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エッセンのツォルフェライン炭鉱跡に続き、世界遺産のアーヘンの大聖堂を訪れた。言うまでもなく「ヨーロッパの父」と呼ばれるカール大帝の町である。EU統合は「カールの帝国の再現」と言われ、ドイツ史とフランス史の中で共に偉大な国王と評価される稀有の英雄である。少々長くなるが、カール大帝について思うところを備忘録代わりに書き留めておこうと思う。<br /><br />唐突であるが、トランプのキングなどが誰なのか気に留めた方はいるだろうか。諸説があるようだが、トランプの成立は16世紀のパリであり、当然ながら当時最も人口に膾炙した英雄達が選ばれる。そしてあっという間に全ヨーロッパに広がったところを見ると、少なくともキリスト教ヨーロッパ諸国の中ではほぼ共通の英雄イメージを持っていた4人が選ばれた。<br /><br />正解は以下である。なるほどと思われることだろう。<br />スペード:ダビデ王(「旧約聖書」に登場するソロモン王の父)<br />ハート:カール大帝(シャルルマーニュ、中世のフランク国王)<br />ダイヤ:カエサル(シーザー、古代ローマの政治家、軍人)<br />クラブ:アレキサンダー大王(ギリシア時代のマケドニア国王)<br /><br />ついでにクイーンは以下となっている。 <br />スペード:パラス(ギリシャ神話のトリトンの娘)<br />ハート:ユディト(「旧約聖書」外典「ユディト記」に登場するユダヤの女戦士、もしくはカール大帝の子ルートヴィヒ1世の妻)<br />ダイヤ:ラケル(「旧約聖書」のヤコブの妻)<br />クラブ:アルジーヌ(シャルル7世の妻であるマリー・ダンジュー)<br /><br />ジャックは以下である。<br />スペード:オジェ・ル・ダノワ(カール大帝の騎士)<br />ハート:ラ・イル(ジャンヌ・ダルクの戦友)<br />ダイヤ:ヘクトル(ギリシア神話に登場するトロイの王子)<br />クラブ:ランスロット(「中世騎士物語」に登場する円卓の騎士)<br /><br />旧約聖書、ギリシア神話、古代の英雄の中で、カール大帝とその周囲の人たちが含まれていることに納得させられる。古来から支配者として君臨した人々の中で、彼ほど後世まで敬愛される英雄は多くはない。46年間の治世のあいだに53回の軍事遠征をおこなって、征服した各地に教会や修道院を建て、住民をカトリック教に改宗させてフランク化させてきた。<br /><br />カール大帝のフランク王国の最盛期には、フランス、ベネルクス3国、スイス、オーストリア、スロヴェニア、モナコ、サンマリノ、バチカン市国の全土と、ドイツ、スペイン、イタリア、チェコ、スロヴァキア、ハンガリー、クロアチアの大半を掌握した。ゲルマン民族の大移動以来、混乱した西ヨーロッパ世界に安定をもたらし、古典ローマ、キリスト教、ゲルマン文化を融合した人物として、「ヨーロッパの父」として評価されているのである。<br /><br />アーヘン大聖堂は「皇帝の大聖堂」と呼ばれる。786年にカール大帝がアーヘンの宮殿教会の建設を始めた。814年にカール大帝が亡くなると彼は自身の大聖堂に埋葬され、彼の遺骨は今も特別の神殿に保存されている。様々な様式が織り交ざったアーヘン大聖堂では、約600年間に神聖ローマ帝国の30人の皇帝たちの戴冠式が執り行われた。<br /><br />現時点でドイツには36ヶ所が登録されているが、この大聖堂は、1978年ユネスコ世界遺産のドイツの最初の12ヶ所に選ばれている。大聖堂の横には、1350年ころにネオ・ゴシック様式のアーヘン市庁舎が建設された。戦災で灰燼に帰すが、戦後すぐに再建され、現在はカール大帝のゆかりの品々を展示する博物館となっている。

ドイツの世界遺産No.13:「ヨーロッパの父」カール大帝が築かせたアーヘンの大聖堂(改訂版)

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2012/07/14 - 2012/07/16

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ハンク

ハンクさん

エッセンのツォルフェライン炭鉱跡に続き、世界遺産のアーヘンの大聖堂を訪れた。言うまでもなく「ヨーロッパの父」と呼ばれるカール大帝の町である。EU統合は「カールの帝国の再現」と言われ、ドイツ史とフランス史の中で共に偉大な国王と評価される稀有の英雄である。少々長くなるが、カール大帝について思うところを備忘録代わりに書き留めておこうと思う。

唐突であるが、トランプのキングなどが誰なのか気に留めた方はいるだろうか。諸説があるようだが、トランプの成立は16世紀のパリであり、当然ながら当時最も人口に膾炙した英雄達が選ばれる。そしてあっという間に全ヨーロッパに広がったところを見ると、少なくともキリスト教ヨーロッパ諸国の中ではほぼ共通の英雄イメージを持っていた4人が選ばれた。

正解は以下である。なるほどと思われることだろう。
スペード:ダビデ王(「旧約聖書」に登場するソロモン王の父)
ハート:カール大帝(シャルルマーニュ、中世のフランク国王)
ダイヤ:カエサル(シーザー、古代ローマの政治家、軍人)
クラブ:アレキサンダー大王(ギリシア時代のマケドニア国王)

ついでにクイーンは以下となっている。
スペード:パラス(ギリシャ神話のトリトンの娘)
ハート:ユディト(「旧約聖書」外典「ユディト記」に登場するユダヤの女戦士、もしくはカール大帝の子ルートヴィヒ1世の妻)
ダイヤ:ラケル(「旧約聖書」のヤコブの妻)
クラブ:アルジーヌ(シャルル7世の妻であるマリー・ダンジュー)

ジャックは以下である。
スペード:オジェ・ル・ダノワ(カール大帝の騎士)
ハート:ラ・イル(ジャンヌ・ダルクの戦友)
ダイヤ:ヘクトル(ギリシア神話に登場するトロイの王子)
クラブ:ランスロット(「中世騎士物語」に登場する円卓の騎士)

旧約聖書、ギリシア神話、古代の英雄の中で、カール大帝とその周囲の人たちが含まれていることに納得させられる。古来から支配者として君臨した人々の中で、彼ほど後世まで敬愛される英雄は多くはない。46年間の治世のあいだに53回の軍事遠征をおこなって、征服した各地に教会や修道院を建て、住民をカトリック教に改宗させてフランク化させてきた。

カール大帝のフランク王国の最盛期には、フランス、ベネルクス3国、スイス、オーストリア、スロヴェニア、モナコ、サンマリノ、バチカン市国の全土と、ドイツ、スペイン、イタリア、チェコ、スロヴァキア、ハンガリー、クロアチアの大半を掌握した。ゲルマン民族の大移動以来、混乱した西ヨーロッパ世界に安定をもたらし、古典ローマ、キリスト教、ゲルマン文化を融合した人物として、「ヨーロッパの父」として評価されているのである。

アーヘン大聖堂は「皇帝の大聖堂」と呼ばれる。786年にカール大帝がアーヘンの宮殿教会の建設を始めた。814年にカール大帝が亡くなると彼は自身の大聖堂に埋葬され、彼の遺骨は今も特別の神殿に保存されている。様々な様式が織り交ざったアーヘン大聖堂では、約600年間に神聖ローマ帝国の30人の皇帝たちの戴冠式が執り行われた。

現時点でドイツには36ヶ所が登録されているが、この大聖堂は、1978年ユネスコ世界遺産のドイツの最初の12ヶ所に選ばれている。大聖堂の横には、1350年ころにネオ・ゴシック様式のアーヘン市庁舎が建設された。戦災で灰燼に帰すが、戦後すぐに再建され、現在はカール大帝のゆかりの品々を展示する博物館となっている。

旅行の満足度
5.0
観光
5.0
グルメ
4.0
交通
4.5
同行者
一人旅
一人あたり費用
10万円 - 15万円
交通手段
鉄道 徒歩 飛行機
航空会社
ルフトハンザドイツ航空
旅行の手配内容
個別手配
  • エッセンからアーヘンに到着したRE(レギオナル・エクスプレス)、総2階建ての客車で電気機関車が後ろからプッシュする

    エッセンからアーヘンに到着したRE(レギオナル・エクスプレス)、総2階建ての客車で電気機関車が後ろからプッシュする

  • アーヘン中央駅、アーヘンはドイツで最も西にある都市、ベルギー、オランダの国境は近い

    アーヘン中央駅、アーヘンはドイツで最も西にある都市、ベルギー、オランダの国境は近い

  • アーヘン大聖堂のファサード

    イチオシ

    アーヘン大聖堂のファサード

  • アーヘン大聖堂を市庁舎から見る

    アーヘン大聖堂を市庁舎から見る

  • アーヘン大聖堂を市庁舎側から見上げる

    アーヘン大聖堂を市庁舎側から見上げる

  • アーヘン大聖堂を後方から見上げる

    アーヘン大聖堂を後方から見上げる

  • アーヘン大聖堂の周囲の建物

    アーヘン大聖堂の周囲の建物

  • アーヘン大聖堂の守り神、怪獣?カエル?

    アーヘン大聖堂の守り神、怪獣?カエル?

  • アーヘン大聖堂のステンドグラスの外側

    アーヘン大聖堂のステンドグラスの外側

  • アーヘン大聖堂の外壁の装飾

    アーヘン大聖堂の外壁の装飾

  • アーヘン大聖堂の内部の天井

    アーヘン大聖堂の内部の天井

  • アーヘン大聖堂の裁祭壇

    アーヘン大聖堂の裁祭壇

  • アーヘン大聖堂の金色の天井

    アーヘン大聖堂の金色の天井

  • アーヘン大聖堂のガラスの礼拝堂のステンドグラス

    アーヘン大聖堂のガラスの礼拝堂のステンドグラス

  • アーヘン大聖堂のガラスの礼拝堂の聖母子像

    アーヘン大聖堂のガラスの礼拝堂の聖母子像

  • 祭壇にある聖櫃

    祭壇にある聖櫃

  • アーヘン大聖堂の天井画

    アーヘン大聖堂の天井画

  • アーヘン大聖堂の模型

    アーヘン大聖堂の模型

  • カール大帝像とアーヘン市庁舎

    イチオシ

    カール大帝像とアーヘン市庁舎

  • アーヘン市庁舎のファサード

    アーヘン市庁舎のファサード

  • 旧市街の石畳の道路

    旧市街の石畳の道路

  • アーヘン市庁舎の内部

    アーヘン市庁舎の内部

  • アーヘン市庁舎の調度品

    アーヘン市庁舎の調度品

  • アーヘン市庁舎のドームの屋根

    アーヘン市庁舎のドームの屋根

  • アーヘン市庁舎の内部にあるカール大帝像

    アーヘン市庁舎の内部にあるカール大帝像

  • カール大帝戴冠式の冠と十字架などのコピー

    カール大帝戴冠式の冠と十字架などのコピー

  • カール大帝戴冠の王冠のコピーの近景

    カール大帝戴冠の王冠のコピーの近景

  • カール大帝の肖像画、デューラーの作

    カール大帝の肖像画、デューラーの作

  • 灰燼に帰した市庁舎の写真

    灰燼に帰した市庁舎の写真

  • 市庁舎の外壁の装飾

    市庁舎の外壁の装飾

  • 大聖堂宝物館の上部の装飾

    大聖堂宝物館の上部の装飾

  • 大聖堂宝物館の入り口、残念ながら16:30に閉館

    大聖堂宝物館の入り口、残念ながら16:30に閉館

  • 宝物館にある黄金のカール大帝の写真

    宝物館にある黄金のカール大帝の写真

  • 小便小僧ならぬ「水を吐く魚を持つ小僧」

    小便小僧ならぬ「水を吐く魚を持つ小僧」

  • ヴィルヘルム広場の街並み

    ヴィルヘルム広場の街並み

  • 旧市街の町並み

    旧市街の町並み

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この旅行記へのコメント (2)

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  • Berg Heilさん 2012/07/23 11:37:43
    Aachen 旅行記
    アーヘンの記録拝見しました。小生は2001年の冬、クリスマス・マーケット巡りの時、アーヘンを訪れました。大聖堂 市庁舎 博物館等を楽しみにしていたのですが、マーケットの真っ最中でどういうわけか施錠、閉鎖されていて内陣の見学が出来なかったのがとても残念でした。特にカール大帝の玉座を見たかったのですが。加えて冷たい雨に祟られた毎日で多く歩き廻る事が出来ませんでした。今一度リベンジしたいと思っていますが、どうなりますか?

    貴殿のアーヘン訪問記、興味深く読ませて頂きました。今後も内容の密な報告を期待しております。 Berg Heil 拝

    ハンク

    ハンクさん からの返信 2012/08/11 01:55:18
    RE: Aachen 旅行記
    Berg Heilさん、こんばんは。

    メッセージをいただきありがとうございました。ご返事が大変遅くなり申し訳ありません。サンクトペテルブルクへの約1ヶ月の出張から先週やっと帰国しました。日本のあまりの暑さに心身ともにくたばっています。

    小生、やはりドイツ文化への憧憬があるからでしょうか、ヨーロッパ出張時はいつも暇を見つけては、ドイツの世界遺産巡りをライフワークにしています。時間の許す限り投稿をしていきたいと思っています。

    Berg Heilさんのヨーロッパ旅行記は非常に内容が豊富でいつも楽しませていただいております。今後ともフォローさせていただきたくよろしくお願いいたします。

    敬具 ハンク

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