2013/01/15 - 2013/01/15
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ちびのぱぱさん
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「あいつらはね、相方を求めて、周回しよるんですよ。」
大学で教鞭を執っていたというTさんは70代くらいと思いますが、柵の上から首だけ出して、さらに付け加えました。
「ぼくはね、分かるんですけど、家内はただの枝だちゅうんですワ。」
「……。」
「賢いですからね、人の気配がしたら、首を出したまま、10分でもじっとしとるんですワ。」
Tさんの話では、仁徳さんの堀には、50センチくらいの巨大なすっぽんがいるそうで、その脇で生まれ育ったTさんには彼らのことが手に取るように分かるんだそうです。
「仁徳さん」というのは、もちろん仁徳天皇陵のことです。
- 同行者
- カップル・夫婦
- 交通手段
- 高速・路線バス JRローカル 私鉄 徒歩 Peach
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-
大阪というのは、さすがだと思います。
ちょっと人に言うのがはばかられるほど宿代が安いところがあります。
その「人に言うのがはばかられるほど安い宿」の目の前から、路面電車が出ています。 -
その名も半壊、いや阪堺電車。
路面電車、大好きです。
200円で、どこまでも行ってくれます。
住よっさん(住吉神社)の前をかすめて、大和川を渡り、大小路という、大きいんだかちっさいんだか分からない、ややこしい名前の駅で降りました。
この大和川は、きのう奈良から乗った天王寺行きのJR関西本線が、その流れに沿って走っていました。
明るいうちに乗ったので、遠くに法隆寺を見たり、奈良盆地をぬける渓谷が、思いもかけず風光明媚だったり、明るいうちに乗れて良かったと思いました。 -
路面電車を大小路駅で降りると、10分ほど歩いて堺市役所まで来ました。
その市役所の21階展望台から、仁徳天皇陵を遠望できると聞いていたからです。
ところが
「があああ〜ん。」(ほんとうに、あたまの中でそういう音がしました)
エレベーターの点検修理とかで、全館休業でした。
まあ、そういうことならさっさと気持ちを切り替えて(北海道くんだりから来て、ほんとうは気持ちの中では、そうとう動揺しているのですが、こういう時はぎゃくに冷静さを保とうとする意識が強く働くみたいで可笑しい)、すぐそばの東境駅前から南海バス(5系)に乗って、仁徳天皇陵の正面へやってきました。(230円也) -
仁徳天皇陵といえば、中学校の歴史の教科書にも、たぶん、小学校の教科書でも、その鍵穴のような独特の形の写真を見たと思います。
しかし、目の前の一本の堀を渡ると、その奥に鳥居が見え、その向こうにさらに広い堀が見えているのみです。
世界三大墳墓といわれている、巨大な古墳のどの辺りを見ていることになるのでしょう。
どうも、ぴんと来ません。
見取り図を確認すると、あの鳥居の向こうのひろーいお堀の、さらに奥に見えている森が、かの鍵穴、つまり前方後円墳の「前方」部分、ということになります。
「なんて、巨大なんだ!!」 -
うかつにも、わたしは仁徳天皇陵が、堺市にあるのを知らずに50の声を聞いていました。
ぼんやりと、奈良あたりにあるのではないかと思っていました。
「でしょう、みんなそう思ってんだよね。」
ビジターセンターで、ストーブでおしりをあぶっていたボランティアガイド(たぶん)のおとうさんは、したり顔でそうおっしゃいました。
「こんな超有名な見所抱えているんだから、もっと宣伝した方がいいんじゃないですか。」
「いや、けっこうやってんだよ、」
「たとえば、向かいの公園に展望台を作って全体像を見下ろせるようにするとか。」
「だろ、みんなそういうんだ。だけど、そんなもん作ったって絶対人は来ないよ。おれが保証する。」
「そうかなあ……、あそこの塔はどうなんですか。人は上れないんですか。」
「ん?ああ、あれはねえ、戦没者をねえ……。」
「慰霊塔ですか?じゃあ、しょうがないか。」
「どっちにしても、300mくらいの高さにしないと見下ろせないよ。」
「スカイツリー……ですか。それはムリでしょうね。」
「そっ。飛行機にでも乗らなきゃだめ。」 -
さて……、どうしようか、どうも、このまま引き下がるのはしゃくに障ります。 -
一番手前の堀の左方向 -
右方向。 -
全長840m……。
ある大手の建設会社の計算では、毎日2000人が働いたとして15年かかる計算とか。 -
仁徳天皇は、どこにお墓を作ろうかと各地を見て回り、その際に走り出てきて倒れた鹿の耳から百舌鳥が飛び出したこの地を百舌鳥耳原とよび、自らの墳墓をたてることにしたと言います。
仁徳という諡(おくりな)を冠されていることからも、名君であることを彷彿とさせるのですが、高い山に登って国を見下ろすと、民の家々からは竈の煙も立ち上っていないのを見て、三年にわたって税金を免除したという有名な逸話もあります。
その仁徳天皇が、このような権勢を誇示するような巨大な墳墓を作って、民に負担を強いるようなことがあるでしょうか。
どうも、ひとつ合点がゆかないんですな。
ピラミッドみたいに失業対策ということもないでしょうし……
「なにブツブツいってんの? このひゃくじたってどんな鳥?」
「ああ、モズのことね?」
「モズ?モズって読むんだ。へえ〜。」 -
それにしても、せめて、この角度くらいに見える高い建物が近くにあれば…… -
この角度だと150mくらいの展望台かな。
そうだ、気球っていうのはどうでしょう。
かのアンコールワットにもありますよね、わたしは乗りませんでしたが。
もし、ここに気球があって2000円で乗れるとしたら、乗るでしょうね、アンコールワットでも乗らなかったわたしが。
なんとしても、この巨大墳墓を実感したいと思った私たちは、ビジターセンターでレンタサイクル(240円)を借りて、およそ3kmの距離を一周してみることにしました。 -
ちょうど電動アシスト自転車があったので、初めて乗ってみることにしました。
周囲には、ごく普通に民家が建ち並んでいて、静かな道を進みます。
お堀に沿って、様々な木が茂っていて、ちょっとした自然公園の観。
このなかにある後円墳には、大阪責めをした家康が長期戦に備えて城を築いたとかいいます。
けっこういろいろあったんですね。 -
ちょうど、てっぺんの辺りに来ました。
施錠がしてありますが、ここから中に道が続いています。 -
そして、どこからともなく猫ちゃんたちが走り出てきて -
歓迎してくれました。 -
うっそうとしております。 -
赤っぽい藻が繁殖しています。 -
さらに少し進むと、大きな道に出て歩道橋がありました。 -
上に登ってみると、なんと、円墳の頂が見えました。
けっこう感動しました。
やっぱり、展望台を作るべきだと思います。
50mのものでもいいから、作るべきでしょう。
人間というものは、覗いてみたいものなのです。 -
再び、住宅街の中の細道を進むと、堀がごらんのように広がっている場所に出ました。
Tさんはそのすぐ脇の家の庭で、落ち葉焚きをしておられました。
私たちが、この写真を撮っていると、後ろから
「この辺が、一番広いでしょう。」
と、声をかけてくださったのです。
それから、30分くらい、ここで生まれ育ったTさんの話をおもしろおかしく聞かせていただきました。 -
自然観察が好きなTさんは、この水場に集まる野鳥を観察するために(主にカワセミ)庭の木にごらんのような仕掛けを施しておられました。 -
白鷺と、鵜がならんで羽を休めておりました。 -
仲むつまじかったという仁徳夫妻。
おくさまの葛城磐之媛(かつらぎのいわのひめ)の愛情深い歌が彫り込まれていました。 -
-
ちょっと、ためらいましたが、やはり、一周して良かったと思いました。
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