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2013年9月22日。<br />「多摩川源流のたび」の途中では多摩川沿いの名所旧跡に多くめぐり合いましたが、その際には時間もなく横道にそれる余裕もなく。今回はその際になんとなく気になっていた狛江の「万葉の碑玉川」へ自転車で行ってみました。小さな碑ではありますが、松平定信、渋沢栄一等が絡んでおり結構な歴史を持つものでした。<br />【碑文】<br />「多麻河泊爾左良須弓豆久利左良左良爾奈仁曽許能児能己許太可奈之伎」<br />【かな】<br />「たまがわにさらすてづくりさらさらになにそこのこのここだかなしき」 万葉集巻十四 三三七三                  <br />【訳】<br />「多摩川にさらさらとさらす手づくりの布のように、さらにさらに どうしてこの娘がこんなに可愛いのだろう」<br /><br />万葉集の中にでてくる東歌の一つで、学生中に学んだ記憶があります。古代、文字のない日本人が中国から伝わった漢字を使い感情を伝えようとしたのが万葉仮名です。それでも感情を伝えるのは不自由だったと思います。<br />当時、遥か昔の奈良時代のこのあたりは都から遠く離れていたとてつもない辺境だったのでしょうが、そこでも人々の営みがしっかりとあり、それが歌に詠まれているのは驚きです。<br />この歌からは、そんなむかしむかしの多摩川べりの情景を思い浮かべることができます。奈良時代、多摩川で布をさらしている姿と、その乙女を愛する人。古代といってもいいくらい昔でも人を愛しそれを歌で表現することは今と変わらず、繊細な日本人の感情があり、古の人の純朴なこころまでもが伝わってきます。<br /><br />その歌が何故碑になってここに存在するのかですが、もともとは、江戸時代文化文政のころ、1805年に猪方村半縄に建てられたという。その時の老中であった松平定信が碑面の文字を依頼された。<br /><br />その後、多摩川の洪水により碑も流されて行方不明に。<br />時は過ぎて大正の時代に、松平定信を尊敬する羽場順承という元武士が定信の遺蹟を訪ね歩いている際にこの碑のかつての存在を発見。<br /><br />羽場の尽力で、やはり松平定信を尊敬していた渋沢栄一を始めとする有志により新たな碑が建設された。昔の碑の拓本が保存されていたため現在の文字も松平定信のものです。<br /><br />碑の裏側陰記には江戸時代の経緯が書いてあります。<br />「河川で玉川とよばれるのは、天下に全部で六つある。むさしの国にあるのはその一つである。しかるに水の道はしばしば変わってしまうから、訪ねてみてもしょせん得ることがないのである。平井董威という男が旧蹟を考証探索して何年にもなっているが、最近これを認定し、わが老公にお願いして、その古歌一首を書いてもらい、石碑にきざんで、これを多摩郡猪方村にたてた。これからのちは、古跡こつ然として立派な石と共に世間に知られていくだろう。そもそも微なことでも、大事なことは世に紹介し幽なことでも大事なことは鮮明にしていくことが、孔子があらわしたと言われる「春秋」の志であった。董威はきっとこれに学んだのであろう。いわんや老公の書は、この証拠を後世に残すことになった。以上を文章として表現したのである」<br /><br />陰記の後半部分は渋沢栄一のものが記されてますが文語文なので割愛します。<br /><br />

多摩川沿い 万葉の歌碑 玉川

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2013/09/22 - 2013/09/22

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nao520

nao520さん

2013年9月22日。
「多摩川源流のたび」の途中では多摩川沿いの名所旧跡に多くめぐり合いましたが、その際には時間もなく横道にそれる余裕もなく。今回はその際になんとなく気になっていた狛江の「万葉の碑玉川」へ自転車で行ってみました。小さな碑ではありますが、松平定信、渋沢栄一等が絡んでおり結構な歴史を持つものでした。
【碑文】
「多麻河泊爾左良須弓豆久利左良左良爾奈仁曽許能児能己許太可奈之伎」
【かな】
「たまがわにさらすてづくりさらさらになにそこのこのここだかなしき」 万葉集巻十四 三三七三                  
【訳】
「多摩川にさらさらとさらす手づくりの布のように、さらにさらに どうしてこの娘がこんなに可愛いのだろう」

万葉集の中にでてくる東歌の一つで、学生中に学んだ記憶があります。古代、文字のない日本人が中国から伝わった漢字を使い感情を伝えようとしたのが万葉仮名です。それでも感情を伝えるのは不自由だったと思います。
当時、遥か昔の奈良時代のこのあたりは都から遠く離れていたとてつもない辺境だったのでしょうが、そこでも人々の営みがしっかりとあり、それが歌に詠まれているのは驚きです。
この歌からは、そんなむかしむかしの多摩川べりの情景を思い浮かべることができます。奈良時代、多摩川で布をさらしている姿と、その乙女を愛する人。古代といってもいいくらい昔でも人を愛しそれを歌で表現することは今と変わらず、繊細な日本人の感情があり、古の人の純朴なこころまでもが伝わってきます。

その歌が何故碑になってここに存在するのかですが、もともとは、江戸時代文化文政のころ、1805年に猪方村半縄に建てられたという。その時の老中であった松平定信が碑面の文字を依頼された。

その後、多摩川の洪水により碑も流されて行方不明に。
時は過ぎて大正の時代に、松平定信を尊敬する羽場順承という元武士が定信の遺蹟を訪ね歩いている際にこの碑のかつての存在を発見。

羽場の尽力で、やはり松平定信を尊敬していた渋沢栄一を始めとする有志により新たな碑が建設された。昔の碑の拓本が保存されていたため現在の文字も松平定信のものです。

碑の裏側陰記には江戸時代の経緯が書いてあります。
「河川で玉川とよばれるのは、天下に全部で六つある。むさしの国にあるのはその一つである。しかるに水の道はしばしば変わってしまうから、訪ねてみてもしょせん得ることがないのである。平井董威という男が旧蹟を考証探索して何年にもなっているが、最近これを認定し、わが老公にお願いして、その古歌一首を書いてもらい、石碑にきざんで、これを多摩郡猪方村にたてた。これからのちは、古跡こつ然として立派な石と共に世間に知られていくだろう。そもそも微なことでも、大事なことは世に紹介し幽なことでも大事なことは鮮明にしていくことが、孔子があらわしたと言われる「春秋」の志であった。董威はきっとこれに学んだのであろう。いわんや老公の書は、この証拠を後世に残すことになった。以上を文章として表現したのである」

陰記の後半部分は渋沢栄一のものが記されてますが文語文なので割愛します。

旅行の満足度
4.0
  • 先ずは家から自転車で30分の二カ領堰堤へ。

    先ずは家から自転車で30分の二カ領堰堤へ。

  • 多摩川水道橋

    多摩川水道橋

  • 今日は天気もよく多摩川の流れも穏やかだ。

    今日は天気もよく多摩川の流れも穏やかだ。

  • 多摩川リバー50kmの看板。懐かしい。ここを歩いたのは確か2年前の2011年の事だ。

    多摩川リバー50kmの看板。懐かしい。ここを歩いたのは確か2年前の2011年の事だ。

  • 狛江の五本松

    狛江の五本松

  • 狛江の五本松

    狛江の五本松

  • 狛江の五本松

    狛江の五本松

  • 万葉の碑到着

    万葉の碑到着

  • 「多麻河泊爾左良須弓豆久利左良左良爾奈仁曽許能児能己許太可奈之伎」

    「多麻河泊爾左良須弓豆久利左良左良爾奈仁曽許能児能己許太可奈之伎」

  • 由来が書いてある

    由来が書いてある

  • 松平定信の筆による

    松平定信の筆による

  • 碑の裏面

    碑の裏面

  • 澁澤栄一

    澁澤栄一

  • 水神社

    水神社

  • 水神社

    水神社

  • かぶと塚古墳

    かぶと塚古墳

  • かぶと塚古墳

    かぶと塚古墳

  • かぶと塚古墳

    かぶと塚古墳

  • かぶと塚古墳

    かぶと塚古墳

  • かぶと塚古墳

    かぶと塚古墳

  • かぶと塚古墳

    かぶと塚古墳

  • むいから民家園

    むいから民家園

  • 江戸時代の民家が保存されている

    江戸時代の民家が保存されている

  • 狛江駅

    狛江駅

  • 堰堤を左岸側からのぞむ

    堰堤を左岸側からのぞむ

  • フナを狙う釣り人たち

    フナを狙う釣り人たち

  • 多摩川水道橋から下流を

    多摩川水道橋から下流を

  • 河口から23Km地点

    河口から23Km地点

  • 帰りは二カ領用水沿いの道をとる

    帰りは二カ領用水沿いの道をとる

  • 桜の頃はきれいなのだろう

    桜の頃はきれいなのだろう

  • ここは、すごい。しゃがまなければ通れない!

    ここは、すごい。しゃがまなければ通れない!

  • 上は南武線が通る

    上は南武線が通る

  • 簡単に線路に入れる

    簡単に線路に入れる

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