塩泉で32度から85度の高温である。胃腸病、神経痛、リュウマチなどに効くといわれている。
大浴場に行ってみると高温であるため加水して使っていると脱衣所の入り口に書いてある。サウナや露天風呂も併設して付いていてすこぶる快適である。命の洗濯というのは、まさにこのことかと納得して温泉に浸かってしまったのである。大浴場には露天風呂も含めてつごう五回も入ってしまった。まあ、温泉宿に来たならこれも仕方ないところである。
さて、夕食である。
これも各自が勝手に取って食べるバイキングとなっている。和食、洋食と揃っていてお味は中々の美味しいのである。特にご飯の炊き方が上手いと思った。デザートも堪能でき大変満足であった。この値段でこれだけ美味しいければいうことはない。食後のコーヒーももちろん自分で入れるのであるがファミレスのコーヒーよりはるかに美味しいと思った。まったく満足のいく食事であった。
部屋に戻って、敷きっぱなしの布団にもぐりこむと、なかなか暖かい。掛け蒲団一枚であるが上質の羽毛を使っているようで軽くて暖かいのである。このへんも客のニーズを心得ていて心憎いところ。テレビを見ながらうつらうつらしていると寝てしまった。夜中にお腹が空いてふっと起きてしまう。どうもなにか夜食を食べずにはいられなくなったので、もちろんルームサービスなどというものはないので仕方なく、2階の自動販売機コーナーで夜食を買うことにした。行ってみると、各種の夜食が売られている。チャーハンあり焼きおにぎりあり、焼きそば、たこ焼きまであるのである。そのいずれもが350円である。僕は焼きおにぎりと焼きそばを買ってしまった。部屋に持って帰ってお茶を入れて食べるとこれで夜食としては充分満たされたのである。なにも一流ホテルのルームサービスなど必要ないなあと思ってしまった。これは僕がきっと庶民に違いないからだと思うのだが・・・・・・。
さて、翌日、快適な目覚めをした。
五階からの海の眺めは素晴らしい。大きな窓からは田辺湾が一望でき、目の前の城砦を思わす「ホテル川久」の佇まいは朝日に映えて眩しいくらいだ。部屋のアップを申し込んでいてよかったと思った。それでも一泊二食付で8800円である。
チェックアウトは12時となっている。これもゆっくりできて有難い。朝風呂に浸かり落ち着いて宿を出ることができたからである。。
湯快リゾート・白浜御苑は、僕のような庶民にはまったく有り難い温泉施設であるに違いなかった。
ここ、南紀白浜は名勝地でもあるので、千畳敷や円月島なども楽しんで帰路に着くことにした。途中、円月島の浮かぶ湾の向かいに南方熊楠記念館があったので寄ることにした。
南方熊楠というのは、世界的な博物学者で粘菌学や民俗学などの大きな業績を残した。英科学誌「ネイチャー」には51本もの論文が掲載された大学者なのである。また環境保護運動の先駆者でもあった。
作家・五木寛之はその著書『日本幻論』のなかで、柳田国男と南方熊楠の民俗学的な論争を紹介したりもしている。僕はそんな南方熊楠の記念館に行ってみたかったのである。
記念館の周囲は鬱蒼とした南国の樹木で覆われている。ここが日本とは思えないような森林が生い茂っているのである。ジャワかスマトラ、ハワイの熱帯かと思えるような錯覚を覚えてしまった。そんな自然を愛した南方熊楠について、五木寛之も興味を覚えていたようである。
最後にそれを紹介して、この旅行記の締めくくりとしたい。
−『明治時代に始まった二人の巨人(柳田国男と南方熊楠)の手紙のやりとりが大正最後の年に終わるというのは、一つの時代のパノラマを見るような、じつに複雑でしかも深い思いをわれわれに抱かさずにはいられません。
ただ、ちょうど最近、紀州・熊野のほうへ車で出かけることが多いのですが、じつは明日にも田辺・白浜へ行って、南方熊楠記念館へ顔をだしてこようと思っています。まあ、少し熊楠の肩をもちすぎたのも、そのせいかもしれません』ー
五木寛之『日本幻論』(「柳田国男と南方熊楠」)より
- 旅行の満足度
- 4.5
- 観光
- 4.5
- ホテル
- 3.5
- グルメ
- 3.5
- 交通
- 4.0
- 同行者
- カップル・夫婦
- 一人あたり費用
- 1万円未満
- 交通手段
- 自家用車
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ロビーにある土産物売り場と浴衣置き場。自分のサイズの浴衣を選んで部屋に向かう。
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ロビー脇のお庭の様子
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ホテルロビーから玄関を望む
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五階の部屋から見た眺望
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部屋の中。布団はすでに敷いてある。
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部屋のバルコニー。奥がクローゼットは広く使いやすい。
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夕食の食堂。バイキングである。
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僕の今夜の食事。僕は小食である。もっと食べられる人はご自由に!
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朝の田辺湾の眺め。
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夜食の自動販売機。いろいろ揃っている。
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脱衣所にあった温泉分析表
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大浴場。湯気でほとんど見えないが。
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大浴場の脱衣所
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部屋の洗面所。これは狭くて使いづらい。しかもコップは一つである。
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白浜名物、円月島。
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南方熊楠記念館石碑
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南方熊楠記念館入口
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記念館周辺は鬱蒼とした南国の樹木で覆われている。皇太子殿下も訪れている。
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ここはもはや日本ではない。熱帯の植物満載。
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偉大な博物学者、南方熊楠の写真。
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もはや南国である。
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白浜バイパス沿いにある「とれとれ市場」。ここで南紀のお土産を買う。
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とてとれ市場の内部。まるで魚市場のようである。
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白浜の名勝、千畳敷。絶景である。
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